魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター   作:MTHR

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明けましておめでとうございます。

今回でアンケートの実施は終了とさせていただきます。
結果、パルデア編の次に執筆するキタカミ編に、ゼロの秘宝のメインキャラクターであるゼイユとスグリを登場させることとなりました。
アニポケでも出てくる可能性高そうな2人ですが、頑張って書いてみます。

今回はリコにヤンデレ描写はありません。最近色々とリコさんがヤンデレ過ぎている気がするので、しばらくは普通にヒロインさせてみようかなと思います。


19話 皆でピクニック!

 古の冒険者・ルシアスの仲間である六英雄の一体、巨大オリーヴァを仲間にしたリコ達ライジングボルテッカーズは、オリーヴァに共鳴するように一時的にポケモンの姿になったリコのペンダントの秘密を知るため、リコにペンダントを渡した張本人であるリコの祖母【ダイアナ】に会いに行く為、ガラル地方を目指す事を決める。

 そして、いざガラル地方を目指してブレイブアサギ号は出航する……筈だったのだが。

 

「船が出向できないって……」

「何で何で、どう言うこと!?」

「故障ですか…?」

 

 その船が出航できないと言うのだ。これではリコの祖母に会いに行く以前の問題だ。

 思わず声を上げるリコとロイに、心配そうに尋ねるイルマ。それに対して、ライジングボルテッカーズの面々は笑顔で答えた。

 

「尾翼の動きが鈍くてね。念のためシステムに異常がないか自動点検中」

(翼が…大変じゃないですか!)

「こんなのしょっちゅうだ」

「この船で旅すんなら、慣れとかねーとな」

「ボロいから仕方ない」

「ボロいって言うな!アタシが手塩にかけて改造した自慢の船だぞ!」

「この船、オリオの手作りなの!?」

 

 まさかの新事実にリコは眼を見開く。

 

「元は、じっちゃんの釣り船だったんだけど、それをフリードが空を飛ぶようにしろって無茶ぶりしてきてさ」

「ねぇねぇ、船壊れちゃった…」

『全く大袈裟だな……』

 

 そこで、スマホロトムから通信が入る。

 聞こえてくるのは、ここ最近聞くことが多くなったドットの声だ。

 

『再起動をかけているから心配ない。半日もかかんないうちに復旧する』

「おぉ、思ったよりも早く済みそうだね」

「でも、それまで待機って事だよね……?」

「それまで暇になっちゃったね……」

「船が安全に飛ぶために必要な時間だ。焦っても仕方ない。ここま思いきって皆で……」

「「「皆で?」」」

 

 三人が首をかしげ、フリードは笑みを浮かべながら言った。

 

「ピクニックだ!」

「え?」

「ピクニック!!」

「ピクニック…!」

 

 リコは目を丸くし、ロイとイルマは目を輝かせる。

 

「カントーからの長旅で、休めなかったからなぁ。ここらでしっかり身も心もリフレッシュと行こう!」

「やったーー!」

「ホゲー!」

「楽しみだね、モクロー」

「もっふ」

 

 声を弾ませるロイとホゲータ。イルマは肩に乗るモクローに声をかけ、モクローは笑顔で頷いた。

 そこで、三人の背後から声が掛けられた。

 

「旅を続けるとは時に休むこと」

「「「ッ!?」」」

 

 三人はバッと振り返ると、そこにはいつの間にかランドウのじっちゃんが立っていた。

 

「留守番はワシがかって出よう」

「悪いな、じっちゃん」

「旅人の休息じゃ。ゆっくりと羽伸ばしをしてくると良い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 緑が生い茂る草原に、何処までも広がる青い海、左を向けばビルが沢山建てられた『ハッコウシティ』が見える。天気は快晴、ピクニックをするには最高の天気と景色だ。

 

「二人ともー!準備できたよー!」

 

 海とハッコウシティを眺めていたリコとロイに、大きな木の下でフリード達と共にピクニックの準備をしていたイルマが呼び掛ける。

 自身のパートナーを抱き抱えながら戻ってきた二人は、テーブルに並べられた食材や各種調味料を見て「うわぁ~!!」と声を上げた。

 

「凄い、豪華!」

「マードックが、張り切って買い出しに」

「いやぁ、ハッコウシティの品揃えには驚いた。無いものは無いんじゃないかな?」

「ありがとうマードック!じゃあ早速──」

 

 ロイがテーブルに乗せられた輪切りリンゴを手に取ろうとした瞬間、オリオがそれを止めた。

 

「ストーップ!これはそのまま食べるんじゃないの」

「はいこれ」

 

 そう言ってモリーが差し出したのは、バスケットの中に大量に入ったフランスパンだった。

 

「パン…?」

「ってことは…」

「「サンドイッチ!」」

「そう。サンドイッチは、パルデア地方の代表料理だからな」

「好きなトッピングを組み合わせて、自分だけのサンドイッチを作る!それがピクニックの醍醐味だ!」

「自分だけのサンドイッチ…」

「これはセンスが問われるぞ。三人とも、最高の一品に仕上げるんだ!」

「「「オーッ!」」」

 

 フリードの言葉に、イルマ、リコ、ロイの三人は元気よく答えた。

 そうして、ライジングボルテッカーズの面々はサンドイッチ作りを始め、各々の好きな食材を選び、パンに挟んでいく。

 

「うーん…そんな感じかな…?」

「リコのは何だか寂しいな…」

「うーんと…何か、色々気になっちゃって……」

 

 リコのサンドイッチは、トマトスライスにレタスとハムスライスとピクルススライスを乗せ、その上にケチャップをかけた青い旗のピックを刺したサンドイッチだ。美味しそうではあるが、オリジナルのサンドイッチとしては少し地味である。

 

「遠慮しないでどんどん挟んじゃえ。ロイを見てみな」

「え?…なっ!?」

 

 言われた通りロイの方を見てみると、ロイのサンドイッチはレタスにトマトスライス、アボカド、トルティージャ、ヌードル、ポテトサラダ、スライスチーズ、ハンバーグといった食材が規則性もなく重ねられ、しかもジェンガのように高く積み重ねられている。

 ロイは恐る恐る、具材の上にパンを乗せようとする。

 

「よーし…これで、完成だ…あぁっ!?」

 

 しかし、パンを乗せた瞬間、案の定バランスが取れずサンドイッチは大きく崩れてしまった。

 

「絵本にあったデッカイサンドイッチ作ろうと思ったのに……」

「あれは、ちょっと無理なんじゃないかな……」

 

 ロイの言葉に、リコは苦笑いだ。

 すると、今度はイルマの方から声が聞こえてきた。

 

「よし、出来た」

「イルマも……って、なにそれ!?」

 

 イルマの方を振り向いた瞬間、リコは驚愕して席を立った。

 

 イルマの前に置かれた皿に乗せられていたのは、サンドイッチ処か食材ですらなかった。

 マードックが用意した食材のどれとも一致しない禍々しい色に、焦げる処か消し炭になっている食材の上にはドロドロの何かが乗っており、その上には何故か涙を流した生き物の頭のような物が見える。よく見れば、そこから怨念のような物が吹き出している。お世辞にもサンドイッチとは…というか食べ物とすら呼べない物だった。

 リコだけでなく、それを見たロイやフリード達も驚愕し、ポケモン達はイルマから一歩距離を取った。

 

「何ってサンドイッチ……」

「サンドイッチ!?違うよねそれ!サンドイッチ処か食べ物ですらないよね!しかもこことか焼き焦げてるし!どうやったらそうなったの!?」

「どうやったらって……僕、具材をパンで挟むしかしてないよ?」

「嘘でしょ!?」

 

 キョトンとした顔で、自分がこの世の物とは思えない物を作り出した自覚が全く無いイルマ。

 そこでリコは思い出した。イルマは料理の天災なのだということを。

 イルマは大食漢で、それこそ並のフードファイターが逃げ出して料理人が気絶する程の底無しの胃袋をしている。正直、あの細くて小さい体の何処に消えていくのかと聞きたくなるくらいに。

 だが基本的に食べる専門である為に、料理(それ)を作り出す能力は皆無。かつてイルマの手料理を嬉々として食べたサリバン(祖父)が三日間寝込んでいたという思い出もある。

 だというのに、当のイルマは自分が料理のセンスがゴミレベルな自覚が一切無い。好き嫌いがないのかそれとも味覚がおかしいのか、食べても何の拒否反応を示さない処か「美味しい」とか言うのだ。

 

「もう、私が手伝うからそれをどっかに捨ててきて!」

「え?でももったいない……」

「いいから!ホラ、別の作ろう。何を乗せたいの?」

 

 有無を言わさずにサンドイッチというなの劇物を放り投げ、リコは新しいフランスパンをイルマに持たせ、サンドイッチ作りを開始した。

 

 

 

 

 

 

 15分後、リコの指導のもと、ようやくイルマの新しいサンドイッチが完成した。

 イルマのサンドイッチの具材は、スライスチーズの上にトマトスライスと焼きチョリソー、ピーマンスライスが挟まれたサンドイッチだ。やや具材が少ないが、先程の禍々しいサンドウィッチより遥かにマシである。

 因みにロイのサンドイッチは先程と同じ、しかし大きく具材を減らしたサンドイッチで、フリードは下から焼きベーコン、ハーブソーセージ、スモークきりみと肉しかない豪快なサンドイッチだ。

 

「皆出来たな…それじゃあ!」

『いっただっきまーす!』

 

 フリードの言葉に続いて、全員で挨拶をしてからサンドイッチを頬張った。

 リコ達は自作のサンドイッチを自身のポケモン達と分けっこし、フリード作のサンドイッチでキャップが満点を入れると、テーブルに座る面々は拍手する。

 

(とっても賑やかです…。少し前なら、イルマだけだったからな……)

 

 以前のリコは感情や意見を表に出す事が苦手だった為に、周りから「何を考えているのか分からない」と言われて友達はマトモに出来ず、こうしてピクニックにいった事なんて全然なかった。一応、イルマが自分の家に遊びに来たり、イルマの家に招待されて遊びにいくことはあったが、やはり二人よりも大人数の方が、とても楽しいのだ。

 

(そう、この子のお陰で、変われたんだ…!)

「ニャ~」

「ニャオハ、ありがとうね!」

「ニャ~オハ!」

 

 それもこれも、切っ掛けはニャオハだ。ニャオハがいたから、リコは最初の一歩を踏み出すことが出来た。祖母がかつてリコに話した「ポケモンが一緒なら大丈夫」という言葉をこれ以上無い程実感して、リコはニャオハにお礼を言い、ニャオハは笑顔で答えた。

 

 ふと視線を横に向けると、そこにはモクローと一緒にサンドイッチを食べているイルマの姿がある。少し離れた場所に置かれてある禍々しいオーラを放つゴミ袋は全力で見ないフリをした。

 

(それに、イルマがいてくれたから、私はここまで来れたんだ…)

 

 小さい頃から一緒だったこの青い髪の幼馴染みは、常に自分を助けてくれた。

 セキエイ学園でニャオハとまだ信頼関係を築けず夜中に特訓をしていた頃、イルマはリコにアドバイスをしてくれた。エクスプローラーズに追われてフリードとバチコにブレイブアサギ号に連れてこられた時、嵐に襲われて船から投げ出されそうになったニャオハを、身を挺して助けてくれた。あの日イルマがニャオハを助けてくれなければ、リコはニャオハと離ればなれになっていた筈だ。

 リコはニャオハと同様にイルマにも礼を言おうと思ったが…直前で止めた。幾らなんでも脈絡が無さすぎるし、何だか恥ずかしいから。

 

(……あれ?私、何でこんなにドキドキしてるんだろ?)

 

 妙に高鳴る胸の鼓動に疑問を覚えたリコはそれを振り払うように顔をイルマから反らすと、反対側に座るロイがサンドウィッチを食べながら古のモンスターボールを眺めている姿が見えた。

 

「…また古のモンスターボール見てる。ロイって飽きないよね」

「飽きるわけないよ。こうやって見てると燃えてくるんだー。絶対にもう一度会ってゲットしてみせる…あの黒いレックウザを!」

 

 古のモンスターボールを掲げ、そう宣言するロイ。

 

 すると、ニャオハがロイの手から古のモンスターボールを奪い取った。

 思わず二人はニャオハに目を向けると、ニャオハは古のモンスターボールを蹴ったりしながら遊んでいたが、途端にニャオハの手から転がり落ちてそれを追うニャオハだが、寸前にモクローとホゲータが止めるが、ニャオハの勢いは止まらず、三匹が衝突した際に古のモンスターボールがピョーンと跳ねた。

 

「あっ、モクロー大丈夫…?」

「ニャオハダメだよ!それはロイの大切な──」

「あぁ、いいよ。楽しそうだし」

 

 いつの間にか、ニャオハとホゲータは古のモンスターボールをオモチャにして遊んでおり、モクローは2体に壊さないように注意するかのように声をかけていた。

 ニャオハ達の様子をしばらく見ていると、ロイがスマホロトムを手にして話しかけてきた。

 

「そうだリコ、イルマ!写真撮ろうよ!」

「え?…まぁ、別にいいよ」

「私もいいよ。折角だし、ニャオハ達も一緒に…」

 

 カシャ、という音と共に、ロイのスマホロトムにサンドウィッチを持つイルマ達3人とポケモン達の姿が写った写真が撮られた。するとロイは、iPad型に拡大したスマホロトムのディスプレイを操作し、「これを…送信」と呟いた。

 

「誰に送ったの?」

「ドットだよ。留守番してるっていうからお裾分け」

「そっか。良いアイディアだね」

「返信はないと思うけどね」

 

 その言葉に、少し寂しそうな顔をするロイ達。ブレイブアサギ号に乗ってフリード達からドットの存在を聞いてからそれなりに時間が経つが、未だに彼等はドットとマトモな会話をした記憶がない。姿を見たことすらない。

 

「ドットもピクニックに来ていれば、美味しいサンドイッチ食べられたのに…二人もそう思うよね?」

「確かに、それなら誘った方がよかった。…リコはどう思う?」

「私は……ドットが嫌なら、別に良いんじゃないかな。彼女の気持ちを大切にしたい…」

「そっか…」

 

 一緒にピクニックしたいのは事実だが、無理強いすることは出来ない。他ならぬドットが行かないと言っているのだから。

 だがその一方で、折角のピクニックにドットとランドウ留守番をしているのは勿体ない気がするわけで……。

 

 そこで、グゥ~という気の抜けた音が聞こえてきて、三人はその音源に目を向ける。そこには、お腹を抑えたホゲータの姿がある。

 

「い、今食べたばっかりなのに…」

「ホゲータは食いしん坊だからなぁ」

「本当、ロイくんに似てるよね」

 

 イルマの言葉に、リコとロイも苦笑する。尤も、ライジングボルテッカーズの中で一番の大食漢は他ならぬイルマなのだが。

 ロイは古のモンスターボールを拾いながら、お腹を空かせたホゲータに声をかける。

 

「お代わり用意して上げる」

「ホゲー!」

 

 喜びを露にするホゲータに、ロイは新たにサンドイッチを作ってそれをホゲータに差し出すと、ホゲータはそれを笑顔で頬張り、あっという間にサンドイッチを食べてしまった。しかし、まだホゲータのお腹は満たされていないらしい。

 

 そんな風にピクニックを楽しむ面々の姿を、遠くから眺める小さなポケモンの影が()()あった。

 1つは、地面に生えた草木の影に隠れながら、テーブルの上でロイが作っているサンドイッチに目を光らせて素早くライジングボルテッカーズの面々に近づいていくポケモン。

 もう1つは、ライジングボルテッカーズから少し離れた場所にある岩に身を隠し、頭を覗かせてピクニックを楽しむイルマとモクローの姿を眺めているポケモンだった。

 

「もふ?」

「?モクロー、どうかしたの?」

「…もふ!」

 

 相棒(イルマ)リコにフォローされながら作った新しいサンドイッチを半分に分けて食べていたモクローは、食べるのを止めてキョロキョロと辺りを見回す。姿は見えないが、やはり視線を感じる。

 キャップもその視線には気付いているらしく、キャップは「ピカ…?」と呟きながらその視線を感じる方にチラリと目を向けている。

 それを見たモクローは、イルマの肩から飛び立つと、その視線を向けている人物がいるであろう方向に向かっていった。

 

「あぁっ、ちょっと、モクロー!?」

 

 イルマも慌てて席を立ち上がり、モクローを追いかける。

 

「アイツ…待て!!」

 

 モクローを追いかけていると、後ろからロイのそんな声が聞こえてきて、イルマは振り返る。

 そこには、黄色と黒を基調とした小さな海燕のようなポケモン、【カイデン】が、ロイが作ったと思われるサンドイッチを咥えて走って行き、そのポケモンを追いかけるロイとホゲータの姿があった。

 何だかあちらもただ事ではなさそうだが、そんな風にしている間にもモクローは何処かへと飛んでいっていくので、イルマは一先ずモクローを追いかける事を優先した。

 

「遠くに行きすぎて、迷子になんなよー!」

 

 自作のサンドイッチを食べていたバチコの言葉を聞きながら、イルマはモクローを追いかけて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ~?モクロー何処に行っちゃったんだろう…?」

 

 数分後、モクローを追いかけてそれなりの距離を走っていったイルマだが、途中でモクローを見失ってしまった。辺りは草原だが、木も数本生えているので、もしかしたら木の上にいるのではないかと思い、イルマは近くにある木に歩み寄って木に上ろうとする。

 すると、近くの岩影からモクローがピョコッと顔を出した。

 

「もふ」

「モクロー!そんなとこにいたんだぁ……。それで、何かあったの?」

「もふぅ~」

 

 イルマは小走りにモクローに駆け寄って何故ここに来たのか尋ねるが、モクローは怪訝そうな顔で首を振った。どうやら何かを探していたらしいが、どうやら見つけられなかったらしい。

 だが、その直後にモクローが何かを両方の翼で何かを抱えている事に気付いた。

 

「それって……タマゴ?」

「もっふ」

 

 それは、明らかにタマゴであるが、食品として売り出されている物とは違ってモクローと同じくらいのサイズで、白というよりも銀色に近くギザギザした白い模様(遠目でみると物凄く分かりにくいが)があるタマゴだった。

 流石にこれが食用でないことは分かるイルマは、直ぐにこれがポケモンのタマゴであることを察し、タマゴを受け取ってモクローに質問をする。

 

「どうしたの、このタマゴ?」

「もっふぅ」

「ここに…落ちてたの?」

 

 モクローが翼で指した場所に目を向ける。そこには何の変哲もない岩がある。どうやらその岩場で拾ったらしい。

 近くを見渡してみても、シキジカやコイルといった野生のポケモンが穏やかに過ごしているが、イルマの手に持っているタマゴを気にした様子をしたポケモンは一体もいない。

 

「親はいないのかな…?」

「もふぅ~?」

 

 イルマはもう一度キョロキョロと辺りを見回すが、やはり親らしきポケモンの姿はない。

 一度そのタマゴを元の位置に置いてみる離れた場所で様子を伺い、親ポケモンを待ってみるが、幾ら待ってもポケモンが来る様子はなく、イルマは再びタマゴを拾い上げる。

 

「フリードさんに聞いてみよっかな……」

「もふ!」

 

 ここはポケモン博士の知恵を借りようとイルマはタマゴを抱え、モクローを指定席である肩の上に乗せると、踵を返してフリード達のところへ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──それで、拾ったのがこのタマゴって訳か……」

「はい。一度元の場所に戻して親が来るのを待ってみたんですけど、戻ってくる気配もなくて……」

「珍しい模様のタマゴだな…似ているタマゴはあるが、色が違うしな……」

 

 ピクニックをしていた場所にあった木の木陰で、フリード・マードック・バチコ・イルマの四人は、フリードが持つ白銀のタマゴに注目した。リコ・オリオ・モリーの三人はポケモン達と遊んでいる。

 

 タマゴを持ってピクニック場所に戻ったイルマは事情の説明と共にフリードに拾ってきたタマゴを見せ、ちょうど近くにいたマードックとバチコもそのタマゴの事を聞いており、フリードは興味深そうにそのタマゴを観察している。

 ポケモンのタマゴは基本的に生まれてくるポケモンを連想させる模様をしている事が多いのだが、フリードもこのタマゴの模様は珍しいらしい。

 

 フリードはタマゴから目を話すと、イルマに視線を向けた。

 

「たぶん、このタマゴは置いていかれたタマゴなのかもしれないな」

「置いていかれた…?」

「珍しい事ではあるんだが、実際に親ポケモンが見つからないタマゴが発見された事例は幾つかあるんだ」

「そんな…それじゃあ、そのタマゴが孵った時、そのポケモンはどうなるんですか?」

 

 フリードの言葉に、イルマは表情を曇らせる。

 タマゴが孵った時、そのポケモンは赤ん坊ということだ。その子が一人で生きていかなければならないという事だ。それが野生のポケモン達の事情であることは分かっているが、流石に今そのタマゴが目の前にあるというのに、見過ごすのは何だがあまり良い気がしない。

 そんなイルマに、バチコが苦笑気味に口を開いた。

 

「気になんなら、お前が保護すりゃ良いんじゃねぇか?」

「え?」

 

 予想外の事に、今度は目を丸くする。

 バチコは、直ぐ傍にいたチルタリスの頭を撫でながら諭すようにイルマに声をかける。

 

「だから、置いていくのが嫌ならお前が保護して孵してやれば良いって事だよ。親がいないなら、お前が親代わりになればいーんじゃねーの?」

「確かに置いていくのに躊躇いはありますけど……そもそも、これ落ちてた奴ですし…」

「良いじゃないか。タマゴを育てて手持ちに加えるポケモントレーナーも、かなり多いからな」

「うーん…」

 

 フリードからも言われ、イルマはタマゴを持ち上げて考え込む。肩に乗っているモクローと顔を見合わせると、彼も悩んでいるらしく難しい表情をしていた。

 

「ただいま!」

 

 すると、カイデンにサンドイッチを持ち去られたロイとホゲータが戻ってきた。

 

「随分遠くまで言ってたんだなぁ」

「あー…まぁね」

「よし、撤収だ。そろそろ船に帰るぞー!」

 

 フリードが立ち上がってリコ達に呼び掛けると、三人が手を上げて「はーい!!」という返事が聞こえてくる。

 

 フリード達はテキパキとピクニックセットを片付け行き、ブレイブアサギ号に向けて歩き出す。

 

「………よし!」

「イルマ?」

 

 一番後ろにいたイルマはそう呟くと、踵を返して歩きだし、片付け中に木の根本に置いておいたタマゴを抱え上げて、小走りにリコ達のもとに戻っていった。

 

「…なんだ、そのタマゴ引き取るのか?」

「やっぱり、放っておけないので」

「イルマ、そのタマゴは…?」

 

 バチコの言葉にそう返したイルマに、そのタマゴの事をよく知らないリコが尋ねる。顔を向けてみると、彼女の隣を歩いていたロイも興味深そうにタマゴを見ている。

 

「あぁ、これはね、モクローが飛んでいった先に置いてあったタマゴなんだ。親もいないみたいだから、僕が引き取ろうかなって」

「え?そのタマゴ、イルマが孵すの?」

「うん、取り敢えず」

「それじゃあ、そのタマゴが孵ったらイルマの手持ちにするの?」

「それは…どうなるんだろう…?」

 

 ロイの言葉に、イルマは首をかしげた。

 タマゴが孵化したポケモンの事が気がかりで引き取ることを決めた良いが、孵化した後の事は全く考えていなかった。

 フリードからはタマゴから孵したポケモンを手持ちに加えるトレーナーが多いとは聞いているが、正直なところ、モクロー以外の手持ちポケモンなんて考えた事もなかった。

 なのでイルマはこのタマゴから孵ったポケモンをどうするのか考えるが……結局、何も案が浮かばなかった。

 

「それより、ロイくんはカイデンにサンドイッチを取られてたよね?戻ってきた時サンドイッチ持ってなかったけど、取り返して食べたの?」

「あぁ、それかぁー…実はさぁ……」

 

 イルマは話題を変えるために、ロイがホゲータのサンドイッチを奪われた事を尋ね、ロイはそれを素直に答える。

 話によると、カイデンを追いかけたロイは腹を空かせたホゲータとカイデンの為にサンドイッチを半分にして分けて上げたのだが、カイデンはホゲータの分も食べてしまったらしい。

 

 その話を聞いてリコがそのカイデンとホゲータが似ていると言えば、ロイは全然似てないと苦言を溢す。

 

「…だけど、足が速くて、羽がビカビカ光って、カッコ良かった!」

「そうなんだ」

「へぇ~、随分個性的なカイデンなんだね」

 

 イルマの言葉に、ロイが首をかしげてイルマの方を見た。

 

「個性的?」

「いや、そのカイデンは他のカイデン達と一緒に行かなかったんだよね?カイデンって群れで行動するポケモンの筈だからさ、一匹狼の個体なんて始めて聞いたんだよね……」

 

 フリード程ではないが、それなりにパルデアに住むポケモンの知識はあるイルマがそう言った途端、ロイは立ち止まった。

 リコとイルマは急に立ち止まったロイをに疑問に思って振り返り、リコが「どうしたの?」と尋ねると、ロイは何処か決然としたような表情で答えた。

 

「やっぱり気になる…もう一度、カイデンの所に行ってくる!ホゲータ!」

「ホゲ!」

「え?ロイ!」

 

 リコの言葉に耳を貸さず、ロイはカイデンの元へ歩き出した。

 

「遅くなるなよー!」

「うーん!」

 

 フリードの呼び掛けに、ロイは振り向かずに答え、そのままカイデンのいた方向に走っていった。

 

「ピーカチュウ」

「ポケモンを観察できるようになったか…。成長しているのは、リコ達だけじゃなかったな」

「?何か言いましたか?」

「ヘヘッ、何でもねーよ」

「えっ、ちょっ、何ー?」

 

 リコが質問するも、フリードははぐらかすように笑いながらブレイブアサギ号に向かって歩いて行き、そんなフリード達を追い、イルマ達は船に帰っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 ランドウとドットが留守番を勤めるブレイブアサギ号に、ピクニックセットを抱えたイルマ達が戻ってくる光景を、遠くの岩影に隠れた小さなポケモンが眺めていた。

 そのポケモンはブレイブアサギ号の船内に戻っていくタマゴを持った少年、イルマの姿を見つけると、笑顔を浮かべて岩影から出ようとしたが、直後に躊躇いを覚えたのか足を止め、再び岩影に隠れてしまう。

 

「……ラルゥ?」

 

 そんな時、そのポケモンは上空に何かの気配を感じて空を見上げた。

 

 そこには、ブレイブアサギ号を囲うように集まり、体から磁気を放っている複数のレアコイル達の姿だった。

 

 

 




イルマくんはタマゴを手に入れました。パルデア編とキタカミ編で孵る予定はありませんが、ガラル地方編の序盤に孵化させるつもりです。

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