魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター   作:MTHR

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新章突入でふ。
章タイトルの元ネタは、仮面ライダーレジェンドVS仮面ライダーガッチャードのキャッチコピー「令和ライダー?100年早いな!」から。

原作通りになってしまうところは省いて、ややオリジナルが強い回になっていますが、ご了承下さい。

※ラルトスの特性を変更しました。


黒いレックウザ?100年早いな!
40話 ラルトスの気持ち


 エクスプローラーズの襲撃から逃れ、ダイアナとウインディ達を乗せたブレイブアサギ号の一室で、リコは祖母から手渡された、古の冒険者【ルシアス】の手記に書かれたメッセージを読み上げる。

 

 

 ──君達に見つけてほしい。

   この世界の美しさを。

 

 ──君達に見つけてほしい。

   この世界で、共に生きるポケモン達との、冒険の日々を。

   そして、未来を。

 

 

「リコ……六英雄を探しなさい」

 

 ルシアスのメッセージを読み上げたダイアナは、嘗てルシアスと共に旅をしたポケモン達を探すように進言する。

 

 そして、ダイアナ達を乗せたブレイブアサギ号は空を進んでいく。

 100年近くペンダントの姿で休眠していたテラパゴスには目に映るもの全てが真新しく、テラパゴスはブレイブアサギ号の中を散策し続けていき、それを気に掛けるリコにニャオハが不機嫌になったり、船首に上って落ちそうになったテラパゴスを助けようとしたリコをウインディとダイアナが助けたあと、リコとダイアナは再び話をする。

 

「残りの六英雄に会えば、本来の力を取り戻すだろう。そうすれば、ラクアへの道が開かれるだろう。かつてルシアスが導かれたように」

 

 ダイアナの『ルシアス』と『ラクア』という言葉に反応し、大きな声を上げる事で、リコはテラパゴスはラクアへ行けば、かつて絆を結んだルシアスに会えるのではないかと推測する。

 しかし、ルシアスの書記にラクアの居場所はしるされておらず、ルシアスは100年も昔に存在したトレーナー。たとえテラパゴスが会いたいと願っても、それが叶うことはないだろう。

「それでも、この子の望み、叶えてあげたい。たとえルシアスに会えなくても、何か残ってるかもしれない。ルシアスとの大事な思いでの場所、ラクアに、私はこの子を連れていく!」

「道は険しいが、そうだね。ポケ…」

「ポケモンが一緒なら、大丈夫!」

 

 ダイアナが幼い頃に自分に教えてくれた言葉を復唱したリコに、ダイアナはかつてルシアスが着けていたというルシアスのモンスターボール収納用のベルトを託す。

 そして、操縦室で不貞寝をしていたニャオハに謝り、これからも一緒にいてほしい頼みニャオハとの絆を深めたあと、リコはライジングボルテッカーズの仲間達に自身の思いを告げる。

 

「私は、この子をそこに連れていってあげたい。その為に、残りの六英雄に会うって決めた。凄く大変だってことも、まだまだ自分が力不足ってことも分かってる。だから……だから皆!お願い!力を貸して下さい!」

 

 リコの懇願に、ライジングボルテッカーズの面々は笑顔で、躊躇なく答える。

 

「当たり前じゃん!」

「俺達は仲間だ!仲間が本気でやりたいって思った事は、全力でサポートする。皆も思いは同じだ!」

 

 こうして、ライジングボルテッカーズの六英雄を探し、ラクアへと目指す旅が、始まったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はラルトス。

 人間達からは『きもちポケモン』と分類されているらしいです。理由は私達ラルトスは角で人やポケモンの感情をキャッチし、全体的に共感性の高いポケモンだからなのかもしれません。

 普通、ラルトスというポケモンは、黄緑色の頭に赤い角をしていますが、何故か私は生まれつき水色の頭にオレンジの角をした、普通とは違う色をしていました(人間達は色違いと呼ぶらしい)。

 そんな私は今、ガラル地方のワイルドエリア?と呼ばれる場所に来ています。ガラル地方にもラルトスやその進化系統は生息しているらしいですが、私は正真正銘、パルデア地方出身です。

 そんな私が何故海を越えた先にあるガラル地方にいるのか、その理由は、ある人を追いかけてきたからなのです。

 

「そうだよ!この世でポケモンの次に素敵なもの、それがカレーなんだよ!」

「リコ、それはちょっとオーバーだし、皆が皆カレー好きな訳じゃないから」

 

 今、ドットという女の子に謎の力説をする少女リコさんを宥めている青い髪に白い服と帽子をした人間──イルマさん。

 私は彼を追いかけてガラル地方に来たのです。

 

 

 

 少しだけ、私の過去を語りましょう。

 私は元々、パルデア地方の『ナッペ山』と呼ばれる雪山で、母のサーナイトと、長女のキルリア、そして3人の兄妹(ラルトス)の末っ子として生まれました。

 何故か皆とは違う水色の髪とオレンジの角をもって生まれてしまった私でしたが、お母さんもキルリア姉さんも兄達も、私を差別することなく、家族として私を愛してくれてました。私もそんな家族達を愛していて、彼らの家族として生まれた事を幸せと思っていました。

 しかし、そんな幸せは長く続きませんでした。

 ポケモンにもポケモンのコミュニティがあり、ナッペ山には私達以外にもラルトス系統の群れや、オニゴーリといったポケモンが生息していますが、その中に私と同じように色違いのポケモンなんて一人もいませんでした。

 他とは違う私の姿に、ナッペ山のポケモン達は奇異な視線を向け続けていました。その気持ちを自動的にキャッチしてしまう私は、何時も母さん達の影に隠れて暮らしていたした。

 母さんや姉さん達は毎晩落ち込む私を励ましてくれましたが、悪い事はそれだけではありませんでした。

 ナッペ山のポケモン達の反応でも痛感したことですが、色違いというのは非常に珍しいらしく、その上ラルトス系統のポケモンは人気があるようで、ナッペ山に来た人間達は、私を見つけるなり飢えた獣のような目をして、私を捕まえようとするのです。私達ラルトスは敵意を感じると隠れる習性を持っていますが、出会う前に敵意がなく、目があった瞬間に敵意を向けられるなら意味がありません。

 私が襲われそうになる度に、お母さんとキルリア姉さん、時には兄さん達も加勢して、人間を追い払ってくれました。

 お母さんはナッペ山に住むポケモンの中でも上から数えた方が早い程強く、私を狙う人間達を返り討ちにしていましたが、やはり無傷とはいきません。人間を追い返す度に傷を負っていくお母さんや姉さん達の姿に、私はいつも泣きたくなりました。臆病で弱くて、逃げてばかりの自分が情けなくて仕方ありませんでした。

 そして、私は家族の元を離れる決断をしました。私が突然いなくなったら母さん達が哀しむのは分かっていましたが、それ以上に私のせいで母さん達が傷付いてしまうのが嫌だったからです。

 夜、皆が寝静まった頃、私は当時使えた数少ない技のひとつである“テレポート”を使って、ナッペ山を飛び出したのです。

 

 そうして雪山を飛び出した私でしたが、案の定直ぐに路頭に迷ってしまいました。

 雪山から出たこともない私が、故郷を飛び出して上手くやっていける筈がなく、食べ物もろくに採れず、私は旅の末に行き着いた森の中で限界を迎えて倒れてしまいました。

 

 私はここで死ぬのかな……。何処か他人事のように考えていたところで、私はあるポケモンに助けられました。

 それは、通常では考えられないほど大きな身体をした、森のオリーヴァ様だったのです。

 オリーヴァ様は100年近く前からあの森に住んでいて、倒れていた私を介抱し、森に住まわしてくれました。

 余所者であり、森にいるポケモン達のなかでもいない色違いの私が森の中で他のポケモン達と共存できたのは、オリーヴァ様の仲介があってこそでした。オリーヴァ様の強さは、それこそ母さんすら凌駕する程で、森のポケモンをむやみやたらと捕まえようとするような人間なんて皆無でした。時々、コルサと言う名前の人間がアヴァンギャルドと叫びながら森に入ってきましたが、コルサさんには森を荒らす気がさらさらない為か森のポケモン達もあの人間に馴染んでいました。

 兎に角、私を受け入れてくれたオリーヴァ様には今も感謝してもしきれません。

 

 そんなある日、オリーヴァ様の森が山火事にあってしまった。原因は落雷によるものでしたが、それ山火事で様々なポケモンの住みかが焼き付くされ、火事の影響で少なくない怪我を負ってしまった。

 私も住みかを焼かれて怪我を負った1人だった。炎に身を焼かれ、住みかを失くし、何とか山火事の影響を受けなかった森の中へと辿り着いた私は、そのまま力尽きて倒れ、意識を失いました。

 そして、身体中の痛みが一気に引いていく感覚がして私が目を覚ますと、そこには青い髪と服をした人間と、対称的に赤い髪をした女の人がいました。

 過去の経験から、私は慌てて木の影に隠れて“テレポート”で逃げようとしましたが、イルマさんの声で、私は二人から敵意も悪意も何も感じないことを理解し、警戒しながらも木の影から顔を出していると、突然私のお腹が大きな音を立てた。考えてみれば、山火事からろくに食べてなかったので当然と言えば当然かもしれませんが、これは恥ずかしすぎるので私は思わずお腹を抑えて顔を赤くしてしまいました。

 イルマさんともう一人(確かアメリと呼ばれていた)にはバッチリと聞こえていたらしく、イルマさんは見たことのない食べ物(後にマドレーヌと言う名前であることを知った)を差し出し、空腹だった私は我慢することが出来ず、それを口にした。始めての食感と甘くて香ばしいお菓子に、甘党だった私は夢中になってそのお菓子を頬張り、更に差し出されたお菓子の山を、モクローさんとグレンアルマさんと共に夢中になって食べた。途中、イルマさんがアメリさんに覆い被さった時、少し離れていた私でも感じ取れる程『羞恥心』をキャッチしたのだが、あれは何だったのだろう?

 

 その後、リコさんとロイさんを敵だと誤解したオリーヴァ様をウパーさんと共に説得して、ウパーさん達は森の奥へと帰っていったが、私は何となく彼等の事が気になって、物陰に隠れながら様子を伺っていると、なんとリコさんの提案で、森を復活させようとしていたのです。

 素直に驚きでした。森を耕して復活させようという発送もそうですが、森が荒れた事とは無関係の筈の彼等が、私達のために汗水流して頑張っている姿は、私をゲットしようと狙ってきていたどの人間とも違う姿でした。私は彼等の行動に未知の感覚を覚え、思わず私は彼等の手伝いをしていました。木の実を植えている途中、イルマさんが木の実を踏んで転んだアメリさんの下敷きになった瞬間、優しい感情しか感じ取れなかったリコさんから途方もない程真っ黒な感情が溢れだしたのですが、イルマさんがアメリさんの下敷きになっただけで何故リコさんは怒っていたのでしょうか?

 それはともかく、結果として木の実の畑が完成し、ランドウさんのヌオーの“あまごい”と、オリーヴァ様の“こぼれダネ”の力で森は完全に復活すると、オリーヴァ様は何時も首に掛けていた奇妙な形状のモンスターボールに入り、イルマさん達に着いていくことにしたのです。

 

 オリーヴァ様を連れて去っていく『らいじんぐぼるてっかーず』の皆さんの背中を見て、私は、あのオリーヴァ様に認められた彼等が……特に、イルマさんの事が気になっていました。私達ラルトスは前向きな心に反応するポケモンで、前向きな気持ちというならロイさんの方がよっぽど前向きですが、イルマさんの心は、私が今までであってきた人間のどの感情とも違う感じかしていたのです。

 まるで何処までも広がる青空のように、優しく穏やかな彼の感情には、何となく惹かれてしまう自分がいました。

 

 そして、私はイルマさん達の後を追い、密かに彼等の住みかとしている『ぶれいぶあさぎごう』という大きな船に乗り込みました。

 それからというもの、船の中でイルマさんを見かけては話し掛けようとするも、生まれついての臆病な性格から、『私の事を覚えてなかったらどうしよう』というマイナス思考に陥り、ウジウジしている日々が続いていました。今まで人間に追いかけ回されてばかりだった為、イルマさんや船にさん住んでいる人達はそんな人でないと理解していても、自分から人間の前に出てくる勇気が、私にはありませんでした。

 

「もふふ、もふ。もふもーふ(どうした、嬢ちゃん。そんな所でボーッとして)」

「ラッ、ラルル。ラルトス……(あっ、ごめんなさい。すぐに木の実集めますね)」

「もふもっふぅ(いや別に直ぐに集めろと強要はしてねーよ)」

 

 そこへ、イルマさんのパートナーであるモクローさんに声を掛けられたことで、私は慌てて“ねんりき”を使って木の上に鳴っているモモンの実を落としました。

 

 私達は今、『かれーらいす』と言う料理を作るための木のみを集めるためにワイルドエリアの森の中を散策しているのです。チラリと視線を後ろにやってみると、そこには木の幹をグラグラと揺らして木の実を落としているイルマさんの姿があります。

 

 今までは勇気がなくてイルマん達の前に出れなかった私でしたが、昨晩『えくすぷろーらーず』という悪い心に満ちた人間達がイルマさん達を狙っていることを知り、いても立ってもいられずにイルマさん達の前に現れてその事を警告したため、あの日から私はイルマさん達の前に自然と出てこれるようになっていました。

 今まで見つからないように隠れて生活していたつもりですが、白い帽子を被るピカチュウのキャップさんとそのトレーナーであるフリードさんには気付かれていたのは驚きでした。勝手に船に乗り込んでコソコソと木の実等を拝借していた事に怒られるかとも思いましたが、誰一人そんな様子はなく、人間もポケモンも、皆色違いで余所者の私を受け入れてくれていました。

 

「がおっ、ぽにおーっ!(見てくれイルマ、一杯採れたべ!)」

「ありがとう、オーガポン」

「ぽにぃ……(へへへ……)」

 

 そう考えていると、“つるのムチ”で木の実をもぎ取り続けていたオーガポンさんが、腕一杯の木の実を抱えてイルマさんに歩み寄ると、イルマさんがオーガポンさんの頭を撫でてやり、オーガポンさんは嬉しそうに顔を綻ばせた。

 

「ラルル、ラルゥ(オーガポンさん、頑張りましたね)」

「ぽにぽに。がおっ、ぽにお(こんくらいなんて事ないべ。イルマと一緒だから張り切ってる、そんだけだ)」

「ラルル……(一緒だから……)」

 

 私がオーガポンさんのもとに歩み寄ってそう言うと、オーガポンさんは嬉しそうに顔を綻ばせます。

 オーガポンさんは、私が船に乗り込んだ後に立ち寄ったキタカミの里と呼ばれる場所で、自らイルマさんにゲットされたらしく、自分から選んだだけあってイルマさんの事が大好きだ。

 ゲットされる前日に、謎のポケモンが現れて船にいる人達やポケモン達が、キビキビ叫びながら変なダンスしてイルマさん達に襲い掛かるという意味の分からない事件がありましたが、私はその時船の中に隠れていたので詳しくは知らないけど、オーガポンさんはその騒動の首謀者のポケモンと浅からぬ因縁があるらしい。そのポケモンのせいで、オーガポンさんは長い間人間達に忌み嫌われながら生きてきたらしい。人間に追い回されて生きてきた私としては、彼女に何となく、共感というか、彼女のつらさが少しだけ分かるような気がしています。

 

 おっと、そうしている間にもリコさん達も木の実を集め追えたようですね。イルマさん達は木の実を抱えて船の止めてある場所へ戻ろうとしているので、私はモモンの実を三個程抱えて後を追います。

 

 フリードさん達がいる場所に戻ると、そこには野外用のテーブルやら『おこめ』という食べ物が用意され、リコさんとロイさんが別々にカレーライスというものを作り始めています。しかし、何故イルマさんは『料理しません』と書かれた板を持って座っているのかな?

 

「……もっ、もふぅ(なぁ、嬢ちゃん)」

「ラル?(何ですか?)」

 

 リコさんとロイさんがドットさんに『まごころ』という物を熱く語っているなか、私の隣に座っていたモクローさんが声を掛けてきた。

 

「もーふ、もふもふふぅ?(……オメー、本当はイル坊と行きたいんじゃねーのか?)」

「ッ!ラルル……(ッ!それは……)」

 

 モクローさんの言葉に、私は言葉をつまらせる。

 モクローさんは陽気な性格で少し奔放なところがあるが、その反面イルマさんの最初のポケモンであるためか、少し天然なオーガポンさんを宥めたり、イルマさんのために真っ先に動いたりと頼もしい面を持ち合わせている。いわばイルマさんのパーティーの纏め役的な立ち位置だ。そんなモクローさんだからこそ、人を見る目に長けているのだろう。

 実際、モクローさんが言った事──イルマさんのポケモンになりたいというのは、心の何処かで考えていたことであったからだ。

 

「もふ、もふーふふもふもっふ。もふ、もふもふもふぅ~……もふふもふ(まっ、わざわざ船に乗り込んでイル坊の前に出てきた時点で察しはついてたけどなぁ。全く、イル坊は相変わらずのタラシだねェ~……言葉が通じんなら説教してたぜ)」

「……ラルゥ、ラルト(……ゲットされたいと考えた事は、ない訳じゃないです)」

 

 呆れたように呟くモクローさんに、私はゲットされるのを考えたことはあると伝えますが、あくまで考えただけであり、ゲットされたいとは考えていないと伝えます。

 

「もっ、もふもっふふ。もふぅもふふ(まっ、そこは嬢ちゃんが自分で決めるんだな。ゲットされなくても、イーブイみたいに同伴も出来るしな)」

「皆~、ご飯だよ~」

 

 モクローさんがそこまで言ったところで、イルマさんが私達に声をかけ、更に上に乗せられたポケモンフーズという食べ物が出されました。よく見ると、フードの上に茶色いドロドロの液体がのっています。これがカレーなのでしょうか。

 お米の上に乗せられたカレーを食べ始めたライジングボルテッカーズの皆さんは実に美味しそうにカレーを頬張っています。私と同じカレー乗せポケモンフーズを食べているポケモン達も同様です。それを見て、私もカレーがついたポケモンフーズを一つ取り、食べてみます。

 

「…ラルッ!(…辛いッ!)」

「いぶ、いぶぶっ!?(だ、大丈夫っ!?)」

「ラルル……(大丈夫です……)」

 

 あまりの辛さに、私は小さく悲鳴を上げてしまいます。

 それを聞き、カレー乗せポケモンフーズを食べるのを止めて私に心配そうな声をかけてくるのは、先程モクローさんが名前を上げていたイーブイさんです。

 オリーヴァ様の森にたどり着くまでの間に、イーブイを何度か見たことはありますが、どのイーブイも茶色の体をしているのに対し、彼女は美しい白銀の体毛をしており、私と同じ色違いと呼ばれる個体なのです。ライジングボルテッカーズの皆さんの船には彼女の他にも濃い緑の体色をしたジュナイパーさんがおり、色違いの私は何となく、あの2人に親近感のようなものわ感じていたりしています。

 

 水をゴクゴクと飲んで舌に残る辛さを和らげて、フゥと息を吐いた私は、イーブイさんを見て考えます。

 イーブイさんは何時もイルマさんのバッグの中に入り、イルマさんと行動を共にしていますが、イルマさんのポケモンではありません。あくまでも彼女の立ち位置は私と同じ居候であり、イルマは彼女をモンスターボールに入れていない。色違いのポケモンは本当に希少らしく、人間達は色違いを手に入れたがる者が多い為、彼女がイルマさんのポケモンでないと知った時は心底驚いたのを覚えています。

 

「……ラルゥ?(……聞いてもいいかな?)」

「いぶ?(何ですか?)」

「ラルル、ラルゥ?(イーブイさんは、どうしてイルマさんと一緒にいるの?)」

 

 イーブイが船に乗った理由は、パルデア地方の何処かにいるという家族を探すためであり、彼女がガラル地方でイルマさんと一緒に行動する必要はない。

 私の問いかけに、イーブイさんは少しだけ考えた後、再び私の方に顔を向けて答えた。

 

「いぶ、いぶぶ……いぶ、いーぶい(えっと、色々理由はあるんですけど……一番は、イルマの事が好きだからかな)」

「ラル……(好き……)」

「いぶぶ、ぶぶぶいぶい、いぶぶいぶい。いーぶい、ぶいぶぶい。いぶ、ぶぶぶい(イルマは、タマゴだった私を見つけてくれて、孵化させてくれた。それで、私を家族のもとに送ってくれるって約束してくれた。だから、その日が来るまで一緒にいたいって思うんです)」

「ラルル……(そっか……)」

 

 イーブイさんの答えを聞いた私は、リコさんが作ったカレー乗せポケモンフーズを食べながら、イルマさんに顔を向ける。

 

「それにしても、こんなに美味しい料理を作れるなんて、リコは将来良い奥さんになるね!」

「……ふぇっ!?」

 

 見てて此方が微笑ましくなるような笑みを浮かべながらリコさんのカレーを頬張り、リコさんを誉めるイルマさん。誉められたリコさんの顔が何故か赤くなり、フリードさん達やモクローさんとニャオハさんが呆れたように溜め息を吐いているのに疑問を持ちながら、私はイルマさんの事について考えます。

 

 今までイルマさんを見てきて、イーブイさんの経緯を聞いた辺りから、イルマさんについて一つ分かったことがあります。

 イルマさんの行動原理は、常に『他人』にあることです。『自分がどうしたい』ではなく、『誰かの為に何が出来るか』と考え、行動する。それが人間であれポケモンであれ、誰かのために何かをしてあげようと思えるのが、彼の根底なんだと思います。

 それが分かった時、オーガポンさんが自分からイルマさんにゲットされたのは、そんな所に惹かれたからなんじゃないかと思いました。

 

 それを考えた私の足は、自然と軽くなり、私はイルマさんの背中を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

「う~ん……何でリコはあんなに慌ててたんだろう……師匠にも怒られたし……?」

 

 ブレイブアサギ号の展開されたウイングデッキの上で、仰向けに倒れたイルマは、腕を組んで頭を捻る。

 リコが作ったカレーを食べているなかで、イルマはリコの料理の腕を純粋に誉めたのだが、その途端何故かリコの顔が赤くなって目を反らされ、バチコから「お前はいい加減女心を一から勉強しろっ!!」と叩かれてしまった。

 勿論、そうなったのはイルマがリコを誉めた台詞に問題があった。

 リコが赤面した理由、それはイルマの『リコは将来良い奥さんになるね』という台詞が原因である。あの発言で、リコは自分とイルマが結婚したらという未来を妄想を思い浮かべてしまったのだ。普通であれば、あんな言う方も言われる方も非常に恥ずかしいであるのだが、イルマはただ素直にそう思って口にしたに過ぎず、特に深い意味など無い。故にそれをイルマは自覚することが出来ないでいた。天然のタラシとは恐ろしいものである。

 

「……ラルル!」

「ん?」

 

 その時、展望室の方から聞き覚えのある声がかけられて、イルマは見上げるように展望室の方に目を向けると、そこには最早見慣れた水色のポケモン──ラルトスの姿があった。

 イルマはグルリと体を回転させて起き上がり、ラルトスに顔を向ける。

 

「ラルトス……どうかしたの?」

「ラル……ラルル……」

「もーふぅ」

「ぽにっ!」

「ぶいっ!」

「モクロー達まで……?」

 

 首をかしげて用件を訪ねるイルマに、ラルトスは顔を赤くして、モジモジと恥ずかしがっている。そんなラルトスに、展望室の方からやって来たモクロー、オーガポン、イーブイの3体がやって来て、モクローがラルトスの背中にポンと片翼を当て、オーガポンとイーブイがラルトスに激励をするように鳴く。ポケモンの言葉を理解することが出来ないイルマは、その光景に首をかしげて頭にクエスチョンマークを浮かべる。

 そんなイルマを前にしながら、しばらく顔を赤くしたまま俯いていたラルトスだったが、モクロー達の言葉を聞いて決意を固めたのか、キュッと唇を噛み締め、後ろに回していた手に持っていたものをイルマの前に差し出した。

 

「……ラルッ!」

「これって……モンスターボール?」

 

 ラルトスが両手に持ってイルマに差し出したのは、何も入っていない空のモンスターボール。イルマはそのモンスターボールを受け取り、手の中のボールとラルトスを交互に見ていると、ふと思い浮かんだ考えを口にする。

 

「もしかして……ゲットしてくれってこと?」

「ッ!ラルッ!」

 

 ラルトスはパアッと笑顔を浮かべ、コクコクと首を上下させる。

 イルマはその反応を見て、モンスターボールをジッと見つめていたが、やがてフッと笑みを浮かべ、渡されたモンスターボールをラルトスの前に持ってきた。

 

「わかったよ。君には色々助けてもらったし、それが君の一番したいことなんだよね、ラルトス」

「ラルッ!」

 

 頷いたラルトスはイルマの手の中にあるモンスターボールのスイッチに触れ、ボールが開き、ラルトスは赤い光となってその中に吸い込まれていく。

 

キュインキュインキュイン…カチッ!

 

 手の中でモンスターボールが数回揺れると、星のエフェクトと共にボールから音がする。

 

「ラルトス、ゲット」

「もふぅ」

「ぽにっ!」

「ぶぶーい!」

 

 新たに加わった仲間に、イルマの肩に乗ったモクローが良かったなと言うように鳴き、オーガポンとイーブイが声を弾ませる。

 イルマはボールを投げて、中からラルトスを出す。

 

「ラル!」

「これからもよろしくね、ラルトス」

 

 飛び出したラルトスを抱き上げ、目線を合わせてそう言うと、ラルトスは笑顔でコクリと頷いた。

 

 そして、新たに加わった仲間を紹介するためにイルマはラルトスとモクローと反対の左肩に乗せて歩き出すと、羨ましくなったのかイーブイが帽子の上に、オーガポンが背中に飛び付き、突然襲い掛かった重量に、イルマは転びそうになるもなんとか持ちこたえ、フラフラとしたした足取りでミーティングルームを目指す。

 

(……こちらこそ、宜しくお願いしますね、イルマさん)

 

 そんな主人の様子に笑みを浮かべながら、ラルトスはそっとイルマの方に身を寄せた。

 




ラルトス✨(♀) イメージCV:水樹奈々

テラスタイプ:不明
性格:おくびょう
特性:トレース
技:ねんりき・チャームボイス・テレポート・こごえるかぜ


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