魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター   作:MTHR

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今回から章タイトルを付けました。

作者がポケットモンスター SMをプレイしていた時、アローラの御三家で選んだのはニャビーでした。USMではモクローです。


2話 相棒ポケモン

「ハァ~……」

「イ、イルマ。元気出しなよ……」

 

 入学式を終え、自身が配属されたクラスの教室の自分の机にうつ伏せとなって暗い雰囲気のイルマが、それはそれは深い溜め息を吐いた。その傍らでは、同じクラスでイルマの右隣の席となったリコが、苦笑いをしながらイルマを慰めている。

 

 イルマが落ち込んでいる原因は、言わずもがな入学式でのサリバンの寄行のせいで、イルマが配属されたクラスの生徒達から、入学式からずっとイルマにチラチラと視線を向けられている事である。

 イルマは別に目立ちたく無い訳で無いが、逆に目立ちたい訳でもない。問題なのは、入学式でセキエイ学園理事長サリバン、つまりイルマの祖父が、入学式で職務(理事長挨拶)そっちのけで孫自慢したことだ。授業参観や三者面談にやって来た親が子供に恥ずかしい思いをさせるアレと同じ原理である。イルマのメンタルHPは既にゼロに近い。

 

 その時、ズカ、ズカ、ズカ……と、廊下の向こうから、靴音か響いて来た。生徒は全員席に座っている。つまり、このクラスの担任となる教師が来たのだと、生徒は教壇の方に顔を向ける。

 教室の扉を勢いよく開け、その人物の姿が露になった。

 

「粛に」

 

 現れたのは、片手にノートを抱えた長身の男性だった。

 紫色の髪色で、まるで角の様にも見える独特な髪型をしている。睫毛の長い三白眼の鋭い目つきに、如何にも不機嫌と言うような顔立ちで、眉間に深~いシワがよっている。

 

 そんな恐ろしい形相の大人の登場に、生徒達は少しだけ顔を青くして静まり返った。しかし、男は気にした様子もなく自己紹介を始めた。

 

「私が今年からこのクラスを担任する事になったカルエゴだ」

 

 教室の黒板に名前を書いて簡潔に自己紹介する教師【カルエゴ】。

 何処か高圧的で、言葉遣いも教師としてはかなりズレている気がするが…誰もそうは言わない。怖いから。

 

「それでは早速、今日の授業内容を説明する。各自、この説明パネルを読め。……無言で、だ」

 

 カルエゴは、教壇にダンッ!とピンクの可愛いパネルを立てた。生徒達はその気迫に気圧されつつも、言われた通り、そのパネルを無言で読む。

 

 

『簡単!初回授業説明!』

 

① 皆のスマホロトムにポケモン図鑑をインストール!

② 皆の相棒ポケモンを配布!

③ その後は自由時間!相棒のポケモンと友情を育もう!

 

 

バシーンッ!!

 

 生徒達が説明を読み終えるや否や、カルエゴは突然そのパネルを教壇に叩き付ける。生徒達がビクッと肩を震わすが、カルエゴは何処か吹く風だ。

 

「概要は以上だ」

 

(叩き落とした…)

(嫌いなんだ、あの可愛い説明セット…)

 

 カルエゴに似合わないパネルだと思ったが、恐らく無理矢理押し付けられた物なのかもしれない。生徒達は色々察して、特に何も言わなかった。

 

 その後、生徒達は自身の持つスマホロトムにポケモン図鑑をインストールする。

 

「ここまでは良いな?スマホロトムを起動してみろ。これで貴様等のポケモン図鑑が使えるようになった」

 

 そう言ったカルエゴ教室の扉に目を向けると、教室のドアが開き、さこから赤い狼の姿をしたポケモン──【ルガルガン(まよなかの姿)】が、大量のモンスターボールが入った箱を運びながら教室に入ってきた。

 生徒達の視線が、スマホロトムからルガルガンに注がれる。

 

「次は、貴様等の相棒となるポケモンを配布する。呼ばれた奴は前に来い。……粛にな」

 

 そうして、ポケモンの配布が始まり、生徒達は次々に、自分の相棒ポケモンと対面していった。

 フシギダネ、チコリータ、ツタージャ、アチャモ、ヒコザル、フォッコ、ワニノコ、ポッチャマ……と、様々なポケモンが現れる。

 そして、今度はイルマの前の席に座るアリスがモンスターボールを受け取り、机の前でボールを開けた。

 

ポンッ!

 

「カゲッ!」

 

 出てきたのは、オレンジ色の皮膚に、腹部がクリーム色の直立した蜥蜴の姿をした、とかげポケモンの【ヒトカゲ】だった。

 

『ヒトカゲのデータが、新しくポケモン図鑑に登録されました』

 

「ヒトカゲ、か。私はアリスだ。よろしく頼む」

「カゲェ♪」

 

 アリスが自己紹介をしながら机の上に乗るヒトカゲの頭を撫でると、ヒトカゲも気持ちが良さそうに目を細める。

 

「次、イルマ」

「はい!」

 

 とうとうイルマの名が呼ばれ、イルマは教壇の前まで歩くと、自分の名前が書かれた箇所にあるモンスターボールを手に取り、席に戻る。

 モンスターボールのスイッチを押すと、勢いよくボールが開き、中から青い光が飛び出して、机の上で生物の形を成すと、光が弾けた。

 

ポンッ!

 

「もふっふぅ!」

 

 ベージュ色の丸っこい体に、小さな翼と、首元(に見える)の部分には葉っぱのような模様のある、フクロウの姿をしたポケモンだった。

 すると、イルマの青いスマホロトムが起動した。

 

『モクローのデータが、新しくポケモン図鑑に登録されました』

 

「へぇ~。モクローって言うんだ」

 

 興味深そうにまじまじと自分の相棒ポケモン──【モクロー】を見つめるイルマ。モクローも、イルマの顔をじっと見つめている。

 やがて、数秒間イルマを見つめていたモクローは、人懐っこい笑みで、イルマに笑いかけた。それを見たイルマはパアッと顔を明るくして、優しくモクローを抱き上げた。

 

「よろしくね、モクロー」

「もふぅっ!」

 

 イルマの言葉に、くすぐったそうにしながらも頷くモクロー。

 

 イルマはふと辺りを見渡してみると、イルマの二つ隣の席のアンが自身の相棒(パートナー)となった【ミジュマル】と抱き合っている姿と、自身の相棒ポケモンが入っているモンスターボールを手にして自身の席に戻ってきたリコの姿が見えた。

 すると、リコのモンスターボールが開き、中に入っていたポケモンがリコの机の上に姿を現した。

 

ポンッ!

 

「ニャ~…」

 

『ニャオハのデータが、新しくポケモン図鑑に登録されました』

 

 出てきたのは、黄緑色の体毛に葉っぱのような模様を持つくさねこポケモン【ニャオハ】だった。

 

 リコはその愛らしさにトキメキながらも、恐る恐るという風にニャオハに頭へと手を伸ばす。

 そして、手を差し出されたニャオハは──リコの手を引っ掻いた。

 

「─ったッ!!」

「リコ、大丈夫?」

「う、うん…大丈夫……」

 

 手の甲に引っ掻き傷が出来て思わず手を引っ込めるリコに、イルマが少し慌てた様子で何処からか取り出した絆創膏を差し出す。

 リコがそれを受けとると同時に、ニャオハは机から飛び出し、そのまま教室の外へ走り出して行った。

 

「えっ、ちょっ、ちょっと待って!」

「って、リコもニャオハも何処行くのー!?」

 

「オイ、貴様等!授業が終ったからといって挨拶もせずに教室を出るな!!そして廊下を走るな!!」

 

 廊下を飛び出したニャオハを追いかけてこっそり教室を抜け出し、廊下を走り出したリコと、リコとニャオハを追いかけるイルマとモクロー。背後から響くカルエゴの怒声に慄きつつも、二人と一匹は逃げるように廊下を走り抜けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どこ行ったんだろう……」

「もふ?」

 

 その後、モクローを肩に乗せたイルマは、ニャオハを追ったリコを追いかけて校舎の外まで出てきていた。途中でリコを見失ってまい、キョロキョロと辺りを見渡しながらリコとニャオハを探している。

 

「ニャオハ!そんな所にいたら危ないよ!」

 

「?」

 

 その時、上から探していた人物の声が耳に入り、イルマは空を見上げる。すると、そこには屋上の屋根の上で丸くなって寝ているニャオハと、向かい側の柵の前でニャオハに呼び掛けているリコの姿が見えた。

 すると、屋根の上で眠っていたニャオハが起き上がり、なんと屋根の上からリコの方へジャンプしたのだ。

 

「待って!そんな!ダメダメダメ!!!」

 

 リコは慌てて、柵から身を乗り出してニャオハ受け止めようとして……

 

「フゲッ!?」

 

 ニャオハは、リコの顔面に着地した。

 しかし、その衝撃で身を乗り出してリコはバランスを崩して前のめりに倒れ、咄嗟にニャオハを両手で抱き抱えながら、屋上から落下した。

 

 その真下には……目を丸くしたイルマの姿が。

 

「きゃあぁああああああっ!!!」

「えっ!?えっ!?」

 

 

ズドーーンッ!!

 

 

「グエェッ!!?」

「ふぎゃっ!?」

 

 蛙が潰れたような悲鳴と、尻尾を踏まれた猫のような悲鳴が響き渡る。

 リコは無事であった。ピンポイントにリコの真下にいたイルマがクッションになったことで、命に別状はない。流石に無傷とは行かず、イルマと激突した箇所が痛み、服も汚れて身体も衝撃で痺れているが、骨は折れてもいなければ傷も入っていない。

 

「イッタタタ……リコ、大丈夫?」

「うっ、うん…なんとか……。イルマの方こそ、大丈……ぶ?」

 

 やや痛む身体に顔をしかめながらも、二人はお互いの安否を確認する。

 

 …と、そこで二人は気付いてしまった。お互いの顔が、とてつもなく近い事に。どれくらい近いかと言うと、お互いの吐く息を肌で感じ取れるくらいに。

 更に、二人の体勢もよろしくない。イルマがリコが衝突した衝撃で仰向けに倒れ、そこにリコが馬乗りになっている。第三者が見れば、リコがイルマを押し倒した様に見えるし、そう思われても無理はない。

 

 少しの間、身体の痛みも忘れてお互いの顔を眺めながらパチクリと瞬きしていたリコとイルマだったが、やがてお互いの体勢を完全に理解すると、まるで最初から示し合わせたかのようにボンッと音が鳴る勢いで顔を沸騰させる。

 そして、二人は反発する磁石のように飛び退いてお互い距離を取った。

 

「ゴッ、ごごごごごめんねイルマ!!痛かった!?」

「だ、だだ大丈夫……////」

「そ、そそそう!!それじゃあ私、もう行くねッ!!」

 

 耳まで茹で蛸のように真っ赤になった顔で、目をグルグルと回しながらあたふたするリコと、同じく真っ赤になって俯きながらも必死に声を絞り出すイルマ。

 そんな二人を、モクローはリコが落下してきた瞬間に避難した木の上から、ニャオハは二人の直ぐ近くで、呆れたような目で見ている。すると、ニャオハは直ぐにどうでもよくなったのか、踵を返して近くにあった茂みの向こうへと去っていった。

 そして直ぐに、リコは茂みの向こうへと去っていったニャオハを追って、逃げるよう茂みの向こうへ走っていった。

 

「…………はぁ~~~~~~……」

 

 暫くの間、リコが走り去っていった方を眺めていたイルマは、やがて大きく息を吐きながら、顔を手で抑えて踞った。顔は未だに耳まで真っ赤であり、頭から湯気が出ている。

 

「………今日はもうリコの顔見れない」

「もっふぅ~♪」

「え?どうしたのモクロー……」

 

 イルマは体育座りのような姿勢のまま、ものすごく小さな声で誰に向けるわけでもなく呟いた。

 そんなイルマの肩に乗り、ニヤニヤと表情で頬をツンツンと翼で突いてくるモクローに、イルマは困惑したような表情になった。

 

 

 

 




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