魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター   作:MTHR

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作者が碧の仮面でともっこを倒した順番は、キチキギス→マシマシラ→イイネイヌでしたので、この作品でも同じ順番にします。尚、ともっこが使う技は本編クリア後のものになっております。

ポケモンバトルを上手く書けてる自信がありませんが、楽しんでいただけると幸いです。


27話 雉と猿とテラスタル

 ともっこの一体【キチキギス】からオーガポンのお面を取り戻す為、鬼が山のひやみず洞を目指すリコとバチコ。二人はチルタリスの背中に乗ったまま、てらす池から少しはなれた場所にある梯子を降りた先に見つけた洞穴に入る。

 

「…結構、暗いね」

「洞窟だならなぁ」

 

 入り口から差し込む光以外ほとんど何も見えず、岩だらけの洞窟内には【ウリムー】や【ユキワラシ】といったポケモン達が生息しており、リコはスマホロトムのライトを明かりにして辺りを見渡した。

 

「ここを下に降りた先に出口がある。多分、キチキギスが向かったのはそこだ。落ちるなよ」

「う、うん」

「ニャー!」

「チルタリス、ゆっくり降りろよ」

「チルッ」

 

 バチコの言葉を聞き入れたチルタリスは、翼を羽ばたかせて、周りのポケモン達を刺激しないようにゆっくりと高度を下げていく。そして、ひやみず洞の最深部、【ヌメラ】や【シビビラス】が生息する場所に洞穴があるのを見つけると、チルタリスは二人を乗せたままその中に進んでいく。

 やがて日の光が見えてくると、チルタリスは速度を上げ、洞窟の外へと飛び出した。

 

 洞窟からでてくると、そこは大きな岩が平地になって、簡易な足場になっていた。チルタリスの背中から降りたリコは、目の前で滞空しているキチキギスの姿に目を見開いた。

 

「な、なんか大きくなってない…!?」

「……キ?」

 

 そう、元々キチキギスの1.4m程しかなかった体躯は目算でも5倍以上に大きくなっていたのだ。バチコもリコと同様に驚いていたが、直ぐに気を取り直し、チルタリスをボールに戻して、モンスターボールを投げた。

 

「訳わかんねーけど、やるしかねーよな……ジュナイパー!」

 

ポンッ!

 

「ジュナッ!」

「行くよニャオハ!」

「ニャァ!」

「キチキッチーーッ!」

 

 バチコは相棒であるジュナイパーを繰り出し、リコはニャオハを前に立たせる。それを見たキチキギスが翼を羽ばたかせながら声を上げる。それが、バトル開始の合図だった。

 

「ニャオハ、“このは”!!」

「ジュナイパー、“かげぬい”!」

「ニャオハーーーッ!」

「ジュナ!」

 

 ニャオハは首元から大量の葉っぱを放ち、ジュナイパーは羽矢を放つ。

 対するキチキギスは、体から目映い光を放ち、その光が“このは”と“かげぬい”にぶつかり、ぶつかり合った技同士が爆発を起こす。

 

「キチチッ!」

 

 すると、煙の中から飛び出したキチキギスが、紫色に光る翼をクロスさせ、そのままニャオハに突撃しようとする。それを見て、バチコが顔を強張らせる。

 

「“クロスポイズン”…!ジュナイパー、ニャオハを助けろ!」

「ジュナ!!」

「ニャアッ!?」

 

 バチコの指示を受け、ジュナイパーはニャオハを足で掴んで飛び上がる。目標を失った紫の斬撃が地面にぶち当たり、爆発が起きた。

 

「ありがとうバチコ!」

「気にすんな。けど、気を付けろよ。多分コイツはどくタイプ、くさタイプのジュナイパーとニャオハじゃあ相性が悪いぞ!」

「う、うん!」

 

 バチコの言葉に、リコは気を取り直してキチキギスと対峙する。

 “クロスポイズ”が空振りになったキチキギスが、再び羽ばたいて、体から桃色の光を纏う何かを振り撒き、それがニャオハとジュナイパーを包み込んだ。何事かと警戒を露にするリコとバチコだったが、次の瞬間に己のポケモン達が取った行動に、二人は同時に目を見開いた。

 

「ニャーーー!」

「ジュナーー!」

「にゃ、ニャオハ!?」

「ジュナイパーまで…!?」

 

 突如、ニャオハとジュナイパーが目をハートマークにして、キチキギスに向けて歓声を上げたのだ。

 突然のパートナー達の寄行にリコとバチコは揃って驚くが、その隙にキチキギスは、自分にメロメロになって無防備な二体に向け、翼による強烈な打撃をお見舞いした。

 

「ニャーーッ!!」

「ジュナッ!?」

「ニャオハ!!」

「ジュナイパー!大丈夫か!?」

 

 目前まで吹き飛ばされた相棒に駆け寄る二人。

 ニャオハとジュナイパーはキチキギスの“ダブルウイング”の衝撃で正気を取り戻したらしく、首を左右に振ってから、再びキチキギスと対峙するように前に立った。

 

「よかった……でも、今のは…?」

「多分、キチキギス(アイツ)の能力だな。あのフェロモンを嗅ぐとメロメロにされるんだろう…」

 

 ニャオハとジュナイパーの無事に安堵したリコは、直ぐに二人がおかしくなった事に首をかしげ、歴戦のトレーナーであるバチコがそのカラクリを見抜く。

 バチコの推測通り、キチキギスは体から魅惑のフェロモンを振りまき、人やポケモンを蠱惑に魅了する能力を持っている。故にそれを嗅いでしまった2体は、キチキギスにメロメロになってしまっていたのだ。幸いにも、効果抜群の技を受けた痛みで正気を取り戻したのだが、これは戦いにくいとしか言いようがない。

 

 バチコが思わず舌打ちしたと同時に、キチキギスは翼を羽ばたかせて再びフェロモンを放つ。それを見て、バチコがジュナイパーに指示を出す。

 

「ジュナイパー、風を起こせ!」

 

 指示を受けたジュナイパーは、大きな翼を羽ばたかせて強めの風を起こし、その風がキチキギスのフェロモンを押し返す。魅惑のフェロモンがジュナイパーの起こした風に押し返された瞬間、再び翼を発光させたキチキギスが、ジュナイパーに突撃してきた。

 

「“リーフブレード”で迎え撃て!」

「ジュナァイ!」

「キチッ!」

 

 ジュナイパーの“リーフブレード”と、キチキギスの“ダブルウイング”が激突する。ジュナイパーとキチキギスは、ギリギリと翼に力を込めながら、相手を押しきろうと鍔迫り合いのように顔を近くに寄せ合うが、ジュナイパーのパワーは巨大化したキチキギスとほぼ互角らしく、そのまま拮抗した状態が続くが…

 

「ニャオハ、“でんこうせっか”!」

「ニャーーー!!」

「キチチッ!?」

 

 ジュナイパーの股の間を猛スピードで潜り抜けたニャオハがジャンプし、そのままキチキギスに突撃を食らわせる。ジュナイパーに集中していたキチキギスはそれを察知することができず後退するが、その隙をバチコとジュナイパーが見逃す筈がなかった。

 

「“けたぐり”!」

「ジュナァ!」

「ギチチッ!?」

 

 ジュナイパーのキックが、キチキギスに炸裂する。かくとうタイプの技である“けたぐり”は、どくとフェアリーの複合タイプであるキチキギスには4分の1のダメージしか与えられないが、“けたぐり”は相手が重ければ重い程威力が上がる技だ。巨大化した今のキチキギスには、たとえ威力が減っていても、ダメージを与えて吹き飛ばすには十分だった。

 

「キチチチッ!」

 

 何度も攻撃を受けたキチキギスは怒りを露にし、翼を羽ばたかせてフェロモンを撒き散らしながら“マジカルシャイン”を放つ。“マジカルシャイン”が辺りに降り注いで爆発を起こし、その余波に怯んだジュナイパーとニャオハの周りに、キチキギスのフェロモンが漂った。

 

「ジュナイパー、息を止めて風を起こせ!」

「ジュナッ!」

 

 フェロモンを嗅いだら不味いことになるのは既に学習していたバチコが指示を出し、ジュナイパーは息を止めながら翼を羽ばたかせて風を起こす。爆煙とフェロモンが風によって吹き消されてくると…

 

「ニャ~!」

「えぇっ!?またニャオハがメロメロ担っちゃった!?」

「ちょっと遅かったか…!」

 

 再び目をハートマークにしたニャオハが、キチキギスに向かって歓声を上げていた。“マジカルシャイン”の爆発に怯んでしまったニャオハは、ジュナイパーのように息を止めることができず、キチキギスのフェロモンを嗅いで、キチキギスにメロメロになってしまったのだ。

 それを見たキチキギスは、無防備なニャオハに突撃し、紫色のエネルギーを纏わせた翼を振りかぶる。

 

「ニャオハッ!!」

「ジュナイパー!」

 

 リコが悲鳴を上げ、バチコがジュナイパーに呼び掛ける。パートナーの声を聞いたジュナイパーは全速力で飛び、キチキギスとニャオハの間に立つ。その瞬間、キチキギスの“クロスポイズン”が、ジュナイパーに炸裂した。

 

「ジュナッ!?」

「ジュナイパー、大丈夫か!?」

「ジュナ……ジュッ!?」

「ジュナイパー!?」

 

 バチコの呼び掛けに応えようとしたジュナイパーは、突如自分の体を蝕む苦しみに悶え、膝をつく。よく見れば、ジュナイパーの顔色が悪い。

 

「毒を浴びちまったのか…!」

「そんな…、ニャオハを庇って……」

 

 どうやら運が悪いことに、“クロスポイズン”の追加効果であるどく状態が発動してしまったらしい。

 

「ニャオハ、起・き・て!」

「ニャニャニャニャ…ニャッ!?」

 

 流石にこのままでは不味いと思ったリコは、未だにキチキギスにメロメロなニャオハを持ち上げてガクガクと揺らす。その勢いで、ニャオハは正気を取り戻した。

 

「リコ、このまま時間がかかるとこっちが不利だ。速攻で決めるぞ!」

「う、うん!ニャオハ、“このは”いっぱい!」

「ニャーハーー!」

「キチチ!?」

 

 このまま持久戦に持ち込まれては、毒の効果で体力を蝕まれてジュナイパーが倒れてしまうので、バチコは速攻でキチキギスを倒すことを決める。それに頷いたリコは指示を出し、ニャオハは大量の“このは”を放つ。

 ニャオハの事を小さい雑魚だと侮っていたキチキギスは、ニャオハの放った規格外の量の“このは”に驚き、大量の“このは”を浴びて、多少のダメージを受けると同時に視界が封じられてしまう。

 

「“リーフブレード”!」

「ジュナッ!」

「チチチッ!!」

 

 そこへ、“このは”の嵐に身を隠して接近したジュナイパーが緑の刃でキチキギスを切り裂き、不意を突かれたキチキギスは大きく吹き飛ばされる。

 そこで一度着地したジュナイパーが、バチコの指示で“かげぬい”を放ってキチキギスの動きを止めようとするが、その直前でキチキギスは“マジカルシャイン”を放ち、ジュナイパーとニャオハの周囲を爆発させ、ジュナイパーの“かげぬい”を不発に終わらせる。

 

「ニャオハ、“でんこうせっか”!」

 

 そこで、ニャオハが物凄いスピードで走りだし、未だに放ち続ける“マジカルシャイン”を避けながら、キチキギスとの距離を縮める。

 そして、ニャオハはキチキギスの目前まで来たところで高く飛び上がる。それを見て、キチキギスは、此方にまっすぐ向かってくるニャオハに再びフェロモンを放ってメロメロにしてやった所を狙ってやろうと翼を動かそうとする。

 

「キチキギスの顔に鋭く“このは”!」

「ニャーンッ!!」

「キッ!?」

 

 その瞬間、ニャオハは先程よりは圧倒的に小さい代わりに、鋭くスピードのある“このは”を至近距離でキチキギスの顔に放ち、予想外の攻撃が顔面に直撃し、キチキギスはフェロモンを出すのが遅れて怯む。その隙を、リコは見逃さなかった。

 

「今だよ、“ひっかく”!」

「ニャーー!!」

 

 その指示を聞き、ニャオハは姿勢を低くしてから、キチキギスに飛び掛かる。

 

シュババババッ!!

 

「キチチチチッ!!?」

 

 その瞬間、ニャオハは軽やかな動きでキチキギスの頭や羽といった、あらゆる角度でキチキギスを攻撃をした。“このは”でダメージを怯んでいたキチキギスは、ニャオハの攻撃を全て受けてしまう。

 そして驚いたのは、ニャオハのトレーナーであるリコも同じであった。

 

「今のって…!?」

「“アクロバット”……ひこうタイプの技だな」

「ニャオハ…新しい技を覚えたんだ!」

「ニャオハッ!」

 

 リコの声に、着地したニャオハは笑顔で応える。

 ニャオハの新技を食らったキチキギスは、確かなダメージを与えられたものの、戦闘不能には至っておらず、鋭い目でリコとニャオハを睨む。

 

「リコに負けてらんねーな……ジュナイパー!あッチ等も本気で行くぞ!」

「ジュナッ!」

 

 そう言って、バチコは懐から、モンスターボールの形をした宝石を取り出した。それを見て、リコは目を見開く。

 

「あれ……テラスタルオーブ!?」

 

 リコの言葉と共に、バチコの持つテラスタルオーブにに宝石のような煌めきを持つ光が凝縮されて行き、辺りの景色がやや暗くなり、テラスタルオーブが目映い光を放つ。

 

「いくぜジュナイパー……最強最高超キュートなテラスタル(こいつ)でな!」

 

 そう言って、バチコはテラスタルオーブをジュナイパーの頭上に向けて投げる。

 そして、ジュナイパーが宝石のようなものに包まれ、その宝石が弾ける。

 そこから現れたジュナイパーは、全身が宝石のように輝き、頭の上には風船の形をした宝石の冠(テラスタルジュエル)が乗せられた姿に変化していた。

 

「ひこうタイプの、テラスタル…!」

「ニャ~!」

 

 その姿に、リコとニャオハは目を見開いて驚いていた。

 そしてバチコは、リコ達と同様に驚いた様子でジュナイパーを凝視するキチキギスを見据え、鉄砲のような形にした指を向けながら、ジュナイパーに指示を出した。

 

「“ブレイブバード”!」

「ジュナーーーッ!!」

 

 その瞬間、ジュナイパーの頭のテラスタルジュエルから目映い光が溢れ、空中にいるキチキギスに向かって一直線に飛び上がる。キチキギスは「キチチチチッ!!?」と叫びながら巨体を動かし、なんとかジュナイパーの突撃をかわす。しかし、ジュナイパーはキチキギスの上空数十メートルで一度と丸と、体に黄緑色のオーラを纏い、翼を閉じた状態で急降下して、キチキギスに突撃していった。

 その迫力に気圧され、硬直したキチキギスの鳩尾に、黄緑色のオーラを纏ったジュナイパーが突撃した。

 

「ジュナーーーッ!!!」

「キチチギチチチッ!!!?」

 

 そのまま、ジュナイパーは巨体のキチキギスを巻き込んで、バチコ達がいる場所から少し離れた場所に落下し、隕石が墜落したような衝撃波を起こす。その衝撃波をと巻き上げられた土煙にリコ達が顔を腕で隠し、やがてそれが収まってくると、リコ達は恐る恐る顔を上げる。

 

「ジュナ……」

「キチ……チ……」

 

 そこでは、“ブレイブバード”によって作り出されたクレーターの中心で、“ブレイブバード”の反動と毒で体力を消耗しながらも威風堂々と立つジュナイパーと、その足元で倒れて目を回しているキチキギスの姿があった。

 

「よくやった、ジュナイパー」

「ジュナ!」

「!見て!」

「?…!キチキギスが小さく……」

 

 ジュナイパーがバチコの元まで戻り、テラスタルから元の姿に戻った瞬間、キチキギスを指差すリコから呼び掛けられたバチコは、キチキギスを見る。

 するとあら不思議、戦闘不能になったキチキギスが、まるで某ネコ型ロボットの秘密道具の懐中電灯を浴びたかのように、どんどん縮んでいくではないか。

 やがてキチキギスが元のサイズに戻ると、カランコロンという音を立てて、何かが転がり落ちた。それを見たニャオハが走りだし、クレーターの中に転がっているそれを拾い上げ、それをリコに差し出した。

 

「これって……」

「オーガポンのお面、だな」

 

 それは、怒りの表情を浮かべた轟々と燃える炎のような鬼火のような赤いお面だった。恐らくこれが、オーガポンのお面の一つだろう。

 

「これで一つ取り返したわけだな」

「うん。それじゃあこれからどうしよう……」

「取り敢えず、楽土の荒地に行ってみるか?オーガポンも同行してんだろうし、このまま返しに行けば良いだろうよ」

「そ、そうだね!」

 

 そう言って、バチコはジュナイパーをボールに戻し、代わりにチルタリスを出し、その背中に乗る。リコもニャオハを抱えながらバチコの後ろに乗り、チルタリスは楽土の荒地を目指して飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は代わり、フジの原。

 

「ここがフジの原かぁ~」

「ホゲ~!」

 

 辺り一面に生い茂る草原に、穏やかに暮らす【モルペコ】や【コジョフー】といった野生のポケモン達。そんな光景に、ロイとホゲータは興味深そうに辺りを見渡す。

 そんなロイに苦笑しながら、キャップを肩に乗せたフリードは、スマホロトムを手にしてロイに声をかけた。

 

「ロイ、マシマシラはここから少し歩いた先の池の近くにいるらしい。昼寝から目を覚まして何処かえ行く前に、マシマシラを倒してお面を取り返そう」

「うん!」

 

 そう言って、ロイとフリードはフジの池を目指して南西へ向かい、ちょっとした坂道を上がっていくと、フジの池が見えてきた。フジの原と同じように草木が生い茂り、藤の木の根本には【オドリドリ(まいまいスタイル)】が生息している。

 

「フリード!あれ!」

「!どうやらまだいたらしいな……」

「マシマシラ!オーガポンのお面を返せ!」

「……マ?」

 

 すると、池の畔で、黒いニホンザルのようなシルエットを発見したロイがそのシルエットを指差し、フリードは不適な笑みを浮かべる。

 その声に反応したのか、その黒いシルエット──【マシマシラ】は、ゆっくりと起き上がり、ロイとフリードに顔を向けた。

 その全容を見たロイとフリードは、驚愕する。

 

「で、でっかい!!?」

 

 そう、ロイが叫んだ言葉の通り、マシマシラの体はキチキギスと同様に、異常にでかくなっていたのだ。

 ロイと同じように巨大化したマシマシラを見て驚いていたフリードは、ふと頭の中で思い浮かんだ可能性を呟いた。

 

「栄養満点のキタカミ餅を食べて、体がここまで大きくなったのか…!?」

「えぇっ!?そんなのアリ!?」

 

 フリードの言葉にロイが思わず声を出す。無理もないだろう。オーガポンを助けに行くために恐れ穴に行ったのはほんの一時間程前。その時、すでにキタカミ餅を食べていたイイネイヌ達のサイズは普通だった。だというのに、今はここまででかくなっている。たった一時間でここまででかくなれるキタカミ餅には何が入っているんだとしか言いようがない。

 

「でも、やるしかない!行くぞ、ホゲータ!」

「ホゲゲッ!」

「リザードン、出番だ!」

「リザァッ!!」

 

 そんな巨大化したマシマシラに対し、ロイはホゲータを、フリードはリザードンを繰り出した。

 

「マシキャー!?」

 

 相手がやる気だと理解したマシマシラは一度、鉢巻きのように巻いている中連縄を浮かび上がらせて、奇妙なポーズを取って白目を向きながら顔を赤くする。やがてその動作を追えると、マシマシラはその場で飛び上がって空中で回転し、歌舞伎役者のようなポーズを取った。

 

「ホゲータ、“ひのこ”!」

「リザードン、“かえんほうしゃ”!」

 

 戦闘が開始され、ホゲータとリザードンは得意の炎攻撃を放つ。ホゲータが放った炎の弾と、リザードンが吐いた炎がマシマシラに迫るが、マシマシラはそのばでぴょーん!と跳び、二つの炎を避ける。

 

「体躯に似合わず素早いな……リザードン、“ドラゴンクロー”!」

「ホゲータ、“たいあたり”!」

 

 接近戦に持ち込もうと、リザードンは爪オレンジ色の光を纏わせて空を飛び、ホゲータは全力疾走しながら、それぞれマシマシラに突撃していく。

 

「マシャシャーッ!!」

「ッ!マズイ…!リザードン、ホゲータを連れて避けろ!」

「ガァッ!」

「ホゲ!?」

 

 その瞬間、マシマシラは足元から毒々しい色の津波を発生させ、その津波が迫ってくるのを見たフリードが指示を出し、リザードンは技を中断させ、マシマシラに突撃しようとするホゲータを抱えて空を飛ぶ。

 標的を失った毒々しい津波が地面の草を濡れさせる。

 

「“ヘドロウェーブ”…厄介な技を使うな…!リザードン、“エアスラッシュ”!」

「僕達も!ホゲータ、“ひのこ”!」

 

 広範囲を攻撃でき、低確率ではあるが相手をどく状態に出来る“ヘドロウェーブ”を回避したリザードンは、空中で翼を羽ばたかせて風の刃を無数に放ち、リザードンの頭の上に乗ったホゲータも連続で炎の弾を放つ。

 

「マシッキャ~!!」

 

 そこで、マシマシラが念力を込めると、マシマシラに向かっていた風の刃と炎がピタリと止まり、まるで反発した磁石のようにリザードンとホゲータに襲いかかる。

 

「ッ、リザードン!“かえんほうしゃ”!」

 

 フリードはそれに少しだけ驚くも、直ぐに気を取り直して指示を出す。リザードンは口から強力な炎を吐き、風の刃と炎弾を防ぐ。

 

「ホゲータ、“じだんだ”だ!」

「ホゲゲゲゲ…ゲッ!」

「マシャッ!」

 

 ホゲータは地面を踏み荒し、地面から飛び出した瓦礫がマシマシラに迫るが、マシマシラは再び“サイコキネシス”で瓦礫をホゲータとリザードンに向けてに打ち返す。

 

「(ッ、対応が早い!)…リザードン、“エアスラッシュ”!」

 

 まるで()()()()()()()()()()()()()()かのように自分達の攻撃を無傷で対応していくマシマシラに内心驚きながらも指示を飛ばすフリード。そして、ホゲータの技を奪って迫り来る瓦礫に対し、リザードンは翼から放った風の刃で迎え撃ち、衝突した瓦礫と風が爆発を起こす。爆発の際に起きた煙が辺り一面に広がり、お互いの姿を隠す。

 

「シッラァッ!」

「ホゲェエッ!?」

「!?ホゲータ!!」

 

 その時、禍々しい黒いエネルギー弾が煙の中から飛び出し、それが直撃したホゲータは吹き飛ばされるが、何とか体勢を立て直し、地面から煙を巻き上げながら、しっかりと地面に立った。

 

「リザードン、“シャドーボール”が飛んできた方向に“ドラゴンクロー”!」

「グァアッ!!」

「サルッ!?」

 

 その時、“シャドーボール”が飛んできた方向から位置を割り出したフリードが、爆煙の中に潜んでいるであろうマシマシラに向けて技を繰り出すように指示し、リザードンは自慢の飛行スピードで“シャドーボール”が飛んできた方向を進み、煙の中から見えるマシマシラを、ドラゴンの力を纏わせた爪で切り裂いた。

 マシマシラはそれに対応ができず、リザードンに胸辺りを切り裂かれて大きく後退する。

 

「おぉ!当たった!」

(……アイツ、今なんでリザードンの攻撃に対応できなかった?視界が封じられていたからか…?)

 

 ロイは先ほどから自分達の攻撃を無傷で捌いてきたマシマシラに初めてダメージが入ったことに喜ぶが、フリードはやけに簡単に攻撃をいれたれた事を疑問に思い、マシマシラを観察するように凝視する。

 その時、マシマシラは中連縄を浮かして白目を向きながら顔を赤くするポーズを取った。 

 

(…あのポーズ……最初にもやっていたな…なにか意味があるのか?)

 

 それを見たフリードは、マシマシラのこのポーズには意味があるのではないかと察する。すると、ポーズを終えたマシマシラが、なにかを思い付いたような表情になり、肩を震わせながら笑い始めた。

 

「マシシシシシ…」

「“わるだくみ”か……ロイ、マシマシラの特殊技は更に強力になっているぞ。気を付けろ!リザードン、ホゲータとは別の方向から“エアスラッシュ”」

「う、うん!ホゲータ、“じだんだ”!」

 

 マシマシラの行動が自身の特攻を高める“わるだくみ”だと気づいたフリードがそうロイに呼び掛けてからリザードンに指示を出す。リザードンは高く飛び、ホゲータと挟み撃ちになるような形で風の刃を放つ。ホゲータも、ロイの指示を聞いて地面を踏みならし、再び瓦礫をマシマシラに向けて放つ。

 

「シラァッ!」

 

 左右から迫り来る攻撃に、マシマシラは“サイコキネシス”でホゲータの放った瓦礫を操り、風の刃と衝突させることで防いだ。

 

「ホゲータ、“たいあたり”!」

「ホゲゲゲー!」

「マシッ!」

 

 そこでホゲータはマシマシラに突撃し、マシマシラの腹に激突する。しかし、相手が巨大すぎるゆえかあまりダメージにはならず、直ぐに弾かれてしまう。

 

「まだまだ!ホゲータ、“ひのこ”!」

「リザードン、“かえんほうしゃ”!」

 

 ホゲータとリザードンが吐き出した炎が再びマシマシラに迫るが、マシマシラは足元から毒の津波を発生させ、二人の炎をかき消し、毒の津波がリザードンとホゲータを飲み込んだ。

 

「ホゲータ!」

「リザードン!」

「ホ、ホゲ…」

「リザァ……」

「!どく状態か…!」

 

 毒の波を受けたホゲータとリザードンは、顔色を悪くしてやや苦しんでいる様子だった。“ヘドロウェーブ”の追加効果であるどく状態だ。これでホゲータとリザードンは、時間が経つに連れてどんどん体力を消耗する状態となってしまった。

 そこで、リザードンとホゲータが膝をついた隙をみたマシマシラが、中連縄を浮かして謎のポーズを取る。これで三度目だ。

 

(…!そう言うことか……)

 

 そこでフリードは、マシマシラの謎のポーズの意味を理解する。判明した能力は驚きだが、それならばマシマシラの対応の早さにも説明がつく。

 

「(だとしたら、次にあのポーズをした瞬間が狙い目だな…)リザードン、まだやれるな!?」

「ガウッ!」

 

 フリードの掛け声に、リザードンは毒に体を蝕まれながらも強気に返す。後ろに控えているキャップに交替して貰う手もあるが、()()()()()()を考えればリザードンの方が有効だ。見れば、ホゲータもまだやれるようで、ロイの呼び掛けに応えるように立ち上がった。

 そしてフリードは、再び“わるだくみ”を使って自分の特攻を上げているマシマシラの姿を見て、ギアを上げていくことにする。

 

「ロイ、時間をかけると二重の意味で厄介だ!速攻で決めるぞ!」

「う、うん!ホゲータ、“ひのこ”!」

「リザードン、“エアスラッシュ”!」

 

 ホゲータは再び炎の弾を吐き、リザードンは風の刃を無数に放つ。だがマシマシラは、それを先程よりも大きくなった“シャドーボール”で迎え撃つ。“わるだくみ”の二段使用の効果で更に威力が上がっているため、巨体のマシマシラは一つの技で二人分の技を防いだ。

 

「ホゲータ、“たいあたり”!」

「リザードン、“ドラゴンクロー”だ!」

「ホゲーー!」

「リザァッ!!」

 

 ホゲータはマシマシラに向けて突撃して行き、リザードンは爪にエネルギーを纏わせてマシマシラを切り裂こうとする。しかし、マシマシラはその巨体には似合わない動きで、ヒョイヒョイとホゲータとリザードンの攻撃をかわしていく。

 

「ホゲータ、連続で“ひのこ”!」

「リザードン、“ひのこ”を間を通って“ドラゴンクロー”!」

 

 ホゲータは連続で炎の塊を吐き、リザードンはその“ひのこ”と“ひのこ”の間を飛びながらマシマシラに突撃し、竜の爪で切り裂こうとする。

 マシマシラは再びその巨体には似合わない動きでピョンピョンと飛び、ホゲータの“ひのこ”とリザードンの“ドラゴンクロー”の猛攻を避ける。どく状態になっているホゲータとリザードンは、動けば動くほど、毒に身体を蝕まれて、体力を消耗していく。

 そうして攻防戦を続けていると、リザードンの“ドラゴンクロー”がマシマシラの頬を掠め、マシマシラはそれに焦りを浮かべて、その場で大きくジャンプ。

 

「ロイ、今だ!」

「え!?う、うん!ホゲータ、“ひのこ”!!」

「ホ…ゲーーーッ!!」

「マシッ!?」

 

 フリードに促されて、ロイは少し戸惑いながらもホゲータに指示を出す。ホゲータは、残る体力を振り絞って、口から一際大きい“ひのこ”を放つ。

 中連縄を浮かせる謎のポーズを取ろうとしたマシマシラはそれに対応が出来ず、ホゲータの特性“もうか”も重なってこれまでよりも遥かに威力が上がっている“ひのこ”の直撃を受け、マシマシラは体勢を崩して尻餅をつく。

 

「マシャ……マッ!?」

 

 立ち上がろうとしたマシマシラは、突如自分の体を押そう熱に顔を歪め、再び尻餅をついてしまう。十分の一の確率で起こる“ひのこ”の追加効果、やけど状態だ。

 それを見たフリードは「よくやった」とロイに声をかけると、フライトジャケットからあるものを取り出した。

 

「リザードン!可能性を越えろ!」

 

 その言葉と同時に、フリードが手に持つテラスタルオーブが光輝く。

 そして、フリードが輝きを放つテラスタルオーブをリザードンの頭上に向けて投げると、リザードンの体が鉱石に包まれ、弾ける。

 現れたリザードンは、赤黒い輝きを放つ宝石のような体に、頭にはパンクなフキダシの形をしたテラスタルジュエルが乗せられた姿に変化していた。

 

「「……ッ!」」

「マ、マシャ…」

 

 その圧倒的な輝きを放つリザードンの姿に、ロイとホゲータは目を見開き、マシマシラは体に残る熱も忘れてリザードンの姿に気圧されて後ずさる。

 そんな隙だらけのマシマシラに、フリードは大声で、リザードンに指示した。

 

「行くぞリザードン…“テラバースト”!!」

「グォオオオオオオッ!!!」

「マシシャシャシャッ!!?」

 

 次の瞬間、リザードンの口から放たれた赤黒い竜巻状のエネルギーが、マシマシラに襲い掛かる。呆然としていたマシマシラはこれを避けることが出来ず、光線に飲み込まれ、大爆発を起こした。

 

「マ……マシ……」

 

 爆煙が晴れると、そこには目を回して仰向けに倒れているマシマシラの姿があった。どう見てもこれ以上の戦闘は不可能だった。

 

「うぉ~!なんだあの技!」

「ホゲ~!」

 

 リザードンの圧倒的な力に、ロイとホゲータは目を輝かせる。

 そして、テラスタルから元の状態に戻ったリザードンを、フリードはモンスターボールに戻した。

 

「リザードン、よくやったな。……思った通りだったな」

「?思った通りって?」

 

 フリードの言葉に疑問をもったロイが、ホゲータを抱き抱えながら歩み寄って訪ねると、フリードはこの戦闘の間に知り得たマシマシラの秘密を暴露した。

 

「おそらく…マシマシラには、少し先の未来を見る力があるんだろう」

「えぇっ!?未来を!?」

「そうだ。だから俺達の攻撃を全てかわすことが出来ていたんだ。…だが、一度に見える未来には限界があったんだろう」

 

 フリードの推測通り、マシマシラには少し先の未来を見る能力を持っていたのだ。リザードンとホゲータの攻撃を余裕綽々といった風に捌いていられた理由もこれである。

 しかし、チートな能力ではあるが、欠点は存在していた。それは、見える未来には限界がある事だった。煙に紛れたリザードンの“ドラゴンクロー”があっさり直撃したのも、視界が効かなかったからではなく、ちょうどその時がマシマシラが見える未来の限界だったのだろう。

 そしてマシマシラは、未来を見る時、一度動きを止めて、中連縄を浮かせて白目を向いて顔を赤くするとい行動がどうしても必要だったのだろう。

 それを見抜いたフリードは、ホゲータと共にがむしゃらに攻撃しているように見せて、マシマシラが見た未来の終わりが来るのを待っていたのだ。そして“ドラゴンクロー”が掠った時、ホゲータに技を使わせて隙を作り、マシマシラがどくとエスパーの複合タイプだと察していたフリードは、効果抜群のあくタイプのテラスタル(切り札)で一気に倒したのだ。

 

「それなら、最初から言ってくれれば良かったのに…」

「悪い悪い。万が一マシマシラに話を聞かれて対策を練られちゃ不味いと思ってな…」

「!ホゲゲ!」

「ピカチュー!」

 

 その時、バトルを見守っていたキャップとロイの腕の中にいるホゲータがマシマシラを指差し、二人は地面に倒れるマシマシラに目を向ける。

 

 すると、マシマシラはキチキギスと同じように、キタカミもちで巨大化していた体がどんどん縮んでいくのだ。やがて元のサイズに戻ったマシマシラから、あるものが落っこちた。

 

 ロイがマシマシラに歩み寄ってそれを拾い上げて見ると、その正体は、ハートの形をした悲しげに涙を流す女性の顔を象ったような青いお面だった。

 

「これは……」

「恐らく、マシマシラが持っていたオーガポンのお面なんだろうな」

「そっか!やったなホゲータ!」

「ホーゲー!」

 

 ロイとホゲータは嬉しそうに声を弾ませ、フリードとキャップも自然と笑みを浮かべる。

 

「それじゃあ、ここで何時までもいるわけにも行かないからな…」

 

 そう言って、フリードはスマホロトムで仲間達と連絡を取る。数回コールしたあと、画面にバチコの姿が映し出された。

 

『よぅ、フリード。連絡してきたって事は…そっちも終わったってことか?』

「やっぱりもう終わらせてたか……」

 

 どうやらキチキギスを相手取っていたリコとバチコのコンビは既にバトルを終わらせてお面を取り返していたらしい。

 

「それで、お前は今なにしてんだ?」

『このままオーガポンにお面を返しに、イルマがいる楽土の荒地に向かってる途中だ』

「よし…俺達もそこに向かう。だが、リザードンが思いの外負傷してるからな…少し遅れるかもしれないが」

『気にすんな。もし先にイルマと合流したらあッチの方から連絡する』

「わかった」

 

 そう言ってフリードは通話を切ると、後ろにいたロイに話し掛けた。

 

「ロイ、どうする?ホゲータはかなり消耗してるみたいだし、先にスイリョクタウンに戻る手もあるが…」

「大丈夫!オーガポンにお面渡したいし!ホゲータもまだやれるよな?」

「ホゲ!」

 

 ロイの言葉に応えるホゲータ。どうやら、気合いで毒を治したようだ。

 そんなホゲータの根性とロイの言葉に笑みを浮かべながら、フリードとロイはイルマとゼイユがいるであろう楽土の荒地に向けて駆け出していった。

 

 




ニャオハにアクロバットを習得させた理由としては、他の二次創作でアニメで習得していない技を獲得している物が幾つかあった為、この作品でも4つ目の技を修得させることにしました。
ホゲータも習得させようかと考えていたのですが、原作でかえんほうしゃとチャームボイスを覚えていて、他にどんな技覚えさせるのかが決められなかったので、新技習得は保留にすることにしました。

次回、イイネイヌ戦です。

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