魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター   作:MTHR

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新学期への準備や、新しく始めたアルバイト、就活等色々と忙しい日々が続き、執筆が遅れました。

今回はタイトルの通りになっております。稚拙な文章が多いと思われますが、ご了承下さい。


32話 ゲット!オーガポン!

 穏やかな日差しに、イルマは目を覚ました。

 仰向けに倒れていた身体を起き上がらせると、目をゴシゴシと手で擦る。時計で時間を確認してみると、朝の七時を指している。辺りを見渡すと、ブレイブアサギ号のイルマの自室だ。

 

「ここって僕の部屋…あれ?僕確かともっこプラザにいたはず…」

「ぽにぃ!」

「わっ!オーガポン!?」

 

 未だに眠気が残る頭で何故ここにいるのかを考えようとしていると、突如隣から何かが飛び付いてきた。そちらに顔を向けると、オーガポンが自分に抱き付いていた。

 取り敢えず普段着の白スーツに着替え、オーガポンを連れて部屋に出ると、偶然廊下を歩いていた人物とバッタリ鉢合わせた。

 

「おぅ、起きたか」

「ジュナ」

「もふぅー!」

 

 鉢合わせた人物は、バチコだった。彼女の隣にはジュナイパーがおり、肩の上にはイルマのパートナーであるモクローが乗っており、モクローはオーガポンと共に部屋から出てきたイルマの姿を見ると、声を上げてイルマに向かって飛び付いた。

 モクローを腕に止まらせたイルマは、モモワロウ戦から回復したらしいモクローの頭を撫でながらもバチコに質問する。

 

「師匠…僕、いつの間にか寝ちゃったみたいですけど……あの後どうなったんですか?」

「おぅ。お前が寝てから色々あったんだが、取り敢えずマードック達の洗脳は解けてるぜ。あッチ等はお前を連れて3時間くらい前に戻ってきたんだよ。……ったく、師匠に手間ばかりかけさせやがって…」

「す、すみません…。そういえばリコ達は?」

 

 気が緩んだせいで外で爆睡してしまい、そのせいでバチコ達に苦労を掛けしまったイルマは、申し訳なさそうに頬を掻きながら謝罪した後、一緒に戦ってくれたリコ達は今どうしてるか聞いてみる。

 

「リコ達は今自室で寝てるよ。ガチグマの調査は今夜再会するらしーからな。後2時間くらいしたら起きた方がいいかもしんねーけどな」

「なる程……あれ?でもなんでオーガポンがここにいたんですか?」

「着いてきたんだよ。よっぽどお前が気に入ってるみたいだな」

 

 リコ達が船に戻ったのは3時間前だというので、まだ寝ていても仕方ない。とはいえ、昼頃に起きるのも生活リズムが崩れかねないので、9時辺りには起こす気らしい。

 バチコもまだ眠いのか、大きな欠伸をする。どうやら彼女はトイレに行くために部屋から出てきただけらしく、部屋に戻る途中でモリーの治療を負えてイルマの部屋に戻ろうとするモクローと鉢合わせ、ついでで連れていこうとしていたらしい。

 そこまで説明したところで、再び睡魔が襲ってきたのか、自身の部屋に向かってあるき出そうとするバチコとジュナイパーは、ふとある事を思い出し、足を止めて振り返り、イルマに声をかける。

 

「イルマ、後でオーガポンを連れてスイリョクタウンに行ってみろ」

「…えっ!?いや、突然何言ってるんですか?オーガポンはスイリョクタウンじゃ…」

「あー、そう言うのは無し。取り敢えずオーガポンと一緒に行ってみろ。オモシレー事になってっから」

 

 そう言うと、バチコとジュナイパーは自室を目指して再び歩きだす。

 しばらくバチコの「オモシレー事」に不安を感じて悩むような表情をするイルマ。すると、今まで黙っていたオーガポンに服の裾をクイクイと引っ張られ、イルマは「ん?」とオーガポンに視線を向ける。

 

「オーガポン?」

「がおっ、ぽにおー!」

「?スイリョクタウンに行っても大丈夫ってこと?」

「ぽにっ!」

 

 「大丈夫だよ!」と言うような笑顔を向けられ、なんとなくイルマが訪ねてみると、オーガポンは笑顔で頷いた。

 その後、マードックの作った簡単な朝食で腹を満たしたイルマは肩にモクローを乗せ、オーガポンと共にスイリョクタウンを目指すことにした。

 オーガポンと手を繋ぎながら道を歩いていくと、イルマ達道の真ん中ではある人物とバッタリ鉢合わせた。

 

「おっ、イルマくんにオーガポンやないか。おはようさん」

「オル」

「あっ、キリヲさんにイオルブ。おはようございます」

「……もふ」

「ぽっ!」

 

 それは、背中に大荷物を背負ったキリヲと、その横に浮かんでいるイオルブだった。此方の姿を見つけると、のほほんとした笑みで挨拶をしてくるキリヲにイルマ達も挨拶を返す。…何故か、モクローだけは彼を見る目に警戒心のようなものがあり、それを見たイルマは首をかしげながらも彼の頭を撫でて落ち着かせると、キリヲの背中に抱えられた荷物に目を向けた。

 

「キリヲさんは、これからシンクロマシンの実験ですか?」

「あぁ、それな。実は君達とてらす池で鉢合わせた時、電話を掛けてきた兄さんから早い内に帰省してこいって連絡があったんよ。それで今から帰るところや」

「へぇ…随分突然ですね。昨晩のあんな事もあったのに」

「ホンマやなぁ~」

 

 キリヲはのほほんと笑っている。そこで、もう彼と合うのも最後なんだなと何となく思っていたイルマは、何となく気になったことを訪ねることにした。

 

「そういえば、モモワロウを追っている途中でキリヲさんはぐれちゃいましたけど、大丈夫だったんですか?」

「心配してくれておおきに。実はスイリョクタウンでイルマくん達がモモワロウを追おうとした時、吐血して倒れてしもうてな。心配する必要あらへんよ」

「いや、それはそれで大変ですよね?」

 

 イルマが苦笑しながらツッコミを入れる。

 すると、キリヲの懐から『ロトロトロト…』という着信音が聞こえてきて、キリヲは「きっと兄さんや~」と呟きながらスマホロトムを取り出すと、電話に応答した。

 

「もしもし兄さ…」

『てめぇ、かけたらワンコールで出ろっつったろボケメガネ!!』

 

 その途端、スマホロトムから怒声が響いてきた。てらす池の時と同じ、耳がキーンとなりそうな程の大音量だ。初めてその怒声を聞いたオーガポンは思わずビクッとなってイルマの後ろに隠れる。

 

「あっ、それじゃあ僕達スイリョクタウンに向かうことになってるので、キリヲさん、さようなら」

「さいなら。またいつか会おうな~」

 

 電話の邪魔をするのも悪いと思い、イルマはオーガポンと共にスイリョクタウンに行くことにし、キリヲとイオルブに別れを告げてから、オーガポンを連れて小走りにスイリョクタウンに駆けていった。

 しばらくの間イルマ達の後ろ姿を眺めていたキリヲは、通話中のままだった相手との話を再会させる。

 

『何無視してんだ、捻るぞクソメガネ!』

「や~。キタカミの里で出来た友達と、涙の別れをしていて……」

『うっせ、知るか!()()()()()()は手に入ったんだろーな?』

「勿論ですよぉ。まぁ、()()は町の人達に拘束されてしまったみたいですけど」

『…そうか。出来れば手に入れておきたかったが、本命が手に入れば上々だ。お前が手に入れればポケモンの能力は使えるからな。早い内に戻ってこい。嵐が起こる日は近いぞ』

「……はいな。すぐにでも」

 

 メガネを外し、左側の前髪をかき上げるキリヲのその瞳は……ゾッとするほど冷たかった。

 

 

 

 

 

 

 スイリョクタウンにたどり着いたイルマは、既に町のあちこちでモモワロウの洗脳が解けた人々が活動を始めていた。

 イルマはオーガポンが迫害を受けてしまわないかとキョロキョロと辺りを見回しながら町に足を踏み入れた瞬間、イルマ達の姿を見た住人達から声が上がった。

 

「あっ!オーガポン様だ!」

「ッ!……ん?オーガポン()?」

 

 無邪気な子供の声に一瞬肩をビクッと震わせるイルマだが、直ぐにその声の違和感に気付いた。オーガポンは『スイリョクタウンの人々には鬼』という呼び方をされており、名前で呼ばれることはなかった筈だ。それに、何故か様付けされている。

 イルマがその事に頭を捻っている間に、スイリョクタウンにいる人々がイルマとオーガポンのもとに集まってきた。

 

「オーガポンさまだー!」

「鬼さまごめんよー!」

「オーガポンちゃん、かわいいー!」

「ぽにぃっ!」

 

 集まってきた人々は、オーガポンを見るなりはしゃいだり、謝ったり、可愛いと誉める声が続出する。

 オーガポンはイルマの前に出てきてスイリョクタウンの人々に笑顔で相槌を打ち、予想外過ぎる展開にイルマは目をパチクリと瞬かせる。

 

「こ、これは…?」

「スグが話したのよ」

「!ゼイユさん、それにスグリくんも!」

「おはよ、イルマ」

「お、おはよう…」

「ミッチュ」

「ソチャ」

 

 聞き覚えのある声がして、聞こえてきた方に顔を向けると、そこにはゼイユとスグリ、更にカミッチュとヤバソチャの姿があった。

 互いに挨拶を終えた後、ゼイユは昨晩の事を説明する。

 

「アンタが寝ちゃった後、正気に戻った町の人達がオーガポンを見つけてね。その時はヤバイって思ったんだけど、スグが飛び出して、村の皆に本当の歴史を伝えたのよ」

「そうだったんですか…反感買わなかったんですか?」

「まぁ、皆驚いてたけどね。ああの紫の髪の…ドットって子も一役買ってくれたから、何とか皆納得してもらえたわ」

「ドットさんが?」

「これよ、これ」

 

 かつてオーガポンの真実を人々に伝えようとしたスグリとゼイユの先祖は迫害されたといわれていたので、ドットが何をしたら皆オーガポンの真実を受け入れてくれたなと思うイルマは、ゼイユが見せてきたスマホロトムの画面を覗き込む。

 そこには映っていたのは、思わずギャグやってるのかとツッコみたくなる変なダンスを踊ってキビキビ叫ぶ町の人々、そして次に殻から餅を飛ばして人をキビキビ洗脳するモモワロウ。そして最後に、ともっこプラザでそんなモモワロウを守り、フリード達に襲いかかってバトルを始めるイイネイヌ達ともっこの姿だった。

 

「ドットって子がね、この動画を提供してくれて皆に見せたのよ。動かぬ証拠としてね」

「成る程。……そういえば、モモワロウやともっこ達は?」

「あぁそれね…。あの後町にいたの皆に確認してみたけど、モモワロウをゲットした犯人はまだ見つかってないのよ。ともっこは何するか分かんないから今、パイモンのアブリボンが拘束して見張られてるわ」

「……あの3匹、どうなるんでしょうか?」

「さぁね。何かやらかなさいように管理すべきだって言う声が多いらしいけど、今は検討中ってところよ」

「そうですか……」

 

 イルマはチラリとスイリョクタウンの人々に目を向けると、笑みを浮かべてスグリに顔を向けた。

 

「スグリくんがオーガポンの誤解を解いて上げるなんてね。本当に凄いよ」

「確かにね。口下手の癖に、よく皆の前で大演説なんでやれたもんよ」

「うん。これで、鬼さまは顔を隠さなくても自由に村に遊びにこれる…」

「ぽにおっ!」

 

 スグリの言葉に、スイリョクタウンの人々に笑顔を向けていたオーガポンはイルマ達の方を向いて嬉しそうに笑顔を浮かべた。それにつられ、イルマとゼイユも自然に笑顔を浮かべ、笑い合う。

 そんな中、スグリはオーガポンの姿をジッと見つめた後、決意に満ちたような表情を浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜。

 太陽が沈み、夜空に満天の星が輝く中、とこしえの森の中で霧が発生した。そんな薄気味悪い森の中で、大きな足音を響かせながら歩く、巨大な影があった。

 薄茶色の体毛に灰色のようなもので覆われた体に、額に月のように丸い模様を持った熊の姿をしたポケモン──【赫月】と呼ばれるガチグマは、エサを探して森の中を彷徨っていた。

 

 その時、こちらに向かって来る足音が耳に入り、ガチグマは無言で顔を動かす。そこにいたのは、船長帽を被るピカチュウを肩に乗せたフライトジャケットを着た白髪の男と、帽子を被った少年だった。彼等の隣にはホゲータリザードンもおり、男と少年とリザードンの腕の中には大量の木の実がある。

 

「久し振りだな、ガチグマ」

「ピーカァ」

「リザァッ!」

「…?」

 

 フレンドリーに話し掛けてくる白髪の男──フリードと、彼のポケモンと思わしきピカチュウとリザードンに、ガチグマは彼等を観察するようにジッと見つめる。

 そんなガチグマに、帽子を被った少年──ロイが、ホゲータと共にガチグマの前に立った。

 

「ガチグマ。お腹空いてるでしょ?これ、食べて!」

「ホゲ~」

「……ワギ」

 

 暫く無言でロイとフリードが目の前に置いた山積みになった木の実を眺めていたガチグマだったが、腹が空いていたので、クンクンと臭いを嗅いだあと、幾つかの木の実を鷲掴みにして口の中に放り込んだ。

 

「どう、美味しい?」

「……ワギャ」

「そいつは良かった。…なぁガチグマ、俺達はお前がどうして人を襲っているのかが知りたいんだ。お前の事、研究させてもらえないか?」

「……」

 

 ホゲータやリザードンも木の実を齧っているのを他所に、ロイとフリードはガチグマに、何故人を襲っているのかの理由を知るために研究させてもらえないかと頼み込む。ガチグマは、そんな2人をジッと観察するように見つめている。自分にとって害となる存在であるかないかを判断中なのだろう。

 そんな彼等の姿を、少し離れた位置にある茂みに隠れながら見ている二人の影があった。

 

「……こうしてみてみると、ガチグマって結構大人しいんだね」

「大人しいっていうより、警戒してるんだけ思うけど…まぁ、確かに暴れん坊って訳じゃあなさそうだね。何で僕達には襲い掛かったんだろう…?」

 

 それは、フリード達について来たリコとイルマだった。すぐそばにはパートナーのニャオハとモクローの姿もある。

 2人は初めてとこしえの森に来た時、何もしてないのにガチグマを怒らせてしまった前科があるので、再び怒らせてしまわないように、同行はしてもガチグマの前には出てこないと言う事になった。因みに、前回の調査の時に同行していたメンバーは、今日は色々と私用があるらしく同行していない。

 しかし、現在ガチグマはフリードとロイに一切手を出そうとしてない。流石にまだ信用はしていないのか無言で2人を見つめるだけだが、攻撃しようと言う動きも、敵意も見られない。何故イルマ達が襲われたのか、本当に謎である。

 

 その時、イルマとリコの背後の茂みから、「ガサガサッ」と言う音が聞こえてきて、2人は反射的にビクッと肩を震わせてバッと後ろを振り返った。ニャオハとモクローは、近付いてくる何者かを警戒して臨戦態勢を取る。そして、ガサガサと言う音はだんだん近付いていき、茂みを掻き分けて、その姿を現した。

 

「ぽに?」

「……って、なんだオーガポンかぁ~」

 

 茂みから出てきたのは、不思議そうな顔をしたオーガポンだった。イルマ達は気が抜けて大きく息を吐いた。

 

「でも、オモテ祭りにいたのに、どうしてここに…?」

「もしかして、付いて来たの?」

「ぽにお~ん」

 

 オーガポンはここに来る前、誤解が解けた人々との交流を深めるためにオモテ祭りに行っていた筈だが、どうやらイルマ達を追ってここに来てしまったらしい。

 イルマが苦笑しながらオーガポンの頭を撫でてやると、オーガポンは嬉しそうに顔を綻ばせ、それを見たリコは思わず笑顔を浮かべる。

 

「オーガポンって、本当にイルマに懐いてるんだね」

「そうかな……だったら嬉しいけど」

「ぽにぽに……ぽ?」

 

 イルマとリコがそんな風に話している中、イルマに頭を撫でられて気持ち良さそうにしていたオーガポンは、イルマとリコがいる茂みの向こう側に、薄茶色の巨大な熊のポケモンが、目の前に立っている2人の人間の姿をジッと見つめている光景を見つけた。

 

「ぽにおーー!!」

「あっ、オーガポン!?」

「どこ行くのー!?」

 

 ガチグマの姿を見たオーガポンは、イルマ達のいる茂みから飛び出して、ガチグマのもとに向かって走る。イルマとリコが驚いて茂みから姿を現したのと同時に、オーガポンはフリードとロイの真ん中に立ち、ガチグマに真正面から話し掛けた。

 

「がおっ、ぽにぽに!」

「…ワギャッ♪」

「「……えっ?」」

 

 笑顔で話し掛けるオーガポンに、ガチグマは今までのムスッとしたようにも見える無表情が嘘のように思える程の笑顔を浮かべた。まさかの光景にイルマもリコも、オーガポンが来ていることを知らなかったフリードとロイも、更にはポケモン達までもが驚いている中、オーガポンとガチグマは互いに笑顔で話をしている。ポケモンの言葉なので人間であるイルマ達には内容は理解できないが。

 

「もしかして、オーガポンってガチグマと友達だったの?」

「ぽにお!」

「ワギャ」

「頷いてる……」

「どうやらそうみだいだな…」

「世間って狭いですねぇ……」

 

 思わずイルマと共に茂みから出てきてフリード達の隣まで来たリコが2匹にもしやと思って訪ねてみると、オーガポンとガチグマは笑顔で頷いた。同じキタカミの里に住むポケモンとはいえ、まさか色々あって仲良くなったオーガポンが、ライジングボルテッカーズがキタカミの里にやって来た理由でもあったガチグマと友好関係を築いていたとは。確かにオーガポンはキタカミの人間から忌み嫌われていたのであって、ポケモン達からも迫害されていると言うことではないのかもしれないが、恐れ穴から結構離れているとこしえの森に住んでいるガチグマと友達だったとは思わなかったイルマ達は思わず苦笑する。

 そんな中、オーガポンは羽織の内側から碧の面を出してガチグマに見せながら、時折イルマ達の方を指差して(オーガポンに指があるのか無いのかは分からないが)話をしていると、ガチグマはオーガポンと共にイルマ達の前まで歩み寄ってきた。

 

「ぽに!ぽにぽに!」

「ワギャ!」

「…どうしたの?」

 

 イルマ達を見て鳴き声を上げるオーガポンとガチグマ。しかし、額に小判を乗せた悪の組織のネコポケモンでもいない限り、人間がポケモンの言葉を理解できる術はなく、リコ達は首を傾げてしまうが、ポケモン博士のフリードは何となく彼等の言わんとしていることを分かったのか、ガチグマを見上げて話し掛ける。

 

「まさか、研究させてくれるのか?」

「ワギ」

「ぽにぽにぃ!」

 

 ガチグマとオーガポンは笑顔で頷いた。用心深かい性格のガチグマが、オーガポンが出てきた途端にアッサリと研究を承諾してくれたのだから、イルマ達も少し驚く。

 

「オーガポン…ガチグマを説得してくれたんだ」

「まさに『情けは人の為ならず』だね…ありがとう、オーガポン」

「ぽにぃ」

 

 ガチグマ調査する上で、調査の対象であるガチグマから警戒を解いてもらう必要があったが、依頼とは無関係のオーガポンの為に東奔西走した結果、ガチグマの信頼を得る事が出来た。イルマの言う通り、『情けは人の為ならず』と言う諺はこのような事を言うのだろう。

 

「それじゃあ、これからよろしくな」

「ワギ」

 

 

 

 

 

 

 それから、2日程経った。

 フリード達は毎晩オーガポンと共にとこしえの森に赴き、ガチグマの生体調査を行っていた。ガチグマは少し居心地悪そうではあったが、オーガポンもいるためか、邪険に扱うことはなかった。依頼内容はガチグマがランダムに人を病院送りにしている理由を調べることだが、フリードがガチグマの生体までも調査してしまうのは、ポケモン博士の性なのかもしれない。まぁ、もしかしたらそれも人を襲う理由の解明に繋がるかもしれないが、今のところそれらしい理由は分かっていないらしい。

 

「この2日、ガチグマを観察してみてはいるが…人をランダムに襲う理由は分からないまんまだな」

「ピーカァ」

 

 ガチグマから少し離れた場所で、フリード、イルマ、リコ、ロイの4人は集まって話し合いをしている。時間は既に夜の10時を回っており、辺りは真夜中なので視界は悪い上に眠気が容赦なく襲って来るが、ガチグマは夜中にしか活動しないので、頑張って睡魔と戦う。ニャオハとホゲータは相棒に抱き抱えられながら寝息を立てていた。因みに、バチコやゼイユ達は今回も来ていない。そしてイルマの相棒であるモクローはガチグマの肩の上に乗り、オーガポンはガチグマの足下で、何やら話をしながら歩いていた。恐らく散歩だろう。モクローは元々夜行性の為、オーガポンは時折夜中にガチグマと会うことがあった為か、2体とも眠くはなさそうだ。

 

「…ああして見ると、ガチグマって心を開いてくれると大人しい方ですよね。オーガポンに説得してもらえば人を襲うの止めてくれるんじゃないかな…?」

「…それも出来るかもしれないが、ガチグマは用心深い性格だ。そんなアイツがどうして人を襲う程怒るのか…その理由を知らない限り、根本的な解決にはならないかもしれない」

「でも、何でガチグマは人を襲ってたんだろう…?」

「マードック達に対しては何もしなかったしな……ハンターに狙われることもあるから人間を敵視しているって訳じゃあなさそうだ」

「やっぱり、人を襲うのには理由があるんでしょうか?」

「でも、パイモンさんは被害者に共通点は無かったって言ってるし……」

 

 一度、モリーやマードックといったガチグマと面識の無い船のメンバーを連れてきたこともあったが、ガチグマは警戒するように彼等をジッと観察しているだけで、彼等のポケモンがガチグマを警戒したり威嚇したとしても、ガチグマがマードック達に何かをすることは一切無かった。本当にガチグマが人を襲うのかと疑問になる程何もしなかった。

 しかし、オーガポンのお陰で今は友好的にしてもらっているが、ガチグマは何もしていない筈のイルマとリコに襲い掛かった事もあるので、ランダムに人を襲うのには何か理由があると思うのだが、肝心のそれが分からない。

 

「リコ、イルマ。お前達が最初にガチグマに会った時は、どういう状況だったんだ?」

「どうって言われても…本当に何もありませんでしたよ?」

「うん。ガチグマが出てきた後、イルマが皆を呼ぼうとしてスマホロトムを取り出したら、急に怒り出して……」

「………いや、もしかしたらそれが理由なのかもしれない」

「「「えっ?」」」

 

 フリードの言葉に全員が反応する。

 顎に手を当てながら何かを考えている様子のフリードは、やがて考えをまとめたのか、モンスターボールからリザードンを出した。

 

「少し確認したい事が出来た。悪いが、船に戻るぞ」

「調べたい事って?」

「ガチグマの被害者達に、共通点になりそうな物を見つけてな。それをパイモンに調べてもらう」

「分かりました。…モクロー!オーガポン!そろそろ帰るよー!」

「もふー」

「ぽにー!」

 

 イルマが呼び掛けると、ガチグマと話していたモクローとオーガポンはガチグマに別れの挨拶をするように鳴きながらイルマのもとに駆け寄っていく。

 モクローとオーガポンが集まってくると、リザードンは背中にフリードとリコとオーガポンを乗せ、各々の相棒を抱えるイルマとロイを抱き上げ、フリード達はとこしえの森を後にした。

 

 

 

 

 

 そしてまた翌日。

 イルマ達はオーガポンと共に、スイリョクタウンの町を歩いていた。フリードとキャップは朝食を食べ終えてから調べ物があると言って、バチコを連れて何処かに行ってしまった為、買い出しに来ていたのだ。因みに、オーガポンはともっことモモワロウの一件からイルマ以外にライジングボルテッカーズにも心を開いてくれるようになり、毎日朝早くからブレイブアサギ号に遊びにきていた。

 この数日間の間にもオーガポンの事は最早周知の事実となっていたようで、スイリョクタウンの人々はオーガポンの姿を見るなり彼女の声をかけてきて、オーガポンはそれに愛想を振り撒き、時には近付いて行ってコミュニケーションを取っている。その様子を微笑ましく思って笑顔を浮かべて眺めていたイルマ、リコ、ロイの3人のもとに、聞き覚えのある声がかけられた。

 

「あんた達、ここにいたのね」

「あっ、ゼイユさんにスグリくん」

 

 そこにいたのは、ブルーベリー学園の制服に身を包んだゼイユとスグリだった。

 

「二人とも、ここ最近忙しそうだったけど、何かあったんですか?」

「別に大した用じゃないわよ。ブルーベリー学園のレポートが溜まってて片づけるのに苦労したってだけよ」

「課題を溜めると後で大変ですよ?」

「うるさいわね。オーガポンの事もあってそれどころじゃなかったのよ」

 

 そんな風に会話をしていき、町の人達とコミュニケーションを取り終えたオーガポンが戻ってきた。ゼイユとスグリの姿を見て笑顔を浮かべて挨拶をするオーガポンに、ゼイユとスグリも挨拶を返す。

 

「おっ、三人ともここにいたか」

「フリード、バチコとパイモンさんも」

 

 3人がそちらに顔を向けてみると、リザードンに乗ったフリードとパイモンと、チルタリスに乗ったバチコがやって来た。リコ達の前で着地したポケモンの背中から降りる3人。

 

「フリード、調べ物は終わったの?」

「あぁ、バチコとパイモンに協力して調べてもらってな。ガチグマが人をランダムに理由が分かった」

「分かったの!?」

 

 2日間調べても分からなかったガチグマがランダムに人を攻撃する理由。それが判明したと言われて驚くリコ達に、フリードは笑みを浮かべて答えを出した。

 

「ガチグマが人を襲っている理由…それは、強い光だ」

 

 予想外の答えに目を丸くするイルマ達に、バチコが肘打ちでフリードに続きを話せと目線だけで語り、フリードは肘をぶつけられた箇所をさすりながら説明の続きを始める。

 

「イルマが俺達に連絡をいれる為にスマホロトムを取り出した瞬間にガチグマが襲い掛かったって言うのが気になってな。パイモンに被害者達の情報を集めてもらってたんだ。で、そこにある共通点を見つけたんだ」

「それが、強い光?」

「あぁ。一番最初の被害者は、赫月の噂を聞き付けて写真を撮ろうとしたカメラマンだったんだが、そいつはガチグマに遭遇してカメラをフラッシュにして撮影してしまった結果、襲われたらしい。他にも、スマホロトムのカメラ機能で撮影しようとした野次馬、暗闇でガチグマの姿を見るためにフラッシュ機能で顔を照らした……色々と違いはあるが、被害者には、ガチグマに強い光を向けた者が殆どだった」

「光が眩しくて、怒ったってこと?」

「この2日間調べた結果、あのガチグマは、通常のガチグマや他のポケモンよりも遥かに視力が優れている。そんなガチグマにとって、カメラのフラッシュなんかの光は相当苦痛なんだろう」

「成る程……あれ?でも僕はスマホロトムを出しただけで、写真撮影なんかしてませんけど?」

「それは、赫月の噂でやって来た連中が多すぎるのが原因かもしれない。ガチグマの被害者で比較的最近被害にあった人の中には、カメラやスマホロトムを取り出しただけで襲われたという奴もいた。カメラやスマホロトムが、強い光を放つものだと認識していたんだろう」

 

 フリードの導き出した答えに、イルマ達は「成る程」と頷いた。

 

「それじゃあ、ガチグマを見に来た人達にカメラやスマホロトムを持っていかないように呼び掛ければ、今後被害者が出てこなくなりますかね?」

「いんやぁ……生活必需品のスマホを置いてく奴なんて早々いねーだろうし、本格的にとこしえの森を立ち入り禁止区域にした方が良いのかもしんねぇな…」

 

 呼び掛けなんて殆ど口約束のようなものだ。キタカミの里に住む者なら聞いてくれるかもしれないが、赫月の噂を聞いた者達も聞いてくれる保証はない。なら一々スマホやカメラを使わないことを呼び掛けるより、いっそガチグマに近付かないようにした方が良い気がする。

 尤も、パイモンの一存で決められることではないので、一度スイリョクタウンの重鎮達と話し合う必要があるだろう。

 

 何はともあれ、ライジングボルテッカーズがパイモンから受けた依頼は、こうして解決したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夕方。

 太陽が西に沈もうとして、キタカミの里をオレンジ色に染める中、オーガポンの住みかである恐れ穴の前に、6人の人間と4体ポケモンの姿があった。

 

「もう帰っちゃうのね」

「はい。僕達はこれからガラル地方に行かなきゃいけないので……」

 

 それは、当然ながら恐れ穴に住むオーガポン。そしてイルマ、リコ、ロイ、バチコとそのパートナーであるポケモン達、そしてゼイユとスグリであった。

 依頼主であるパイモンから報酬を受け取ったライジングボルテッカーズは、ガラル地方への旅を再開するため、出航の準備を進めていた。フリードは、一足先に船に戻って出航の準備を進めていた。

 ライジングボルテッカーズは元々、リコのペンダントの本来の持ち主である【ダイアナ】のいるガラル地方に向かわなければならない。キタカミの里に来たのはあくまでもパイモンの依頼を果たすためであり、何時までも留まっているわけにはいかない。

 なので、オーガポンやゼイユ達と会うのもこれで最後な為、イルマ達はオーガポンを恐れ穴まで送っていく事になり、恐れ穴の前で話し込んでいた。

 

「イイネイヌ達、また騒ぎ起こしたりしませんかねえ…?」

「発案者がそれ言う?…まぁ、大丈夫よ。パイモンやスグ、そして何よりアタシがいるんだから」

 

 モモワロウが暴れた夜にフリード達に倒されたイイネイヌ達ともっこは、パイモンの依頼が完了した後にパイモンや管理人、更には当事者のライジングボルテッカーズの面々もが話し合った結果、ともっこ達はスイリョクタウンで労働させることになった。主人(モモワロウ)が行方不明になり行く宛がなく、しかし放っておいたら何を仕出かすのか分からない。ならいっそ、町に置いて更正する機会を与えたら良いんじゃないかとイルマが提案してみたところ、意外なことにそれが採用され、ともっこ達はスイリョクタウンで一番のトレーナーであるパイモンに管理されながら人々にこき使われる事になった。バスラオの保護に加えてともっこの管理という仕事を増やされ、パイモンは少し不機嫌そうだった。重労働を強要されるともっこ達に、イルマとリコが、同情の余地はないとはいえ、ほんの少しだけ気の毒に思ったのは余談である。

 

 やがて、バチコのスマホロトムにブレイブアサギ号にいるフリードから出航の準備が出来たというメールが送られてくると、いい加減出航しなければならないと、名残惜しそうにしながらも船が停めてある場所に向かおうとする。そこで、ゼイユが口を開く。

「…正直、この村にあんた達が来るって聞いた時、必要な事とは言え、余所者が大切な場所に土足で入ってこられる気がして、すごく嫌だった。……でも、実際に話してみると、そんな感じは全然しなくて、結構面白いし……楽しかったわよ!」

「うん!」

「僕達も楽しかった!」

「ウフフ、ありがと。……特に、イルマ!」

「は、はい!」

「……来てくれたのがアンタで良かったわ。食わず嫌いはするもんじゃないって教えて貰ったわ。林間学校でもしないようにするわ」

「ありがとうございます。…僕も、ゼイユさん達に会えて良かったと思ってます」

 

 穏やかな笑顔を浮かべて心からの言葉を贈るゼイユに、イルマも連れて笑みを浮かべる。

 

「………」

「リコ?どうかしたの?」

「……別に」

「べ、別にってことないと思うけど…」

「ハァ~……」

「ニャ~」

「もふぅ」

「ホゲ~?」

「ぽ?」

 

 その光景を見ていたリコは面白くなさそうに頬を膨らませ、それを疑問に思ったロイが尋ねるが、リコは短く答え、リコ達の隣まで移動したスグリは困惑した。リコが不機嫌になっている理由を察したバチコとニャオハとモクローはため息を吐き、ロイと同じ様に理由を分かっていないホゲータとオーガポンは首を傾げた。

 だがイルマはそんなリコの様子に気付かず、今度はオーガポンの前に歩み寄った。オーガポンに目線を合わせ、少し寂しそうな目をしながらも、笑顔でオーガポンに語りかける。

 

「それじゃあ、オーガポン。僕達はここでお別れなんだ。これからも元気でね」

「……ぽ?」

 

 イルマの言葉に、オーガポンは話をよく分かっていないように首を傾げ、イルマの顔をジーっと見つめる。

 しかし、イルマは姿勢を戻してオーガポンから視線をはずし、スグリにも別れの言葉をかけると、モクローを肩に乗せて歩き出す。リコ達も、オーガポンやゼイユとスグリに別れの言葉を掛けながら歩き出そうとする。

 

「ぽにおーっ!」

「わっ!?」

 

 その時、背後から何かか飛び付いて来て、イルマは反射的に振り向く。そこには、自分の腰辺りにしがみつくオーガポンの姿があった。

 

「ぽにっ!ぽにおー!」

「?オーガポン、何か言いたいことがあるの?」

 

 オーガポンはイルマに顔を向けて鳴き続けるが、当然イルマには何を言っているのか分からない。

 すると、ゼイユは何となく察しが付いたのか、笑みを浮かべながら頭に思い浮かんだオーガポンの意思を代弁する。

 

「ねぇ、ひょっとしてオーガポンってさ……イルマと一緒に行きたいんじゃない?」

「ぽに!ぽにおーっ!」

「…きっと、ゼイユの言う通りだと思うな。人から怖がられていたオーガポンが村の人達と仲良くなれたきっかけはイルマだから。だから、イルマにゲットされ(の仲間になり)たいんじゃない?」

「そうだよ!イルマ、すっごく頑張ったじゃん!」

「……でも、オーガポンにはここにガチグマ(友達)もいるし、やっと村の人達の誤解も解けたんだよ?これから仲良く出来るのに、僕が連れ出すわけには……」

 

 リコとロイもゲットを後押ししてくるが、イルマは難色を示す。

 オーガポンをゲットすると言うことは、オーガポンをキタカミの里から連れ出すと言う事だ。オーガポンには元々、ガチグマのようにキタカミの里で友好関係を築いていたポケモンもいるだろうし、スイリョクタウンの人達もオーガポンに笑顔を向けてくれるようになった。ようやくこれから明るい未来が待っているのに、エクスプローラーズのようさ危険も待ち構えている旅に同行させて良いのか。それを考えてしまうと、イルマはゲットを躊躇ってしまう。

 そんなお人好しすぎるイルマに、今まで殆んど口を開かなかったバチコが、再び溜め息を吐きながらイルマの前に進み出た。

 

「ゲットしたいのかしたくないのか、今重要なのはそっちだろうが。ホラ」

 

 バチコはポケットから取り出した物をイルマに向けて放り投げる。イルマが「わっ!?」と慌てながらも何とかそれを両手でキャッチして、それを覗き込む。それは、何も入っていない空のモンスターボールだった。しばらくそれを眺めていたイルマは、一度深呼吸をすると、オーガポンに目線を合わせる。

 

「……本当に、僕で良いんだね?」

「ぽにおっ!!」

「…せっかく、町の人達の仲良くなれたのに、旅に出ても良いの?」

「ぽにおーっ!」

 

 オーガポンは即答する。

 その言葉を聞いて、イルマも決意を固めたのかモンスターボールを片手に持って、それをオーガポンの前に掲げようとした、その時だった。

 

「待ってよ!!」

 

 全員がその声の持ち主──スグリに注目する。

 スグリは一度髪を掻き乱した後、俯かせていた顔を上げ、叫ぶように自身の想いを口にした。

 

「それなら、おれも…おれだって鬼さまと……オーガポンと一緒が良い!」

 

 スグリの心の叫びを聞いたゼイユは、弟の気持ちを察して困ったような顔をする。

 

「スグ…」

「我が儘さ言っているのは、自分でも分かってる。だからイルマ!どっちがオーガポンさ捕まえるか、勝負で決めさせて……欲しい!

「「ええっ!?」」

 

 まさかの決闘の申し込みに、リコとロイは驚愕する。まるでヒロインを賭けた、ベタな漫画みたいな展開が行きなり起こったのだから、無理はない。

 そんな弟の様子に、ゼイユは肩を落として諭すようにスグリに声をかける。

 

「あのさ、スグ。オーガポンの事大好きなアンタの気持ち、すっごく……すっごく分かるけど!オーガポンの気持ちも……考えなよ」

 

 全員から注目されたオーガポンは「ぽに?」と首を傾げる。

 一般的なポケモントレーナーは、ゲットしたいと思ったポケモンをバトルで弱らせてゲットするという物で、ゲットしてから絆を深めていくとはいえ、ポケモンの意思は軽視される傾向にある。だが、ポケモンもれっきとした生き物であり、誰に付いていきたいかを決める権利はポケモンにもある。

 小さい頃からオーガポンが大好きな事を誰よりも知っているゼイユは、いくらオーガポンが好きだからと言ってイルマにゲットされたがっているオーガポンの意思を無視するのはダメだと説得しようとしたところで、ある人物がゼイユの前に立った。

 

「…分かった。受けてたつよ」

「イルマ!?」

 

 決闘を申し込まれたイルマが、モクローを肩に乗せてスグリと向かい合う。

 まさかのイルマが決闘を受けたことに驚くゼイユ達に、イルマはチラリと視線を向けて語りかける。

 

「スグリ君が、ずっとオーガポンが好きだってことはもう分かってる。それに、村の人達から忌み嫌われてたオーガポンの為に、村人を必死に説得したんだ。なのに、数日前まで名前も知らなかった僕に、目の前でゲットさるなんて、嫌なのは当たり前だから」

「………ありがとう」

 

 自身の決闘を受けてくれた事に感謝を述べるスグリ。

 2人は互いに距離を取り、リコ達は戸惑いながらも、バチコに促されてバトルの邪魔にならない様に離れた場所に移動する。

 

「勝った方が、オーガポンのトレーナーになる。本気で……かかってきて」

「最初からそのつもりだよ…モクロー!」

「もっふぅ!!」

「カミッチュ!!」

「…ミーッチュ!」

 

 イルマとスグリが繰り出すのは、パートナーであるモクローとカミッチュ。モクローはモモワロウのバトルで途中退場した分やる気に満ちており、翼を広げて鳴き声を上げる。カミッチュはスグリをチラリと見た後に、モクローとイルマを見据えて雄叫びを上げる。

 その声が、バトル開始の合図だった。

 

「モクロー、“このは”!」

「カミッチュ、“りゅうのいぶき”!」

 

 モクローが打ち出した葉と、カミッチュの息吹がぶつかり合い、爆発を起こす。

 

「もう一回“このは”!」

「かわして“みずあめボム”!」

 

 爆炎から上空に飛び出したモクローは再び数枚の葉っぱを放つが、カミッチュは口から吐き出した水飴でそれを撃ち落とす。

 

「“シャドークロー”!」

「なっ!?」

「もっふ!」

「ミッ!?」

 

 “このは”に意識を向けていた隙を狙って音を立てずに飛行してカミッチュに接近したモクローが、影で作られた爪でカミッチュを切り裂く。不意を突かれたカミッチュはこれを避けることが出来ず、数歩後退してしまう。

 

「カミッチュ、“りゅうのいぶき”!」

「ミーッチュ!!」

「モクロー、上へ!」

「もっふぅ!」

 

 カミッチュは一瞬で体制を立て直し、口から紫色のエネルギーを吐き出す。しかし、モクローはいち早く空高く飛翔することで直撃を避けた。

 

「モクローが有利だ…」

「でも、スグも結構やるじゃない…いつの間にこんなに強くなったのよ……」

「…トレーナーとしての腕前は、経験を重ねている分イルマの方が上だ。けど、ポケモンのスペックは進化している分カミッチュの方が上だ。スグリもモモワロウのバトルでそれなりにレベルアップしてるみてーだし、今は一撃も食らってねーが、長期戦に持ち込まれたらモクローが不利だぞ」

「イルマは…勝てるのかな……」

 

 スマホロトムで船にいるフリード達に「少し遅れる」とだけ伝え、スマホの画面からイルマとスグリのバトルに視線を戻してリコ達に戦況を解説するバチコは、心配そうな表情でバトルの成り行きを見守っているオーガポンを見て、誰にも聞こえないほど小さな溜め息を吐いた。

 

 かつて、ホゲータとパートナーになりたがっていたロイがブレイブアサギ号に忍び込んだ時、フリードはロイに『トレーナーとポケモンの気持ちが互いにピタリと合って初めて、本物のパートナーになれる』と諭したことがあった。

 スグリがオーガポンをゲットしたいと望んでいても、イルマに着いていきたがっているオーガポンの気持ちを無視して無理にモンスターボールに入れても、スグリがオーガポンと本物のパートナーになることは出来ない。スグリも無意識にそれは自覚しているだろう。しかし、イルマに着いていきたがったのはオーガポン自身の意思であり、スグリに非があるわけでも無いし、当然イルマが悪いと言う訳でもない。というか、誰かが悪いと言う訳でもない。それでも、オーガポンを諦めることが出来なかったから、スグリらイルマにバトルを挑んだのだろう。

 イルマが負けてスグリがオーガポンをゲットする事になれば、その先でスグリに待ち受けているのはバッドエンドだ。ならば、イルマにはスグリとの間に溝が出来てしまったとしても勝ってオーガポンをゲットして貰わなければならないだろう。

 

 そんな中、イルマとスグリのバトルは白熱していく。

 

「“エアカッター”!」

「“りゅうのいぶき”!」

 

 “このは”で目を塞ぐ戦法は取れないと判断したイルマの出した指示に、モクローは上空から効果抜群のひこうタイプの技を放ち、カミッチュは風の刃を迎え撃つように口から紫の息吹を吐き出す。

 

「もう一回“りゅうのいぶき”!」

「避けて!」

 

 互いの技がぶつかって爆発した瞬間、カミッチュは上空のモクローに向かって再び“りゅうのいぶき”を放つ。

 モクローは翼を羽ばたかせてそれを回避するが、更にモクローを追尾するように“りゅうのいぶき”が連続で発射される。モクローは右に左にと飛んでそれらを回避するが、矢継ぎ早に放たれる攻撃に中々反撃に移れない。

 

 その時、“りゅうのいぶき”の連射が止まる。イルマとモクローがカミッチュに目を向けると、カミッチュは技を放つのを止め、脂汗をかいて荒い呼吸を繰り返している。技を連続で放ち過ぎて、疲労が出てきたようだ。

 

「モクロー、“シャドークロー”!」

 

 その隙を見逃さず、モクローはカミッチュに向けて急降下して、両方の翼に形成された影の爪を振り下ろそうとする。

 

「カミッチュ、“みずあめボム”!」

「ミッチュ!」

「もぶっ!?」

「モクロー!?」

 

 爪が振り下ろされる瞬間、カミッチュが水飴を吐き出した。一直線にカミッチュに突撃していたモクローにこれを避ける術はなく、水飴が直撃して墜落する。

 モクローは体勢を整えようとするが、ゼイユとヤバソチャの動きを停めた時と同じ様にその場から動けなくなってしまう。羽にも水飴がベタベタと張り付いており、飛行が出来なくなってしまう。それは、バトルにおいて致命的な隙だった。

 

「これで決める…!カミッチュ、“りゅうのはどう”!!」

「チューーッ!」

「モクロー!!」

 

 スグリの腹から出した指示を聞き入れたカミッチュが、口から竜の形をした紫色のエネルギーを放つ。水飴により動きを封じられていたモクローにこれを避ける術はなく、竜のエネルギー波に飲み込まれたモクローを中心に激しい爆発が起こる。

 その爆発に怯んでいたイルマ達が煙が晴れて来た場所に視線を向けると…

 

「も、もふ……」

 

 傷だらけになりながらも、しっかりと両足で立っているモクローの姿があった。

 気絶してもおかしくないレベルの攻撃だったが、ギリギリの所で持ちこたえてくれたらしい。爆発の影響で、体に纏わりついていた水飴も吹き飛ばされたらしい。

 しかし、本当にギリギリで持ちこたえた為、後一撃でも食らってしまえば、今度こそダウンしてしまうのは必然だ。モクローが倒れなかったことに安堵していたイルマも、直ぐに思考を切り替え、ポケットからテラスタルオーブを取り出した。

 

「モクロー!長びくと此方が不利だ!眩しいのいっちゃうよ!!」

「もーふぅっ!!」

 

 テラスタルオーブに虹色の光が集まり、光を放つ。

 吹き飛ばされそうになった帽子を抑えつつ、イルマがモクローに向けてテラスタルオーブを投げると、モクローの体が鉱石のようなものに包まれ、弾けると同時に、モクローは紫の光沢を放つ体に、頭の上に幽霊の形をした王冠を乗せた姿に変身していた。

 

「モクローがテラスタルした…!」

「モクローカッコいい!」

「テラスタルなら、カミッチュに勝てるんじゃないの!?」

「けど、体力は全く回復していない。一撃で決めないとイルマの敗けだ」

 

 モモワロウ戦でイルマがオーガポンをテラスタルさせたのは見ていたが、モクローのテラスタルは始めて見たリコ達がモクローに注目する。

 同じ様にゴーストテラスタイプに変化したモクローの姿を凝視していたスグリとカミッチュだったが、直ぐに気を取り直す。

 

「まだ負けてない!もう…負けたくない!カミッチュ、“りゅうのはどう”!!」

「ミッチュー!」

「モクロー、“エアカッター”!」

「もっふぅ!」

 

 再び放たれる“りゅうのはどう”を前に、モクローはテラスタルの恩恵を受けない“エアカッター”を放ち、カミッチュの技を相殺させる。ぶつかり合った技が爆発を起こし、視界が悪くなる中、スグリは煙の中を見ていた。

 その時、煙の中から紫色の光が見えて、スグリは声を張り上げた。

 

「カミッチュ、“りゅうのはどう”!!」

「チューーッ!!」

 

 煙の中からモクローが飛び出したと同時に、カミッチュは全力の“りゅうのはどう”を撃ち放つ。カミッチュに向かって一直線に走るモクローに、これを避ける暇はないし、避けた隙を狙って攻撃されるだろう。

 

「“シャドークロー”!!」

 

 イルマの指示とほぼ同時のタイミングで、モクローの頭のテラスタルジュエルが目映い光を放ち、両翼で一際大きな影がするどい爪の形を作る。

 

「もっふぅ!!」

 

 モクローは影の爪で、竜のエネルギー波を迎え撃つ。

 近距離でぶつかり合った“りゅうのはどう”は、テラスタルで強化された技を出してるとは言え下手に気を抜くと吹き飛ばされそうになってしまう威力を持っていた。進化しているカミッチュと進化していないモクローの差は、テラスタルしたとしてもそう簡単に埋められない。

 

「(真正面から弾くのは無理……受け流したら隙を突かれる。それなら……)モクローッ!!」

「もふぅ!」

 

 イルマの呼び掛けに、モクローは振り向かずに応える。

 “シャドークロー”で“りゅうのはどう”を受け止めていたモクローは、片足を軸にして身体を支え、回転する。

 それは、スグリやゼイユ、リコ達も何度か見たことがある戦法だ。

 ジルやゼイユとのバトルで見せた、距離を積めて相手の力を利用して受け流すように返す技。“たいあたり”のような自分の肉体で攻撃する技二箱の戦法が使えない事や、タイミングを間違えれば無防備に技を食らってしまう欠点こそあるが、これまでのバトルでカミッチュがスグリの指示を受けて技を放つタイミングを掴んでいたイルマとモクローは、この戦法を成功させることが出来たのだ。

 

 モクローが回転したことで、“シャドークロー”に絡め取られた“りゅうのはどう”が渦を巻き、怯んだカミッチュに向けて、相手の技を利用した回転を加えて勢いを増した闇の爪を真横に一閃させた。

 

「チューーーーーッ!!?」

 

 カミッチュは、土煙を巻き上げながら吹き飛ばされ、スグリの真横を通りすぎ、恐れ穴の入り口付近の壁に激突する。

 

「カミッチュ!?」

「チュ……ミッ」

 

 傷だらけになったカミッチュは、目を回して倒れている。どう見てもこれ以上の戦闘は不可能だ。

 モクローのテラスタルが解除されると、スグリは自身の敗けを自覚し、血が出てしまいそうな程、手を強く握りしめながら、カミッチュをモンスターボールに戻し、カミッチュのボールを握りしめながら、顔を俯かせて呟いた。

 

「……イルマの方が相応しいって事も、負けるって事も分かってた……でも、諦め切れなかった」

 

 前髪に隠れてスグリの表情は見えないが、穏やかとは程遠い物だというのは全員が分かっていた。バトルが終わり、二人の元に駆け寄ってきたリコ達も、何と声をかけて良いのか分からず、浮かない表情をする。

 やがて、スグリはモンスターボールをしまい、イルマの方に顔を向けた。

 

「……ごめんな」

「スグ……」

 

 ゼイユが少し心配そうな顔をする。数秒間そうして弟の顔を見つめていたが、やがて顔をスグリからイルマの方に向けた。

 

「イルマ、オーガポンの事、ゲットしてあげなきゃね」

「……そうですね」

「ぽに?」

 

 空気が重くてとてもゲットという空気じゃないのだが、元々オーガポンはイルマについて行きたがっており、スグリとのバトルも勝った方がゲットするというルールで、勝ったのはイルマだ。

 イルマは、未だにイルマとスグリのバトルの理由を分かっていない様で不思議そうにしているオーガポンと目線を合わせ、バチコから受け取ったモンスターボールを差し出した。

 

「……オーガポン、僕に着いてきてくれる?」

「ぽにおーっ!」

 

 オーガポンは、イルマが差し出したモンスターボールのスイッチを押す。モンスターボールが開き、オーガポンは赤い光となって吸い込まれていき、ボールが閉じる。

 

キュインキュインキュイン…カチッ!

 

 イルマの手の中でモンスターボールが3回揺れた後、星のエフェクトと共にモンスターボールが音を立てる。

 

「…オーガポン、ゲット」

「ぽにおっ!」

「もふ!?」

 

 モンスターボールを見つめながらそう呟くイルマ。するとボールが独りでに開き、オーガポンが自分からモクローの隣に飛び出してくる。

 イルマはスグリに目を向ける。初めてのゲットに、嬉しいという感情があるのは紛れもない事実だが、状況が状況だけに、素直に喜びを露にする事が出来ない。

 

「おめ……でとう」

「ありがとう。オーガポンは大事にするよ…」

「……うん」

 

 スグリの祝福に、モクローを頭の上に乗せるオーガポンを見ながら礼を言う。

 モクローを頭に乗せてイルマの隣に立っているオーガポンに一度視線を向けてか、再びスグリに顔を向ける。

 

「あのさ、ゲットした僕が何言ってるのかって思うかもしれないけど……オーガポンは、きっと君の事を友達だと思ってるよ。」

「……ッ!」

「…ぽにっ!」

 

 オーガポンはイルマの言葉を聞き、「そうだよ!」というようにスグリに笑顔を見せる。スグリが町の人達を説得してくれたお陰で、自分は素顔を晒して村の人達と仲良くすることが出来た。イルマ達と同様に、オーガポンは自分のために頑張ってくれたスグリに心を開いていた。

 

「…鬼さまが、俺を認めてくれてるのは嬉しい……でもッ!!」

「あっ!」

「スグッ!」

 

 スグリはイルマ達に背中を向けて、スイリョクタウンに向かって走り出した。

 イルマ達には彼の背中を追いかけることが出来ず、小さくなっていく彼の背中を見送ることしか出来なかった。

 

「……ムカつく。勝った方がゲットするって言ったじゃん」

「あの、ゼイユさん。スグリ君の事……何て言うか、すみません」

「良いのよ。責任感じなくて!元々、オーガポンの事を秘密にしようって言ったのはアタシだし」

 

 後悔はしていないが、スグリが大好きだったオーガポンを目の前でゲットしことに申し訳なさを感じたイルマが姉であるゼイユに謝罪するが、ゼイユは気にするなと笑う。

 

「アンタ達、これから旅に出なくちゃいけないんでしょ?スグの事はアタシが面倒見とくから、安心してガラル地方に行きなさい」

「でも……」

「まぁ、今お前が行っても逆効果だろうな。頭を冷やす時間は必要だろ」

 

 依頼も完了しているので出発しても問題ないと言うゼイユに難しい表情をするイルマだが、バチコの言う通り、オーガポンを連れて自分が会いに行っても却ってスグリに辛い思いをさせるだけになりそうなので、ここは素直に従って旅を再開させることにする。

 

「イルマ、来てくれたのがアンタで良かったと思ってるわ。リコとロイの方もね。結構楽しかったわよ」

「はい!」

「わ、私も楽しかったよ!」

「僕も!」

「フフッ、そう……まっ!今生の別れって訳でもないし!またキタカミに来ることがあったら連絡しなさい。その時はスグも引っ張ってくるから!」

 

 そう言うと、ゼイユは「スグの様子を見てくるわ」と言って、スイリョクタウンに向けて走り出そうとするが、数歩走った所で、再びイルマ達の方を向く。

 

「それじゃ、またね!さよならは言ってあげないから!」

 

 両手を軽く振り、笑顔で別れを告げたあと、ゼイユは再び踵を返して走り出す。遠く小さくなっていくゼイユの後ろ姿に、イルマ達はその姿が見えなくなるまで手を振っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、スグリとゼイユに遅れてスイリョクタウンに立ち寄ったイルマ達は、村の人々にイルマがオーガポンをゲットしてこのまま旅に連れていくと言う事を話したあと、ブレイブアサギ号に乗り込み、パイモンやゼイユを含めたスイリョクタウンの人々に見送られながらガラル地方を目指して出航した。

 

「はぁ~……」

 

 夕食を終え、入浴を済ませたイルマは、自室のベッドにボフッという音を立てながら座り込み、大きな息を吐いた。短い間だったのに、かなり濃い時間を過ごした。それが終わったことを実感し、一気に疲れが出てきた。尤も、それだけが理由では無いのだが……

 

「もふぅ~?」

「モクロー……心配しなくても、これから寝て休むよ」

 

 机の上に降り立ったモクローが、「大丈夫か?」と問うような視線を向けてくる。何となく、モクローが心配している理由は疲労だけでないという事は何となく察してはいたが、今はあまり考えたくないので苦笑することで誤魔化した。

 そして、新たにイルマのポケモンとなったオーガポンは、ピョンッ、とイルマの座るベッドの上に飛び乗る。自分も一緒に寝ると言うことだろう。

 

「…それじゃあ、そろそろ寝よっか」

「ぽにっ!」

「もふ」

 

 部屋の明かりを消し、ベッドの上でオーガポンと並ぶように横になり、モクローはベッドのヘッドボードの辺りにとまり、1人と2匹は目を閉じる。

 5分もしない内に、モクローとオーガポンから寝息が聞こえてくる。だが、イルマは何故か眠れなかった。眠気はあるが、眠ることが出来ない。

 閉じていた目を開けると、穏やかな表情で眠るオーガポンの姿が見える。

 同時に、イルマの脳裏に恐れ穴からスイリョクタウンに向けて走るスグリの後ろ姿が過り、ポケモン達を起こさないように小さく溜め息を吐いた。

 スグリのオーガポンへの想いを知っていたが、オーガポンの気持ちを無視してはいけないとバトルを受け、オーガポンをゲットした(勿論、イルマもオーガポンと共に行きたくなったのは事実である)。イルマなりに、2人の気持ちを考えて取った行動だが、その結果オーガポンを笑顔に出来てもスグリに辛い想いをさせてしまった事実に、本当にオーガポンをゲットして良かったのだろうかと考えてしまう。

 しかし、あの状況でスグリにオーガポンをゲットさせてしまえば、オーガポンの気持ちを無視して無理矢理ボールに入れることになってしまう。どちらを選んだとしてもスグリとオーガポンのどっちかが辛い思いをさせる事になってしまうのはイルマも分かっており、世の中ままならないなぁと心の中で呟いた。

 

(またスグリ君と会ったら……オーガポンの事を大事にしてたよって、教えてあげたいな…)

 

 眠っているオーガポンの頭を撫でると、オーガポンはリラックスしているように顔を綻ばせる。それを見て自然にイルマも笑みを浮かべていると、ヘッドボードに乗るモクローが転がり落ち、イルマの顔の横に仰向けになった。単に寝相が悪かっただけらしく、寝息を立てたまま起きる気配はない。

 

「……フフッ」

 

 相棒の様子に思わず吹き出したイルマ。すると、だんだん眠気に襲われていき、瞼が重くなってきたイルマは、ゆっくりと眠りの世界に落ちていった。

 




キタカミ編は今回で終了します。スグリ闇墜ち回避を望む感想も頂いたのですが、オーガポンを主人公がゲットした時点で回避をする方法が思い付きませんでした。今後のアニポケの展開にもよりますが、しばらくしたらブルーベリー学園編をやるつもりです。

次回からガラル編に入ります。




オーガポン(♀) イメージCV.鬼頭明里

テラスタイプ:くさ(着けている面によって変化する)
性格:さみしがり
特性:まけんき(着けている面によって変化する)
技:ツタこんぼう・つるのムチ・しねんのずつき・????

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