魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター 作:MTHR
今回のサブタイトルの元ネタは、『ひろがるスカイ!プリキュア』のボーカルアルバム「~FLY TOGETHER!!!!!~」に収録されている楽曲『未来コネクト』。歌い手はキュアバタフライ/聖あげは役の七瀬彩夏さんと、入間君の声を演じてもいるキュアウイング/夕凪翼役の村瀬歩さんです。
活動報告でイルマくんの新しいポケモンの募集を始めました。ラルトスやイーブイを正式にゲットした後で新しいポケモンのお話を書く予定なので、ゲットは恐らくテラスタルデビューの辺りに決める事になるよていです。
一応5体目のポケモンは幾つか候補があるのですが、イルマ君の手持ちにはどんなポケモンをゲットしてほしいのか、読者の皆様の意見を頂けると幸いです。
皆様、是非ともご協力お願い致します。
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「……コ、リコ!」
ロイの声を聞き、リコは目蓋を開ける。
視界に入ってくるのは、こちらを覗き込んでくるロイとフリードの姿。
「おっ、やっと起きたな」
「ロイ……フリード……ここは、何処?」
「何処って……ナックルシティ駅に向かう電車の中じゃん」
目をゴシゴシと擦って眠気を取るリコは、右肩に掛かるなぞの重みに疑問を持ちつつ、目の前を見渡して疑問を口にし、ロイが何を言ってるんだと言うように答える。
そう言われて、リコは自分達が、リコの祖母【ダイアナ】のいる古城を目指して、古城の多いナックルシティ駅に向かう電車にのった時の記憶を思い出す。
しかし、同時に青空と水が張った空間で並行世界から来たと言う少年と自分自身に邂逅した記憶が過り、リコは首をかしげる。
「なんか……さっきまで全然違う所にいたような気がするんだけど……」
「ニャ~」
「ミッ……」
「俺も車内で寝ててさっき起きたが、お前達はずっとそこで座りながら寝ていたぞ?寝惚けてるんじゃないか?」
リコの呟きに、先程まで座先に座りながら寝ていたフリードがそんなことはないと返す。
フリードの言葉に「あれは夢だったのかな…?」と考え始めるリコ。その時、リコの右肩に掛かる重みがズルッと落ちて、自信の膝の上にポスンと何かが落ちてきて来る感触がして、「ん?」と視線を膝の上に落とす。
そこには、自分の膝の上に頭を乗せ、スヤスヤと穏やかな寝息を立てている青い髪をした少年の寝顔があった。
それはまさに、男が彼女にして欲しい事で上位にランクインする行為であり、あらゆる漫画、ドラマでも見る事がある恋人同士が行う理想のシチュエーション──膝枕であった。
「うひゃあっ!?」
「ぶへっ!?」
リコは顔を赤くして反射的に座席から立ち上がると、イルマはリコの膝の上を転がり落ちて床に落ちる。
顔面を床に打ち付けた痛みで、イルマは顔を抑えながら目を覚まして起き上がり、リコは大声を上げてしまった為注目を集めてしまった他の乗客に「お騒がせしてすみません」と謝る。
『──間もなく、ナックルシティ駅に到着いたします』
その時、電車内でアナウンスが響き、リコ達は顔を上げる。
同時に、電車がナックルシティ駅に到着し、リコ達は少し慌てながら電車を降りた。
「……ラル!」
座席の真下で行きを潜めて隠れていたポケモン──ラルトスは、イルマ達が電車から降りたのを見て、小走りにその背中を追いかけていった。
ナックルシティ駅から降りたイルマ達。駅の柱の影に隠れて彼らを眺めているポケモンの存在に気づいていないイルマは、小さく欠伸をする。
「ふあぁ……何か変な夢を見たよ。リコが二人いたり、色違いのイーブイを連れたリンって名前のトレーナーとバトルしたり……」
「その夢、イルマも見たの!?」
「えっ?リコも?」
リコの驚いたような言葉に、イルマは眠気を吹き飛ばして首を傾げる。
「……変なことがあるんだね。同じ時間に寝て同じ夢を見るなんて」
「うん。それに、あの夢、かなりリアルだった気がするんだけど……」
「ニャオハ!」
「もっふもふぅ!」
「ニャオハ達もあの夢見たの!?」
リコが驚いたように尋ねると、ニャオハとモクロー、オーガポンにイーブイ、更にはフードの中のミブリムも頷いた。どうやら、全員同じ夢を見ていたようだ。
いくらなんでも、これだけの人数が同時刻に同じ夢を見るなんてあり得ないと、イルマ達はどういう事なんだと顔を見合わせ、フリードとロイはどうしたんだと首を傾げる。
「リコ!リーコ!」
そんな時、リコ達の背後からリコの名を呼ぶ声が聞こえてきて、イルマ達はその声がした方を振り向くと、リーゼントのような頭毛と舐めきっているような表情をした黄色いインコの姿をしたポケモンが、柵の上に止まっていた。
「お婆ちゃんのイキリンコだ!」
「初めて見るポケモンだ!」
『イキリンコ。インコポケモン。ノーマル・ひこうタイプ。黄色は気性が荒く、戦い方も荒々しい』
ロイがスマホロトムで【イキリンコ】を検索していると、イキリンコは『古城』と叫びながら柵の上から飛び立ち、バサバサと翼を羽ばたかせて何処かへ向かっていく。
「案内してくれるみたいだな」
「追いかけよう!」
ロイがそう言うと、各々はポケモン達を促してイキリンコの後ろ姿を追って歩き出す。
そうしてイキリンコを追い、フリードが「こんなところに古城なんてあったか?」と疑問に思いながらやって来たのは、草木が生い茂る森の中だった。野生のポケモン達がちらほら見えるようになってくる。すると、イキリンコが「古城」と叫びながら立ち止まる。
「古城って叫んでるね」
「行き止まり、だけど?」
ロイの言う通り、目の前にあるのは古城ではなく、イギリスの観光地ストーンヘンジのような印象を持つ岩が横一列に並んだ岩の壁。
「どうしたの、イキリンコ?」
「リコリコーッ!」
リコがイキリンコに尋ねると、イキリンコはリコの名前を叫ぶ。すると、壁となっていた岩の一部が「ゴゴゴ…」と音を立てながら動き出し、壁の向こう側へと続くトンネルへの入り口となった。
「こんなところに隠し扉が……」
「これは……」
『イシヘンジン。きょせきポケモン。いわタイプ。陽の傾きを眺めて暮らす。200キロを越える脚で悠々と草原を闊歩する』
「イシヘンジンが隠し扉の代わりをしてたんだ」
「面白い。ご苦労さん」
「ポケモンが門番なんてスゴいや!」
感想を言いながら、リコ達はイキリンコの案内にしたがってトンネルの中へと入り、奥へと進んでいった。
「ラルゥ……」
イシヘンジンが隠していたトンネルの奥へと進んでいくイルマ達の姿を、岩の壁から少し離れた場所にある木の影から眺めている、水色のポケモンの姿があった。
そのポケモン──ラルトスは、イルマ達を追って彼等が入っていったトンネルの中へ入ろうとすると、扉の役を担っているイシヘンジンが開いた脚を閉じたことで、トンネルへの入り口は閉ざされてしまった。
「ラルル……ラル!」
それを見たラルトスは、意識を集中させて力を込めると、「シュンッ!」という音を立てながら姿を消した。
ラルトスの姿が消えたと同時に、イシヘンジンの壁の前にある森の中に、エクスプローラーズのコニアとジルが、何かを探すように森の中を進んでいった。
“テレポート”を使って瞬間移動を行ったラルトスが目を開けて顔を上に上げると、そこは少し古びた灰色のレンガで舗装された道だった。そして、ラルトスの前には、イキリンコの案内に従って道を歩いていくリコ達の背中があった。
ラルトスはそれを見て、慌てて道の欄干の影に隠れ、こっそりと彼等の様子を伺う。
「……ん?」
「どうしたの、イルマ?」
「いや、何か視線を感じた気がして……」
「隠し通路を通ってきたんだし、気のせいじゃない?」
ロイ達がリコの祖母の人柄や、去年リコがセキエイ学園に入学が決まった際にリコの祖母が家に来てくれて例のペンダントを渡してくれたのだということを話していた所で、イルマは視線を感じて、訝しげな表情で後ろを振り向く。そこには何もいない。
リコが何かあったのかと尋ねてくるので、イルマは自分の勘違いかもしれないと答えると、再び前を向いて歩き出す。
「そう言えば、イルマのお爺ちゃんも、リコのお婆ちゃんと冒険してたんだよね?」
「そう聞いてるよ。六英雄の調査も一緒にやってた時期があるんだって」
「それ聞いた時は意外だったよね。サリバンさんっていつもあんな感じだから」
「冒険してたってことは知ってたんだけどね」
今度はリコの祖母の話から、ダイアナと共に冒険をしていたことがあるというサリバンの話に移り変わる。
すると、ロイが頭に思い浮かべた疑問を口にする。
「そう言えば、イルマってお爺ちゃんとあんまり似てないよね。性格もそうだけど、顔とか」
「そう言われてみればそうだな。サリバンさんは独身の筈だしな」
ロイとフリードの疑問に、長い付き合いゆえに事情を知っているリコは言いにくそうに目を泳がせる。
「えっと……それは……」
「まぁ、僕とお爺ちゃんは血は繋がってないからね」
「えっ、そうだったの!?」
「養子だったって事か?」
「イルマ……いいの?その事話して……」
「いいよ、別に秘密にしてる訳じゃないし。僕は5歳の頃にお爺ちゃんに拾われて、そのまま孫として迎えられたんだよ」
「両親はどうしてるの?」
「いないよ。物心ついた頃から見たこともない」
「……悪いな」
「あっ、気にしないで下さい。正直、最初からいないとどうとも思いませんので」
「……それはそれで、どうかと思うけど……」
イルマの明かされた秘密(本人は秘密にしてるつもりはない)を聞いて何となく重い空気が漂っている間にも、イルマ達はイキリンコの案内で、大きな建物にたどり着いた。
「コジョー、コジョー!」
「ここが目的地なのかな?」
「コイツは中々年代物の城だな……」
「すっげぇ!!」
「リコーッ!コジョー!」
「お婆ちゃーん!リコですー!」
リコが頭の上の上に止まったイキリンコと共に、古城にいると思われる祖母に呼び掛ける。
すると、古城から大きなポケモンの影が飛び出し、リコ達の前に降り立った。
乳白色の鬣をなびかせ、橙の身体には虎のような黒い縞模様がある逞しい獅子のような姿をしたポケモンを見て、リコは笑顔を浮かべてそのポケモンに抱きついた。
「ウィンディ!久し振り!」
「ガウッ!」
リコとの再開に【ウインディ】も嬉しそうに顔を綻ばせていると、古城の扉が音を立てて開き、リコ達はそちらに目を向ける。
扉の向こうから出てきたのは、リコ譲りのインナーカラーの黒髪を持つ壮年の女性だった。
「見違えたね、リコ」
「お婆ちゃん!」
リコは祖母【ダイアナ】との再開を喜び、ダイアナも成長した孫との再開に笑みを浮かべながらイルマ達を古城へと招き、イルマ達は古城の玄関付近で挨拶をする。
「アンタ達がルッカの話してくれた、ライジングボルテッカーズの……」
「フリードです」
「ロイです!コイツはホゲータ!」
「ホ?」
「イルマです。こっちはモクローとオーガポン、それからイーブイ」
「知ってるよ。サリバンの孫だろ?パルデアに立ち寄る度によくアンタの孫自慢を聞かされてたよ」
「僕もお爺ちゃんから聞きました。若い頃に一緒に旅をしてたって」
「ああ、一緒に旅をしてたのはもう40年以上も昔の話だけどね。昔馴染みと一緒に遺跡の探検でアリアドスの糸で逆さ釣りにされた時、サリバンのハクリューがいなきゃ一週間はそのままになるかもしれなかったよ」
リコの祖母から聞かされる話に、イルマは「へぇ~」と面白そうに聞いていると、ダイアナは話がそれていたことに気付き、改めてイルマ達に自己紹介する。
「アタシはダイアナ。リコを無事に届けてくれてありがとう」
「アリガトーッ!」
ダイアナの肩の上に乗るイキリンコも、ライジングボルテッカーズに礼を言う。すると、リコは足元にいるニャオハが、興味深そうにダイアナを見つめていることに気付く。
「そうだ。お婆ちゃん、あのね……」
「あら、もしかしてアンタがリコのパートナーかい?」
「ニャオハだよ。ニャオハ、私のお婆ちゃん」
ダイアナがニャオハに手を差し出すと、ニャオハはスンスンと手のひらの匂いを嗅ぐ。
「リコの事頼んだよ。この子は見かけによらず頑固な所もあるけど、とっても優しい子だから。大切にしてやっておくれ…」
「ニャッ!」
「おっと!」
ダイアナがそこまで言ったところで、ニャオハは突然爪を出してダイアナの手を引っ掻こうとし、ダイアナは手を引いてそれを回避し、イキリンコはダイアナの肩から飛び立つ。
「ニャオハッ!!」
「いいね、度胸のある子だ!」
「ニャオハ」
(ニャオハの態度にも動じない……流石お婆ちゃん!)
「遠慮はいらない。寛いでおくれ」
ダイアナに促され、リコ達は古城の奥へと脚を進める。
中には【シャンデラ】や【ゴビット】に【デスカーン(ガラルの姿)】、【ギアル】や【アップリュー】に【マジェード】等と言った多種多様なポケモン達の姿がある。
「ここってお婆ちゃんの家なの?」
「そうだね、いくつかある隠れ家のうちの一つなんだ」
「凄い!ポケモンが一杯!みんなダイアナさんの!?」
「この子達は野生のポケモンさ。皆気に入ったら好きなだけいる、飽きたら出ていく。自由の城」
「ブレイブアサギ号と一緒だな」
「他に人はいないんですか?」
「ここにいるのは私だけ。気楽な独り暮らしってとこさ」
それから、リコ達は客室に案内され、ニャオハとイーブイは火を着けた暖炉の側で昼寝をし、ロイはホゲータを抱えて壁に掛けられたウインディの肖像画を見て目を輝かせるなか、リコ達はソファーに座り、ダイアナが話を切り出した。
「本当にすまなかったねぇ。ペンダントを狙う連中が現れた時、直ぐルッカに連絡したんだけど……」
「お婆ちゃんも狙われてたの!?」
「あぁ。リコ、ここまで届けに来てくれてありがとう」
「あー、えっと……」
「届けにきた」という言葉を聞き、リコ、フリード、イルマの三人は顔を見合わせ、なんと説明していいのか分からないと言うような表情で考え込み、それを見てダイアナが尋ねる。
「なくちしまったのかい!?」
「いや、まさか!違うん…だけどね……」
「パ~……パーゴッ!」
リコが説明に困っていると、リコが背負ってきたリュックの中から、昼寝をしていたペンダントだった亀のポケモンが欠伸をしながら顔をだし、リュックの中から出てきてテーブルの上に乗ると、トコトコとダイアナの前に歩み寄ってきて、ダイアナはそのポケモンを抱き上げる。
「おやまあ……」
「……パーゴッ!」
「お、お婆ちゃん。あのねっ、どうしてなのか分かんないし、信じてもらえないかもしれないけど……あのペンダントが、この子になっちゃったの……」
リコの説明を聞いたダイアナは、抱き上げているポケモンに目を向け、口を開いた。
「……この子【テラパゴス】みたいだね」
「テラパゴス?」
「それが、その子の名前なんですか?」
「あぁ、この顔は間違いない。まさかペンダントが休眠状態のテラパゴスだったとはねぇ……」
「休眠状態で宝石の姿に……?」
「てっきり化石と同じ様なものだとばかり。そうかい、アンタずっと眠っていたのかい。ごめんね気付いて上げられなくて」
「この子の事、何か知ってるの?」
【テラパゴス】という名前といい休眠状態といい、先程から何かを知っている風に話しているダイアナに、リコが尋ねる。
「あぁ、心当たりならあるよ。ただし、記録された姿と違うんだけどね」
「進化前という事ですか?」
「分からない。記録で見たのは大きな甲羅のある姿なんだ」
「なる程、興味深い……!」
「それから私の予想が正しければ、この子はルシアスと共に旅をしたポケモンだ」
「!パーゴッ!パーゴパーゴッ!」
ダイアナの腕の中で再び眠っていたテラパゴスが、『ルシアス』という名前に反応して目を覚まし、大きく鳴き始める。その時、テラパゴスに負けないくらいの声でロイが叫んだ。
「大変だ!ホゲータが!!」
「どうしたの!?」
「様子が……」
リコ達が心配そうにロイに抱えられた、ぐったりしているホゲータに視線を向けた瞬間、ホゲータの腹から『グウゥ~』という音が聞こえてきた。
「お腹が減ったみたい……」
「ホゲ~……」
「「「……」」」
「それじゃ、食事にしようかねぇ!」
そうしてダイアナは一度台所に向かい、5分もしないうちに戻ってくると、テーブルの上に沢山の空いた缶詰めが並べられ、ニャオハ達も皿に盛られたポケモンフーズを頬張る。
「さぁ、お食べ!」
「いただきまーす!」
「皆缶詰め……これって非常食じゃ……」
「いいや、いつも食だ。食事はこれが一番。皿も洗わなくて便利だろ?」
「違いない。ウマイです!」
「でも毎日缶詰めは、ただの不摂生なんじゃ……」
「……イルマ、その缶詰め何個目?」
「え?6個目だけど?」
「イルマはそれでおしまいだよ」
「何でっ!?」
「言葉のブーメランって知ってる?」
イルマは抗議の声を上げるが、リコはまるで聞く耳を持たずにイルマから缶詰めを取り上げる。理由は語るまでもないだろう。
なお、缶詰は高カロリーで健康目的で食べると動脈硬化、脂質の過剰摂取、化学物質の摂取等のリスクがあるので注意しよう。
「……ラル」
「ガウ……」
そんな彼等の姿を、密かに古城に忍び込んでいたラルトスが覗き込んでいた。
そして、彼女とダイアナのウインディは、何かに反応したように、階段の上の、開け放った窓ガラスの向こうに見える夜空を見上げていた。
一方、缶詰めを食べ終えたリコ達は、ダイアナが淹れてくれたお茶で一服すると、リコがダイアナに尋ねる。
「ねぇ、お婆ちゃん。教えて、今までの冒険の事」
「そうだね……一歩踏み出したお前には、何もかも話そう。全ての始まりは、私が今のお前よりも小さかった頃の事……」
ダイアナは、自信の過去を話し始めた。
彼女が生家で母親から隠れて屋根裏部屋へと忍び込んだときの事。
音を立てずに部屋の奥へと進んでいく彼女は、進行方向にあった鞄に頭をぶつけ、興味を持ってその鞄を開けてみると、その中に入っていた箱の中に納められていたのが、リコに託したペンダント──休眠状態のテラパゴスだったのだ。
しかし、中にあったのはテラパゴスだけではなく、ルシアスと呼ばれる冒険者と、その仲間達が遺した記録手帳であった。
そして、ルシアスに興味を抱いたダイアナは、当時まだ進化していなかった【ガーディ】を連れて旅に出たのだ。道中にイルマの祖父であるサリバンといった様々な人やポケモン達との出会いと別れを繰り返し、実に30年にも渡って旅を続けていたが、ルシアスに関しての痕跡は殆んどつ見付からなかった。
「……でも、今の冒険者としての私があるのは、ルシアスのお陰なのさ」
懐かしそうに語るダイアナは、自分の身に起きた事を語り続ける。
数ヵ月前、ダイアナのもとに古い友人が尋ねてきたらしい。『冒険の協力をしてくれる人を紹介する』と言ってきたらしい。その時、ダイアナは裏で組織──エクスプローラーズが動いていた事に気付き、その組織の狙いがペンダントであることを知ったのだという。
「……それでどうにかしてリコとペンダントを守るため、アンタ達に依頼したんだ」
「お互い無事でよかったです」
「うん。フリード達がいなかったら、きっと、私もニャオハも……」
「改めてお礼を言うよ」
「いや、そんな事より、ペンダントの…いや、図鑑に載っていない、テラパゴスの秘密。ポケモンの謎と聞けば、黙っていられません!」
「……うん。いい顔だ、気に入った!」
「あの!これも見てください!」
フリードに続いて、ロイはリュックから自分の宝物である古のモンスターボールを取り出し、それをダイアナに見せる。
「島でじーちゃんから貰った、古のモンスターボールです!」
「これは……!」
「この中から、絵本に載っていた黒いレックウザが出てきたんです!」
「それに私達、六英雄のオリーヴァやガラルファイヤーに出会った時、不思議な景色を見たの。……もしかしたら、あれはテラパゴスの思い出だったのかも……」
祖母にこれまでの事を話しながら、リコは自身の推測を口にする。そして、ガラルファイヤーが見せたルシアスと思われる人物との記憶の中で、ずっと気になっていた単語をダイアナに尋ねる。
「お婆ちゃん、ラクアって知ってる?」
「ッ!」
「パーゴッ!!」
リコの言葉にダイアナが目を見開いた瞬間、テラパゴスが大きな声を上げた。
突然の事にリコ達が驚いていると、テラパゴスは扉に向かって歩きだし、扉を押し開けようとするテラパゴスを、フードの中にいたミブリムが飛び出して、甲羅にのって止めようとする。
やがてテラパゴスが仰向けに倒れ、ミブリムがその勢いで投げ飛ばされ、テラパゴスは甲羅が下になって仰向けになってしまって起き上がれなくなり、リコがテラパゴスを抱き上げる。
「どうしたの?」
「パーゴパッ!」
「ラクアか……」
「パーゴッ!」
「ラクアって言葉に反応してる…?」
ダイアナの呟きを聞いて更に声を上げるテラパゴスに、イルマはテラパゴスが『ラクア』という単語に反応していることを察して首を傾げる。
そんな彼等を見ながら、ダイアナは真剣な表情で口を開く。
「この世界の何処かにあると信じられている所。冒険者ルシアスが目指した楽園……それがラクア……」
「パーゴッ!」
「ルシアスが目指した楽園……!」
ポケモン博士のフリードが興味深そうに呟き、イルマは何やら凄そうな話に自然と背筋を正す。
「アンタも、知りたいかい?私も知りたい……」
「お婆ちゃん……」
「ちょっと待っといで、アンタ達に見せたいものがある。取ってくるよ」
「見せたいものって?」
「……ルシアスの手記さ!」
そう言って、ダイアナはイキリンコを肩に乗せながら部屋を後にする。
ソファーに座ってダイアナを待つリコ達は、暇潰しの意味も込めてダイアナの印象を話し合う。
「やっぱカッコ良いね、リコのお婆ちゃん」
「うん。スゴい話だった」
「僕としても、お爺ちゃんの昔の話も聞けたのは良かったよ」
「ライジングボルテッカーズ的には熱い展開だ。そうだ、アイツ等に無事着いた連絡を……」
「ラルッ!!」
「「「「っ!?」」」」
フリードがスマホロトムを取り出してブレイブアサギ号の仲間達に連絡をいれようとした瞬間、突然テーブルの上にポケモンが姿を現した。
リコ達はそれに驚いてテーブルの上に注目すると、現れたのは服の裾を引きずったような幼児の様な外見をした水色の頭部とオレンジの角を持ったポケモンだった。
「このポケモンって、ラルトス……?」
「しかも色違い……これまた珍しいな」
「もしかして……君あの時のラルトス?」
「え!?何でパルデアにいたラルトスがガラル地方に!?」
オリーヴァの森でその姿を見たことがあったロイがそのポケモンの名前を呟き、本来黄緑に近い頭部に赤い角を持つラルトスとは違う色をしたラルトスにフリードがスマホロトムを操作する手を止めてその色違いラルトスを見つめる。
そして、イルマが目の前にいるのが例のオリーヴァの森で出会ったラルトスではないかと気付き、リコがパルデア地方にいたラルトスが海を越えた先にあるガラル地方にいることに驚いている中、そのラルトスはリコの隣に座っているイルマの元に駆け寄り、服の袖を引っ張りながら何かを訴え掛ける。
「ラルッ!ラルルッ!」
「え?何々?」
「ラール!ラルッ!」
「何か言いたいことがあるみたい……って、ニャオハ?」
「モクローやオーガポンまで……」
必死な様子で何かを訴えるラルトスだが、言葉が分からないイルマ達は首を傾げるしかない。
だが、ラルトスの言葉を理解できるポケモン達は、ラルトスの言葉──「ソウブレイズを連れてる怖い人達が、ここに向かってきている」という警告を聞き、階段の上のテラスの、開けられた窓ガラスから見える夜空を睨み付ける。
ポケモン達の視線に疑問を持ったイルマ達がポケモン達の視線を追うと、窓の向こうからアーマーガアの姿が見えると同時に、その背中からテラスに降り立った男性──アメジオがゆっくりと室内に入ってくるのを見て、フリードは直ぐ様モンスターボールを投げた。
「リザードン!」
「リザァッ!!」
「オーガポン!」
「ぽにぃっ!」
「ソウブレイズ!」
「ブレイズッ!」
フリードとアメジオが其々リザードンとソウブレイズをボールから出し、イルマがオーガポンに呼び掛けると、リザードンとオーガポンはソウブレイズを睨み付ける。
「三人とも、逃げろ!」
フリードがリコ達を下がらせようと声を出した瞬間、アメジオの左右から男女の声が聞こえてくる。
「こんばんは」
「ゴダッ!」
「大人しくしろ!」
「サーイッ!」
アメジオの両隣に陣取るのは、パートナーをボールから出したコニアとジル。
「……パーゴ!」
「テラパゴス!?」
そんな中、リコに抱き上げられていたテラパゴスがアメジオの姿を目にした途端、リコの腕の中から飛び出した。
「ペンダントだったポケモン……」
「パーゴパ!パーゴッ!」
「…ミーッ!!」
「ミブリム!?」
「ラルッ!」
「ラルトスも!?」
アメジオがテラパゴスに目を向け、テラパゴスがアメジオに何かを伝えるように鳴き始めた瞬間、リコのフードの中のミブリムが飛び出し、テラパゴスの周りを走り回り、イルマが抱き抱えていたラルトスも、イルマの腕の中で何かを訴え掛ける。
お互いに生き物の気持ちを読み取ることが出来るポケモン達。恐らくテラパゴスの気持ちを感じとり、その強い感情に反応しているのだろう。やがて、ミブリムは強い感情を浴びすぎて疲れてしまったのか、仰向けに倒れてしまった。
「パーーゴーーッ!」
そんなミブリムに気付いた様子もなく、テラパゴスはその青い瞳にアメジオを映しながら、大きな声で鳴き続けていた。
~イルマとサリバンの関係性~
入間くん原作同様、2人に血縁関係はない。この世界ではサリバン達は人間の設定なので、2人の出会いと孫になった経緯はif魔フィアの様なものになっている。気が向いたらその話を書くかもしれない。この先の話と伏線にするつもりはない。
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