魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター   作:MTHR

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 今回は挿し絵を載せていますがあんまり上手く描けていないので、余興程度に見てください。

 今回、ゲームのキャラクターを登場させております。


41話 盗まれたモンスターボール ★

 黒いレックウザを追い求め、ライジングボルテッカーズはガラル地方のワイルドエリアにやって来たが、実はそれはエクスプローラーズのスピネルが流した偽の情報であり、ワイルドエリアでカレー作りをした後、リコ、イルマ、ロイ、フリードの4人はダイアナの情報である人物がやっているという店を目指していた。

 

「おぉっ!なんか色々売ってる!」

「露店街か、こいつは賑やかだな」

「そ、そうだね……」

「もふ」

「ラル」

「ぶいっ」

「ぽにぃ!」

「……イルマ、重いなら一度下ろしたら?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 道の両端に様々な露店が並び、人々が賑わう光景をロイとフリードが見渡すなか、イルマは肩の上にモクローとラルトス、帽子の上にイーブイ、背中にオーガポンを背負い、プルプルと震えながら二人の言葉を肯定する。イーブイはゲットしていないので当然であるが、イルマは「ボールの中じゃあ窮屈じゃない?」と手持ちポケモンは必要の無い時は常にモンスターボールから出していることが多いのだが、つい先程新たにラルトスをゲットしたイルマは、それからずっとこの状態なのだ。因みに、モクロー、ラルトス、イーブイ、オーガポンの体重を合計すると、約54.4キロ。そんな重荷抱えてフリード達と同じ速度で船からここまでこれるのは結構すごい。

 先頭を歩くリコはイルマにそう言いつつ、ダイアナから渡されたメモを手にして、その人物がやっているという店を探していた。

 

「お婆ちゃんが言ってたお店、この辺の筈なんだけど……」

「ダイアナさん、一緒にこなくて良かったの?」

「私も誘ってみたんだけど、今はあの古文書の解読に夢中みたい……あっ、いた!目印のランプラー!」

 

 そこで、リコは少し先の露店の上に吊られているランプの姿をしたポケモン【ランプラー】を見て、リコ達はその店の店主に声をかけた。

 

「あの、すみません!」

「あっ、お客さん!はいはいはい、よく来たね。見てってよ、良いもの揃ってるよ!」

「あの、私達……」

「良い時来たお客さん。滅多にでないお宝が入荷したところさ。こいつがあればどんなバトルも勝利間違いなし!」

「えっ、ホントに!?」

「どんな品ですか!?」

「……」

 

 チョビヒゲを生やした白髪の男の言葉に興味を示すロイとイルマ。フリードは男の言葉を訝しんでいるのか、少し疑うような眼差しを向ける。

 男は取り出した青い瓶をリコ達に見せながら、その商品の説明を始める。

 

「そうともさ、こいつは超強力ねむりごな。バトルで使うとたちまちその場にいる全員が眠っちまうっていう恐ろしいアイテムなんだ」

「すっげぇ!」

「えっ、自分も眠っちゃったらバトルにならないんじゃ……」

「だな」

「あと、“ねむりごな”はくさタイプや特性“ぼうじん”持ちには効かないんじゃ……」

 

 話が確かなら効能は凄いが、リコの言う通りバトルにいるポケモン全員が眠ってしまえば引き分けだろうし、“ねむりごな”なら無効化できるポケモンもかなり多いので、凄くはあるだろうがバトルで使うのは不適切な気がする。

 

「あと、コイツをご覧よ。珍品中の珍品、なんと20000年前のスマホロトムの化石さ!」

「うわぁっ!この店すげェ!」

「20000年前にスマホはないだろ……」

「あと他にも……」

「あの、テペンさんですよね?私達、ダイアナお婆ちゃんから聞いてここに来ました!」

 

 スマホロトムのような形状の石を見せ、続いて何かを取り出そうとしている【テペン】という名の老人に、このままでは埒が明かないとリコが話を切り出した。

 

「えっ、ダイアナ?」

「孫のリコって言います」

「そうかい、ダイアナさんの。よ~く知ってるよ!昔は彼女とその旅仲間と一緒にちょいちょい冒険したもんさ」

「えっ、お婆ちゃんとですか!?」

「旅仲間って、もしかしてサリバンって名前ですか?」

「おや、サリバンさんも知ってるのかい?」

「はい。僕はサリバンの孫で、イルマって言います」

「なんと、サリバンさんにお孫さんがいたとはねぇ!思い出すなぁ、森の中の遺跡を探検してて、アリアドスの糸にダイアナさんと一緒に逆さ吊りにされた時、サリバンさんとハクリューが助けてくれなきゃずっとそのままになるとこだったよ」

「……なぁリコ、イルマ。さっきから色々怪しくないか?」

「でも、アリアドスの話、ダイアナさんが前に話してくれたのと全く一緒ですよ?商品は兎も角、ダイアナさんの知り合いなのは嘘じゃないかと……」

 

 フリードは何となく彼を疑っているのかリコとイルマに顔を寄せて呟く。リコとイルマも何となく、先ほどからインチキ臭い商品を見せてくる男に疑問を持っているようだが、イルマは古城に来た時にダイアナから聞かせてもらった武勇伝を全く同じ台詞で語るのだから、ダイアナとサリバンの友人として信用してもいいのではないかと、首をかしげながら言う。

 

「それで、何か探し物かい?」

「あの!僕達、こういうボールを探してて……なにか知りませんか?」

 

 ロイはリュックの中から、宝物である古のモンスターボールを取り出して見せる。

 そのボールを見たテペンの目の色が変わり、それに違和感を感じたフリードとイルマは僅かに疑問を抱く。

 

「こ、コイツは!?」

「なにか知ってるんですか!?」

「えっ、いや、どうだったかなぁ。ちょっと、よく見せてもらっても良いかい?そのリュックごとね」

「えっ?あ、はい」

(何でリュックごと調べる必要あるんだろ……?)

 

 ロイは古のモンスターボールを入れたリュックをテペンに渡し、それを受け取ったテペンはクルリとイルマ達に背中を見せ、ボールをよく見ているのか「これは珍しいボールだな」と呟いている。未だにモクロー達を身体中に乗せたイルマは古のモンスターボールを調べるだけなら何故リュックを渡す必要があるのかと首を傾げている。

 

「ッ!ラルゥ!」

「わっ、ラルトスどうしたの!?」

 

 その時、イルマの左肩に乗っていたラルトスが、突然テペンに向かって鳴き出した。イルマはラルトスが肩から落ちないように左手を使って体を支える。

 そんな中、古のモンスターボールを調べていたテペンが、ロイのリュックに手を突っ込みながらこちらを顔を向け、リュックの中に入れていた手を抜いて、ロイにリュックを返した。

 

「いやぁ、見たこと無いね。悪いな」

「あっ、そうですか……」

「めげるなって。そう簡単に見つかったら、面白くないだろ?」

「まぁ、それもそっか」

「うん。お邪魔しました」

「あぁ、どうもね。ダイアナさんによろしく言っといておくれよ」

 

 そう言ってリコ達はテペンの店を後にし、テペンはリコ達の後ろ姿を見送りながら手を振った。

 

「ラルッ、ラルルゥ!」

「ラルトス、本当にどうしたの…?」

「ミー!ミッ、ミミミ…!」

「えっ?どうしたの、ミブリム?」

 

 しかし、イルマの肩の上から降りて、イルマのズボンの裾を引っ張るラルトス。するとリコのフードの中のミブリムも騒ぎだし、リコとイルマはエスパータイプ2体の様子に首を傾げる。

 その時、何処からか「グゥ~」とお腹の鳴る音がする。今回はイルマではない。視線を落とした先には、お腹を押さえたホゲータの姿があった。

 

「ホゲータ、お腹空いたのか?そう言えば僕も……」

「そろそろ昼時だからな」

「そっか。ミブリムもラルトスもお腹空いちゃったんだね」

「よし、その辺でなんか食うか」

「賛成!」

 

 続いてロイのお腹が鳴り、フリードが近くの飲食店に行こうと提案し、嬉々としてそれに賛成したロイを先頭に、一同はスマホロトムで調べた近くのレストランに向けて歩き出す。しかし、ラルトスは一向にイルマを引っ張る事を止めない。

 

「ラルゥ~……」

「わ、分かったよ。此方に行きたいんだね?リコ、ロイ君、フリードさん。僕たちは後で行くので、皆は先にお昼御飯にしてください」

「一緒に行かなくて良いのか?」

「大丈夫です。レストランでご飯出されたら早めに食べるので」

「イルマはどんな大盛りで出されても一瞬で平らげるしね」

 

 パルデアにいた頃に、大食いチャレンジでシェフに値をあげさせている程の食欲を持つイルマに、幼馴染みのリコは苦笑しながらそう言った。

 そしてフリード達と一時別行動して、ズボンを引っ張り続けるラルトスに従い、イルマは来た道を戻る。

 

「ラル!」

「ここ、テペンさんの店だよね。何か欲しいものでも……ッ!あれは……」

 

 ラルトスが指差した先──テペンの店に視線を向けたイルマは、露店に戻ったテペンの手の中にあるものをみて、目を鋭くした。

 

 

 

 

 

「ヘヘヘ、上手く行ったぜ。お前達、出てこい」

 

 スチームパンクチックなデザインの球体──古のモンスターボールを手にしたテペンが突如として声をかけると、店のシンボルであったランプラーの他に、露店の品物にカムフラージュして潜んでいた銅鏡の姿をした【ドーミラー】、吊り鐘のような姿をした【ドータクン】、鞘に収められた洋剣の姿をした【ヒトツキ】が姿を現した。

 

「よし、店じまいだ」

「ちょっと待ってもらいましょうか」

「ッ!?」

 

 店の品々を片付けようとしたところで、高い男の声がかけられ、テペンやランプラー達は店の前に立つその人物に顔を向けた。

 そこには白いスーツと帽子の青髪の少年、イルマが立っていた。普段は背景に花が飛ぶような穏やかな笑みを浮かべているイルマだが、今の彼の眉尻は吊り上がり、両手もその胸の前で組まれていて、目にジーッという効果音が聞こえてくるほど細められており、誰の目から見ても「貴方を疑ってます」と感じさせる表情をしていた。彼のポケモン達も同様だ。

 

「こりゃさっきのお客さん。何かご用で?」

「ラルトスに促されまして……それで、何でロイ君の古のモンスターボールを、貴方が持ってるですか?」

 

 イルマはジロリとテペンが手にしている古のモンスターボールを一瞥しながら問い掛ける。問い掛けるようだが、イルマの中では答えが出ているのか、普段のような穏やかな雰囲気は感じられない。

 

「いやいや、勘違いじゃないですか?これはウチの店にあった品でして……」

「さっきロイ君のモンスターボールを見たこと無いって言ってましたよね?」

 

 テペンの言うことを全く信じないイルマ。

 かつて不思議な空間で邂逅した少年の自分は異世界からやって来たと言うぶっ飛んだ台詞すらすんなり信じたイルマだが、先程まで知らないと言っていたのにイルマ達が去った途端に突然それを出したり、まだ真っ昼間なのに店じまいにしようとする等、今回ばかりは信じられる要素が少なすぎる。

 

「……けどまぁ、万が一勘違いってこともありますしね。ロイ君に連絡して確認しますよ。ロイ君の手元にモンスターボールがなければ貴方がそれを盗ったって事ですぐ返して貰いますよ!」

 

 だが、ダイアナとサリバンの旅仲間だということは信じているため、最後の確認としてイルマはスマホロトムを取り出してロイに連絡をいれようとする。

 

「ランプラー、“くろいきり”!」

「ラプッ!」

「「「「「ッ!?」」」」」

 

 その時、テペンの指示を聞き入れたランプラーが真っ黒な霧を発生させ、辺り一面を包み込んだ。

 浴びたポケモンのバフやデバフをリセットさせる“くろいきり”は、使い方次第で目眩ましにもなる。その影響でイルマ達の視界は効かなくなり、イルマは腕を振るって霧を掻き消そうとするも効果は薄い。

 

「モクロー、羽で霧を飛ばして!」

「もふ!」

 

 イルマの肩の上から飛び出したモクローが小さな羽をバサバサを羽ばたかせて風を起こし、真っ黒な霧が晴れていく。そして、露になったテペンの店は、ペテンもポケモン達も商品も、全てが跡形もなく消え去っていた。

 

「逃げられた!?それじゃああのボールやっぱり……皆、テペンさんを探そう!」

「もっふぅ!」

「ぽにっ!」

「いぶ!」

「ルッ!」

 

 イルマはキョロキョロと辺りを見回してテペンやランプラーの姿が見えないことから何処かへ逃げたことに気付くと、仲間達と共にテペンを探して露店街を走り出す。道行く人に視線を向け、その中にテペン達らしき影がいないか探し回りながら、イルマはスマホロトムでロイに連絡をいれる。

 数回のコールのあと、応答となってスマホロトムからロイの声が聞こえてきた。

 

『もしもし、イルマ?』

「ロイ君!古のモンスターボールどうなってる!?」

『えっ?どうしたの行きなり……って、うわぁっ!?』

『ゲタ!』

『タマゲタケ!?』

「ど、どうかした!?」

 

 スマホロトムの向こうから騒がしい音が聞こえてきて、何が起きたのかと心配の声を上げるなか、スマホロトムからリコの声が聞こえてきた。

 

『だ、大丈夫。でも、全然理由が分かんないんだけど、ロイのリュックからタマゲタケが出てきて……』

『な~~い!!ない、ない!古のモンスターボールがない!!』

 

 同時に、ロイの叫び声が聞こえてきた。

 どうやらイルマの悪い予想が的中してしまったらしい。

 

「テペンさんが、古のモンスターボールを持ってたんだ。返して貰おうとしたら“くろいきり”で視界を防がれて逃げられちゃったんだ。もしかしなくてもこれ……」

『盗まれたってこと!?』

「うん、間違いないよ。ラルトスとミブリムは、テペンさんの悪意をキャッチしてそれを伝えようとしてたんだ」

『そっか、ごめんねミブリム』

「兎に角、早く探さないと!」

『そうだね。でも、何で古のモンスターボールを?』

『骨董品屋としての興味か、あるいは……』

「エクスプローラーズ!?」

 

 ガラル鉱山にやって来ていたアメジオの発言から、エクスプローラーズはテラパゴスの他に黒いレックウザを狙っている事は分かっていた。既に空になったレックウザのボールをどのように扱うのかは不明だが、どちらにしろあのボールはロイの宝物なのだ、取り返さないという選択肢は存在しない。

 

『手分けして探そう。俺はリザードンで空から探す。ただし、見つけたらまずスマホロトムで俺を呼べ。相手の手の内が分かるまで、バトルは仕掛けるなよ』

「わ、わかりました!それと、テペンさんはランプラーの他に、ドーミラーとドータクンとヒトツキを連れてましたよ!」

『分かった!』

 

 エクスプローラーズが絡んでいるとなれば、テペンの実力も相当なものと言う可能性が高いし、もしたしたらアメジオクラスの相手が出てくるかもしれないので、迂闊に戦うなとフリードが釘を刺し、イルマはそれに頷きながら、自信が目撃したテペンが連れていたポケモンの情報を伝える。

 

 やがて通話が切れ、イルマは真剣な表情となっている仲間達に声をかけた。

 

「ラルトス、テペンさんの事教えてくれてありがとう」

「ラルッ」

「皆、絶対にロイ君のボールを取り替えそう!」

「もふぅ!」

「ぽにぃ!」

「ぶいっ!」

「ラル!」

 

 イルマの言葉に、モクロー達はやる気に満ちた表情で頷いた。そして、時間的にまだ近くにいる筈だと、イルマ達は走り出した。

 

「……?」

 

 人が賑わう露店街を駆け抜けていくイルマ達。そんな彼らの後ろ姿に、カメラを手にする女性が目を向けた。

 

 

 

 

 

 

「ったく、まさかこんな展開になるとはな……」

「リザァ……」

 

 フリードは大量の木の実や野菜等を運んだり、倒れた露店の屋台骨をたてたりしながら愚痴るように呟き、リザードンはせっせと木の実を運びながら苦笑いする。

 

 イルマからの連絡でロイの古のモンスターボールが盗まれていたことに気付き、手分けをしてテペンを発見したフリードはテペンにボールを返すように問い詰るがテペンは盗っていないとシラを切り、荷台に乗せられた商品を調べてみるもモンスターボールを見つけることが出来ず、ランプラーに持たせたことを看破したフリードは、リコ達にランプラーを探すように連絡をいれている隙をつかれてテペンを逃がしてしまった。

 リザードンにテペンを追いかけさせたが、その際に巻き起こった突風で道に出ていた露店を滅茶苦茶にしてしまい、フリードは店の片付けを命じられ、その場から動けなくなってしまっていた。非常事態とはいえ、商人達の怒りは正統なものなので逆らうことなど出来る筈ないが、フリードが動けなくなったのは問題だった。

 動けなくなったフリードはリコとロイに連絡を入れ、キャップをリコ達の援護に向かわせると、自身も片付けに参加するために足元の木の実を拾い上げようとする。

 その時、フリード達がやってきた方から、ハスキーな女の声が聞こえてきた。 

 

「おいおい、何だかここだけ荒れてんなァ。この道にだけ台風でも来たのか?」

「!バチコじゃないか!」

「ん?フリードにリザードンじゃねーか。お前ら何してんだよ……あぁいや、何となく分かったわ」

 

 そこにいたのは、食材や洗剤など様々な物を入れた袋を抱えるジュナイパーとバチコであった。

 彼女は食料や日用品の調達のためにチルタリスに乗ってこの露店街にやって来て、買い物を終えてブレイブアサギ号に戻ろうとするなかで、凄まじい音を聞き付けて興味本意でやって来ていたのだ。滅茶苦茶になった露店と、せっせと木の実を運ぶリザードンにやや困惑していたが、直ぐにこの惨劇を作ったのがフリードとリザードンだと看破し、「お前何やってんだよ」と言うような視線を向ける。

 仲間からの冷たい視線に居心地の悪さを感じつつ、フリードはバチコに声をかけた。

 

「お前が来ていたなら丁度良い。キャスケットを被った爺さんか、ロイのモンスターボールを持ったランプラーを探してくれないか?」

「は?何でだよ?」

「話すと長いんだが……」

「おい、サボってないでさっさと片付けろ!」

「っ、すいません!」

 

 その時、後ろから店員に声を投げかれられた。

 散乱した木の実を拾い上げながら、フリードは訝しげな表情のバチコに状況を簡潔に説明した。

 

「ロイの古のモンスターボールが盗まれたんだ。さっき言った爺さんとランプラーが犯人なんだ!」

「はぁ!?何でボールの事聞きに行ったらボールが盗まれんだよ!?」

「色々あったんだ。」

「……ったく、しょうがねぇなあ。出てこい、チルタリス」

「チルーッ!」

 

 バチコは盛大にため息を破棄ながらモンスターボールを投げると、中から飛び出したチルタリスがバチコの前に降り立つ。バチコはジュナイパーと共に、チルタリスの背中に買い物袋を乗せた。

 

「お前は先に船に戻ってろ。荷物が邪魔だ」

「チルッ」

 

 チルタリスはコクンと頷くと、翼を動かして店に迷惑が掛からないようにゆっくりと飛翔し、上空20mまでとんだ辺りで、ブレイブアサギ号を目指して飛び去っていく。

 

「ジュナイパー、行くぞ」

「ジュナ」

 

 バチコの言葉にジュナイパーはコクンと頷くと、一人と一羽はペテンが逃げ去っていた方へ、堕ちている木の実を踏まない様に気をつけ、店員達を掻き分けて真っ直ぐに道を進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 僕は何故こんなことをしているんだろう。

 ロイの宝物が盗まれたのに、あのじいさんを追うこともせずに街中で突っ立っている自分の状況に、イルマは露店街の青空を見上げてそう考えたあと、視線を落とし、足を止めなければならなくなった理由に目を向けた。

 

「あーイイね!その笑顔いただき!あぁ、もう容量がたりないよ!さては悪い子だな?」

 

 根元から毛先にかけて藍・浅葱・水色と髪色が分かれた不思議なショートヘアに、赤色の瞳。

 首にはチョーカーを身に着け、五角形があしらわれたポケットが付いたダメージジーンズ、白いスニーカー、上下セパレートのタンクトップの丈は極端に短くおへそ丸出しであり、かなり露出の多い恰好をしているその美女は、一丸のカメラでパシャパシャと音を出しながら、モクロー、オーガポン、イーブイ、ラルトス、そしてイルマの1人と4体を撮影していた。

 彼女の足元には、茶色がかった濃いオレンジ色に目元が隠れるほど長く丸みを帯びた白毛を持つ狛犬を思わせるポケモン。

 

 何故こうなったのか、イルマは10分前の出来事を思い返す。

 リコ達と手分けして、イルマはあのおじいさんを探しているなか、首に丸い何かを下げた巾着をつけたランプラーの他にドーミラー、ドータクン、ヒトツキの姿を発見し、ランプラー達があのお爺さんの手持ちだと気付いたイルマは、先手必勝とばかりにモクロー達を向かわせようとしたところで……

 

『君、珍しいポケモン連れてるね!』

『うわっ!?』

 

 真横から、見知らぬ女の声がかけられ、反射的に振り向くと、そこには件の女がカメラを手にしてこちらに詰め寄ってきていた。

 困惑するイルマに、女性はカメラを向けながら声をかけた。

 

『私はサザレ、ちょっぴりカメラ好きな旅の者さ。こっちは相棒のガーディ、頭の角がキュートでしょ?』

『イ、イルマです。一応、ポケモントレーナーです』

 

 困惑しながらも名前を名乗るイルマ。

 そんな風に自己紹介しているうちにも、ランプラー達は何処かへと去って行き、【サザレ】と名乗る女性カメラを手にしながらイルマに話しかける。

 

『早速で悪いけど、写真撮らせてもらって言いかな?』

『え?何でですか?』

『実はこのガラル地方で黒いレックウザを見たって情報があって写真を撮りに来たんだけど、中々見付からなくてね。他に何か良い被写体がいないか探してたんだ。それで見つけたのが、君が連れてるそのポケモン達!滅多に見掛けない色違いのポケモンを2体も引き連れている上に、その緑色の子は始めてみるポケモンだ。モクローとも中々強い信頼感があると見える。是非とも写真に納めたい。()()()だよ』

『……うぐっ、わ、分かりました……』

『……君、素直すぎて心配だよ。知らない人の頼みをそんな二つ返事で受けちゃいけないな。まっ、写真は撮るけど』

『注意したのに撮るんですか!?』

 

 パシャパシャとフラッシュの光とカメラの音を出してイルマ達を撮影し出すサザレに、イルマは声をあげつつ、『お願い』を断れないためサザレの被写体として撮影されてるのだった。

 

「あのっ、そろそろ……」

「君、表情固いよ!」

「え、え~と……」

 

 イルマはもうそろそろ行って良いかと言おうとするも、未だに写真を撮り続けるサザレの勢いに押され、微妙な表情のモクロー達と共に、しばらく写真を撮られ続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻。

 ロイのボールを袋にいれて首に下げたランプラーを追いかけてきたリコとロイは、博物館から公園までやって来て、分かれ道になっていた為、リコとロイは手分けをしてランプラー達を探す。

 

「……?(何故だがイルマが綺麗な女の人と一緒にいる気がする……)」

 

 その時、リコは謎の電波を受信して、謎の苛立ちを感じる。

 しかし、今はロイの宝物である古のモンスターボールを取り返すことが重要であり、リコは謎の苛立ちを鎮めると同時に、リコのスマホロトムから着信音がなり、応答するとロイの声が聞こえてきた。

 

『リコ!ランプラー達がこっちにいたんだけど、ドーミラーとヒトツキに足止めされちゃったんだ!ランプラーとドーミラーはそっちに向かったよ!』

「ランプラー達はこっちに逃げたのね?分かった!」

『僕達も直ぐ行くから!』

「ニャオハッ!」

 

 通話を負えた時、ニャオハが顔を向けている方を見たリコは、向かい側の茂みからランプラーとドーミラーが現れるのに気付き、リコとニャオハはランプラーとドーミラーの前に立ち塞がる。

 そしてリコは、空中に浮かぶランプラーの首に丸い膨らみのある袋がぶら下がっているのに気付く。

 

「あっ!あの袋を取り返さないと!ニャオハ、“このは”で紐を切って!」

「ニャーオハッ!」

 

 ニャオハが強力な木の葉を飛ばすが、ランプラーとドーミラーはバラバラに回避し、近くの花畑で小規模の爆発が起きる。

 

「もっともっと“このは”!」

「ニャオハッ!」

 

 ニャオハの十八番、“リーフストーム”と錯覚してしまいそうな量の木の葉がランプラーに降り注ぐが、その瞬間ドーミラーが前に進み出てランプラーの盾となる。

 

「だったらニャオハ、走りながら“このは”!」

「ニャオハッ!ハッ!ハッ!」

 

 ニャオハは素早い動きでランプラーの周囲を走り回り鋭く“このは”を飛ばすが、負けじとドーミラーもそれを防ぎ続ける。

 その時、リコのフードの中にいたミブリムはランプラーの背後の花畑にスコップが立てられている事に気付くと、ナイトキャップのようは頭部の先端にサイコパワーを集中させると、そのスコップが意思を持つように浮き上がり、先端がランプラーを捉える。ランプラーはドーミラーとニャオハに集中していて、それに気付かない。

 その瞬間、スコップは勢いよくランプラーに向かっていった。

 

ザシュッ!

 

「ラプ!?」

「えっ!?あっ、ミブリム?」

「ミッ」

「ありがとう!」

 

 スコップの先端がランプラーが下げていた袋の紐を切り裂き、予想外の出来事にランプラーとリコは目を丸くするが、直ぐにリコがミブリムの“ねんりき”によるものだと悟ると、リコはフードの中のミブリムに礼を言った。

 地面に転がり落ちた袋をニャオハが拾い上げようとした瞬間、ドータクンとヒトツキを引き連れたテペンがやって来た。

 

「ランプラー、“どろぼう”攻撃!」

「ランプッ!」

 

 テペンの指示を聞き入れたランプラーが素早く飛びだし、ニャオハよりも速く袋を拾い上げ、テペンのもとに戻ってくる。

 

「そんな……」

「リコ!」

「ロイ!」

 

 そこへ、ドータクンとヒトツキに足止めされていたロイがやってくる。

 リコとロイはテペンに向かい合う。

 

「テペンさん、何でこんなことするんですか!お婆ちゃんとサリバンさんと一緒に冒険した仲っていうのも嘘なんですか?」

「あ~、冒険。さぁ、どうだったなかぁ」

「そのボールを返してください!大切なものなんです!」

「それが偶々こういうボールを高く買い取ってくれるっていう人が店に来てねぇ」

「えっ!?」

「やっぱり、エクスプローラーズ!?」

 

 古のモンスターボールを求める物と言う言葉を聞き、リコとロイはテペンの言っている人物に辺りを付ける。テペン自身がエクスプローラーズというわけではなさそうだが、ロイの宝物を渡せない理由が増えた。

 

「だから、悪いけど諦めて譲ってくれるかい?」

「そんなこと出来ません!」

「返してくれないなら、バトルで取り返す!」

「そうかい、なら仕方ないな」

 

 ニャオハとホゲータ、ランプラー達が揃って臨戦態勢を取る。

 

「ホゲータ、“かえんほうしゃ”!」

「ニャオハ、ランプラーに“でんこうせっか”!」

 

 ホゲータが強力な炎を吐き、ランプラー達が素早くそれを回避すると、猛スピードで走るニャオハがランプラーに突進する。

 

「“サイドチェンジ”!」

 

 その瞬間、ドーミラーとランプラーの立ち位置が入れ替わり、ニャオハはドーミラーと激突する。

 ニャオハが小爆発を起こしてドーミラーから距離を取った瞬間、ニャオハの攻撃を回避したランプラーの背後に、2体のポケモンが現れた。

 

「ラルトス、“こごえるかぜ”!モクロー、“シャドークロー”!」

「ラルゥッ!」

「もっふぅ!」

「ラプッ!?」

 

 モクローの背中に乗り、“テレポート”でモクローと共にランプラーの背後に現れたラルトスが雪の結晶を混じらせた吐息を吐き、その冷気に一瞬だけ震えたランプラーの隙をついたモクローが影の爪でランプラーを切り裂いた。

 ランプラーが手放した袋を、モクローが背中にラルトスを乗せたまま口でキャッチする。

 

「二人とも、大丈夫!?」

「「イルマ!」」

 

 リコ達が声がした方に顔を向けると、そこにはイーブイを頭に乗せたイルマが、オーガポンと共にリコ達のもとに駆け寄ってくる姿があった。

 

「ごめん、少し遅れちゃった。サザレさんの撮影が予想以上に長引いて……」

「ううん、ありがと……サザレさんって誰?」

「……え?いや、その……兎に角、今はあのお爺さんを懲らしめよう!」

「……イルマ、後で話があるから」

「ハイ……」

 

 疲れきった様子のイルマが呟いた知らぬ名前に反応したリコがジト目になり、まさかこの非常時にほぼ強制だったとは言え暢気に写真のモデルやってたとは言えないイルマは冷や汗をかきながらテペンを懲らしめようと主張するが、怖い笑顔のリコに凄まれて後で説教されるかもと縮こまった。

 そんなギャグみたいな二人の様子に呆れながらも、モクローは古のモンスターボールを入れた袋を咥えながらロイのもとに降りようとする。

 

「ヒトツキ、“きんぞくおん”!」

「ッ!オーガポン、竈の面で“ツタこんぼう”!」

「がおぉっ!!」

「ツキッ!!?」

 

 ヒトツキが体から金属を擦るような不快な音を出してモクローを止めようとするが、その瞬間竈の面を被ったオーガポンが炎の棍棒を叩き付ける。効果抜群に加え、オーガポンの破格のスペックから繰り出される一撃に、ヒトツキは勢いよく殴り飛ばされて地面に倒れ、気絶した。

 

「それならドータクン、“トリック”!」

「ドー!」

「もふ!?」

 

 ヒトツキが一撃でやられた事に驚きつつ、テペンはドータクンに指示を出すと、モクローが持っていた袋が瞬間移動したように消え、ドータクンの手元に現れた。手元にある袋をテペンに手渡す。

 

「“トリック”なんて、面倒臭い技覚えてますね。あれじゃあ取り返しても同じことの繰り返しだ。オーガポン、もう一回“ツタこんぼう”!」

「“あまごい”!」

「ドーッ!」

「ぽにっ!?」

「かき消された!?」

 

 オーガポンの炎の棍棒を振り下ろそうとするも、ドータクンが雨を降らせて棍棒の炎を弱められる。

 

「それならカイデン!“スパーク”!」

「オーガポン、井戸の面に変えて“ツタこんぼう”!」

「ぽにおーっ!」

「カーッ!!」

「ドドッ!?」

「ドータクンまで!?」

 

 それを見たロイがボールから出したカイデンが翼に電気を纏わせて突進し、井戸の面に変わったオーガポンが水流を纏う棍棒を振り下ろす。2体の同時攻撃の前には、耐久力の高いドータクンも耐えきれず、ドータクンは戦闘不能に陥った。

 

 一気に2体が戦闘不能にされ、残ったランプラーとドーミラーに向かい合うように、ホゲータ、ニャオハ、モクロー、ラルトス、カイデン、オーガポンが並び立つ。数やポケモンの強さから見ても、どう考えてもイルマ達が優勢だった。

 

「ゲタゲタゲタ……」

 

 その時、ホゲータ達の真横から、笠の色合いや模様がモンスターボールそっくりなキノコの姿をした【タマゲタケ】が、青い煙を巻きながらホゲータ達の前を通りすぎる。

 青い煙がホゲータ達を包み込み、タマゲタケがホゲータ達の前を通った後には、ホゲータ達は仲良く眠っていた。

 

「えっ!?」

「さっきのタマゲタケ!?」

「よ~し、よくやった」

「やっぱりアイツも仲間だったのか……って、寝てる?」

「あれ?あの瓶は確か……」

「……見たか!草タイプにも効き目バッチリの自家製超強力ねむりごなの威力!」

「やっぱり、自分も寝ちゃうんだ……」

 

 眠っているニャオハ達の直ぐそばで自分も眠り、見覚えのある瓶を落としているタマゲタケの姿を見ながら、リコ達は苦笑い。

 

「ヘヘヘ、どうやら勝負はついたようだな」

 

 しかし、状況は深刻だ。

 2体倒してタマゲタケが自滅したとは言え、まだテペンにはランプラーとドーミラーが残っている。いや、正確に言えばイルマのイーブイとリコのミブリムは眠っていないが、相性が悪い上に戦闘に向いていない彼女達ではあの2体に勝つのは厳しい。

 イルマ達が表情を険しくしていると……

 

「ピカピカッ、カーチュッ!!」

「ジュナイパー、“リーフブレード”!」

「ジュナッ!」

 

 突如茂みから飛び出したキャップの“かみなりパンチ”がランプラーを殴り飛ばし、空から急降下してきたジュナイパーの“リーフブレード”がドーミラーを切り裂き、ランプラーとドーミラーは一撃で戦闘不能にされた。

 

「今だよイーブイ、ボールを取り返して!」

「ぶいぃっ!!」

「痛ァっ!?」

 

 その隙を見逃さず、イルマが指示を出すと、帽子の上にいたイーブイが勢いよく飛び出し、イーブイは古のモンスターボールを入れた袋を持つテペンの腕に飛び付くと、その腕に思いっきり噛み付いた。

 突然の痛みにテペンは思わず袋から手を離すと、イーブイはテペンの腕から素早く飛び出してその袋を口でキャッチしながら地面に降り、一目散にロイの目の前まで走る。

 

「こ、こりゃ不味いや……」

「ギャオッ!」

「形勢逆転だな、盗人」

「全員集合、一件落着って感じだな」

 

 一瞬で優勢が覆されたことを察したテペンだが、彼の周りにはいつの間にかリザードン、バチコ、フリードの三人が三人が立っており、彼の逃げ道を塞いでいた。

 一方で、ロイはイーブイから受け取った袋を探り、中にはいっていた古のモンスターボールを見て、良かったと安堵の表情を浮かべていた。

 

 そしてニャオハ達も目を覚まし、一同は正座をさせたテペン達に目を向ける。

 

「さて、こいつをどうするか……」

「ヘッ、煮るなり焼くなり勝手にしろってんだ」

「ならそうさせてもらおうか!」

 

 そこへ聞き覚えのある声が掛けられて、今度はテペンを含めた全員がその声がした方に顔を向けると、そこにはダイアナとイキリンコ、ウインディがやって来ていた。

 

「お婆ちゃん!」

「ダ、ダイアナ!?」

「古文書の解読してたんじゃ……」

「あぁ、そうさ。最後まで読んでようやく気付いたよ。アンタに買わされたこの古文書は、真っ赤な偽物だってね!」

「テペン!ペテン!」

「に、偽物だなんて人聞きが悪いな。コイツは正真正銘の……」

「偽物でなけりゃ、『続きは動画で』なんて書いてある訳ないだろ!!」

(確かに真っ赤な偽物だ……)

 

 古文書(偽)を地面に叩き付けるダイアナ。そして彼女の言葉に、確かに偽物だと分かりやすすぎるとイルマは苦笑い。

 

「昔馴染みの私によくもこんなものを売り付けてくれたね。ウインディ、こんがり焼いておしまい!」

「グルル……」

「お、おばあちゃん!やり過ぎ……」

 

 口内に炎を溜め込んだウインディを見て、流石に見過ごせないリコが止めるように主張すると、ウインディは炎を吐くのを止め、ダイアナは呆れたように呟いた。

 

「全く、いつからそんな風になっちまったんだい。昔は発掘に情熱を燃やす冒険者だったじゃないか」

「え?」

「遺跡の探検ではよく一緒になってね。アリアドスの糸に逆さ釣りにされた時、サリバンのハクリューの“こうそくいどう”のお陰で、何とか逃げ延びたのさ」

(イルマの言ってた通り、昔一緒に冒険してた話は本当だったんだ)

「フン、俺は元々こんな男だよ。騙す盗むはお手の物。冒険なんかよりよっぽど楽で性に合ってるぜ」

「おや、そうかね?……ちょっとゴメンよ」

 

 そう言って、ダイアナはドーミラーを掴んで、その背中をゴシゴシと擦る。フリード以外の面々がダイアナの行動に首をかしげていると、ダイアナはドーミラーの背中部分を見せる。  

 

「ほら!」

「あっ!」

 

 テペンがその背中を食い入るように見つめ、それを疑問に思ったリコ達も、ドーミラーの背を覗き込む。

 そこには、テペンとよく似た男が、ランプラーの進化前である【ヒトモシ】を膝の上にのせている姿だった。

 

「ドーミラーは真実を写し出すという。どうだい?アンタの心は、昔みたいな冒険者に戻りたいって言ってるんじゃないかい?」

「……向いてないんだよ。いつも後悔するんだ。怖いし辛いし、臆病な俺には冒険なんて……」

 

 ドーミラーが写した光景を見せられてはウソをつけなくなったのか、タマゲタケを肩の上に乗せたテペンは顔を手で覆いながら弱音を口にし、ランプラー達や、ダイアナの手の中にいたドーミラーは、そんなテペンに寄り添うように集まった。

 そんなテペンに、ダイアナは穏やかな表情で語りかける。

 

「怖いのは最初の一歩だけ。踏み出せば忘れちまうものさ。あの頃のアンタは、今より楽しそうだったよ。そのポケモン達は、冒険で出会った大切な仲間達だろう?その子達に悪事の片棒担がせるなんて、恥ずかしいと思わないのかい?」

 

 ダイアナの言葉に、テペンはランプラー達に目を向けると、やがて目から涙を流し始めた。

 

「……ごめん……ごめんな……」

 

 肩を震わせ、悪事を働かせ続けてしまった仲間達に謝るテペンの背中を見ながら、イルマは傍らに立つリコに、小さな声で話しかけた。

 

「……凄い人だね、リコのお婆ちゃん」

「うん。私、そんなお婆ちゃんが大好き……」

 

 イルマの言葉に、リコはまるで自分の事のように満足気な表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 夕方。

 露店街の道端で、荷物を纏めたテペンとダイアナ達が話をいていた。

 

「本当にすみませんでした。一から出直して、またいつか遺跡の発掘に出掛けようと思います。この子達と一緒に」

「約束だよ」

「そうだ、あの人にも謝らないと。ボールは売れなくなったって」

「それって、このボールを欲しがってたって人?」

「どんな奴か教えてくれ!」

 

 テペンがボールを盗んだ理由でもある人物がエクスプローラーズだと辺りをつけていたロイ達は、いったい誰が古のモンスターボールを欲しがっていたのか尋ねる。

 しかし、テペンの返答は予想外のものだった。

 

「どんなって、何でもモンスターボール職人らしくて、珍しいボールだったらどんなに高くても買い取るって言うから……」

「モンスターボール職人?」

「エクスプローラーズじゃなかったんだ……」

「……まぁ、考えてみればロイ君のボールは今空っぽだしね。黒いレックウザが入ってたとは言え、レックウザが今何処にいるかの手掛かりにはならないよね」

「確かに、とんだ思い違いだったなぁ」

「で、ここに届けるって約束してたんだ」

 

 テペンが差し出したメモを受け取り、記された住所に目を通すリコに、フリードが提案する。

 

「気になるなら、会いに行ってみるか?」

「うん、行こう!」

 

 リコは大きく頷き、ライジングボルテッカーズの進路は決まった。

 

 その後、テペンと別れ、ブレイブアサギ号へと戻っていくイルマ達。冒頭と同じように全身にポケモン達を乗せたイルマの姿を可愛いと思いながら見ていたリコは、ふとあることを思いだし、イルマに声をかけた。

 

「……ところでイルマ、結局サザレさんって誰のこと?」

「えっ?今それ聞くの!?」

 

 その事を今聞かれるとは思っていなかったイルマはギクリと肩を震わせ、フリード達も興味を持ったのか最早言い逃れは不可能だと察し、ガックリと肩を落としながら暴露した。

 

「実は、ランプラーを探すなかで、サザレさんっていうカメラマンの綺麗な女の人に、写真のモデルになってくれと言われて、そのまま……」

「おいバカ弟子、お前ロイの宝物が盗まれるなんて一大事にモデルなんてやってたのかよ?」

「す、すみません。“お願い”って言われて断れなくて……」

「素直なのは美徳だが、見ず知らずの他人の変なお願いをそう簡単に聞き入れるなよ……」

「返す言葉もございませえっ!?」

 

 バチコからバカを見るような目を、フリードから呆れたような目を向けられながら軽く叱られていたイルマだったが、突然襟首を誰かに掴まれる。

 

「……イルマ、ちょっと話があるから、私の部屋に来てね」

「えっ、リコ?」

 

 頬を膨らませ、実に不機嫌そうな表情でイルマを連行するリコ。イルマ自身、今回は自分に非がある自覚はあるが、幼馴染みの強制送還に嫌な予感がしながらも、リコの威圧感に逆らえず、ズリズリと引き摺られながらイルマは猫のように掴まれてリコにブレイブアサギ号へと連行されていった。

 

「リコ、何か怒ってない…?」

「ホゲ、ホゲゲ~?(イルマ、何か悪い事したのかな?)」

「……怒っているのは、違う理由みたいだねぇ」

「全く、ウチのバカ弟子は……」

「……こりゃあ、お互い苦労しそうだな」

「もふもっふぅ、もふふふ(ガラル鉱山で前進したかと思ったが、まだまだ道程は遠いな)」

「ニャ~……(そうだね……)」

「ぶぶい……(モクローさんもニャオハさんも苦労してますね……)」

「ラルルゥ?(皆は何を言ってるの?)」

「ぽに?がおっ(いや?わかんね)」

 

 リコが不機嫌な理由を分かっていないロイ、ホゲータ、ラルトス、オーガポンは首をかしげ、その理由が分かっていた面々は、揃って呆れたような表情を浮かべるのだった。

 

 その後、船に戻ったイルマはマードックに夕食が出来たと呼ばれるまで、リコの部屋で正座させられて長々と説教されていたのは余談である。

 




~サザレ~
 碧の仮面のガチグマイベントに登場するキャラクター。
 本作のキタカミ編でガチグマ(赫月)を出したのに彼女は陰も形もなかったことを思い出した為に登場させた。

挿し絵でオーガポンのサイズが少し小さくなっていますが、描いてから気付いたことなのでご了承下さい。

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