魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター   作:MTHR

16 / 72
ここ最近はアニポケ原作と接点少なめに書いていたのですが、原作と絡ませると話考えるのが一気に難しくなります。やっぱり小説書くのって難しいですね。
今回も勢いで書いた結果、色々と無理がある展開になってしまったので稚拙な駄文になっていると思われますので、ご了承ください。

前回から実施したアンケートは、アニポケ13話『ピクニックは突然に』の辺りまで続けるつもりですが、その時に同率一位だった場合は期間を伸ばすつもりです。


15話 2人のチャンピオンランクと芸術家

 ボウルタウンは、パルデア地方にある花と芸術の町だ。

 町全体が一つの自然公園のような造りになっており、各所の花畑や、そこに集まるホポッコやアマカジのような草タイプのポケモンや、フラべべやキマワリといったポケモン達は訪れる者達の心を癒してくれる。

 加えて街中には様々なアート作品も飾られており、訪れているアーティストたちからは非常に高い評価を得ている。

 

 実家からバチコのチルタリスの背に乗ってボウルタウンに足を踏み入れたイルマは、植物に囲まれた町をキョロキョロと見渡した。

 

「わぁ~、流石花と芸術の町。ポケモンがいっぱい…!」

「もふぅ」

 

 花壇に集まっているミニーブやフラべべの姿をみて目を輝かせるイルマと、正反対にあまり興味を示していないモクローに、バチコは腕を組みながら声をかける。

 

「んじゃ、あッチは先に船に戻るぜ」

「え?師匠は聞き込みに行かないんですか?」

「あッチは他にやることがあるんだよ。リコとロイはこの町に来てるらしいから、合流して3人で聞き込みしてろよ」

 

 そう言ってバチコは再びチルタリスの背中に飛び乗り、チルタリスは翼をはばたかせて飛び上がり、ブレイブアサギ号へと戻っていった。

 

「…リコ達がこの町のどの辺にいるのかとか聞いてないんだけど……まぁ、そのうち落ち合うだろうし、先ずは情報収集だよね?」

「もーふぅ」

 

 ボウルタウンに残されたイルマは肩に乗るモクローにそう声掛け、モクローの返事を聞いたイルマはリコとロイの二人にボウルタウンに着いた事をメールで伝えた後、パルデアに訪れた黒いレックウザの情報を得るために町に向かって歩きだした。

 

 この街に住んでいるコルサというジムリーダーが黒いレックウザを見たのなら、もしかしたらボウルタウンに住んでいる人も黒いレックウザを見たかもしれないと思ったイルマは、コルサという人物を訪ねる前に町の住民から情報を集めることにした。

 

「いや、見たことないなぁ」

「そうですか……ありがとうございました」

「もふ」

 

 しかし、結果は空振りだった。あちこちの店や町の住人で聞いてみたが、黒いレックウザの目撃情報はなに1つ出てこなかった。まぁ、そんな簡単に見れないからレックウザは伝説のポケモンなのだし、そもそもコルサという人物が見たという珍しいポケモンが黒いレックウザであるかどうかも曖昧なので仕方ないだろう。なので、イルマは直接コルサという人物を訪ねる事にした。

 

(…にしても、レックウザって元々オゾン層に住んでいるポケモンなのに、何でパルデア地方に来たんだろう?パルデア(ここ)に何かあるのかな……?)

 

 イルマはサリバンからもらった手帳に記載された六英雄の情報に目を通しながら、一人思案する。

 手帳を読むのに夢中になっていて周りがよく見えていなかったイルマは、曲がり角に差し掛かった所で、誰かにぶつかってしまった。

 

ドーン!

 

「わッ」「ッ」

 

「もふ!」

 

 イルマは驚いたように声を上げながら帽子と手帳を落として尻餅を付き、モクローは驚いてイルマの肩から飛び立って回避した。

 

「──ッ」

「すっ、すみません!」

 

 顔を上げ、ぶつかってしまった人物も尻餅をついてしまっていることに気付いたイルマは慌てて立ち上がってその人物のもとに駆け寄ると、かがみこんで手を差し出し、心配そうにその、人物の顔を覗き込んだ。

 

「大丈夫ですか?」

「──ッ!?」

「……?あの……」

 

 その人物は未だに立ち上がらず、何故かイルマの顔を呆然と眺めている。その様子に疑問を覚えたイルマは、手を差し出した状態のまま頭に疑問符を浮かべ、ぶつかってしまった人物の全体像を捉えた。

 

 そこにいたのは、絶世の美女だった。目算で190cm以上はありそうな高身長に、腰辺りまで伸びた紅い巻き毛と同じ紅い切れ長な瞳に凛々しい顔立ち。そして豊満な胸にくびれた腰つきに長い脚と、並みのモデルすら相手にならないであろう抜群のスタイルを持った美女は、何故か頬を赤くしながら硬直していた。白いシャツの上にハーネスベルトと黒い上着を着込んでいるが、よく見るとそれはオレンジアカデミーの改装制服を着ている事が分かり、彼女がオレンジアカデミーの生徒であることが窺える。

 すると、彼女の後ろから赤と黄色の配色を持つポケモンが駆け寄ってくる。恐らく彼女のポケモンであろう。

 

 イルマはそんな美女の姿を見て、目を見開きながら口を開いた。

 

「あの、貴方もしかして…」

 

 イルマの言葉に、紅い髪をした女性も目を見開いた。

 

「アメリさん…!?」

「ッ!?…イルマ…なのか…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、こんな所でアメリさんと会うなんて思いもしませんでしたよ」

「ま、まぁな。サリバンさんからお前が帰ってきている事は聞いていたが……」

「あっ、そうなんですか」

「もふもふぅ」

「グレン」

 

 イルマは先程ぶつかってしまった美女と並び、ジムリーダーのコルサのアトリエに向かっていた。

 

 彼女の名前は【アメリ】。イルマがパルデア地方にいた頃からの友人である。年はなんとイルマの1つ年上。イルマは比較的小柄な体躯をしているが、それでもアメリとは20cm以上の差がある。カントーに渡ったイルマとリコと違いパルデア地方のオレンジアカデミーに在籍している。

 彼女のパートナーは、黄色い装甲を纏った剣闘士のようなポケモン【グレンアルマ】だ。モクローは二人の後ろを歩いているグレンアルマの肩に乗り、何かを話している様子だ。

 

 そんな風に話し合いながら歩いていると、イルマとアメリは一件の家にたどり着いた。家中に蔦のようなものが絡み付き、トロピウスやメブキジカといったポケモンのデカイ彫刻が辺りに飾られている。

 

「ここがコルサさんのアトリエだ」

「わぁ~」

 

 あちこちに置かれたポケモンを模した彫刻の数々に、イルマはキョロキョロと首を動かして目を輝かせる。

 すると、イルマの背後から聞き覚えのある声が掛けられた。

 

「あっ!イルマ!」

「ロイくんにリコ。二人も来たんだ」

「うん!」

「丁度良いタイミングだったね。…で、そっちの人は?」

 

 振り返ったイルマの視線の先にいたのは、同じくレックウザの情報を求めてやって来たロイとリコ。褐色肌でそばかすがあり、黒髪のポニーテールで前髪には緑のメッシュ、右腕に高性能なグローブと思しきものをつけているオレンジアカデミーの制服を着た少女であった。

 ロイと軽く言葉を交わしたイルマは見知らぬ少女に目を向け、その質問に少女が答えるより前に、アメリが少女の前に歩み出た。

 

「ネモ、何処に行っていたんだ?見当たらないから先に来てしまったぞ?」

「アハハ…ごめんごめん、町の子達とバトルしててさ。つい夢中になっちゃって…」

「相変わらずのバトル狂だな…」

 

 親しげに話す様子から知り合いなのだろう。苦笑いで答えるネモと呼ばれた少女にアメリは溜め息を吐く。

 

「あの…ネモってもしかして、チャンピオンランクのネモさんですか?」

「あぁ、パルデア地方最年少のチャンピオンランク保持者にしてオレンジアカデミーの生徒会長を勤めている」

「アッハハ!そうだよ、よろしくね!」

「よ、よろしくお願いします……」

 

 ネモはイルマの言葉とアメリの説明に笑いながら差し出された手を握り返す。

 チャンピオンランクとは、パルデア地方で8つのポケモンジムを制覇した上でチャンピオンテストに合格した者がポケモンリーグから認められるバトルのプロランクであり、パルデア地方のポケモントレーナーたちの憧れとなっている。しかもそれの最年少保持者にしてオレンジアカデミーの生徒会長ときた。まさか自分が知らないところでリコとロイがそんな凄い人と出会っていたと言う事に、イルマは驚きを隠せない。

 

 そこで、ふとアメリの事を何も聞いていなかった事を思い出したリコがズイッとイルマに顔を寄せた。

 

「ねぇ、イルマの方こそ誰なのその人?イルマの知り合い?」

「あっ、そういえば!」

 

 ロイも思い出したように声を上げ、イルマの方を向いた。

 若干リコの声の低く視線が鋭い事に、イルマは少し寒気を感じながらもリコの質問に答えた。

 

「この人はね、僕がパルデアにいた頃からの友達、アメリさん。去年からオレンジアカデミーに通ってるんだよ」

「パルデアにいた頃から?初めて聞いたんだけど……」

「まぁ、パルデアにいた頃から会う頻度少なかったからね。アメリさんも色々忙しかったらしいし」

 

 イルマがそこまで言うと、突如ネモが笑顔でアメリの肩にポンと手を置く。彼女の方が背が高いので少し腕を上げておる状態で。

 

「アメリはね、私の最高のライバル!入学してから凄い勢いでチャンピオンランクになった最強のトレーナーなんだ!」

「ええっ!?そうなんですか!?」

「初耳です…!」

「お前がまだカントーにいた時の話だ。無理もない」

「最高のライバル…カッコいい!」

「入学してからそんなに経ってないのに…アメリさん、流石です!」

「そ、そうか……///」

「…ムゥ」

 

 ロイとイルマからの誉め言葉に、アメリは照れたように顔を赤くしてそっぽを向くる。リコには赤面の理由が別にあることを見抜き、不機嫌そうに頬を膨らませた。

 そこで、このままでは話が前に進まないと察したアメリが大きく咳払いした。

 

「コホン……改めて、アメリだ。オレンジアカデミー生徒会の副会長を勤めている。えーと…」

「リコです。この子はニャオハ」

「ニャーハ」

「僕はロイ。相棒のホゲータだ」

「ホゲゲ!」

「僕はイルマで、こっちがモクローです。ネモさん、宜しくお願いします」

「もっふ」

「よろしくね、私もネモでいいよ。この子はパモット」

「モッパ!」

「私も、アメリでいい。コイツが相棒のグレンアルマだ」

「アル」

「よろしく!」

「よろしくお願いします」

「……よろしくお願いします」

 

 コルサのアトリエの玄関の前でポケモン達と共に自己紹介をする一同。そこで、アメリが自分達の本来の目的を思い出して口を開こうとする。

 

「アバンギャルドッ!!」

 

バリーーンッ!

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

 その時、突如としてコルサのアトリエの中庭の方から男の声と、何かが割れるような音が聞こえてきて、一同は一斉にそちらに視線を向け、ただ事ではないと察した五人はポケモン達を連れ、小走りに中庭に入る。

 

 そこにいたのは、赤紫の棘のある衣装に茨の鞭を所持しているウェーブの髪に隈のあるジト目に色白な肌から暗い印象を受ける男性と、花瓶らしき物が地面に叩きつけられた様にバラバラの破片と化した光景だった。先程の音はこれが割れた音だろう。

 

「コルサさん!?」

「ん?…なんだ貴様等か」

 

 ネモが声を上げ、その男性──コルサが振り向いてネモとアメリの顔を見てそう呟いた。パルデア地方の8人のジムリーダーの内の1人であるのだから、チャンピオンランクの2人と面識はあるのは当然だろう。そして、今度はアメリが口を開いた。

 

「お久し振りです。お元気でしたか……?」

「見れば分かるだろう……元気だ」

 

 目の下の隈や色白な肌を見ると調子が悪いようにしか見えない。5人は苦笑いする。

 

「…あっ、実は彼女達がコルサさんに用事があると…」

「ッ、あ、あの!私の父、絵本作家アレックスの知り合いと聞いて、訪問させていただきました!リコです!」

 

 アメリの説明に、リコは慌てた様子で簡単な自己紹介をする。

 そんなリコの言葉に、コルサは顎に手を当てて考え込むと、途端に目を光らせて物凄い勢いでリコに顔を寄せ、ガシッと肩に手を置いた。

 

「絵本作家……おぉ!あのアレックスさんか!!」

「は、はい…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後5人はコルサのアトリエに招かれ、コルサと向かい合うようにソファーに座っていた。順番はネモ、ロイ、アメリ、イルマ、リコの順番だ。何故かアメリとリコがギュウギュウとイルマに身を寄せているので、ロイとネモはそれほど窮屈に感じない。

 

「アレックスさんの娘さんが来るとは……実にアバンギャルド!!

「ヒャッ!?……ど、どうも……」

 

 コルサはややテンション高めにお茶を入れたマグカップをリコに差し出した。リコはそれを戸惑いながらもチェリンボを模したマグカップを受け取る。

 すると、同じくお茶が入ったマグカップを受け取ったロイが、テッシードを模したマグカップをまじまじと眺める。因みにネモのマグカップはウツボット、イルマのはハスボー、アメリはヒマナッツだ。

 

「わぁ、ポケモンマグカップ…!」

「クオリティ高い……」

「もしかしてこれ…」

「あぁ、全て私が作った作品だ」

 

 両腕を広げて自信満々に語るコルサ。顔色はともかく元気なのは本当の様だ。

 コルサは両腕を広げたまま、熱く語る。

 

「彫刻やオブジェは、一見本物を模したただの作り物に見えるかもしれない…しかし!情熱があれば本物を越えた本物にッ!!

「ニィッ!?」

 

 そこで、コルサの隣のソファーに座っていた緑色のポケモンがコルサの熱弁に驚き、頭に着いたオリーブの実の様な部分から液体を吹き出した。

 その液体はテーブルの上にいたパモットにふりかかり、パモットの毛並みがびしょ濡れになる。

 

「あらら……」

「すまない。コイツは驚くとオイルを出してしまうんだ」

 

 ネモが慌ててハンカチでパモットの毛を拭き、コルサと緑色のポケモンが謝罪する。そこでロイはスマホロトムを取り出し、コルサの隣に座るポケモンを検索した。

 

『オリーニョ。オリーブポケモン。くさ・ノーマルタイプ。フレッシュな香りのオイルを持つ。日光を浴びて頭の実が熟していると、人里を離れ旅に出る』

 

「ミニーブの進化系なんだよ」

「へぇ~~!」

 

 ロイが興味深そうにオリーニョを眺めていると、オリーニョは怯えたようにコルサの胸の中に飛び込んだ。臆病な性格らしい。

 すると、ニャオハがオリーニョが座っていたソファーに跳び移ると、前足をフミフミする。そして、ニャオハの放つ甘い香りが辺り一面に広がり、その部屋にいた全員は思わず頬を緩ませる。それは、怯えていたオリーニョも同じであった。

 

「わぁ~!すっごく良いい香り!」

「オリーニョも嬉しそうだな…」

「ニャオハありがとう!オリーニョを安心させてくれて」

「リーニョ!」

「モッ」

「もふぅ!?」

 

 オリーニョはコルサの膝の上でダンスを踊るようにクルリと回ると、再び頭の実からオイルが溢れだし、再びパモットと、偶々近くにいたモクローの顔面にオイルが振りかかった。

 

「なんと、ご機嫌のオイルだ!」

「ご機嫌の…?」

「スマン、コイツはご機嫌の時もオイルを出してしまうんだ」

「仲良くしてね、オリーニョ」

「ニャオハ!」

「……って、目的忘れてた!」

「おっと、そうだったな…」

 

 そこで、話がオリーニョの話に脱線していた事に気付いたロイが声を上げ、コルサも思い出したようにオリーニョをソファーに戻して座らせる。

 

「僕、黒いレックウザの事を聞きに来たんです!」

「黒いレックウザだと…!?」

 

 ロイの口から飛び出したポケモンの名前に目を見開くコルサに、ロイは古のモンスターボールを取り出してそれを見せた。

 

「このモンスターボールから出てきて、どっか行っちゃったんです!それで、なにか手掛かりがないかって……」

 

 ロイがそこまで話した所で、5人は突然コルサが突然黙り込んで肩を震わせている事に気付く。

 コルサは、バンッと机を叩きながら立ち上がり、怒声を上げた。

 

「…ノットアバンギャルド!!」

「「「「「ッ!?」」」」」

「全くもってノットアバンギャルド…さらばだ!」

「ええっ!?あっ、コルサさん…!?」

 

 戸惑うロイに全く取り合わず、コルサはツカツカと部屋から去って行き、オリーニョが慌ててコルサを追いかける。

 部屋に残されたイルマ達は、呆然とコルサが行ってしまった方を眺めることしが出来ない。

 

「ど、どう言うこと…?」

「黒いレックウザの話をしたら急に怒っちゃった……」

「僕、何か変なこと言っちゃったかな……?」

 

 このままでは黒いレックウザの情報も聞けないし、アトリエに籠りっきりになっているコルサを心配して来たアメリとネモもどうすれば良いのか分からなくなってしまう。

 どうすれば良いのか、5人は頭を悩ませる。

 

「どうしよう……」

 

 ロイがそう呟くが、当然ながら良い考えが思い浮かばない。

 その時、突然リコがソファーから立ち上がり、部屋に置かれていたタルップルのオブジェの後ろを覗き込んだ。

 

「!これって……」

「リコ、どうしたの?」

「……もしかしたらコルサさん、スランプなのかも」

 

 ロイの質問にリコは振り返りながらそう答える。

 リコの言葉に、ロイ達は目を見開く。

 

「スランプ!…って、何?ポケモン?」

「じゃないと思うな!」

 

 …だが、ロイは言葉の意味が分からなかったらしい。

 イルマはガクッと脱力した後、苦笑い気味に説明をいれる。

 

「スランプって言うのは、簡単に言えば心や体の調子が悪い状態の事だよ」

「うん。ウチのお父さんも、作品作りに息詰まって、何を作っても上手く行かなくなってた」

「成程、コルサさんがジムを閉鎖してアトリエに籠っていた理由はそれか……」

 

 腕を組んで豊満な胸を乗せたアメリが納得したように呟く。コルサは神経質で繊細な性格をした芸術家だ。そんな彼がスランプになったのならジムを閉鎖するのは当然だろう、と。

 

「そんな時、お父さんはどうしてたの?」

「うーん…美味しい物食べたり、笑顔になれる事してたかな…?」

「それなら、美味しいスイーツ取り寄せる?セルクタウンにムクロジっていうバティスリーがあるんだけど…」

「いや、コルサさんがスイーツでスランプを脱出するのは無理だろう。想像できん……」

「ダメかぁ……」

 

 イルマよりコルサと面識があるアメリの言葉に、自分の提案を遠回しに却下されたイルマはガクッと肩を落とす。リコは苦笑いだ。

 すると、今度はロイが何か閃いたようだ。

 

「そうだ!僕達もキマワリを集めよう!」

「ッ!太陽明るい笑顔の象徴!」

「キマワリ集め?」

「そう言えばイルマは知らなかったか…キマワリは太陽、笑顔の象徴として、ボウルタウンの子供達がキマワリを集めているんだ」

「そうなんですか…確かに、この町にはキマワリのオブジェも多いし…良い考えかもしれませんね!」

「うん。やろう!私達も手伝って、コルサさんを笑顔にしよう!」

 

 思い立ったが吉日5人は早速コルサのアトリエを後にし、外へ出る。

 そして5人とそのパートナー達が向かったのは、キマワリが何体もいる大きめの広場だった。

 

「ここがキマワリ広場、この広場一杯になるまで集めよう!」

「この町にはキマワリが沢山いるが、コルサさんが作ったキマワリのオブジェも多い。そこは注意しておけ」

「うん!」

「はい!」

「よっしゃ、ホゲータ行くぞ!」

「ホゲ!」

「よし、私達も行くよパモット!」

「パモッ!」

 

 ネモとアメリの言葉にイルマとリコが頷き、ロイはホゲータと共にキマワリを探して走り出す。ネモもパモットと一緒にロイとは反対の方向に向かって走り出していった。

 残ったのはイルマとモクロー、リコとニャオハ、アメリとグレンアルマの三組。イルマはモクローを肩に乗せたまま、踵を返してロイとネモと別の方角に向かって走り出そうとした。

 

「よし、それじゃあ僕とモクローはあっちn……」

「イ、イルマ、折角なら私とキマワリ探しに行かないか?」

「えっ?」

「ッ!?」

 

 その時、アメリがイルマを呼び止めてそう提案する。当然、1人で探すものだと思っていたイルマとモクローは目を瞬かせ、リコは目を見開いた。

 

「えーと…何でですか?」

「いや、お前はキマワリ集めは経験がないだろ?私はジムチャレンジでキマワリ集めを経験しているし、二人で探した方が効率が良いだろう?」

「う、うーん…?」

 

 アメリの言う通り、イルマはキマワリ集めどころかジムチャレンジ燃したことがない。ならば経験者であるアメリから教えてもらった方がいいかもしれないが、こう言うのは手分けしてやった方が効率が良い気がするし、同じくジムチャレンジの経験がないロイだって1人で探しているのだから、イルマも1人で探した方が良いのではないかと思う。

 そんな風にイルマが悩んでいると、突如イルマとアメリの間に何者かが割って入った。

 

「ダ、ダメです!!」

「ッ!?」

「リ、リコ…?」

 

 割り込んできたのは、リコだった。

 イルマとアメリは手を瞬かせる。

 

「「……」」

「……え?何、この空気?」

「もふぅ」

 

 二人がイルマを挟んで向かい合う。何故か周辺の気温が少し下がったような気がして、イルマは身震いする。モクローはイルマの肩から避難し、ニャオハとグレンアルマの元に着地する。

 

「…アメリ、イルマは新米だから、1人で行った方が私達が足手まといにならなくて良いんじゃないかな?」

「気を遣わせて悪いな。だが、私はイルマが足手まといになるとは思っていないぞ。それに、久々に会えたのだから話もしたいんだ」

 

 言葉とは裏腹に、向かい合う2人は険しい表情威圧的な雰囲気を放っている。

 二人が攻撃的な理由は全く分からないが、このままでは不味いことを察したイルマは慌てて二人の間に割って入った。

 

「ふ、二人とも落ち着いて…ロイくんとネモさんが1人で行ったんだから、僕も1人でキマワリを探しに行くから!」

「…イルマがそう言うなら……」

「仕方ないな…」

 

 そう言われて2人は引き下がった。イルマと一緒に行きたいのは本心からだが、イルマの言い分も理解できるし、本人が1人で良いと言っているのだ。迷惑はかけられない。

 

 そうして、ロイとネモに遅れて3人もキマワリを探すために、別々の方向に向けて歩き出した。

 

(馬が合わなかったのかぁ、あの二人……)

 

 折角自分の仲の良い友達が顔を合わせることが出来たのだから、仲良くなって欲しいと思っていたイルマは、そうならなかった事に心の中で溜め息を吐きながらも、思考を切り替えてキマワリ集めに集中することにした。なお、自分こそが2人がギスギスしていた事の原因である事に気付いていない。もしもイルマの肩に乗っているモクローが心を読む能力があればイルマの頭を叩いていただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 捜索を開始して直ぐにキマワリを2体見つけ出したリコは、キマワリを後ろに連れて行きながらニャオハと共にキマワリを探す。

 

(ハァー…どうしちゃったんだろう、私……)

「ニャ~?」

 

 キマワリを探しながら、リコは心の中で溜め息を吐いた。そんなリコの様子に、隣を歩いていたニャオハは訝しげな表情でリコの顔を見上げる。

 ついさっきのアメリへの接し方。普段の自分ならば考えられない態度だ。一度冷静になってみると、ほぼ初対面の相手にあんなに威圧的な態度を取った自分が恥ずかしくなってくる。まぁ、相手も似たような態度で応えてきたが。

 

(イルマの幼馴染みかぁ…)

 

 1つだけ年上とは思えないほどに背が高く、綺麗に整った顔立ちにスタイルも抜群で堂々としていた、色々な意味で自分とは真逆の女性。

 イルマとは長い付き合いだが、自分以外にも女友達がいたなんて初めて知った。イルマも会える機会が少なかったとは言っていたが、それでも互いに仲が良さそうで、コルサのアトリエの前でアメリを紹介していた時のイルマの顔は、彼女と会えていた事を喜んでいた風だった。

 

(アメリもきっと嬉しかっただろうな。……でも、幼馴染みに会えて嬉しいだけじゃないような気がする……)

 

 女は右脳と左脳を同時に働かせることが出来るため、男性に比べて観察力に優れている。故にリコは何となく、アトリエのソファーに座っていたアメリが、隣に座っていたイルマにチラチラと向けている熱っぽい視線に気が付いていた。

 

(何でだろう?イルマが誰かと仲良くしてるのを見るとモヤモヤするのは……)

 

 昔はどうとも思わなかったのに、何時からかリコは、イルマが誰か(特に女性)と仲良くしてるのを見る度にイライラするようになっていた。何故こんな風になったのか、色々と頭を回転させてみるが、やはり府に落ちる様な答えは出てこなかったので、リコはこの事について考えるのを止めた。

 そもそも、自分が今やるべきなのは心のモヤモヤを晴らすのではなく、コルサを笑顔にするためにキマワリを沢山集めることだ。

 

「……兎に角、今はもっとキマワリを探そう、ニャオハ!」

「…ニャオハ!」

 

 先程までのリコの様子に疑問を持っていたニャオハは、リコの言葉に笑顔で頷いた。

 そして二人は2体のキマワリを連れて、更に沢山のキマワリを探し出すために小走りに駆け出した。

 

 




本当は(改編するところ少ないから)コルサとロイのバトルまで書きたかったのですが、時間が足りなかったので区切ります。

今回登場したアメリは、入間くん側のヒロインで作者の推しキャラなので、他のキャラより出番増やしたいとは思っていますが、パルデア編が終わったら出番なくなりそうなのでかなり悩んでいます。
取り敢えず今回はキャラ紹介を書いてみました。


・キャラクター紹介

【アメリ】 CV.早見沙織
パルデア地方出身のイルマの幼馴染み。家庭の事情でイルマとは月に一度くらいしか合うことが出来なかった為、リコと面識はない。
イルマ達とは1つ年上で、170㎝越えの高身長と抜群のスタイルを持つ美女。厳格な性格だが、実は思い込みの激しい夢見がちな乙女。幼い頃よりイルマに恋心を抱いているが、恥ずかしくて言えない。
イルマとは違いパルデアのオレンジアカデミーに入学し、驚異のスピードでジムチャレンジを制覇してチャンピオンランクのトレーナーとなった凄腕のトレーナー。ネモからは永遠のライバルと認識されている。その後オレンジアカデミーの生徒会副会長に就任したが、毎日ネモにバトルを挑まれるのが最近の悩み。
パートナーはグレンアルマ(♀)。


気が向いたら過去編とか書いてみようかなと思います。


感想、評価お待ちしております。

パルデア編の次に行うキタカミ編で、ゼイユとスグリを登場させますか?

  • させる
  • させない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。