魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター   作:MTHR

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イルマくんのライジングボルテッカーズの呼び方

リコ→呼び捨て
ロイ→君づけ
その以外→全員さん付け

イルマくんはドットを『ドットさん』と呼びますが、作者は最近『窓際のトットちゃん』を観に行ったことで『ドット』が『トット』に聞き間違えてしまう時があります。

SVの番外編や最強のバシャーモレイドがもう少ぐで、物凄く楽しみですが、来週は学校で試験があるので、勉強やゲームの時間も含めると、次の更新は少し遅れるかもしれません。


21話 記憶を失くしたリコ

「私、どうしてパルデアまで戻ってきたんだろう……?」

「ニャー?」

 

 ハッコウシティの町中を見渡しながら、リコとニャオハは頭に疑問符を浮かべる。

 自分は先日、ニャオハと共にカントー地方のセキエイ学園に入学した筈…だった。

 だが、今自分がいるのは、生まれ故郷であるパルデア地方のハッコウシティ。着ているのはセキエイ学園の制服ではなく、白いシャツの上に水色のジャケット、黒の短パンに上の縁が水色のハイソックス。

 

 スマホロトムを見てみるも、画面は故障したかのようにノイズが走り、なにも見ることが出来ない。

 様々な疑問が頭の中を駆け巡り、リコはしゃがみ込んでニャオハと目線を合わせる。

 

(私とニャオハ、こんな感じだっけ…?何か、大事な物を失くした気がする……)

 

 ジーっとニャオハの顔を見つめていると、ニャオハのその愛らしさに胸打たれ、リコはニャオハの頭を撫でようとする。しかし、その前にニャオハは鋭い爪でリコの手の甲を引っ掻いた。

 

「痛ッ」

 

 思わず手の甲を抑えるリコ。

 その時、リコの脳裏に誰かが机の上にのッたポケモンに手の甲を引っ掻かれる映像がよぎる。

 

「あれ?何か、前にもこんな事……」

「ニャー?」

 

 その事を疑問に思いつつも、リコはニャオハと共にハッコウシティを歩き始め、ニャオハの写真が使われた大きな看板を眺めながら、リコは頭を捻る。

 カントーにいた筈の自分が何故パルデアに戻ってきたのか、その理由が全く思い出せない。

 その時、リコは肩掛けしたウェストポーチに何かが入っていた事に気付き、リコはそれを取り出した。

 

「ん?これ…なんだっけ?」

 

 それは、一見するとモンスターボールに似ているが、普通のモンスターボールとは違って、スチームパンクチックなデザインをしている。

 すると、足元のニャオハがそのボールを見て反応をし、何か知っているのかと思ったリコがそのボールをニャオハに渡すが、ニャオハはただボール遊びがしたかっただけらしい。

 それを笑顔で眺めたあと、一旦家に帰ろうかと考えた瞬間、ポンッと肩に手が置かれた。

 

「ッ!?」

 

 リコは肩をビクッと跳ねさせ、バッと後ろを振り返る。

 そこにいたのは、白いスラックスとシャツの上に黒いサスペンダーとネクタイを着け、白いジャケットを袖を通さずに羽織り、角のような2本の尖りがある白い中折れ帽を被っている、青い髪と瞳をした少年だった。彼の右肩には、丸い梟のような姿のポケモン──モクローがいる。

 その姿を見て、リコは呆然と目を見開きながら、その人物の名前を呼んだ。

 

「イ、イルマ…?」

「…やっと見つけたよ、リコ。どの店を探してもいないから、あちこち走り回って探したんだよ……」

 

 自分と同じ、カントー地方のセキエイ学園に入学した筈の幼馴染み──イルマは、脱いだ帽子をパタパタと動かして風を浴びる。見れば彼は少し汗をかいており、少し息をきらしている。疲労困憊とまではいかないが、そこそこ疲れているようだ。

 

「だ、大丈夫?疲れてるなら少し休む…?」

「あぁ、大丈夫だよ。疲れてはいるけど、動けないってほどじゃないし」

「そ、そうなんだ……。ねぇ、イルマその服どうしたの?」

「え?服?…いつも通りだと思うんだけど……何か変?」

 

 自身の体を見下ろして、不思議そうにそう尋ねるイルマ。

 別に服に目立つ汚れがついてるとか、似合ってないとかを言っているわけじゃない。リコの知る限り、イルマはこんな、マフィアみたいな格好をした事がない筈だ。基本的に、イルマはラフな格好を好んでいた。スーツなんて着るところはみたことがない。

 だが、まるで自分がいつもと違った格好をしている事を自覚していない様子のイルマに聞き返され、リコは慌てて答えた。

 

「う、ううん。似合ってるよ…」

「?ありがとう……」

(……あれ?何か私、前にも似たようなやり取りをした気がする……)

 

 リコの答えに疑問を持ちながらも例を言うイルマ。

 対するリコは、イルマの服装を誉めた出来事を、前にもやったことがあるような気がして、内心首をかしげる。長い付き合いであるゆえに、イルマと過ごした事全部を覚えているわけではないが、イルマの服を誉めたことなんてなかった筈だ。なのに、どうしてもそれをしたような気がする。

 

 そんなリコの様子に首を傾げながらも、イルマは腕を組んでリコに話し掛けた。

 

「ロイくんから聞いたけど、秘伝辛スパイスを買いに来たんだっけ?ドットさんのチェックが終わってもうすぐ出航みたいだし、秘伝スパイスが入荷してないなら僕の家でオペラさんから分けて貰えるけど…どうする?」

「ロイ……?ドット……?」

 

 脈絡の無い話をして、知らない人物の名前を上げるイルマ。

 【ロイ】や【ドット】なんて名前をした人は、知り合いにいない筈だ。そもそも、リコは人付き合いが苦手な為、イルマ以外に友達なんていない。だからそんな名前の人は知らない筈なのに…何故か、心がざわついた。

 そのモヤモヤした感情を振り払うように、リコはイルマの言葉に抱いていたもう一つの疑問について尋ねてみることにする。

 

「…ねぇ、もしかして、セキエイ学園って今連休なの?それで、私達は船でパルデア(コッチ)に帰ってきたの?」

「……リコ?一体何を言ってるの…?」

「え?えっと……」

 

 リコの言葉に、イルマは訝しげな表情でリコの顔を凝視する。その視線に、リコは何か変なことを言ってしまったのかと少しだけ戸惑う。

 その時、リコの足元でスチームパンクチックなモンスターボールで遊んでいたニャオハが、突然モンスターボールを放置して、リコとイルマとモクローに背を向けて走り出した。

 

「あっ!ニャオハ、まって!」

「えっ、ちょっと…リコー!?」

 

 リコはモンスターボールを拾い上げてウェストポーチにいれると、直ぐ様ニャオハを追いかけた。

 それを見て、イルマはまだ少し疲労が残る体を無理矢理動かし、急いでニャオハとリコの後を追った。

 

 リコはニャオハを追いかけ、イルマはリコとニャオハを追いかけて走る。

 曲がり角を曲がるニャオハに、リコは手前の曲がり角を曲がって進む。

 曲がり角を進んだ先を走るニャオハに、近道をして先回りしたリコが立ちはだかり、リコは自身の胸に飛び込んだニャオハを抱き締めた。

 

「そんな自由なところが、ニャオハの良いところだもんね!」

「ニャッ!!」

「?」

 

 そこで、抱き上げたニャオハがなにかに気付き、リコはニャオハかま視線を向けた先を見て、思わず目を見開いた。

 

 そこにあったのは、ハッコウシティのビルの後ろに悠然と昇る夕日。

 

「あれ?これって……ニャオハと見る夕日……」

 

 その光景に見惚れていたリコは、その光景に何かの違和感を覚える。ニャオハと一緒に夕日を見た事なんてなかった筈なのに、何故か何処かでこんなことをした気がある気がする。

 

「リコ~!」

「ッ!イルマ……」

 

 そこで自分達を追いかけてきたイルマの声が聞こえてきて、リコは意識を取り戻す。

 振り返ると、再び走ったことで「ゼェ、ゼェ…」と息を切らしているイルマの姿がある。

 

「だ、大丈夫…?」

「大、丈夫……」

 

 肩を上下させながら息を整えるイルマ。

 肩に掛けている大きめのバッグから水筒を取り出し、それを一気に飲むと、ハァ、と息を吐いてからリコに訝しげな顔を向けた。

 

「……それで、リコ。さっきの質問はどうしたの?セキエイ学園が連休とか…なんか変だよ?」

「えっ?でも、私達この前入学したばかりだよね?なのに、パルデアに帰ってきてるし、船がどうとか言ってるから……」

 

 イルマに質問され、思わずリコは意識を取り戻してからずっと疑問に思っていたことを尋ねる。

 それを聞いたイルマは目を見開き、顎に手を当てて少しだけ考え込んだあと、リコにいくつか質問をした。

 

「リコ、『ライジングボルテッカーズ』『ブレイブアサギ号』『エクスプローラーズ』って単語…知ってる?」

「……」

 

 聞いたことのない筈の単語。なのに、何故かリコはその単語に聞き覚えがあり、それを聞くたびに、知らない誰かの姿が頭の中を過る。だが、まるで靄がかかったように鮮明に思い出せず、リコは悲痛そうな表情で顔を下に向けながら、首を横に振った。

 それを見て、イルマは何かを確信したような表情になると、即座にスマホロトムを取り出した。だが……

 

「……で、電池切れ……」

 

 電源ボタンを押しても、イルマのスマホロトムの画面には何も表示されなかった。イルマの顔が青くなり、口の端がピクピクとひきつる。

 流石に可愛そうに思い、リコは自分のスマホロトムを貸そうかと思ったが、何故か先程から壊れていることを思い出す。

 

「大丈夫…えっと、私のスマホロトムも壊れてるみたいで、悪いけど貸せないんだ…」

「そうなんだ……うーん…こうなったら、原始的な方法でやるか……」

「?」

 

 イルマの言葉に首を傾げるリコ。

 すると、イルマは肩掛けしているジャケットの内ポケットからメモ帳を取り出し、サラサラとペンで何かを書く。そしてそのページをビリッと破ると、紙を折り畳んで肩の上にいるモクローに差し出した。

 

「モクロー、これをフリードさん達に送ってくれる?」

「もっふ」

 

 モクローはイルマの言葉に頷くと、紙を咥えてイルマの肩から飛び立ち、パタパタと翼を羽ばたかせ、何処かへと飛び去っていった。

 

「えっと……モクロー、どうしたの?」

「手紙を書いて届けて貰うんだよ。伝書鳩ならぬ伝書梟って所だね」

「だ、大丈夫なの、それ?」

「大丈夫。皆がいる場所に向かうように言ってるから」

「そうなんだ……」

 

 イルマの考えは単純、スマホロトムで連絡が出来ないなら、手紙を書いてモクローに届けてもらえば良いと言うことだ。

 そんなイルマの言葉に頷きながらも、リコは西側にある太陽がかなり沈んでおり、東の空がどんどん暗くなっている景色を見て、イルマに提案する。

 

「ね、ねぇ…そろそろお互い家に帰った方がよくない?もうすぐ夜になるし、何でカントーにいるのか分かるかもしれないから……」

 

 そう提案するリコ。

 何故自分達がパルデアに戻ってきているのか全く分からないが、もうすぐ夜だ。何故自分達がパルデアに戻ってきているのか調べることも兼ねて、リコは家に帰るべきだと考える。

 

「ちょっと待って」

「…ふぇ?」

 

 だが、そこでイルマに引き留められてしまい、リコは思わず間抜けな声をだした。

 

「え~と…ち、ちょっとこの町にいなくちゃいけなくて…一人じゃ寂しいから、少し付き合ってくれない?」

「つ、付き合う!?」

 

 イルマの言葉に、リコはボンッという音が聞こえてきそうな勢いで顔を真っ赤に沸騰させた。

 

「……リコ?」

「あ、うん!何でもないよ!」

「そ、そう…?」

「うん。それに、私も予定ないから、一緒に行くよ」

「あ、ありがとう……」

 

 訝しげな表情のイルマに尋ねられ、リコは自分が『付き合う』という意味を間違って捉えていたことに気付き、ニャオハを片手で抱き抱え、もう片方の手をブンブンと振りながら、イルマの頼みを承諾した。

 その様子に少し戸惑いながらも、イルマはコホンと咳をして気持ちを切り替える。

 

「それじゃあ、ここで立ってるのもアレだし、何処か行ってみる?」

「う、うん…それじゃあ、イルマは何処にいきたい?」

「うーん…特に決めてないんだけど……じゃあ、あそこのクレープ食べてみる?」

「うん。いいね」

 

 イルマが指を指した先には、クレープを売っているキッチンカーがあり、少し小腹が空いていたリコはニャオハを抱き抱えながら、イルマと共にその店に向かう。

 

(何だかコレ、デートしてるみたい……)

「ニャ~?」

 

 イルマの隣を歩きながら、思わずリコはそんなことを考えてしまい、先程から感じている違和感すら一時的に忘れ、顔を赤くして俯いた。

 

(本当に、何があったんだろう…?)

 

 一方、イルマは腕を組んで考え込んでいた。

 秘伝辛スパイスの入荷の情報が見つからず、何となく心配になってハッコウシティに来てみれば、案の定秘伝スパイスを入荷している店などなく、ハッコウシティを駆け回ってリコを見つけたと思ったら、何故かリコが記憶喪失になっていた。しかも物語みたいな自分が誰かも分からなくなっているのではなく、セキエイ学園に入学した後の記憶だけがなくなっているという状態でだ。つまり、ライジングボルテッカーズとの思い出を全部忘れている状態ということなのだ。

 それ以前から交流があったお陰で、自分の事は忘れていなかったが…この状態で出航など出来る筈がない。リコの無理矢理引っ張って船に連れていくのは気が引けるし、出航に浮かれて充電を怠ったせいでスマホロトムが使えない今、手紙を書いてモクローに伝言を頼んだ。

 その直後にリコが家に帰ろうと言ったので、『ハッコウシティにいます。来てください』と手紙に書いてしまった以上、ハッコウシティから動くわけにもいかないので、何とかここにいる様に引き留めたのだが、咄嗟だったので完全にノープランだ。

 何時までも引き留めるのも気が引けるので、イルマは早めにフリード達が来てほしいと心の中で祈った。

 

「コラボ配信だって!!」

「マジマジ!?やっば、すっげぇ!!」

 

「?アッチの方が騒がしくなってきたね……」

「そうだね。何かあったのかな…?」

「行ってみる?」

「うん」

 

 クレープを買い、太陽が完全に沈み夜になった頃、ハッコウシティの中心に大勢の人が集まっているのを見つけたイルマとリコは、購入したクレープを片手にその人混みを掻き分けながら、その中央を覗き込んだ。

 ハッコウシティの中心はバトルフィールドとなっており、その中央のモンスターボールのボタンを模した場所がライブのステージのように昇り、その上に人影が見えた。

 

『皆の者~!準備は良ーいー?』

 

 『ワァァーーッ!!』と歓声が起こると同時にスポットライトが当てられ、その人影の姿が露になった。

 髪色はやや薄いピンクと水色の二色髪で、左右の髪色に合わせたコイル型の大きな髪飾りを二つ付けており、ノースリーブのインナーウェアにオーバーサイズな黄色いコートを羽織り、完全に両手が隠れた服装の、カワイイ顔でギザ歯をした少女だった。

 

「あれは!?」

『あなたの目玉をエレキネット!何者(なにもん)なんじゃ!?ナンジャモです!おはこんハルチャオー!!』

 

 周囲の観客から、『おはこんハロチャオー!!』と歓声に似た返事が巻き起こる。

 

「ナンジャモ!本物だ!!」

「ナンジャ……?」

「知らないのイルマ!?ドンナモンジャTVを配信してるインフルエンサー、ナンジャモだよ!」

「そ、そうなんだ…」

 

 『ドンナモンジャTV』はパルデアでも大人気の動画チャンネルであり、この場合ナンジャモを知らないイルマの方がおかしいのだが、基本的に動画の類いは見ないため、イルマはそういった芸能人の類いには疎いのだ。なのでイルマは、興奮した様子のリコに少し戸惑ってしまう。

 

『ドンナモンジャTVの時間だぞー!本日のゲストは、スペシャルなサプライズ!それじゃあ、どうぞー!!』

 

 ナンジャモがそう言うと、彼女が立っているステージに、ニドリーナの着ぐるみが映し出された。

 

『ぃよーっす!ポケモントレーナーの皆~~!!ぐるみんしてる~~っ!?着ぐるみ配信者のぐるみんだぜ~~』

『クワーーッス!』

 

 続いてクワッスの姿が映し出されると、再び歓声が沸き上がる。

 

(ぐるみん…私の好きな配信者…)

(ドットさん……)

 

 リコが呆然と画面に写るぐるみんを眺めるなか、イルマは腕を組んだ。

 イルマは、ぐるみんの正体がドットであることを知っている。それを知ったのは、タマゴを拾ったピクニックの帰りに、リコから見せられたランドウとぐるみんとクワッスの写った写真を見せられた時だ(他にも部屋から漏れる音楽やクワッスなど、色々とヒントがあったが)。それでも、リコはぐるみんの正体に気付かなかったらしいが、見てて面白かったのでイルマはそれを言わなかったのだが。

 

『刮目せよ皆のもの!このナンジャモとぐるみん氏、夢の共演だぞ~~!じゃも、今回の企画を発表しちゃうよー!!』

 

 ドラムロールと共に、ナンジャモは声を張り上げた。

 

『クイズ!街角ガールを探せ!!』

 

 再び歓声が沸き上がる。

 

『簡単に言えばかくれんぼじゃ!今回はコラボらしく、ぐるみん氏をチャンネル登録しているお友達に隠れて貰うよ~!』

(良いな~!こういう企画!私も参加したい!)

 

 ワクワクと画面を眺めるリコと、まるでアイドルのライブみたいな空気にキョロキョロと辺りを見回すイルマ。

 そんな中、画面に写るぐるみんが、大きな声で宣言した。

 

『皆に探して貰うガールは~……ニャオハ大好きっ子だ~!!

 

「ニャオハ!」

「えっ!?」

「ええっ!?(あ、あ、あ、あれって…私!?)」

 

 映し出されたのは、両手に持ったニャオハで顔を隠している碧のインナーカラーをした黒髪の少女──リコだった。

 予想外の事に、リコもイルマもニャオハも目を丸くする。

 

『目をコイルにして、存分に探してくれたまえ~~!』

『ニャオハ大好きっ子、絶対に見つけてくれよな~~!!』

(何で!?何でぐるみん、私を選んだの!?友達って…ただのファンの私をそんな風に…?)

(もしかして、僕たちを探してるの?でもハッコウシティにいるって手紙に書いた筈なのに……もしかしてまだ届いてない?)

 

 何故自分が選ばれたのか分からずに困惑するリコと、もしや自分がモクローに届けさせている手紙が届いていないのかと思い、頬をひきつらせる。

 

「あれ?」

「ニャオハ連れてる」

「見つけた!」

『おおっ!』

『何っ!?』

 

 そうしていると、周りにいた人達がリコの姿を見つけ、小さな女の子の言葉で、ナンジャモやぐるみん、そして一気にリコに注目する。

 

「あのっ、えっと…行くよニャオハ!」

「ニャーー!」

「ちょっと、リコーー!?」

 

 あまりの急展開に頭が追い付かず、リコはニャオハと共に人混みを掻き分けて逃げ出し、慌ててイルマがリコを追いかける。

 

『ちょっと、何で逃げる!?』

『あーっとこれは想定外!かくれんぼにならないねー!…直ぐに見つかってもバズらないしこーなったら…鬼ごっこに変更じゃー!!』

『ッ!?ちょっと待てよ!』

『エキサイティングに盛り上がって、登録者数をシビルドン昇り~~!…あれ?ぐるみん氏の接続切れちゃった?でも、止まらずナンジャモ行っちゃうよー!!』

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わってブレイブアサギ号のドットの自室。何時になっても船に帰ってないで連絡もとれなくなったリコとイルマを探すためにナンジャモの協力を得て、ハッコウシティでリコと、その隣にいたイルマを発見したドットは、ぐるみんの着ぐるみを脱ぎながら愚痴るように呟いた。

 

「全く、ナンジャモ姐さんの悪い癖だ。ただ探すだけでよかったのに……でも、これでハッキリした」

「もふーー!」

「?この鳴き声は……」

 

 ネットではボウルタウンにリコの目撃情報があった事を伝えた事で、リコを探しに行ったフリード達に連絡を入れる為にスマホロトムを操作しようとしたドットは、扉の向こうから聞こえてくるポケモンの鳴き声に、扉の方に目を向けた。

 クワッスも気になったのか、ペットドアから顔を覗かせて、扉の向こうにいたポケモンと話をするように鳴き声を交わした後、部屋に戻ったクワッスに続いて、丸っこい梟のようなポケモンが入ってきた。

 そのポケモンには、ドットも見覚えがあった。

 

「お前、確かイルマが連れてるモクロー……なんでここに?」

「もふ!」

「手紙……?」

「もふもふ!もっふ!」

「あっ!……行っちゃった……」

 

 ドットの疑問に答えるように、モクローは咥えていた紙をドットに差し出し、ドットがそれを受け取ったのと同時に、モクローは「後は任せた」というように、足早にドットの部屋から去っていった。

 ドットは紙を開いてそれに書かれた内容に目を通し、驚愕に目を見開いた。

 

「…!」

 

 その手紙の中には、イルマによる状況説明が書かれていた。

 ハッコウシティでリコを見つけたはいいが、何故かリコがセキエイ学園に入学した前後の記憶しかなく、ライジングボルテッカーズの面々の事を忘れている事、イルマのスマホロトムの充電が切れ、リコのスマホロトムも壊れているために連絡がとれない事。

 その手紙を読み終えたドットは直ぐにフリード達に連絡をし、リコとイルマがハッコウシティにいる事や、ボウルタウンにいるという情報はエクスプローラーズのフェイクであること、そしてイルマからの手紙に書かれている内容を話した。その時のフリードは『あのオーベムか…!』と呟いており、どうやらリコの記憶がなくなったのはそのポケモンが原因だったらしい。何故かロイがフリード達と別行動でハッコウシティにいるらしく、フリード達もそこに向かおうと仲間達に声をかける。

 

「待ってフリード!…お願いがある……僕も、ハッコウシティに連れてって!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん…やっぱりこの辺りにはいないかぁ」

 

 ハッコウシティの高層ビルの屋上で、イルマはキョロキョロと辺りを見渡した。

 唐突にぐるみんとナンジャモの企画によりリコを標的とした鬼ごっこが開始され、逃げ出したリコを追いかけていたイルマは、途中でリコを見失ってしまい、高いところから大まかな位置を特定しようと高層ビルの屋上から探しているのだが、見回す限りリコとニャオハらしき影は見当たらない。

 

「こういう時、モクローがいてくれたらもっと効率が良いのに……」

「もふーー!」

「!モクロー!」

 

 らしくもなくイルマが愚痴るように呟いたその時、上の方から聞き馴染みのある声が聞こえてきて上を向くと、そこには何かを咥え、翼を羽ばたかせて此方に向かってくるモクローの姿があり、イルマは立ち止まってモクローを抱き止めた。

 

「手紙届けてくれたんだね。ありがとう」

「もふー!」

 

 イルマが笑顔でモクローの頭を撫でると、モクローは笑顔で頷きながら、イルマに先程から嘴で咥えていたものをイルマに差し出した。

 

「それってモバイルバッテリー!?持ってきてくれたんだ…」

「もふ!」

「ありがとう…これでフリードさん達と連絡が取れる」

 

 早速相棒が持ってきてくれたモバイルバッテリーで電池切れのスマホロトムの充電を行うイルマ。これで少ししたらフリード達と連絡が取れるようになると安堵の息を吐いたイルマは、今度はリコを探すべくモクローに顔を合わせる。

 

「モクロー、帰ってきたところで悪いんだけど、今度はリコの捜索お願いできる?実ははぐれちゃったんだよね…」

「もふもふ…もふ!」

「え?」

 

 頷こうとしたモクローが、イルマの後ろを羽で指差す。

 思わずイルマがモクローが示した方向に振り向くと……

 

「リコ!?」

「イルマ…!」

 

 イルマがいるビルの正面にある、少し高いビルの塔屋に、リコとニャオハが立っていたのだ。

 

 先程まで何処か戸惑ったような表情をしていたリコは、イルマの姿を見た瞬間に顔を引き締めると、ニャオハと共に踏み出した。

 

「行くよ……せーのっ!!」

「ニャァ…ハーー!!」

 

 そして、リコとニャオハは、イルマとモクローがいるビルに向けて勢いよく飛び出した。

 リコとニャオハは放物線を描きながら、イルマ達が立つビルの屋上に降りていき、後一秒もしない内にイルマ達の前まで着地しようとする。

 

ビュゥウウウッ!

 

「ひゃあっ!?」

「ニャアッ!?」

「ッ!?リコ!!」

「もふ!」

 

 その時、突如リコの真横からビル風*1が吹き、予想外の強風にリコは姿勢を崩してしまい、ニャオハは少し戸惑いながらも屋上に綺麗に着地出来たが、リコは本来の着地場所の一歩手前、屋上の手摺に片足を乗せた。

 リコは手摺の上で必死にバランスを取ろうとするが、やはり細い手摺の上で身体能力が平均であるリコが上手くバランスを取れる筈がなく、リコは前のめりに倒れそうになり、流石に危ないと思ったイルマがリコを受け止めようと前に出てくるが、タイミングが合わなかった。

 

ドシャアッ!!

 

「アダッ!?」

「もふぅーーー!?」

 

 リコの顔が勢いよく目前に迫ってきて唇への妙な感触がしたかと思うと、前から襲いかかってくるリコの身体の勢いにイルマもバランスを崩して後ろ向きに倒れていくと、背中を床に打ち付けた痛みと共に、後頭部に凄まじい衝撃が走った。

 思わず鈍い声を出し、モクローの悲鳴じみた…というより何処か驚愕したような声を聞きながら、イルマの意識は後頭部の衝撃によりブラックアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ニャオハとのコンビネーションで、自分を捕まえようとする人々から逃げ回っている内に失った記憶を取り戻し、イルマ(仲間)の元へ飛び降りようとして失敗してしまったリコは、咄嗟に自分を受け止めようとしてくれたイルマとの衝突と転倒した際の衝撃に顔をしかめながらも、起き上がろうと体を動かす。

 その時になって、リコは自分の唇に何か柔らかい物が触れていることに気付いた。

 

(えっ?)

 

 リコは反射的にパチッと目を開ける。

 そこには、転倒した際に後頭部を打ったのか、目を回して気絶しているイルマの顔があった。

 しかし、今のリコにはイルマが気絶している事を気にする余裕はなかった。

 なぜなら、イルマの顔が、予想していたよりもずっと近い場所にあったからだ。それこそ、ニャオハと出合った日に屋上から落ちてイルマと衝突したあの時のように。

 その吐息すら感じる距離と未だに残る唇の感触に、リコの脳内にある可能性が思い浮かび、ハッとなってイルマの身体の上から飛び退いた。

 この距離と顔の位置だと、触れた柔らかい物なんて一つしか思い浮かばないない。

 

(も、ももももしかして私、イルマと……キッ!?)

 

 思わず口を手で覆う。

 唇にはさっきの感触がまだ残っており、それを意識して顔がみるみる赤くなっていくと同時に、鮮明に唇の感触が思い出されていき……

 

ボォオンッ!!

 

バターーンッ!

 

「ニャーーーッ!?」

 

 爆発音のような音と共に、リコの頭から大量の湯気が吹き出し、リコは顔を真っ赤にしてまま、目を回して仰向けに倒れた。

 ニャオハがモクローと同じような悲鳴を上げるのを聞きながら、リコの意識はブラックアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分後、アオガラスを追いかけるカイデンを追ってハッコウシティにやって来たロイと、フリードに頼んでハッコウシティにやって来た両目が隠れた紫色の天然パーマの少女【ドット】は、リコを追いかける人々の目撃情報を元に居場所を特定し、ビルの階段を駆け上がって屋上にたどり着いた。

 辺りを見回してみると、屋上の手摺の付近で、仰向けになって倒れているイルマとリコの姿と、各々のパートナーに寄り添うモクローとニャオハを見つけた。

 

「リコ!イルマ!」

「気絶してる……何があったんだ」

「もふぅ~…」

「ニャ~…」

 

 慌てて倒れている二人に駆け寄るロイとドット。

 一連の流れを目撃していたモクローとニャオハは、言葉を話せないためにそれを説明することが出来ず、仮に話せたとしても何と言えば良いのかが分からず、困ったような表情でお互いの顔を見合わせるのだった……。

 

 

 

 

 

 

*1
高層ビルの周辺で吹く風の乱れや強風




思い付くままにかいていたら、何故かこんな展開になってました。こういう時、本当に文才がほしくなります。

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