魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター 作:MTHR
今回のリコさんは『かぐや様は告らせたい』のヒロイン四宮かぐやをイメージして書いていますので、若干キャラ崩壊している描写があります(今更ですが)。今回も頭を空にして書いています。
今回が今年度最後の投稿となります。
森のヌシにして、六英雄の一体であるオリーヴァを誤解を解いた後、オリーヴァの巨大な腕に持ち上げられて、荒れ果てた森の有り様を見せられたリコとロイ。先程オリーヴァが伝えたかったことは、恐らくこの森の事だったのだろう。
オリーヴァがゆっくりとリコとロイを下ろすと、イルマ達は二人のもとに駆け寄った。
「二人とも、オリーヴァの上で何してたの?」
「この森、奥も焼けてた」
「思ったより被害が大きいよ」
悲しげに鳴くオリーヴァを見上げ、モリーが険しい表情で呟いた。
「森に十分な緑が戻ってこない限り、あのウパーみたいに、自分の力では生きていけないポケモン達が現れてしまう…」
「そんな……」
「オリーヴァは弱った彼等に養分を分け与えて、治療もしていたんだ」
「森のお医者さんみたい…」
「お医者さんか……そうだね。その力も、森がこんなになってしまっては……」
(このままじゃオリーヴァも、森のポケモン達も可哀そう。どうすれば……)
森とポケモン達の惨状に、リコは暗い表情をしながらも必死にどうするべきか思考をフル回転させる。
そして、リコの頭にある策が思い浮かんだ。
「私達で、森を作ろう!」
リコの提案に、その場にいた全員が目を見開いた。
「グレンアルマ、“サイコキネシス”!」
指示を受けたグレンアルマが両腕に力を込めると、木の上に成っていたオレンの実が独りでに地面にボトボトと落ちた。
アメリとグレンアルマはその木の実を拾い集め、同じく木の実を集めていたリコ達と合流して、一ヶ所に木の実を集めた。
「成る程、これを植えるんだな!」
森を作るなんて言うからどうするつもりかと思っていたが、確かにこの方法なら時間はかなりかかるだろうが、確実に森は甦るだろう。
『圏外です』
すると、モリーの持っているスマホロトムからそんな音声が聞こえた。
「……やっぱ電波は入らないか」
「どうしたの?」
「フリード達にも、ヘルプ頼みたかったんだけど……」
「あとでまた連絡してみよう!私とモリーとアメリが木の実を集めてくるから、イルマ達は地面を耕して」
「OK!やるぞ、ホゲータ!」
「ホゲー!」
「頑張ろっか、モクロー」
「もふぅ!」
「行こう、ニャオハ!」
「ニャオハ!」
「そう言うことなら…!」
アメリは右手に3つ、左手に2つのモンスターボールを手に取ると、それを投げた。
ボールが音を立てて開くと、イエッサン♀の他に【ガブリアス】【イルカマン(マイティフォルム)】【ラランテス】【ムクホーク】といった5体のポケモンが飛び出してきた。
「おぉっ!凄い!」
「これって、皆アメリのポケモン?」
「あぁ、コイツらなら戦力になってくれるさ」
そうして、リコ達は二手に別れて森の復興作業に取り掛かった。
ホゲータが“じだんだ”で荒れた地面を耕し、モクローは“エアカッター”で炭木となった木を細かく切り刻んで行き、それや大きな石などをイルマとロイが強力して運んで取り除いていく。
帽子と肩掛けしたジャケットを脱いで袖を捲り、かなり多くの木を運んだイルマがフゥ、と息を吐いてハンカチで汗を拭っていると、足元に何かの気配を感じ、視線を下に向けた。
「ラル…」
「あっ、ラルトス。どうかしたの?」
「もふぅ~?」
「ラル……ラッ!」
そこにいたのは、先程の色違いのラルトスだった。
イルマがしゃがんでラルトスと目線を合わせてそう尋ねると、ラルトスはクルリと踵を返して後ろにあったまだモクローが刻んでいない炭木に向き直ると、両手を広げた。
すると、その炭木が青い光に包まれ、まるで重量がなくなったかのようにフワリと浮き上がる。ラルトスが腕を動かすとそれと連動するようにフワフワと炭木は移動して行き、イルマとロイが不要物を集めている場所で光が消え、炭木が積み重ねられた。
「これって“ねんりき”…。もしかして、手伝ってくれるの?」
「ラル!」
「!ありがとう!よし、もうすぐリコ達が木の実を持ってきてくれるから、一緒に頑張ろっか」
「ラルゥ!」
こうして、モクローとラルトスと共に、イルマはまだ残っている炭木の処理のために足を動かした。
一方、リコ達は各々のポケモン達と共に木の実を集めていた。ニャオハ、ラッキー、グレンアルマは勿論、アメリの手持ちである5体のポケモン達もより多くの木の実を集める為に手分けして森の木の実を収穫していた。
「もう、少し…」
リコは立派に生えた木に実っているオボンの実に手を伸ばすが、僅かに身長が足りず、伸ばした手が空を切る。ニャオハは別の木で木の実を獲っているので今は自分で獲るしかないのだが、背伸びしてもあと少し、本の数センチがどうしても届かない。
「無理をするな。ホラ」
「あっ、ありがとう…」
「気にするな」
そこで、偶然近くで木の実を集めていたアメリが代わりに木の実を木からもぎ取ってリコに手渡した。リコのお礼を言うが、190cmという高身長の彼女にとって、この程度は苦でも何でもないのだ。
リコはチラリとアメリに視線を向ける。しかし身長差故か、真横を見たリコの視界に入ってきたのは顔ではなく、オリオと同等かそれ以上はありそうな彼女の胸だった。一歳差とは思えない程、いや並の成人女性すら軽く凌駕するサイズのバストにリコは木の実を持つ手とは反対の手で自分の胸元を触って若干頬を膨らませるも、直ぐに気を取り直してアメリに声を掛けた。
「あの、アメリ。その…昨日の事やさっきの事…その、ごめんね。初対面なのにあんな態度とっちゃって……」
「……いや、私の方こそすまない。少し大人気なかった」
どうやら二人とも、先程までの攻撃的な態度を謝ろうと思っていたらしい。元々2人は礼儀正しい方なので、冷静になってから自分の対応が恥ずかしくなり、出来れば謝罪しておきたいと思っていたようだ。
取り敢えずお互いに謝罪した後、リコは自分の隣に並んでイルマ達の所まで収穫した木の実を共に運んでいるアメリに、思い切って昨日から頭の隅で気になっていたことを尋ねてみることにした。
「あの、アメリって…いつイルマと知り合ったの?」
恐らくイルマと一番付き合いが長いであろう自分でさえ、アメリという幼馴染みがいるなんて知らなかったので、リコは出来れば2人の事を聞きたいと思っていた。
別にアメリに聞かなくとも、イルマに尋ねればイルマは素直に答えてくれるのだが、イルマの口からアメリの話を聞くのは…なんか嫌だったのだ。
そんなリコを心情を察したのか、アメリはやや赤い顔で答えた。
「私がイルマと会ったのは…5年程前だな。テーブルシティに父と買い物に行っていた時、同じく買い物に来ていたイルマと角でぶつかって…」
「角?」
「いやっ!何でもない!まぁ、兎に角そこで出会ったと言うことだ!!」
そこで、アメリは無理矢理と言った風に話を切り上げた。当時を思い出したのか顔がやや赤いことにリコの視線が鋭くなるが、特に追求する事はしなかった。
すると、別の場所で木の実を集めていたニャオハが木の実を転がし、更に両腕に木の実を沢山抱えたグレンアルマやイエッサン、その他にガブリアス、イルカマン、ラランテス、ムクホークといったアメリのポケモン達が集まってきた。
山のような量の木の実をイルマ達のもとに運びながら、アメリは思出話の続きをする。
「…私とイルマの出会いはそんな所だ。最初はそこで互いに謝って別れたんだが、その直後で立ち寄った書店で再び顔を会わせてな。直ぐに共通の趣味があることを知ったんだ、それから意気投合するのに時間は掛からなかったな…」
「そう、なんだ…」
自分とイルマには、共通の趣味なんて無い。親同士が知り合いだからという理由で仲良くなった自分とは違う形でイルマと仲良くなったアメリに、リコはなんだか彼女が羨ましく思って若干表情を暗くする。
「あっ、二人ともー!木の実集め終わったのー?」
そうこう話していると、イルマ達が耕している荒れ地まで辿り着き、二人が来たことに気づいたイルマがモクローとラルトスと共に手を振り、二人は小走りにイルマ達のもとに駆け寄った。
「待たせたな、木の実集めは一通り終わったぞ。後でモリーさんが追加で木の実を持ってきてくれる」
「えっと…イルマ達の方はどう?」
「この辺にあった岩や炭木は片付けと耕すのは終わったよ。ロイくんとホゲータはあっちの方で作業してるけど、もうすぐ終わるんじゃないかな?」
「そうか。なら…ガブリアス、イルカマン、木の実を届けるついでにロイを手伝ってやれ」
「ガブ」
「イル」
ガブリアスとイルカマンはアメリの言葉にコクンと頷くと、木の実を両手で抱えたままイルマが指差した方向に向かっていった。あの2体はアメリの手持ちの中でもかなりのタフネスなので、大きな戦力になるだろう。
残ったメンバーは、集めた木の実を耕した地面に植える事となる。そこで、リコとアメリはイルマの足元にしがみついて隠れているラルトスに気が付いた。
「このラルトスって……」
「さっきのラルトスだな。ウパー達と森に戻ったのではなかったのか?」
「なんだか戻ってきたんです。それで地面を耕すのを手伝ってくれてるんですよ」
「ラル」
ラルトスはイルマの言葉に頷いた後、“ねんりき”を使ってリコとアメリが抱えていた木の実を幾つか浮かせ、フヨフヨと空を漂った後、地面にズボッと埋め込まれた。その光景にリコとアメリは「オォッ!!」と軽く拍手する。
「じゃあ、私達も頑張ろうニャオハ」
「ニャオハッ!」
「私達もやるぞ、お前達」
「グレンッ」
「イエッサ」
「ララ!」
ポケモン達にそう声を掛け、リコ達も木の実を植える作業に入る。
その時、ハプニングが起きた。
「ッ!?」
別の場所に移動しようと足を踏み出したアメリが足元にあった何かを踏みつけ、躓いたのだ。
アメリが踏んづけたのは、彼女が集めていた木の実だ。先程ラルトスが“ねんりき”で木の実を浮かした際に一つ落ちてしまい、アメリの足元に転がっていたのだ。普段の彼女なら木の実が落ちた時点で気づくだろうが、ラルトスに注目していた事と、自身の豊満な胸と腕一杯の木の実が視界を遮ってしまい、気付くことが出来ず躓いてしまったのだ。
「アメリさん!?」
1秒後には地面に顔面から激突してしまいそうなアメリを支えようと、咄嗟に前に出てアメリを受け止めようとする。
しかし、普通の男子よりも小柄なイルマが、女性の平均を上回る体躯をしたアメリを受け止めるのは無理があった。アメリの体を支えきれず、イルマは地面に尻餅をついた。
「ムグッ!?」
その時、前のめりに倒れ込んだアメリの胸が、イルマの顔面にぶつかった。その際に、アメリの胸が大きく揺れる。
衝撃に耐えきれず、イルマはアメリに押し倒されるように倒れ込んだ。
「すっ、すすすすまないっ!イルマ!!」
「こっ、こちらこそ……!?」
アメリは咄嗟にイルマの上から飛び退き、耳まで赤くして謝罪する。
イルマは同じ様に耳まで真っ赤に染めて頭から湯気を吹き出しながらも、気にしていないと答えた。その時、ふとイルマはアメリの後ろにいたリコの顔を見て、顔を一気に青くした。
(アメリ…私、オリーヴァからニャオハを助けてくれたから貴女と仲良くなりたいと思ってたんだよ。貴女が明日死ぬとしても、私はもう助けてあげないから)
(リコが暗殺者みたいな目をしてる!?)
ハイライトが消え、これ以上ない程冷えきった目で此方を見てくるリコ。実際に彼女が見ているのはアメリの方なのだが、その視線を向けられているのが自分だと思ったイルマは心底恐怖した。
数十分後、リコ達の努力により、焼け野原となっていた大地は大きな畑となった。
「よし!やったなホゲータ!!」
「ホゲー!」
「お、お疲れ様……」
「……うん」
「う、うむ……」
「テンション低っ」
泥だらけになりながらも仕事を完遂したロイがやりきったというように声をあげ、ホゲータも笑顔で飛び上がった。
そんなロイとは真逆に、イルマはやや青い顔で小さく震えながら呟き、未だにハイライトが消えているリコと顔が赤いアメリが小さく答え、そのテンションの差にモリーがツッコミを入れながら、畑を見回した。
「あと必要なのは……」
「「水!」」
「でも、この時期は滅多に雨が降らないから、この畑全部に潤わせられる量の水なんてどこにもないよ?」
「私のイルカマンはみずタイプの技を持ってはいるが、物理技だからなぁ……威力が高すぎて折角の畑を破壊してしまう……」
新たに直面した問題に、リコとロイは顔をしかめながら、どうするべきかと必死に頭を悩ませた。
一方、オリーヴァの森の上空で、リザードンの背中に乗ったフリードと頭の上に乗ったキャップがいた。
先程何度連絡を取っても返事がなく、心配したフリードがそのまま駆け付けたのだ。
「クソッ、その辺りは完全に圏外か……」
「ピーカチュウ!」
「どうした、キャップ?」
キャップが指差した方向をみてみると、三体のコイルがくっついているような姿をしたポケモン【レアコイル】が、体から電波を放ちながら滞空していたのだ。
「レアコイル…?成る程、あいつが原因か」
レアコイルは強力な磁力・電磁波・電波を常に周囲へ放っているポケモンだ。その磁力の影響で、近くにあるコンピュータなどの精密電子機器は異常をきたし壊れてしまう事例が幾つもある。仲間達と通話が出来なかったのも、確実にレアコイルの仕業だろう。
「キャップ、脅かしてやれ!」
「ピカッ!チュウーーーッ!!」
『ーーッ!?』
キャップはリザードンの上から飛び出し、レアコイルに電撃を浴びせる。でんきタイプを持つレアコイルに電気技は大したダメージにはならないが、背後からの不意打ちにレアコイルはフラフラと飛び去っていった。
「サンキュー、キャップ!これで電波も……」
『ロトロトロト…ロトロトロト…』
「もしもし!?」
『あぁ、やっと繋がった!』
通話をしてみると、スマホロトムの向こう側からリコの声が聞こえた。
「どうした?何かあったのか?」
『今、森を作るために耕してた所』
「は?森を、耕す…?」
「ピカ…?」
「………成る程、状況はよく分かった。無事ならいいんだ…」
『え?何?』
「何でもない。水が必要なんだな?OK、任せとけ。……リザードン、急ぐぞ!」
フリードの呼び掛けにリザードンは頷くと、方向を変えて猛スピードで船に戻って行った。
水を持ってくるというフリードの言葉を聞き、しばらくその場で留まっていたリコ達は、此方に向かってくるリザードンの姿を見て笑顔を浮かべると、リコとロイは大きく手を振った。よく見ると、その後ろにはメタグロスの姿もある。
「皆、待たせたな!」
「うん、大丈夫。あっ、オリオも!」
「私だけじゃないよ」
「えっ!?」
「ランドウさん!?」
そう言ってメタグロスの頭の上に乗っていたオリオが上半身を傾けると、そこにはジジーロンに似たような老人【ランドウ】の姿があり、意外すぎる人物の登場にリコ達は目を丸くする。
「なんで?」
「枯れ木も山の賑わいと言うからのぅ。…ワシも、
「それって…」
そう言ってランドウが懐から取り出したのは、深海のような鮮やかな何層もの青色で構成されたデザインが特徴の『ダイブボール』だった。水にまつわる場所で出現するポケモンがゲットしやすくなる特殊なボールだ。
「ヌオー!」
ランドウがそのボールを投げると、水飛沫のようなエフェクトと共に水色の体をしたサンショウウオのようなポケモン【ヌオー】が飛び出した。
「大いなる恵みをもたらすのじゃヌオー、“あまごい”!」
「ヌオーーーーッ!!」
ヌオーが大きく声をあげると、青空が分厚い雲が覆われ、一気にザーーッと雨が降り始め、瞬く間に畑が潤った。
ロイとホゲータがはしゃぎ、オリーヴァは歓喜するような声をあげると、リコはスマホロトムでヌオーの情報を検索した。
『ヌオー。みずうおポケモン。みず・じめんタイプ。船底や川の岩に頭をぶつけまくっても気にせずに気ままに泳いでいく呑気な性格』
「こんなポケモンを持っていたなんて……」
「アタシも始めて見た…」
「そうなんですか!?」
ライジングボルテッカーズのメンバーであるモリーですら、ヌオーの存在を知らなかったらしい。イルマは軽く驚いた。
やがて雨が止み、ヌオーの“あまごい”で発生した雨雲が晴れていくと、オリーヴァが両腕を広げながら声をあげる。すると、オリーヴァの体から緑色のキラキラした光が溢れだしたのだ。その光は、リコ達の畑を包み込んでいく。
するとあら不思議、ヌオーの“あまごい”で潤った土から突然芽が出てきたかと思うと、みるみる芽が成長して行き、数秒後には畑は立派な森に変わっていった。
「“こぼれダネ”…オリーヴァの持つ特性だ。この雨のお陰で、その力も戻ったみたいだな」
(皆が力を貸してくれたから、きっとオリーヴァも応えてくれたんだ……)
「見てッ!ポケモン達が戻ってきた!」
ロイが言った通り、グルトンやココガラといった、山火事で住めなくなり森の奥にいたポケモン達が、森が復活したのを感じ取って次々と戻ってきていたのだ。
「もう皆ここで生きていける…」
「良かった……」
「オリーヴァもこれでひと安心かな…」
そう言って、リコ達はオリーヴァ見上げる。オリーヴァは、森の復活を喜ぶように大きく声あげた。
その時、リコの首にかけられたペンダントが輝き始めた。
「ッ!?ペンダントが!?」
「これは!?」
「レックウザが出てきた時と同じだ!」
「でも、なんだか変……」
普段ならリコのピンチにしか輝かなかったペンダントが、オリーヴァの声と同時に光出した。
しかし、今回はバリアを張るのではなく、ペンダントが青い光と共に、どんどんシルエットを変えていっているのだ。
リコのペンダントが大きくなり、そこから手足のようなものが生えてくる。
光が弾け露になったのは、フリード達と出会ったあの日、アメジオのソウブレイズの“サイコカッター”を防いだ時に見た、亀のようなポケモンだった。
「パーゴーッ!」
そのポケモンは地面に着地すると、オリーヴァに向かって声をあげる。
オリーヴァはその声に応えるように鳴き声をあげて両腕を頭の上にやると、その腕の間に目映い光の球体が発生し、オリーヴァはその光球を下にいるリコとロイとイルマ、そして亀のようなポケモンに向けて降ろすと、光はまるでドールのように三人と一匹を包み込んだ。
「今度は何!?」
「うわぁっ!?な、何?これ!?」
「…ッ!」
その時、彼らの頭に痛みが走ったかと思うと、辺りが光のドームから濃い霧が漂う空間に変わり、リコ達は辺りを見回した。
『見つけてほしい……』
「ッ!?」
その時、聞き覚えのない男の声が聞こえ、リコ達はバッとそちらを向いた。
そこには、濃い霧のせいで姿が見えないが、フードを深く被った人影、そしてオリーヴァと思われる影だった。しかし先程も言ったように霧が濃すぎて、その人物の顔がまるで見えない。オリーヴァはシルエットで判別できるが、あのオリーヴァのような規格外のサイズではなく、普通のサイズの影だった。
人影は、リコに向けて優しく語りかける。
『見つけてほしい。この世界の………』
「……えっ?」
リコがそう呟くと、辺りの霧が濃くなって行き、男性とオリーヴァの姿が見えなくなっていく。
そして、それと同時に亀のポケモンが体を丸くすると、目映い光がそのポケモンに集まって行ったかと思うと、だんだんとそのシルエットを小さくして行き、やがて元のペンダントの形となった。
地面に落ちたペンダントを、リコはゆっくりと拾い上げ、フリード達がイルマ達のもとに駆け寄ってくる。
「……見た?」
「うん。見えた」
「今のは…」
「もしかして、あの人がルシアスだったのかな…?」
イルマが頭の中に浮かんだ可能性を声に出した途端、巨大オリーヴァが大きく声をあげた。
一同がオリーヴァに注目したと同時に、オリーヴァの首にかけられていた古のモンスターボールが光出した。するとオリーヴァは、レックウザが出てきた時と同じ光を放つボールに赤い光となって吸い込まれていった。
オリーヴァが完全に吸い込まれると、古のモンスターボールは重力にしたがって落ちて行き、リコ達の足元に転がった。
「自分から入っちゃった……私達に着いてきてくれるってことかな…?」
ロイが古のモンスターボールをツンツンとつついた後、リコはボールを拾い上げる。
ボタンを押してもボールは開かず、ロイが力ずくで開こうとしてもビクともしない。
「何か考えがあってのことだろう」
「え?」
「オリーヴァがお前達を認めてくれたのは確かだ。このボールは、三人で預かってくれ」
「うん!」
「「はい……」」
3人が返事をすると、フリードは真剣な表情でオリーヴァの入った古のモンスターボールを見るが、直ぐに普段の様子で笑みを浮かべた。
「古のモンスターボールに入ったと言うことは、そのオリーヴァが六英雄の1体である事は間違いなさそうだ。色々調べたいところだが……一先ず、船に帰るとするか!」
「「はーい!」」
フリードの言葉にリコ以外の面々は元気よく応え、彼らはブレイブアサギ号を目指して歩き出す。
「それじゃあラルトス、手伝ってくれてありがとね」
「もふ」
「ラル…」
イルマとモクローはオリーヴァの説得や森の整地に強力してくれたラルトスに礼を言うと、踵を返して歩き出す。ラルトスはしばらく、その場に立ったままイルマの後ろ姿を眺めていた。
「……ハァ、なんだか凄いものを見てしまったなぁ……」
「あっ、アメリさん。今日は本当にありがとうございました…」
「ム?あ、あぁっ、気にするな。オリーヴァの件もこれで解決したような物だからな…」
イルマは隣で歩いているアメリに頭を下げる。
元々、アメリは山火事で荒れていたオリーヴァを宥めることが目的だったので同行してもらっていたのだが、オリーヴァとの戦闘だけでなく森の復活まで手を貸してくれたのだ。感謝するのも当たり前だ。
だが、まさかボールに入ってリコ達に着いていくとは思わなかったが、何はともあれオリーヴァの怒りを静めることは出来ていたのでアメリは気にするなと応えると、腕を組んでその上に胸を乗せ、苦笑気味にイルマに話し掛けた。
「にしても、オリーヴァを静めるはずが、まさかこんな事が起きるとはな……お前の旅は何時もこんな感じなのか?」
「何時もって訳じゃ…ないと思います」
「割とあるのか」
短期間で悪の組織と戦って伝説のポケモンを見たという体験をしているので、過激な旅でないとは言い難い。イルマは自身の最近を振り替えって苦笑いする。
そんなイルマの答えにツッコミつつ、アメリはふとイルマに問いかけた。
「どうだ?旅は楽しめているのか?」
まるで親が息子に聞くような質問だが、それはアメリが一番気になっている事であった。歳上として、幼馴染みとして、イルマに惚れた女として、イルマが選んだ道を楽しめているのか、どうしても聞きたかった。
そんなアメリの質問に、イルマは満面の笑みで、心からの言葉で答えた。
「スッゴく楽しいです」
「……そうか」
アメリは微笑を浮かべて頷いた。
何となく、二人の周りにピンク色の空気が漂い、二人の前を歩いていたモリーとオリオがチラリと後ろを見た。
「リーコ!」
その雰囲気に全く気付いていないロイが後ろで復活した森で楽しそうにしているポケモン達を眺めていたリコに声掛け、それを聞いたリコは踵を返し、少し遅れて船に向けて歩き出した。
尚、リコが歩き出した一秒後に、イルマとアメリが不穏なオーラを感じて二人の背筋が凍ったのは余談である。
「それでは、私はここらで帰る」
「アメリ、手伝ってくれてありがとう!」
気にするな。イルマにも言ったが、元々オリーヴァに用があったんだ。まぁ、大変だろうがこれからも頑張れ」
「うん。ありがとう」
「じゃあね!」
「ありがとうございました、アメリさん!」
「あぁ。…イルマ、もしまたパルデアに帰って来ることがあれば…その……」
「?」
「いや!何でもない!兎に角達者でな!!」
オリーヴァの森を出た後、アメリは自身の家へと帰宅するために、ライジングボルテッカーズとはここで別れる事となった。
ロイ達が礼を言うなか、アメリは赤い顔でイルマに何か言おうとし、その様子にイルマが首をかしげた途端、アメリは更に顔を赤くしてそう言い残すと、美しいフォームで走りだし、あっという間にその姿が小さくなっていった。
イルマとロイはアメリの様子に首を傾げ、フリード達大人組は苦笑い、リコはハイライトが消えた目で暫くアメリの後ろ姿を眺めていたが、やがて彼女の姿が豆粒ほどになっていくと、彼等も踵を返してブレイブアサギ号に向けて歩き出した。
「…ねぇ」
「ん?」
暫く歩いていく中で「ちょっと調べたいことがある」とフリードとキャップがテーブルシティの方に向かって歩いて行った所で、ニャオハを抱き抱えたリコがイルマに話し掛けてきて、イルマはリコの方に顔を向けた。
「あのさ…イルマって、アメリと同じ小説が好きだったから仲良くなったんだよね?」
「え?そうだけど……なんで知ってるの?」
「アメリから聞いて……」
「あっ、そうなんだ。確かにアメリさんと仲良くなった一番の切っ掛けは
「えっと…その……私にも、その本読ませてもらえない?」
「え?リコって小説読むっけ?」
「あっ、その…アメリがね、とっても面白いって勧めてくれたんだ!だから私も興味が出てきて……」
嘘である。
この女、アメリから小説を勧めてもらってなどいない。木の実集めの際に聞いたイルマとの思い出を聞き、
しかし、動画は視聴するが小説は殆ど読まない自分が素直に「イルマの好きなものが知りたい」と言うのは何だか恥ずかしい。故に咄嗟に口から出てきたのだ。
「へぇ~、そうなんだ。いいよ、部屋に全巻持っていってるから、帰ったら何冊か貸すね!」
この男、今朝までアメリと盛大に火花を散らしていたリコの言葉を微塵も疑っていない。元々、イルマは幼馴染みのリコとアメリが互い仲良くなってくれればいいなと思っていたのだが、何故か二人とも険悪な雰囲気で(詩文が原因であると言う自覚なし)、地面を耕している辺りでは実は既にちょっと諦めていた。しかし、リコの言葉で木の実を集めるうちに仲良くなれたのだと思ったイルマは、小説を機にもっと仲良くなってほしいと思っているのだ。
そんな風に話しながら、イルマ達はブレイブアサギ号へと帰還していくのだった。
「ラル……」
そんな彼等の後ろ姿を、木の影から眺めている小さなポケモンの影があった……。
かぐや様は告らせたいの『嘘である』は凄く好きだったので本作で使いました。
尚、アニポケ13話の後半は、改編する部分が思いつかなかったので丸々カットします。次回はピクニック回になります。
パルデア編のアメリの出番はここで終了となりますが、アニポケでライジングボルテッカーズが再びパルデアに向かうようなので、もしかしたらその時に再登場するかも。
次回の投稿と同時に、現在実施しているアンケートは終了します。
それでは皆さん、よいお年を!
パルデア編の次に行うキタカミ編で、ゼイユとスグリを登場させますか?
-
させる
-
させない