魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター   作:MTHR

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私は攻略本とかを見ないで、ストーリーそっちのけでポケモンのレベルアップやゲットに何時間も熱中してしまうタイプなので、『碧の円盤』のストーリークリアに結構時間がかかりました。

タイトルの元ネタは『渡る世間は鬼ばかり』のつもりですが、自分でも語呂が悪いな思っています。何か良いタイトルが思い浮かんだら編集するかもしれません。
今回の話を書いた作者の脳内は、『煩悩→60% 原作→40%』な感じで書いたので、最初の辺りが完全にアニポケでも魔入間でもない感じの話になっています(今更な気もしますが)。どうかご了承下さい。


17話 渡る樹海は修羅場ばかり

 コルサから黒いレックウザと森のオリーヴァの情報を手に入れたイルマ達3人は一度船に戻り、その情報をライジングボルテッカーズの面々と共有し、翌日にイルマ、リコ、ロイ、モリーのメンバーに、オリーヴァの調査に向かうアメリを交えてその森へ調査をしに行くこととなった。

 

 リコがドットをぐるみんの大ファンだと勘違いしたり、モリーが実家と電話をしていたり、晴れてバチコの弟子となったイルマがバチコにパシられたりと色々あったが、イルマからの連絡を貰ったアメリが船までやってきた事で、一同はオリーヴァの森へ向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

「落雷で森が火事になったって事は聞いてたけど……」

「酷いね……」

「うん、これじゃあ剥げ山だよ……」

「この時期は空気が乾燥してるからね…」

「ポケモン達も、この辺りに住めなくなって全員逃げ出してしまっている」

 

 そうして一行はオリーヴァの森へとたどり着いたのだが、その森の有り様にイルマガ、リコ、ロイの3人は思わずといった風に呟いた。

 森の入り口は、見るも無惨な焼け野原だったのだ。本来なら草木が生い茂っていたであろう大地は真っ黒に焼き焦げ、消し炭になった木々があちこちに倒れている。だが焼け野原の丘の向こう側の方では、うっすらとだが緑が生い茂っているのが見える。

 アメリはその丘の方を指差しながら口を開いた。

 

「この先の丘の向こうに、無事だった森がある。件のオリーヴァもそこにいる」

「よし、まずはそこに向かいましょう」

 

 そうして、一行は森を目指して焼け野原を進んでいく。

 360°どこを向いても見えるのは焼き焦げた大地と木々ばかりで、オリーヴァどころか野生のポケモンのポの字も見当たらず、森を目指しながらキョロキョロと辺りを見渡しながら、リコ達はポツリと呟いた。

 

「本当にポケモンが全然いない…」

「仕方ないよ。森がこんなになっちゃったんだし…」

「可愛そう……」

 

 事前にアメリから聞かされていたとはいえ、見れば見る程酷く荒れ果てたの森だった野原と、それなりに歩いてもポケモンの影も形も見えない有り様に、イルマ達は心を痛める。

 そこで、ラッキーを連れたモリーが口を開いた。

 

「でも、雨が降れば、草木はまた芽吹く筈。森が甦れば、ポケモン達も帰ってくるさ」

「雨かぁ……アメリさん、雨を降らせる“あまごい”って言う技がありますよね?アメリさんの手持ちに使えるポケモンいませんか?」

「…スマン。私の手持ちには、天候を変える技を持つポケモンがいないんだ」

「いえ、こちらこそ無理言ってすみません…」

 

 そう言って頭を下げるイルマに、アメリは「お前が悪いんじゃないさ」と言って宥める。そんな様子を横目で見ながら、リコはニャオハを抱き抱えながら空を見上げた。

 

「早く雨が降ると良いな……」

「そうだね……」

「あぁ!」

 

 そこでロイが声をあげ、一同は小走りにロイの元に集まる。そこで見えたのは、山火事の被害を受けなかった森が一面に広がっていた。

 

 そうしてリコ達は森に足を踏み入れた。

 自然に溢れる森を見たからなのか、それともレックウザに対する期待なのか、先程から上機嫌なロイがホゲータと共に小走りに駆け出した。

 

「先に偵察行ってくる!行こうホゲータ!」

「気を付けて!」

「大丈夫!森には慣れてる!」

「迷子になったら危ないよー!」

「迷ったら、あの大きな木で待ち合わせ!それじゃあいってきまーーす!」

 

 そう言ってロイが指差した先にあったのは、回りにある木の2~3倍はありそうな木の先端だった。イルマ達がその木に視線を向けるや否や、ロイとホゲータは森の奥に向かって走り去って行った。

 

「元気な奴だな…」

「いつもあんな感じです。でも、ロイくん大丈夫かなぁ…?」

スマホロトム(コレ)があれば大丈夫でしょ。連絡もとれるし、地図も見れるから」

「そっか、なんか心配で…」

「…ウチは心配性ばっかね」

 

 モリーがそう言うと、イルマはリコと共に苦笑いしながら森のオリーヴァの事を知るアメリに話し掛けた。

 

「それで、アメリさん。ヌシのオリーヴァがいる場所に心当たりはありませんかね?」

「うーむ…。この辺りの森にいるという目撃証言は多いんだが、あちこち移動しているのか場所は特定できないんだ」

「なら、別れて探した方が効率が良いですね」

 

 イルマの提案に、リコとモリーも頷いた。これだけ広い森の中で一体のポケモンを探すなど、校庭でアリを探すのに等しい。巨大な体躯を持つヌシポケモンという特徴があれど、やはり探すなら数を活かした方が良い。

 とはいえ目的は通常よりも強い力を持つヌシポケモン。アメリの情報でオリーヴァが荒れていると言われているので、少なくとも二人一組で向かう方が良い。ロイとホゲータはそれを提案する前に行ってしまったが、あのコンビなら恐らく大丈夫だろうし、何かあれば連絡をしてくるだろう。

 

「それなら、イルマと私が…」

「イルマは私と一緒に……」

「「「……ん?」」

 

 そこでリコとアメリとイルマの声が重なる。何故だが周りの気温が下がり、淀んだ空気が発生する。

 イルマは昨日ボウルタウンで起きた重苦しい空気の再来に目を瞬かせ、モクローとニャオハはモリーとラッキーとグレンアルマがいる場所まで下がった。

 イルマ以外のその場にいた全員が、この状況を悟った。

 即ち、修羅場であると。

 

「わ、私とイルマの連携なら、どんなポケモンが来ても大丈夫だよ!」

「イルマから聞かされているぞ。お前とニャオハは新米ながらバトルの才能があるとな。それならイルマとペアを組む必要は無いのではないか?新米であるイルマは私が守ってやるからな」

「い、イルマは私よりもずっと凄いトレーナーだよ!それにアメリはイルマと同じでテラスタルオーブを持ってるんだし、そう言う風に分けた方が均等に…」

「テラスタルはあくまでも戦略の一つであって、トレーナーの強さを証明するものではないぞ?」

 

 両者一歩も譲らずにイルマとペアになるための舌戦を繰り広げる。

 イルマ(原因)はどうしたものかとオロオロし、モクローとニャオハ、そしてグレンアルマは呆れ顔でその光景を傍観し、モリーに至っては「まさか修羅場に巻き込まれるなんて…」と頭に手を当てて呟いた。

 

 結局、痺れを切らしたモリーが無理矢理話に割り込むまで、二人の舌戦は続くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「見当たりませんね、オリーヴァ……」

「そう簡単に見つかるものではないさ」

 

 青々とした木々が立ち並ぶ森の道を、白いスーツと帽子を身に付けたイルマと改造制服姿のアメリが辺りを見回しながら進んでいく。

 激しい口論に痺れを切らしたモリーの提案でじゃんけん勝負でペアを決めることに収まり、結果としてアメリがイルマとペアを組んでオリーヴァを探すこととなった。別行動する時、モリーと同行することになったリコは不満げだったが、じゃんけんに負けたなら仕方ないと納得して貰った。

 

(なんで2人は仲良くできないんだろ…犬猿の仲っていうのなのかな……)

「もっふふもふ」

「アダッ、何するのモクロー……」

「もーふぅ」

 

 一度、折衷案でリコとアメリをペアにして自分はモリーと一緒に行くと提案したイルマだったが、それはバッサリと断られてしまった。

 最優先事項は森のオリーヴァだが、やはり昨日険悪な様子だったリコとアメリに仲良くしてほしいと思っていたので、イルマは誰に聞こえない程小さく溜め息を吐く、その瞬間帽子の上に乗るモクローに頭を叩かれた。思わず帽子の上のモクローにジト目を向けるが、モクローはどこか吹く風だ。

 女子2人の仲が悪い理由や叩かれた理由が分からずに思わずガリガリと後頭部をかきながら顔を前に向けたイルマは、ふと視界の端にあるものが入り込んだ。

 

「……あれ?」

「イルマ、どうした?」

 

 イルマは小走りに駆け出し、アメリも後からそれに続く。

 そしてイルマとアメリは、先程の場所から6m程はなれた場所に生えていた木の後ろを覗き込んだ。

 そこには、服の裾を引きずった幼児のような外観で、おかっぱ頭のような青い頭部が目を隠し、横から見るとハートマークにも見える角を携えたポケモンが、横たわっていた。

 

「このポケモンって確か……ロトム」

 

『ラルトス。きもちポケモン。エスパー・フェアリータイプ。人の感情を頭の赤いツノで敏感にキャッチする。敵意を感じると物陰に隠れる』

 

「ラルトス…でも色が違う……」

「色違いのようだな。だが珍しいな…ラルトス自体、滅多に人前に出てこないというのに」

「そうなんですか……って、よく見たら怪我してる!?」

 

 思わずマジマジとその色違いのラルトスの姿を見つめていると、イルマはそのラルトスが身体のあちこちに傷を負っていることに気付き、慌て始めるが、直ぐにスマホロトムを取り出してモリーに連絡をいれようとした。ポケモンの治療なんてしたこと無いので、ここは医者であるモリーを呼ぶか合流してラルトスを治して貰うしかない。

 しかし、それは叶わなかった。

 

『圏外です』

 

「ええっ!?さっきまで使えた筈なのに……」

「落ち着け、イルマ。見たところ大した怪我ではない。ここは…イエッサン」

 

ポンッ!

 

「イエッサ!」

 

 呼び鈴のような鳴き声とともにアメリが取り出したモンスターボールから出てきたのは、ツインテールのような下向きの角が特徴的な【イエッサン♀】だ。お辞儀のような仕草をしたあと、イエッサンは倒れるラルトスの前で膝をついた。

 

「イエッサン…アメリさんがゲットしたんですね」

「あぁ、私の手持ちのヒーラーだ。イエッサン、ラルトスに“いやしのはどう”だ」

「イエッ」

 

 アメリの指示に頷くと、イエッサンは両手から光を放ち、その光がラルトスを包み込む。すると、みるみるとラルトスの身体の傷が治癒されていった。

 

「おぉ、治った……」

「傷を癒しただけだ。動けないほど衰弱しているようならモリーさんにみせるかポケモンセンターに連れて行った方がいい」

「ラル……ラルッ!?」

 

 二人がそう話していると、ラルトスが弱々しい声を上げた。どうやら傷が癒されたことで目を覚ましたらしい。

 目を覚ましたラルトスは目の前にいるイルマとアメリ(にんげんたち)の姿を見上げると、途端に怯えたように声を上げ、直ぐ様立ち上がって木の影に隠れる。

 

「あぁっ、まって!僕達は君を苛めに来たんじゃないよ!」

「ラ、ラル……」

 

 イルマが必死に説得し、ラルトスは恐る恐る木の影から顔を覗かせる。

 図鑑にもあった通りラルトスは他人の気持ちを感じとる事が出来るポケモンだ。恐らく、二人に敵意が無いと感じ取ったのだろうが、やはり見慣れない人間が怖いのだろう。

 すると、ラルトスのお腹からクゥ~と可愛らしい音を立て、ラルトスは顔を赤くして両手でお腹を抑えた。

 

「アハハ、お腹空いてるんだね。コレ、食べる?」

「…ラル」

 

 イルマは苦笑いしながら、ベルトポーチからお菓子を取り出してそれを差し出す。イルマが休憩の時のために持ってきた物だ。

 ラルトスはしばらくそのお菓子を見つめていると、やがておずおずとそれを受け取り、一口齧る。モグモグと咀嚼して飲み込むと、笑顔を浮かべてそれをパクパクと勢いよく食べ始めた。

 

「良かった、気に入ったみたい…。モクローとグレンアルマもどう?」

「もふぅ」

「グレン」

 

 ベルトポーチのお菓子をラルトスの目の前の地面に敷いたハンカチの上に置き、ハンカチを囲うようにラルトスのもとに集まって共にお菓子を食べ始めるモクローとグレンアルマ。

 イルマはその光景に笑みを浮かべると、隣でイエッサンをボールに戻したアメリに話し掛けた。

 

「……アメリさん、どうしてラルトスは倒れていたんでしょうか?」

「恐らく、山火事から逃げてきた時に怪我したのだろう。もしくは、森にはいってから野生のポケモンに襲われたか……」

「うーん……」

 

 そんな風に話していると、背後の茂みから『ガサガサッ』という音が聞こえてきて、2人はそこに視線を向ける。

 すると、茂みを掻き分けて2体のミニーブが顔を出した。

 

「わぁ、ミニーブだ!」

「ミニッ!?ミィ!!」

「わぶっ!?」

「い、イルマ!?」

 

 ミニーブ達はイルマの声に驚いたのか、一体のミニーブが頭の実からオイルを噴き出し、そのオイルがイルマの顔面にかかった。ミニーブのオイルは、飛び上がる程の渋さと強すぎる苦味を持ったオイルで、それが口に入ってしまったイルマは思わず目を瞑って後方に飛び上がり、バランスを崩してしまう。それに気付いたアメリは、慌ててイルマを受け止めようと飛び出した。そして…

 

ドテーーンッ!!

 

 アメリが仰向けに倒れ、その上にドミノのようにイルマが倒れる。

 イルマは顔にかかったオイルをベルトポーチから取り出したハンカチで顔を拭くと、未だに口の中に残る渋くて苦いオイルに顔をしかめながらも起き上がろうとする。

 

「イッタタ……すみません、アメリs…」

 

もにゅん♡

 

「んあっ!?///」

「えっ?」

 

 起き上がろうとして片手に力を入れようとすると、その手に何か柔らかくて弾力のある感触がすると同時に、艶めかしい声が耳に入る。

 イルマはパチクリと眼を瞬かせてその腕に視線を向けると、イルマの右腕が、下敷きとなったアメリの豊満な胸に押し当ててしまっていたのだ。

 

 その瞬間、イルマは顔を一瞬で真っ赤に沸騰させ、反発する磁石のようにアメリから飛び退き、土下座せんばかりの勢いで頭を下げた。

 

「すっ、すみませんアメリさん!その、故意じゃなくて…そのっ、あのっ…兎に角すみませんでした!!」

「だッ、だだ大丈夫だ!分かってるから…大丈夫…////」

 

 絶叫するような声量で謝罪するイルマに、アメリは顔を真っ赤にしながら胸を両腕で抑え、対称的に物凄く小さな声でそう答えた。

 

「ラルゥ…?」

「もっふふぅ」

「アル……」

 

 お菓子に夢中でそれに気付かなかったラルトスは2人の様子に首をかしげ、パートナーの様子を見ていたモクローが「気にするな」というように声をかけた。グレンアルマは心配そうにアメリを眺めていたが、一触即発の空気ではないようなので、介入することはしなかった。

 

 すると、森の奥の方から凄まじい轟音と共に、何かのポケモンの咆哮が聞こえてくる。

 イルマとアメリがバッと音が聞こえてきた方向に目を向けると、森の奥の方で、周りの木々よりもデカイ緑色のポケモンの姿が見えた。しかもあの場所、イルマ達の記憶が正しければロイが迷った時の待ち合わせ場所としていた場所だ。

 

「あれは…!」

「森のオリーヴァだ…!」

「えぇっ、あれが!?」

 

 アメリの言葉にイルマはオリーヴァを見る。通常のオリーヴァは1.4mだが、あのオリーヴァは目算でも軽く10mはありそうである。デカイとは聞いていたがこれ程とは思わなかった。

 

「って、眺めてる場合じゃない!早く行かないと!」

「あぁ、そうだな。グレンアルマ、行くぞ!」

「行こうモクロー!じゃあねラルトス!」

「ラル…!」

 

 元々あのオリーヴァに用があって森にやって来たイルマとアメリは各々のパートナーに呼び掛け、イルマがラルトスにそう声かけると、オリーヴァがいる方に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 じゃんけんに負け、モリーとペアになって行動することになったリコ。納得いかない部分もあるが、真剣勝負に負けたなら仕方ないと自分を納得させ、ヌシのオリーヴァを探しに行った。休憩で森の中で生きるポケモンの姿に目を輝かせ、モリーの過去の話を聞いたりしたあと、ニャオハ木の実を探して迷子になってしまっていた。

 通話しようにも圏外で、ロイが指定した大木に向かったリコは、その道中に山火事で荒れ果てた道に衰弱した【ウパー(パルデアの姿)】を見つけ、オレンの実を食べさせて回復させようとしたが、突如現れた【サボネア】に襲いかかられた。リコが驚いていると、続くように現れた【キノココ】が胞子を放ってきて、リコはニャオハに指示を出して“このは”で迎撃しているうちに、【ハネッコ】がパルデアウパーを抱えて飛び去ってしまった。

 リコは慌ててハネッコを追いかけると、辿り着いたのは件の大木の地点であり、どうやらサボネア達はリコがパルデアウパーに危害を加えようとしているのだと勘違いしているらしく、途中で現れたモリーがウパーを治療するなかで、突如サボネア達は大木に向かって鳴き出した。

 その時、待ち合わせの目印としていた大木がゴゴゴ…と音を立てて動き出したのだ。

 

「木じゃない…これは……大きなポケモン…!」

「嘘でしょ!?」

 

 樹冠だと思っていた箇所が広がり、そこから白い顔に赤い目を持つポケモンの顔が現れた。そして、樹冠だと思っていた腕が広げられたことで、そのポケモンの胸の辺りに引っ付いていたロイと、リュックの中のホゲータを見て、リコは目を向いた。

 

「ロイ!?」

 

 リコが声をあげると同時に、そのポケモンは大きく身体を動かし、その際の揺れでロイとホゲータは振り落とされてしまったが、ロイは空中で体勢を整えて華麗に着地し、それが出来なかったホゲータは頭から地面に突っ込んだ。

 リコはニャオハと共に、ホゲータを引っこ抜こうとするロイの元に駆け寄る。

 

「ロイ!あれってポケモンだよね…?大きすぎるけど…」

「見て!」

 

 ロイが指差した方を見てみると、そのポケモンの首元にスチームパンクチックな見た目のモンスターボールが首飾りのように下げられているのが見えた。

 

「古のモンスターボールがもう一つ!」

「それじゃあ、あれがルシアスのポケモン…!?」

「間違いない、コイツなんだ!!」

 

 二人がそう言うと、【オリーヴァ】は両腕についたオリーブの実を動かし、オイルを発射する。その規格外な体躯故に放出されるオイルの量も桁が違い、オイルはまるでビームのようにリコとロイな襲い掛かった。

 直撃しては人溜まりもないと二人は踵を返して走りだし、そのオイルを逃げながら茂みに飛び込むと、途端にオイルの放出がピタリと止んだ。

 

「攻撃してこない…!?」

「!この子達がいるからだ…!でも…」

 

 リコが目の前の茂みの影に隠れて縮こまっているミニーブを見てそう呟いて、すぐにオリーヴァを見上げる。

 オリーヴァは鳴き声のような音を発しながら、茂みの中に隠れた二人をギロリと睨み付ける。その眼には激しい怒りの感情が露になっており、図鑑説明のような慈愛の姿など欠片を見受けられない。

 

「こっち狙ってる~!」

 

 リコと共に顔を青くしたロイがそう言うと同時に、オリーヴァは葉が生い茂る腕を振りかぶった。まるで大木や柱と見間違うほど巨大なそれを、オリーヴァとリコとロイに向けて叩きつけようとする。

 慌てて二人が茂みから走り出そうとした瞬間、凛とした声が響き渡った。

 

「グレンアルマ、“サイコキネシス”!!」

 

「と、止まった…!?」

 

 その瞬間、オリーヴァの身体がマゼンタ色の光に包まれ、オリーヴァの動きがピタリと止まった。

 目を見開くリコとロイに、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「二人とも~!大丈夫!?」

「急げ!グレンアルマでもそんなに長く止めていられんぞ!」

 

 二人がその声がした方に目を向けると、そこにはいつの間にかやって来ていたイルマとアメリが、自分達に向かって大声で呼び掛けている姿だった。二人の前にはオリーヴァに立ち向かうように立つモクローとグレンアルマの姿があり、グレンアルマは目を青く光らせながら両腕を突き出している。

 リコとロイはパートナーと共に飛び出し、全力疾走する。そしてリコとロイ、イルマとアメリは、ラッキーが抱えたウパーの治療を続けるモリーの元に集まった。

 

「モリー!逃げないと!」

「早く!!」

「四人は先に逃げて。私は治療を続ける」

「えぇっ!?そんな……」

「モリー、私達が何とかする!」

「ちょっ!?リコ、あれと戦うの!?」

 

 既にグレンアルマの“サイコキネシス”による拘束が解け、オリーヴァはズシンズシンと音を立てながら近づいてきている。いかにグレンアルマでも、巨大すぎて超時間止められなかったのだ。

 あの規格外のサイズのポケモンに勝てるビジョンが思い浮かばずに動揺するイルマとロイに、一人冷静なアメリに向け、リコは決然とした表情で声を上げた。

 

「勝てなくても、時間は稼げる!四人なら!」

「…分かった!」

「うん!」

「まぁ、このままにしてはおけんな」

「宜しく!」

 

 モリーがウパーを治療しながらそう言うと、四人はモリーを守るように立ち、ポケモン達も立ち向かうようにオリーヴァの前に立ちはだかった。

 

「僕に任せて!くさタイプのポケモンには、ホゲータが有利!行くぞホゲータ、“ひの…」

「ダメェッ!!」

「うわっ!?何…?」

「こんな森の中でほのお技を使ったら、辺りの木に燃え移ってここまで山火事になっちゃうよ!」

「あっ…!」

 

 リコとイルマの言葉で、ロイは危うく森を火事にしてしまう所だったことに気付いた。

 

「ニャオハ、オリーヴァの気を引いて!“でんこうせっか”!!」

「ニャーーーッ!!」

 

 ニャオハは目にも止まらぬスピードで走り出し、オリーヴァの足元を走り回る。

 オリーヴァはモリー達から足元のニャオハに意識を向けると、腕に付いたオリーブの実から再びオイルを光線のように放った。ニャオハは右に左にとオイルをかわして走って行くが、矢継ぎ早に放たれるオイルにニャオハとリコは焦りを見せる。

 

「グレンアルマ、“ワイドガード”!」

「グレンッ!」

 

 アメリの指示を受けたグレンアルマが両手を突きだして力を込めると、高速で走るニャオハの周りに光の障壁が現れ、振りかかるオイルを弾いた。

 

「アメリ…ありがとう!」

「気にするな。グレンアルマ、モリーさんから離れた場所で“はどうだん”だ!」

 

 リコがアメリに礼を言い、アメリはそれに短く答えると、すかさずグレンアルマに指示を飛ばした。

 グレンアルマはアメリの前から走り出し、猛スピードでオリーヴァの後ろにたどり着くと、グレンアルマは右手に波動の力を込めた青い球体を発生させると、飛び上がってオリーヴァの背中にその光球を叩き付けた。

 

「アルッ!」

「ーーーッ!!?」

 

 ノーマルタイプを持つオリーヴァに、かくとうタイプの技である“はどうだん”は効果抜群である。直撃した“はどうだん”が背中で爆発を起こし、オリーヴァは悲鳴にも聞こえる声を上げた。

 しかし戦闘不能になるには程遠く、オリーヴァは直ぐに体勢を戻して地面に着地したグレンアルマをギロリと睨み付けた。

 

「ニャオハ、もう一回“でんこうせっか”!」

「ニャーーーッ!!」

 

 そこでリコが指示を出し、ニャオハは再び猛スピードで走り出してオリーヴァの身体を駆け上がり、肩や腹を走り抜けていく。

 流石に鬱陶しいと思ったのか、オリーヴァは両腕でニャオハを振り払おうとする。

 

「よし、僕達も…ホゲータ、“じだんだ”だ!」

「ホゲホゲホゲ……ホゲッ!!」

 

 ホゲータが地面をドシンドシンと力強く踏み鳴らすと、地面が隆起し、それがオリーヴァの足元まで届き、オリーヴァは体勢を崩す。

 

「今だ!モクロー、“エアカッター”!!」

「もー…ふぅっ!!」

 

 その隙を見逃さずにイルマは声を上げ、オリーヴァの顔の前まで飛んだモクローは翼を振るう。風の刃が×字に飛び、オリーヴァに直撃した。

 効果抜群であるひこうタイプの技に加え、急所に当たりやすい“エアカッター”は見事オリーヴァの急所に命中した事で、オリーヴァは大きく体勢を崩し、前のめりに倒れこんだ。

 

ズドォオオオオンッ!!

 

 オリーヴァの巨体が倒れた際に砂煙と衝撃波が辺りに広がり、イルマ達の前に立ったグレンアルマが“ワイドガード”でその衝撃波と風を防ぐ。

 

「くっ…お前達、大丈夫か?」

「だ、大丈夫です…」

「私も…」

「僕も…ありがとう、グレンアルマ」

 

 グレンアルマは「気にするな」というようにロイの方を見て頷く。ニャオハ達ポケモンも咄嗟にグレンアルマの後ろに隠れたことで無事なようだ。

 その時、前から何か音がして全員はオリーヴァの方を向くと、全員目を見開いた。

 

「!まだ立つのか……」

 

 そう、先程倒れたオリーヴァが、両腕を地面につけて立ち上がろうとしてたのだ。流石に効果抜群の“はどうだん”と急所に当たった“エアカッター”を喰らっては無傷とはいかずやや小さな傷が見られるが、バトルを続けるには全く問題ない様子のオリーヴァは、激しい怒りを込めた眼でギロリと四人とパートナー達を睨み付ける。

 ロイとリコがもうダメだと顔を青くし、イルマとアメリはこうなったら奥の手だとテラスタルオーブを取り出した、その時だった。

 

「ウ…パー…」

 

 弱々しく小さな声がし、イルマ達もモクロー達も、オリーヴァもその声がした方向に顔を向けた。

 

「ウパ……」

「ウパー…!」

 

 そこには、頭と尻尾に包帯を巻いて、右側の腹と頬に湿布を貼ったパルデアウパーが、ヨロヨロと歩きながらオリーヴァに向かって弱々しい声で話しかけている姿だった。

 パルデアウパーはオリーヴァの数メートル手前で立ち止まり、語り掛けるようにオリーヴァに向かって話しかけ、オリーヴァが訝しげな顔をすると、ウパーの横から別のポケモンの声がした。

 

「ラル!ラルゥ!」

「あっ、さっきのラルトス…」

 

 そう、そこには先程アメリとイルマが助けた、色違いのラルトスがいたのだ。ラルトスはウパーの隣に立ち、ウパーと共に必死にとオリーヴァに語り掛ける。二人の説得を聞き、だんだんオリーヴァの目付きが柔らかくなっていくと、ラッキーを連れたモリーが小走りにオリーヴァの前に立った。

 

「貴方も私も、この子達を心配する気持ちは同じ!!」

 

 モリーの言葉に、オリーヴァは表情を変え、地面につけていた巨大な腕をゆっくりと上げると、その腕をモリーに近付けた。

 攻撃してくるのかとラッキーがモリーを守るように前に立つが、モリーは「大丈夫」といってラッキーを下がらせると、コツンとオリーヴァの腕に拳を当てた。

 

「ごめんね…そしてありがとう…」

 

 そう語るモリーを見て頷いたオリーヴァの顔はとても穏やかだった。

 

「通じたんだ…!モリーがウパーを助けようとしたって……」

 

 パルデアウパーとラルトスは差し出されたオリーヴァの巨大な手にすり寄り、サボネア達がパルデアウパーの集まり、回復した彼を喜ぶ。そんな彼等を、オリーヴァとイルマ達は笑顔で眺めていた。

 

「もう大丈夫ね」

「良かった…」

「うん……」

 

 森の奥へと去っていくウパー達を見送ると、突如オリーヴァが鳴き声を上げた。それは先程のように怒っている風ではなさそうだが、喜んでいる様子でもない。

 

「どうしたの…?」

 

 ニャオハを抱き抱えたリコがそう声をかける。オリーヴァは依然として声を上げるだけ。

 ポケモンの言葉を理解することは出来ないが、リコはオリーヴァの声と表情から何かを感じ取った。

 

「何か…伝えたいことがあるみたい……」

 

 リコがそう呟くと、オリーヴァはその巨大な両腕でリコとロイ、ニャオハとホゲータを掴み、ゆっくりと持ち上げた。イルマ達は驚愕し、リコとロイは落ちないようにオリーヴァの腕にしがみつく。

 

 オリーヴァは二人を頭の上まで持っていくと身体の向きを変える。二人と二匹は、恐る恐る立ち上がりながら目の前に広がる光景を見た。

 オリーヴァの周りには緑に生い茂る森が広がっている。しかし、よく見ればここから数キロほど離れた場所が、山火事による影響で荒野となり果てている光景があった。

 

「森があんなに傷付いてたなんて…」

「酷いね……」

 

 山火事の被害が、自分達の予想以上のものであったと知り、リコとロイは悲しげに呟いた。

 その森の様子を悲しむかのように、オリーヴァの声が森の中に響き渡っていた。

 

 




オリーヴァの鳴き声をどう書けば良いのか分からなかったので台詞を書けませんでした…。

感想、評価お待ちしております。

パルデア編の次に行うキタカミ編で、ゼイユとスグリを登場させますか?

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