魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター 作:MTHR
サブタイトルの元ネタは、『ウルトラマンブレーザー』のOP『僕らのスペクトラ』からです。
イルマの宣言に呼応したモクローが、全身から青い光を放つ。
その光は辺りを目映く照らし、目を赤く光らせるモクローのシルエットを徐々に変化して行き、翼と体が大きくなっていく。
次の瞬間、青い光が弾け、姿が露になった。
「くふぅ!」
糸目で微笑むミステリアスな外見に、その姿は貴族や執事のような姿に変わったモクローだったポケモンは、猛禽類のように鋭い目を見開き、キリヲ達を睨み付けた。
「モクロー……フクスローに進化したんだ!」
『フクスロー。はばねポケモン。くさ・ひこうタイプ。刃羽根と呼ばれる鋭い羽根を敵や獲物に投げ付ける。ほぼ百発百中』
スマホロトムでそのポケモン──【フクスロー】の情報を検索するイルマ。
一方、イルマの宣言やモクローの進化に僅かに驚いていたキリヲだったが、直ぐに気を取り直してイルマに話し掛けた。
「モクローが進化したからって、状況は変わらんよ。レックウザは既に僕たちの戦力や。フクスローになっても、君が勝つなんて出来るわけあらへん」
キリヲの言うことは事実だ。
いくら進化したとは言え、中間形態であるフクスローと、六英雄の一体であり伝説のポケモンのレックウザとでは隔絶した実力差があり、モクローからフクスローに進化した程度で埋められるものではない。
そんな冷厳な事実を前にしても、イルマの答えは変わらない。
「言ったでしょう。僕は絶望しない。僕はレックウザのせいで皆が傷付くのも嫌だし、レックウザがエクスプローラーズに奪われるのも嫌だ。それに、ロイくんの夢が潰されるのも嫌だ。だから……全部拾いたい。僕は全部を諦めない」
その目には一点の濁りもない。この絶望的な状況を前にしても、本気で自分達を止めてみせるという決意に満ちた目。
キリヲには、その目をしていられる理由が、何一つ理解できない。
気付けば、無意識のうちに指示が出ていた。
「モモワロウ、やれ」
「モゲゲ~!」
『きりゅりりゅりりゅりしいぃッ!!』
キリヲの指示を受けたモモワロウは、滞空するレックウザに向けて声をかけると、レックウザは禍々しさに満ちた咆哮を上げ、イルマ達をに狙いを定める。
それを見て、フクスローは細目を開き、鋭い眼光でレックウザを居抜き、翼を羽ばたかせて飛び出した。
「くふぅ!ふぅっ!!」
『きりゅッ!?』
フクスローは羽を大きく羽ばたかせると、大量の鋭く尖った葉が出現し、フクスローの羽の動きに連動し、ニャオハの全力の“このは”にも匹敵する量を持ちつつ、ニャオハの“このは”を上回る攻撃力を秘めた葉の嵐がレックウザの顔面に直撃し、予想外の攻撃を顔面に受けたレックウザは“りゅうのはどう”を中断してしまう。
「今のは……“このは”じゃない!?」
「“リーフストーム”だ……」
今まで出してきた技とは桁違いの威力の技を見て驚くイルマと、フリードはその技がくさタイプの中でも上位に位置する技“リーフストーム”であると察する。
しかし、葉の嵐が収まると、そこには一切傷を負った様子がないレックウザが滞空していた。ほぼ不意打ちに近い攻撃だった為“りゅうのはどう”を止めることには成功したらしいが、それでもスペックに差がありすぎたせいでダメージを与えるには至らなかった。
その時、リコのベルトに納められていた3つの古のモンスターボールが光を放ち、それに気付いたリコがベルトからその3つを取り出すと、そのボールが独りでに開き、3体の巨大なる英雄が降臨した。
『キーーヴァッ!!』
『ギャォオオオオッ!!』
「ホーーーッ!!」
「オリーヴァ……ガラルファイヤー……ラプラス……」
オリーヴァ、ガラルファイヤー、ラプラスの3体は、レックウザと対峙するように並び立つ。
彼等も、ボールの中で、かつての仲間であったレックウザが敵に操られてしまうという危機を目の当たりにし、レックウザやリコ達を救うために、満場一致でリコ達に手を貸す為に凱旋したのだ。
『きりゅりりゅりりゅりしいぃッ!!』
ルシアスと共に旅をした仲間である六英雄を目にしても、洗脳された今のレックウザには“敵”として見えており、レックウザは禍々しい咆哮を上げて、オリーヴァ達に“りゅうのはどう”を発射する。どうやらフクスロー達よりも六英雄が驚異と判断したのだろう。
「ホーーッ!」
それに対し、ラプラスが“れいとうビーム”を放つことで“りゅうのはどう”を相殺し、ぶつかり合った技同士が、辺りにいる人々を遠くに吹き飛ばしてしまうほどの爆発を起こした。
『ギャオォオオオッ!!!』
そこへ、爆煙に紛れてレックウザに接近したガラルファイヤーが無数の“エアスラッシュ”を放ち、全てレックウザにヒットする。リザードンやアーマーガアのそれとは比べ物にならない威力を前に、流石のレックウザも痛みに動きを止める。
『キーーヴァ!!』
そして、オリーヴァが“グラスフィールド”を発動させて周囲の地面に緑を生い茂らせると、生い茂った地面から伝うエネルギーが、バール達のポケモンやレックウザの攻撃等で傷付いたニャオハ達の体を癒し、傷を負っていたポケモン達はたちまち復活した。
「ニャアッ!」
「くふぅ!」
「ぽーにぃ!」
「ジュナ……!」
「ニャオハ達がパワーアップした……!」
そのエネルギーを受けて、ニャオハ達くさタイプのポケモンは、全身から力が漲る感覚に、闘志に満ちた笑みを浮かべる。場にいる者達の体力回復とくさタイプの技の威力を上昇させる“グラスフィールド”の恩恵だ。この恩恵は相手にも影響があるというデメリットこそあるが、それでも今までの闘いで消費していた体力が回復するのはありがたい。
ニャオハ達の回復とパワーアップを見届けたオリーヴァは、ガラルファイヤーとラプラスに加勢し、オイルを撃ち出してレックウザを攻撃する。
「レックウザの参戦は難しいか……なら、俺たちでやるしかねぇな。お前ら、六英雄の相手はレックウザにさせて、古のモンスターボールを奪うぞ」
「はぁ~い」
「指図するな……」
「受けて立つぜ!リザードン、“ドラゴンクロー”!」
「ジュナイパー、“リーフブレード”」
「ウインディ、ワナイダーに“かえんほうしゃ”!」
「ピカッ!」
「僕達も!ホゲータ、“じだんだ”だ!」
バールの言葉に、アトリは愉快そうに、逆にアメジオは不愉快そうに答えながらポケモン達を向かわせ、対するフリード達も各々のポケモン達に指示を出し、リザードンとキャップはエレキブル、ジュナイパーはソウブレイズ、ジバコイルの相手をする必要がなくなったウインディと復活したホゲータはワナイダーと激突した。
「ほんなら、僕達も本気でやらなあかんみたいやな。モモワロウを倒されるわけにはいかんからな」
「オルッ」
「ベラ」
「シャ~……」
バールにチラリと一瞥されたことで、『モモワロウを守れ』という意図を理解したキリヲは、真面目な表情となって宣告し、イオルブ、ベラカス、シャンデラも、モモワロウを囲うように陣取り、イルマを睨み付ける。
イルマも、モクローがフクスローになって“リーフストーム”を習得したとは言え、タイプの相性はキリヲのポケモン達の方が有利であり、キリヲのバトルスタイルは弱くはないため、ポケモン達と共に気を引き締めようとした瞬間、彼の隣に一人の影が立った。
「イルマ!私も一緒に戦う!」
「ニャアッ!」
それは、イルマ達の近くにいたリコと、体力が回復したニャオハ。
それを見て、イルマは笑みを浮かべながら答える。
「……そう言えば、二人で一緒に戦うのはこれが初めてだったね……よし、リコ!一気にいくよ!」
「うん!」
六英雄やエクスプローラーズとの闘いでロイやフリード達と一緒に共闘したことはあるが、二人で一緒に戦うのはこれが初めてだったと考えたイルマがそう言いながら、イルマとリコは腕を打ち合わせてハイタッチした後、リコの手にイルマが拳を当てるという特殊なグータッチを行った後、二人はキリヲに向かい合う。
「ベラカス、“ダストシュート”。シャンデラ、“シャドーボール”や」
「ベラッ!」
「シャン!」
「ニャオハ、思いっきり“このは”!」
「フクスロー、“エアカッター”」
「ニャーーンッ!」
「くふぅっ!」
ベラカスがごみで形成された球を、シャンデラが禍々しい光弾を放つ。それに対し、ニャオハは“リーフストーム”に匹敵する程の木の葉を放って2つの技の勢いを弱めると、続けてフクスローが連続で放った風の刃が2つの巨球を切り裂いた。
「オーガポン、“しねんのずつき”!ラルトス、“ゆびをふる”!」
「ぽにぃ!!」
「ラッ!!」
そこへ、2つの技が爆発した際に発生した煙を突き抜け、オーガポンがサイコパワーを纏わせた頭突きを、ラルトスが指を振って引き当てた“みずでっぽう”がベラカスとシャンデラに迫る。
「イオルブ、“まもる”」
「オルッ!」
そこへ、ベラカスとシャンデラの前に出てきたイオルブが自分と2体を包み込むようにバリアを発生させ、多少拮抗しながらもオーガポンとラルトスの攻撃は弾かれてしまった。
(あのイオルブ……守りの技が中心になってる。イオルブが守って、残りの2体が攻撃する。厄介だね……)
これまでイオルブは“まもる”、“リフレクター”等、防御技に集中した技ばかり出しており一切攻撃を仕掛けてこない事から、恐らくイオルブはディフェンダータイプなのだろうと察する。勿論、まだ見せていない技もあるので断言は出来ないが、防御主体と見て間違いないだろう。
「ベラカス、“マジカルシャイン”。シャンデラは“ねっぷう”や」
「ニャオハ、“でんこうせっか”で避けて!」
「フクスロー、オーガポンは避けて!ラルトスは熱風を全部吸収して!」
そこへ、ベラカスが目映い虹色の光を、シャンデラが火傷してしまいそうな程の熱風を放ち、ニャオハは素早く動いて虹色の光を避け、フクスローとオーガポンは素早い動きで光を避けると、“もらいび”をトレースしていたラルトスがシャンデラの放った熱風を祖のみに吸い込むと……
「今や。ラルトスに“シャドーボール”」
「ラルッ!?」
熱風を吸収することで動きを止めたラルトスの隙をついたシャンデラが禍々しいエネルギー弾を撃ち放った。
ラルトスがいる限り、キリヲの手持ちポケモンの中でも屈指の火力を誇るシャンデラが得意とする炎技が使えないから先にラルトスを倒そうと考えたのだろう。
「ニャオハ、“シャドーボール”に向かって“このは”!」
「ニャーー!」
そこへ、ニャオハが再び膨大な量の木の葉を放ち、輝きを帯びた葉の嵐に勢いに押され、“シャドーボール”の起動がズレ、“シャドーボール”らラルトスの真横に着弾して爆発を起こす。
「ありがとうニャオハ!フクスロー、“シャドークロー”!」
イルマがリコとニャオハに例を言いながら相棒に指示を飛ばすと、フクスローは暗黒の爪を生成してシャンデラに斬りかかり、シャンデラは体を駒のように回転させながらそれを回避する。
「ベラカス、“サイコキネシス”」
「ベラッ!」
「!?」
その時、ベラカスがサイコパワーを操りフクスローの動きを拘束し、それを見たシャンデラが“だいもんじ”を浴びせようとする。
「ニャオハ、“アクロバット”!」
「ニャーーンッ!」
「ラルトスは“ねんりき”でイオルブとベラカスを止めて!オーガポンは井戸の面でシャンデラに“ツタこんぼう”!」
「ラル~ッ!」
「イオ……!?」
「ベッ!?」
「ぽにおーーっ!」
「シャッ!?」
その時、ニャオハが軽やかな動きでシャンデラを四方八方から攻撃し、ラルトスがフクスローを拘束しているベラカスとシャンデラを守ろうと飛び出そうとしたイオルブを念力で動きを止めると、ベラカスによるフクスローの拘束が解除される。ニャオハの連撃に怯んだシャンデラを見て、いどのめんにチェンジしたオーガポンは激流を纏わせた棍棒を振り下ろした。
苦手な水タイプに変化しているオーガポンのタイプ一致技を食らっては、流石のシャンデラも堪えきれる筈がなく、ラルトスの“ねんりき”でイオルブが足止めされていた為に防御する術を持たないシャンデラは、棍棒の一撃で地面にクレーターを作りながら地に沈み、目を回しながら気絶してしまった。
「まずは一体!」
「やったね!」
「…ベラカス、“ダストシュート”や」
キリヲの所持ポケモンの中のアタッカーの一体を倒した事に喜びを露にするイルマとリコに対し、キリヲは呟くように指示を出し、ベラカスはゴミの塊を放った。
フクスロー達は散開してそのゴミの塊の直撃を避けると、イルマとリコは即座に指示を飛ばす。
「オーガポン、“つるのムチ”でイオルブを拘束して!フクスローは“エアカッター”、ラルトスは“ゆびをふる”でベラカスを!」
「ニャオハ、フクスローとラルトスと一緒に“このは”!」
「ぽっ!」
「ルブッ!?」
オーガポンがムチを射出してイオルブを拘束すると、フクスローは風の刃を放ち、ラルトスは指を振って引き当てた“あくのはどう”を、そしてニャオハは膨大な量の“このは”を竜巻のように放ち、3つの技が同時にベラカスに迫る。
「ベラカス、“むしのさざめき”!」
対するベラカスは、翅を振動させた振動を放ち、それを迎え撃ち、ぶつかり合った技同士が爆発を起こす。
「ラルトス、“こごえるかぜ”」
「“マジカルシャイン”で防ぐんや」
煙に紛れ込んで“テレポート”で接近したラルトスが冷たい吐息を吐くが、ベラカスは全身から光を放つことでその風を迎え撃つ。
「フクスロー、“シャドークロー”!」
「ニャオハ、“ひっかく”!」
「くふぅっ!!」
「ニャーー!」
「ベラッ!?」
その時、上空から急降下してきたフクスローとニャオハが、影の爪と鋭い爪を振り下ろし、ベラカスの体を切り裂いた。ラルトスに気を取られて避ける暇がなかったベラカスは、鋭い爪による斬撃に大ダメージを受けて地に沈んだ。
しかし、ベラカスは傷だらけになりながらも浮かび上がった。
「ベラ……」
「倒しきれなかった……でも、もう少し!ニャオハ、“アクロバット”!」
「此方も!“シャドークロー”!」
「イオルブ、“まもる”や!」
「オルッ!」
「ぽにっ!?」
ニャオハが軽やかな連撃を、フクスローが暗黒の爪をでベラカスに止めを指そうとするが、流石にこれ以上アタッカーを倒されるのは不味いと思ったキリヲが指示を出すと、イオルブは根性でオーガポンの蔓の拘束を振りほどき、イオルブの前に出てきてバリアを展開する。
決め手が防がれて、ニャオハとフクスローは一旦イオルブから距離を取り、そこへラルトスとオーガポンが集まってきた。
「思ったよりやるやないか。流石、ともっこを倒しただけの事はあるなぁ……でも、僕も負けるわけにはいかないんよ」
「それは僕達も同じです。リコ、イオルブとベラカスを倒してもまだモモワロウが残ってる。早めにあの二体を倒そう」
「うん!」
先程フクスローが披露した“リーフストーム”は使えば特攻が下がってしまうときうデメリットがあり、強力だが連発は出来ない。なので奥の手であるテラスタルオーブを取り出したイルマを見て、リコはより一層気を引き締めた。
そして、チラリと視線を巡らせてみると、フリード達の闘いにも様々な変化が起きていることに気付いた。
「ウインディ、“かえんほうしゃ”!」
「僕達も“かえんほうしゃ”だ!」
「ガウゥッ!!」
「ホーゲーーッ!」
「避けろ!」
「ワナ……ッ!」
ウインディとホゲータが強烈な炎を吐き、苦手な炎技を前にしてワナイダーは地面を這うような動きで炎を回避する
「──ピカッ!」
「ワッ!?」
しかし、そこへキャップの“かみなりパンチ”が炸裂し、避ける暇がなかったワナイダーは直撃を食らって土煙を巻き上げながら後退するが、気絶には至らずに体勢を立て直す。
「ホゲータ、“じだんだ”だ!」
「ホゲゲゲ……ホゲッ!」
「ワナイダー」
「ワッ!」
「ホッ!?」
ホゲータが地面を踏み鳴らして瓦礫を飛ばすが、ワナイダーは前方にクモの巣状の糸を張り巡らせてその瓦礫を絡めとると、その糸を囮にしてホゲータと距離を縮め、“じごくづき”を喰らわせようとすると……
「“しんそく”!」
「ガァッ!」
「ワナッ!?」
ウインディの視認不可能な程のスピードの攻撃が炸裂し、ワナイダーは大きく吹き飛ばされる。そこへ、ロイとダイアナが“かえんほうしゃ”の指示を出し、キャップが止めの“ボルテッカー”を御見舞いしようとした瞬間、上空からポケモンの声と共に巨大な影が割り込んできた。
「ジババッ!」
「ガウッ!?」
「ホゲッ!?」
「ピッ!?」
「ホゲータ!キャップ!」
「ウインディ!」
銀色の何かが、独楽のように高速回転しながらウインディとホゲータ、キャップに突撃した。
後退したホゲータ達。そして、ワナイダーの隣にUFOの形をした何かが降り立った。
「ジババババッ!」
「ジバコイル!」
「そう言えば、あんたもいたんだっけねぇ」
「ピーカ……」
それは、少し前までダイアナが相手をしていたジバコイルだった。「俺を忘れるな!」と言わんばかりに怒りの声をあげるジバコイルに、ダイアナは彼も参戦するのかと気を引き締め、キャップは目を鋭くした。
「それじゃあ、もう一暴れするぜぇ~」
視界の端では、アトリの手持ちであるフライゴンがランドウのヌオーとぶつかり合っているのを見て、彼の参戦はまだ先だと判断して、一先ずはジバコイルとワナイダーを協力させて戦う事を決め、ワナイダーとジバコイルはホゲータ達と再びぶつかり合った。
「ジュナッ!」
「ソウッ!」
狩人と騎士の剣がぶつかり合う。
ジュナイパーの“リーフブレード”とソウブレイズの“むねんのつるぎ”による衝突は、タイプの差もあってソウブレイズが有利であったが、ジュナイパーは根性でそれと対等に渡り合っていた。
「“ゴーストダイブ”!」
「ソウッ!」
「ジュ!?」
「チッ、隠れられたか……」
剣をぶつけ合った衝撃波の勢いに乗り、アメジオの指示を聞き入れたバックステップで下がったソウブレイズは背後に闇のゲートを出現させ、その闇の中へと姿を消した。
姿を見失ったソウブレイズを探すようにキョロキョロと辺りを見渡していると、ジュナイパーの頭上からソウブレイズが姿を見せた。
「ジュナイパー、地面に“けたぐり”!」
「ジュナァッ!!」
「何ッ!?」
「ソッ!?」
その瞬間、ジュナイパーは強靭な脚を振り下ろして地面を蹴り砕き、巻き上げられた土煙の中に姿を消した。
「ジュナイパー、真上に“かげぬい”!」
「ジュナッ!」
「ブレッ!?」
その瞬間、ソウブレイズの位置を捉えているバチコの指示通りにジュナイパーが撃ち放った矢羽がソウブレイズを貫き、効果抜群のゴーストタイプの技を喰らったソウブレイズはゲートから墜落して地面に膝をついてしまう。
その隙を見逃さず、バチコはテラスタルオーブを取り出した。
「それは……!?」
「見せてやるよ。超絶最強超キュートな
バチコが虹色の光を放っているテラスタルオーブをジュナイパーの頭上に向けて投げると、ジュナイパーの体が鉱石に包まれて、それが弾け、ジュナイパーは宝石のような輝きを帯びた身体に風船の形をした宝石の冠を頭の上に乗せた姿に変身していた。
キチキギス戦に見せた、ジュナイパーのひこうテラスタルだ。威風堂々とした姿に、アメジオとソウブレイズは少しの間だけ目を奪われてしまう。
「ジュナイパー、“ブレイブバード”!!」
「ジュ……ナーーーッ!」
「ッ!ソウブレイズ、“むねんのつるぎ”!」
「ソウッ!!」
バチコの指示を受けたジュナイパーは、気緑色のオーラを纏いながら飛び出し、超スピードでソウブレイズに突撃し、ソウブレイズは呪いの炎を纏わせた剣でジュナイパーの突進を迎え撃つ。
それぞれの大技がぶつかり合い、辺りに凄まじい衝撃が広がり、ジュナイパーとソウブレイズがそれぞれ全身の力を込めて競り合いをしたその時。
「──ジュナッ!!」
「ブレッ!!?」
ソウブレイズの剣を押しきったジュナイパーの突進がソウブレイズの鳩尾に炸裂し、ソウブレイズは一気に後方に吹き飛ばされ、アメジオの前で仰向けになって倒れた。
「ソウブレイズ!?」
「ソ……ブ……」
アメジオが呼び掛け、ソウブレイズは立ち上がろうとするが、身体のダメージによってそれが出来ず、ドサッと音を立てながらその場に倒れてしまった。どう見ても、これ以上の戦闘は不可能であった。
「……っ!」
「……ハァ、本気出させやがって……」
悔しげに表情を険しくしながらソウブレイズをモンスターボールに戻したアメジオを見て、自分の勝ちだと判断したジュナイパーのテラスタルが解除され、バチコは“ブレイブバード”の反動で傷を負ったジュナイパーを支えながら、面倒そうに呟いた。
「ブルッ!」
「ガウゥッ!」
エレキブルの冷気の拳と、リザードンの竜の爪が再び激突し、辺りに衝撃波が広がる。
しかし、やはりと言うべきかパワーに分があるのはエレキブルの方であり、リザードンは数歩後退した途端、リザードンの脚に何かが巻き付いた。
フリードとリザードンが、それがエレキブルの尻尾だと気付いた瞬間、エレキブルは尻尾の先端から2万ボルトの高圧電流を流した。
「エレェッ!」
「リザァアアアアッ!?」
「リザードン!?」
強力な電気攻撃を前に、ひこうタイプを持つリザードンが膝をつくと、エレキブルは尻尾の拘束を解き、バールと視線を合わせただけで指示を理解し、“れいとうパンチ”を発動させて、リザードンに突撃する。
「“エアスラッシュ”!」
「ガウッ!」
「エレ……!!」
リザードンは翼から無数の風の刃を放ってエレキブルに直撃させ、エレキブルは脚を止めて技が不発に終わる。
「やるじゃねぇか……なら、俺も全力でいくぜ!」
「……!テラスタルオーブか」
長引かせるとこちらが不利だと察したのか、フリードはフライトジャケットからテラスタルオーブを取り出し、それを見てバールも興味深そうに片眉を上げる。
「リザードン、可能性を越えろ!」
テラスタルオーブに虹色の光が集まり、それをリザードンに向けて投げる。
身体を包んだ鉱石が弾け飛ぶと、リザードンはニヒルな笑みを浮かべた吹き出しの形をした宝石のような輝きを帯びた姿──あくテラスタイプに変化していた。
「“テラバースト”!!」
「グォオオオオッ!!」
「!!」
その瞬間、リザードンは赤黒い渦状の極太の光線を放ち、エレキブルを飲み込んだ。
凄まじい爆発が起こり、モクモクと立ち上る煙の中に消えていったエレキブル。その煙をじっと見つめていたフリードとリザードンに、煙の中から凄まじい速度で飛び出してくる影があった。
「“かわらわり”!」
「ブルッ!」
「ギャオォオオッ!?」
「リザードン!?」
その影──エレキブルのチョップを喰らい、あくタイプに変化していたリザードンは効果抜群の格闘技に大ダメージを受ける。
その場で羽ばたき、距離を取ってフリードの前に立つリザードン。彼と対峙するエレキブルは、あちこちに傷を負い、体の痛みに顔を歪ませながらも、しっかりと二本の足で立っていた。
それを見て、フリードは不適な笑みを浮かべながらも脂汗をかいてしまう。電気タイプのエレキブルには、ソウブレイズのようにあくタイプの“テラバースト”は効果抜群にならないとはいえ、火力は折り紙つきの一撃が堪えられたのだから。
「……まさか、今のを堪えるなんて。ずいぶん鍛えられてるじゃねえか」
「誉めてくれた嬉しいなぁ。まぁ、さっきの“テラバースト”も思った以上の威力だったのは此方も認めてやるよ。俺のエレキブルも効いたみたいだからな」
エレキブルが立っていられる理由はこうだ。
リザードンの“テラバースト”が直撃する寸前、エレキブルはチラリとバールと視線を交えたことで彼の意図を察し、“さんだーダイブ”を応用して体を電気で包み込んだのだ。体に纏った電気が擬似的な防御膜の働きをして、“テラバースト”の直撃を防いだのだ。勿論、電気の防御と光線の衝突で起きた大爆発を至近距離で浴びてしまったリスクは大きく、エレキブルは爆発の余波で無視できないダメージを負ってしまったが、その程度で動けなくなるほど彼は柔ではないのだ。
「このままお前を倒してもいいが……さっきのを何発も喰らうのは流石に不味いんでな。俺も本気でやるぜ」
「!それは……」
バールがモンスターボールに似た宝石──テラスタルオーブを取り出すのを見て、フリードは険しい表情となる。
その時、上空から禍々しい咆哮が轟いた。
『きりゅりりゅりりゅりしいぃッ!!』
その場にいた全員が空を見上げると、オリーヴァ達と攻防戦を繰り広げていた黒いレックウザが、怒りを露にするような咆哮を上げていた。
すると、レックウザはその体にオーラを纏い浮かび上がると、そのまま高度を一気に上げ、雲を突き抜ける。
そして、オリーヴァ達に向けて、音速を越える速度で一気に急降下をした。
『ヴァッ!?』
『ギャオッ!!』
「ホー!!」
まるで本物の流星と化したレックウザの突撃が、オリーヴァ、ガラルファイヤー、ラプラスを通り過ぎ様に直撃し、オリーヴァ達は大ダメージを受けて吹き飛ばされてしまう。
「“ガリョウテンセイ”か……!!」
それを見たフリードが、レックウザの技が専用技である“ガリョウテンセイ”であると見抜き、同時にそれの直撃を受けてしまったオリーヴァ、ガラルファイヤー、ラプラスの三体が立ち上がるのも困難な程のダメージを負ってしまった事に歯噛みする。
すると、一番の驚異であった六英雄を倒したことを確認したレックウザは、上空に顔を上げて紫色のエネルギーを打ち上げ、そのエネルギーを四散させる事で“りゅうせいぐん”を放った。
降り注ぐ隕石が着弾した箇所から起こる大爆発に、リコ達はその余波に吹き飛ばされないように腕で顔を覆い、その場で踏ん張るだけで精一杯だ。
「キャッ!?」
「リコ!!」
しかし、リコはそれに堪えきれず吹き飛ばされそうになり、咄嗟にイルマが彼女を抱き止めるが、次々と降りかかる隕石の衝撃波にイルマまで吹き飛ばされそうになってしまう。
「……パーゴ!!」
同じく、“りゅうせいぐん”の余波によって岩場に倒れていたテラパゴスは、隕石に怯んでいるイルマとリコ、そしてその二人に寄り添うフクスローとニャオハを見て、決然とした表情でレックウザを睨み付けた。
「パーゴォッ!!!」
その瞬間、テラパゴスの体が目映い光を放ち、その姿が変化した。
光り始めた甲羅がテラパゴスの首や腕を包み込みこむように大きくなり、顎や尻尾、手首を伸びた体毛が包み込み、額の宝石の形状が変化する。
瞬く間に、テラパゴスは別の姿に変身していた。
甲羅はポケモン18タイプのアイコンじみた柄が透けて見える歪な五角形で構成されたからだ全体を覆い隠す物に変化した、前後もふさふさした毛で覆われるようになったテラパゴスが、リコ達の前に浮遊していた。
「テラパゴス……?」
『……』
『……キーヴァ』
『ギャォオ……』
「ホー……」
「テラパゴス…その姿は……!!」
姿を変えたテラパゴスの姿に、リコは呆然とテラパゴスの名を呟き、暴れていたレックウザは黙り込み、静かにテラパゴスに視線を向ける。
オリーヴァもガラルファイヤーもラプラスも、戦いを中断してテラパゴスに顔を向けていた。ダイアナも、ルシアスの手記で目にしたテラパゴスのイラストと瓜二つの姿に変化したテラパゴスに目を見開く。
「パーゴ……」
テラパゴスは背中にエネルギーを集め、甲羅から飛び出したエネルギーが光の柱を作ると、その柱の周りから色とりどりの宝石の結晶のような無数のエネルギーが飛び出し、その結晶の数々はまるで意思を持つかのように別々の起動を描き、その先にいたポケモン達に直撃した。
「エレッ!?」
「ジバババッ!」
「オルッ…!」
「ベラッ!?」
「ワナッ!?」
「フラァッ!」
そのエネルギー弾は、正確無比にレックウザの放った隕石や、エクスプローラーズのポケモン達に降り注ぎ、エレキブル達は結晶がぶち当たった箇所から爆発を起こした。爆発と共に、キラキラと煌めく粒子が辺りに飛び散り、降り注ぐ。
爆煙が晴れてくると、そこにはテラパゴスの技により地面に墜落して目を回しているベラカスとジバコイルとフライゴン、そして戦闘不能になってはいないものの、立ち上がることも困難な程のダメージを負わされたエレキブル、イオルブ、ワナイダーの姿があった。
「何々?」
「綺麗……」
「コイツは一体……!?」
「あの輝きは進化?……いや、違う」
「チッ……テラパゴスの力がここまでとは、完全に想定外だな」
こちらが不利だった状況を一気に好転させてくれたテラパゴスの姿に目を丸くするリコ達に、自分達のボスであるギベオンが狙っているのだから何かあるのだろうが、ここまでの戦闘力を持っているのは想定外だったバールが舌打ちする。先程までエレキブルが有利だったはずが、これでリザードンとエレキブルの大力差は五分と五分になってしまったことを不愉快に感じているのだろう。
「……パーゴ……パゴッ」
「テラパゴス!」
「ニャアッ!」
すると、テラパゴス体を包んでいた甲羅が、宝石が砕けるように弾け、元の姿に戻ったテラパゴスが地面に倒れ、リコが慌ててテラパゴスを抱き上げる。
「──皆、今がチャンスだよ!」
「くふぅ!」
「ぽにっ!」
「ラ、ラルッ!」
テラパゴスのお陰で敵のポケモン達の体力が消費されたこの時しか、レックウザを操っているモモワロウを倒せるのはこの時しかないと見たイルマが仲間達に呼び掛けると、フクスロー達は頷いた。
「チッ、今のエレキブルにオーガポンは厳しいか……モモワロウ、レックウザを使え!」
「イオルブ、君もモモワロウを守っとくんや」
「モゲゲ~~!!」
「オル……ッ!」
『……きりゅりりゅりしいぃッ!!』
隕石を“ツタこんぼう”で防いでいた為にあまりダメージを負っていないオーガポンを今体力が限界まですり減らされているエレキブルが相手をするのは無理だと判断したバールが上空に逃げてテラパゴスの攻撃を回避していたモモワロウに声をかけ、キリヲもイオルブに声をかけると、イオルブとレックウザがモモワロウを守るように並んだ。
それを見て、イルマは出し惜しみはなしだとテラスタルオーブを取り出した。
「フクスロー、ジョーズに輝いて!」
「ふぅ!!」
イルマがフクスローの頭上にテラスタルオーブを投げると、フクスローの体が鉱石に包まれ、そこから不気味に笑う幽霊の宝石の冠を被ったフクスローが現れた。
「ゴーストタイプのテラスタル……タイプの相性を重視したんか……」
それを見たキリヲは、ゴーストタイプを持つモモワロウに効果抜群となるゴーストタイプの“シャドークロー”でモモワロウを倒そうとしていることを察する。毒タイプも持つエスパー技の“しねんのずつき”を覚えているオーガポンは着けているお面にテラスタイプが左右されるポケモンである為、タイプを重視するのならフクスローをテラスタルさせるのはある意味ベストだろう。
(……でも、フクスローの技でテラスタイプと一致するんは“シャドークロー”だけで間違いない。なら、イオルブの“リフレクター”で十分。そもそも、“シャドークロー”を当てるには近付かなあかん。レックウザがいる限りモモワロウは倒されへんわ)
先程のバトルで連発が出来ない“まもる”を使ってしまった為イオルブの防御方法は“リフレクター”と“ひかりのべ”の2つだけでイオルブ自身もテラパゴスの攻撃で消耗しているが、そもそもモモワロウの守りにはレックウザが付いている。バール達のポケモンはライジングボルテッカーズの面々とバトルを再開させているため護衛には回ってくれなくとも、負ける要素は何一つ存在しない。
『きりゅりりゅりりゅりしいぃッ!!』
キリヲがそう考えたところで、レックウザは再び“りゅうせいぐん”を放つ。大量の隕石が降り注ぐ光景を見て、イルマは帽子の上にいるイーブイに声をかけた。
「イーブイ、お願い!力を貸して!」
「ぶいっ!」
「フクスロー、イーブイを乗せて飛んで!」
「ぶいぃっ!」
「くふぅ!」
「イルマ!イーブイに何させる気!?」
「ニャアッ!?」
頷いたイーブイはイルマの帽子の上から飛び出してフクスローの背中に飛び乗ると、イルマの考えを察したフクスローは背中にイーブイを乗せたまま飛び立ち、それを見たリコが、技が使えないイーブイを乗せて何をするのかと目を見開く。
そんな中、レックウザに向かって飛翔するフクスローの前に無数の隕石が降り注ぐ。絶体絶命とも言えるピンチを前にしたフクスローとイーブイに、イルマは声を投げ掛けた。
「イーブイ!“みきり”でフクスローに指示を出して!」
「ぶいっ!…ぶいっ、ぶぶい!ぶぶぶいぶい!」
「…ふぅっ!!」
フクスローの背中からテラスタルジュエルに飛び乗ったイーブイが隕石をジッと見つた後にフクスローを声をかけると、フクスローは右へ左へと不規則な起動を描きながら飛んでいき、やがて全ての隕石がフクスローの真横を通り抜けた。
「全部避けた!?」
「“みきり”……そっか、だからイーブイを乗せたんだ!」
まさかレックウザの“りゅうせいぐん”を回避してしまうとは思っていなかったキリヲは目を見開き、リコはイーブイを一緒に向かわせた理由を察する。
イーブイは相手の技を見切って回避をする“みきり”を使って“りゅうせいぐん”を見切り、何処へどのように避ければ回避できるかをフクスローに指示したのだ。
だが、それでモモワロウに辿り着けた訳ではなく、モモワロウを守るように滞空するレックウザがフクスローとイーブイに突撃してきたのだ。
(回避は無理。それなら、まだ未完成だけど
それを見たイルマは、フクスローが遠くにいるモモワロウに攻撃を届かせられる唯一の手段を取ることを選んだ。
「フクスロー!“シャドーシュート”!」
「ふうっ!!」
「モギャッ!!?」
「オルッ!?」
「なッ!?」
その瞬間、翼に暗黒の爪を生成したフクスローが、その爪を
フクスローの正確な狙いにより、飛ばされた爪はレックウザとイオルブを通りすぎ、モモワロウの急所に突き刺さり、モモワロウは悲鳴を上げて吹き飛ばされてしまった。
「い、今のは……!?」
「リン君のイーブイを参考に、密かに練習してた“シャドークロー”の派生技だよ。安直だけど、“シャドーシュート”って名付けた」
驚くリコに、イルマは安堵の息を吐きながら説明する。
モクロー系統の隠れ特性は“えんかく”といって、直接攻撃が直接攻撃でなくなるという効果を持ち、特性“さめはだ”や“ほのおのからだ”といった相手に触れることで負ってしまうリスクをゼロにする事が出来る特性だ。
イルマはその特性に目を付け、「物理技を遠距離技に変えられないか?」という発想から、モクローと共に“シャドークロー”のエネルギー爪そのものを飛ばす技を研鑽していた。練習している時はモクローが爪を飛ばせるまでの力がなく、飛ばなかったり、飛んでもすぐに消える事ばかりであったが、フクスローに進化したことでパワーが上がったことや、ゴーストテラスタルでゴースト技がパワーアップしていたことにより、フクスローはこの技を完成させることが出来たのだ。
「モモ……ッ!」
「!倒しきれてない……」
「ちょっと遠すぎたね……威力が足りない」
「オリジナル技なんて、やるやないか。けど、同じことはさせんよ」
「オル!」
『きりゅりりゅりりゅりしいぃッ!!』
フラフラと揺れながらも気絶していないモモワロウ。テラスタルしているとは言え、“シャドーシュート”の威力が足りなかったとイルマが言うと、イオルブがモモワロウの前に陣取り、レックウザがフクスローに襲い掛かる。
「イルマ!」
「うん!ラルトス、ニャオハとオーガポンと一緒に“テレポート”!」
「ラッ!」
ラルトスは自身の元に集まってきたニャオハとオーガポンに触れて瞬間移動を発動すると、ラルトス達はフクスロー達に爪を振り下ろそうとしているレックウザの顔の前に転移し、落下しそうになるのをラルトスが“ねんりき”を使って自分を含めた全員を空に浮かせる。
「ニャオハ、レックウザの顔に“このは”いっぱい!!」
「ニャーーーーーッ!!!」
『きりゅッ!?』
そして、オリーヴァの“グラスフィールド”でパワーアップしていたニャオハが莫大な量の“このは”を放ち、突然目の前に現れたニャオハによって再び視界全てが緑に埋め尽くされたレックウザは、木の葉が幾つか目に入ったらしく、フクスローに振り下ろそうとした腕を止めてしまう。
「オーガポン、“ツタこんぼう”を投げて!」
「ぽにっ!」
『きりゅいぃッ!!』
続けて、オーガポンが緑のエネルギーを纏わせた棍棒を投擲し、眉間にそれがぶち当たったレックウザは、エレキブルの“サンダーダイブ”以上の痛みにより僅かに頭を仰け反らせる。
「いぶ……!(私にも何か……!)」
「くふっ!?(お、おい!?)」
「イーブイッ!?」
“みきり”での回避以外で何の役にも立てたいないイーブイが、ニャオハ達の活躍を見て、決然とした表情でフクスローの背中から飛び出した。それを見て、フクスローとイルマは目を見開く。
そんな中、フクスローの背中から飛び出してレックウザの目前まで来たイーブイは、そのレックウザの風格に気圧されながらも、目を閉じて、生まれてから最大限にまで集中力を高めると、彼女の周りに星形のエネルギー体が生成された。
「──ぶいぃっ!!」
「あれって、“スピードスター”!?」
「使えるようになったんだ……」
ワイルドエリアでは生成した瞬間に弾けて消えた星は、今回は弾けて消えること無く飛び出し、正確無比にレックウザの顔に突き刺さった。
『きりゅりりゅりりゅりしいぃッ!!』
「って、効いてない!?」
「オーガポン!!」
しかし、レックウザはイーブイの放った“スピードスター”が効いている様子はなく、怒りを露にしたような咆哮を上げた。イーブイが放った“スピードスター”は、威力事態は一般的なものであり、レックウザにダメージを与えるにはいたらななかった。
そして、イーブイに“りゅうのはどう”を放とうとしているレックウザに、ラルトスのサイコパワーで宙に浮かぶオーガポンが“ツタこんぼう”でレックウザを殴ることで不発に終わらせ、ついでに“つるのムチ”で落下するイーブイを救出する。
『きりゅりゅうッ!!』
「ラッ!?」
「ラルトス!」
「ニャアッ!?」
「ぽにぃ!?」
「ニャオハ!!」
「オーガポン!イーブイ!」
「ジュナイパー、アイツ等をキャッチしろ!」
その時、レックウザはラルトスに向けて“りゅうのはどう”を放つ。いくら伝説のポケモンのタイプ一致技とはいえ、フェアリータイプを持つラルトスにドラゴンタイプの“りゅうのはどう”は無効化されるが、その光線の勢いに押されてイルマ達の前まで吹き飛ばされて、同時に“ねんりき”の集中が途切れてしまい、ニャオハ達は重力に従って海の真ん中に墜落しそうになったしまうが、そこでジュナイパーが傷だらけの体に鞭を打ちながら飛翔し、背中で彼女達をキャッチした。
しかし、やはりレックウザの攻撃やソウブレイズとのバトル、そして“ブレイブバード”の反動等を負った身体で3体も背中に乗せた状態での飛行は無理があるらしく飛行速度が普段よりも遅くなっている、ジュナイパーに、レックウザは再び“りゅうのはどう”を放って撃ち落とそうとする。
「イーブイ、レックウザの周りに“スピードスター”!」
「ぶ、ぶいっ!」
ラルトスを即座にボールに戻したそれを見たイルマがイーブイに指示を出すと、イーブイは戸惑いながらも星の弾幕をレックウザの周囲に放ち、煌めく星々がレックウザの周りを飛び交う。
「オーガポン、“スピードスター”を上って!」
「ぽ!?……!ぽにぃっ!!」
イルマの指示に困惑したオーガポンだったが、直ぐにその真意を理解し、オーガポンは何と、イーブイが放ち続ける星の弾幕の一つに足を乗せ、それを思い切り踏み締めて飛び出したのだ。
更に、レックウザの周囲を飛び交う“スピードスター”を蹴り、オーガポンは瞬く間にレックウザと距離を積めていった。
「“スピードスター”を足場に……」
「滅茶苦茶だな……アイツらしい……」
まさかの展開に驚くリコと、カントー離島で見た以来のイルマの型破りなバトルに笑みを溢すバチコ。
「イーブイはそのまま“スピードスター”を打ち続けて!オーガポンは“ツタこんぼう”!ラルトスは“テレポート”でジュナイパーの背中に乗って“こごえるかぜ”!」
「ッ、私達も!ニャオハ、“でんこうせっか”で“スピードスター”を上って、“ひっかく”!」
「ジュナイパー、イーブイを落とさないように飛んで“リーフブレード”!」
「ぶいぃっ!!」
「ぽにいっ!」
「ニャーーン!」
「ジュナッ!」
イーブイがレックウザの周囲に何度も放つ“スピードスター”を蹴って飛び出したオーガポンとニャオハは棍棒と爪ですれ違い様にレックウザを攻撃すると、他の星の蹴って飛び、緑の光刃を展開したジュナイパーとその背中に転移して冷たい吐息を吐くラルトスと共に何度も攻撃を加えていく。
『きりゅりりりしいぃッ!!』
何度も殴られ引っ掻かれ斬られを喰らい続けたレックウザは苛立たし気に吠えると、その風圧に“スピードスター”はかき消され、その風圧に飛ばされたニャオハ達は足場に叩き付けられる。
「残念やったな。これで詰みや」
「……いいえ。まだ一人残ってますよ」
「ッ!?」
勝利を確信するキリヲだが、イルマの言葉にハッと何かを思い出したようにモモワロウ達に方に視線を向けると、モモワロウ達よりも遥か上空に、イーブイ達の闘いにキリヲ達が集中している隙を狙って上に回り込んでいたフクスローの姿があった。
「やられた……イオルブ、“リフレクター”や!!」
「オルゥッ!!」
「フクスロー、“かげぶんしん”」
イオルブがモモワロウとフクスローの間に入り、光の障壁を展開する。それに対し、フクスローはイオルブとモモワロウの周囲に無数の分身を出現させる。
それに目を見開くイオルブとキリヲ。そしてイルマは、上空の相棒に向かって腹の底から声を出して指示をした。
「フクスロー、“シャドークロー”!!」
「くふぅー……!!」
その瞬間、フクスローの頭のテラスタルジュエルが目映い光を放ち、右翼に影で作られた爪を作り出すと、イオルブとモモワロウの周囲に浮かんでいたフクスローの分身達が、一斉にフクスローの影の爪に吸い込まれる。
同時に、フクスローの右手に作られた暗黒の爪がだんだんとその大きさと鋭さを増して行き、全ての分身が吸い込まれると、フクスローの右翼の爪は、フクスローの倍以上の大きさを持つ爪へと変わり、フクスローはその巨大な爪を勢いよく振り下ろした。
「くふうぅぅぅっ!!」
「オ、オルゥッ!!?」
振り下ろした爪が、モモワロウを守るイオルブの障壁とぶつかり合い、乾いた音が辺りに鳴り響く。
フクスローは右腕に込める力を更に上げ、イオルブは突破させてなるものかと全力でそれに抵抗するが、やがて「ピシッ」という音と共に、イオルブの“リフレクター”に亀裂が入った。
目を見開くイオルブとキリヲ。
そしてフクスローの爪とぶつかり合う障壁の亀裂が広がっていくと──
「オルゥウウッ!!」
「モゲゲゲーーーッ!!?」
──粉々に割れた。
そして、障壁を破壊した暗黒の爪が、勢いを止めずに振り下ろされ、イオルブとモモワロウを縦に切り裂いた。
あっけなく粉々になり、墜落するイオルブとモモワロウの姿を、キリヲは呆然と見つめていた。
降り注ぐ“リフレクター”の破片に、茫然自失とした自分の顔が映り込んでいるのを見た。
「モ……モゲ……」
「イオ……」
水柱を立てて墜落したイオルブとモモワロウが海の上に浮かび上がってくると、2体は目を回してプカプカと波に揺られていた。どう見ても、これ以上の戦闘は不可能であった。
「ヘッ、やるじゃねえか。アイツ等……」
「……まさか、あんなガキに一杯食わされるとはな」
見事にモモワロウを撃破したイルマ達にフリードは笑みを浮かべ、バールはアトリと渡り合っていたとは言え、ただの子供だと見なしていた少年に状況を一変させられた事に静かに怒りを露にする。
その時、空に滞空していたレックウザが雄叫びを上げた。
『きりゅりりゅりりゅりしいぃッ!!』
「……?何か、さっきより理性的な気が……」
「正気に戻ったんだ!」
レックウザの雄叫びには先程のような禍々しさを感じられず、目もモモワロウに操られていた際に変化していた紫ではなく元の黄色い瞳に戻っていた。モモワロウを倒したことで、洗脳が解けたのだろう。
吠えるのを止めたレックウザは、夜空に向けていた視線をバール達に移すと、その目を怒りで細め、引くい唸り声を上げたと思うと、再び上空に向けて顔を上げ、口から発射したエネルギーを四散させて“りゅうせいぐん”を放った。
「モモワロウが倒された時点で作戦は失敗だ。お前ら、ズラかるぞ」
「はぁ~い。また会おうね~」
「……」
「おいクソメガネ、ボーッとしてないでお前も来い」
「……クッ!」
「待て……!」
本日何度目かの隕石に着弾の爆発が辺りに発生するなか、一ヶ所に集まったバール達エクスプローラーズ。逃げる気かとフリード達が足を踏み出した瞬間、バール達の前に
バール達の姿が消えると、レックウザは自身を操った敵が消えたことに気付いたのか暴れるのを止め、静かに視線をテラパゴスに落とした。
「パーゴ……」
『……きりゅう』
『キーヴァ……』
『ギャオォ……』
「ホー……」
リコの腕の中のテラパゴスは何かを訴えるようにレックウザに向かって鳴き声を上げ、レックウザがそれに答えるように小さく鳴くと、戦いで傷付いていたオリーヴァ達が語り掛けるような声を上げる。
その声を静かに聞いていたレックウザは、しばらくの間リコ達をジッと見つめていたが、やがて顔を背け、何処かへと飛び去っていった。
「あぁ!レックウザが……」
空へ去り行くレックウザの後ろ姿をを、ロイは眺めることしか出来なかった。
やがてその姿が完全に見えなくなり、ロイとホゲータは呆然とレックウザが去っていった方を眺めていた。
オリーヴァ達六英雄は、用は済んだというように声を上げると、独りでに古のモンスターボールの中に戻っていき、地面に転がり落ちた3つのボールを拾い上げるリコに、彼女の隣に歩み寄ったフリードが話しかけるように呟いた。
「……とんだ邪魔が入っちまったな」
「エクスプローラーズ?」
「あぁ。タイミング敵には俺達をつけていた訳ではないだろうが、今回は流石に肝が冷えたな。あのバールとか言う奴……直接バトルして分かった。アイツは強い。アメジオや俺以上にな……けど、気に入らねぇな……」
「リザァ……」
顎に手を当てながら呟くフリードとリザードンの脳裏には、先程まで戦っていた金髪の男と、その相棒らしき黄色のポケモンの姿があった。
バールのトレーナーとしての腕前も、エレキブル自身の強さも、自分達に匹敵……いや、越えているのかもしれない。テラパゴスの助けがなければ、テラスタルを発動されて自分が負けていただろうと確信できる程に。
それだけなら、自分達もバール達よりも強くなれば良いと言って研鑽を重ねただけだっただろう。だが、キタカミの里でモモワロウ達を復活させ、例え周囲に危害が出たとしても関係ないといわんばかりにモモワロウをゲットするようにキリヲに指示をしていたことや、今回レックウザを洗脳した上でゲットしようとしたやり口は到底認められなかった。この借りは必ず返してやると密かに闘志を燃やす。
だが、今は関係ないとその闘志を沈め、フリードは未だに空を見上げているロイに歩み寄る。
「……行っちゃった……やっと……会えたのに……」
「ホゲ~?」
心配そうに相棒を見上げるホゲータにロイは笑顔を見せた後、再びレックウザが去っていった夜空を見上げるロイの肩に、フリードがポンと手を置いた。
「ロイ!船に帰るぞ」
「うん……」
フリードに促され、ロイ達はボロボロになった足場に転ばないように気を付けながらブレイブアサギ号に戻っていくと、テラパゴスを抱えたリコは、ダイアナとウインディが、無言で海を見つめていることに気付き、声をかけた。
「……お婆ちゃん?」
「あぁ……今行くよ」
孫の呼び掛けに、ダイアナは目元を手で拭って振り返り、リコ達に続いていく。
その直ぐそばでは、イルマがフクスロー達に木の実を差し出して労っていた。
「レックウザは行っちゃったけど、最悪の事態だけは回避できたんだ。皆、僕の無茶に応えくれて、ありがとう」
『今更だしなぁ。まっ、俺ちんの活躍のお陰だな』
「ぽにおっ!」
「ラル……」
「ぶい……」
一瞬誰かの聞き覚えがあるようで聞き覚えのない声が聞こえた気がするが、幻聴だと思うことにしたイルマはよしよしと彼等の頭を撫でてやる。
すると、後ろからバチコの声が掛けられてきた。
「イルマー。帰るって言ってんだよー」
「あっ、はい。皆、そろそろ行こうか。晩御飯もあるしね」
『いや、別にそこまで腹は減ってないよ』
「いや、でも──」
そこまで言いかけたところで、イルマは先程から感じていた違和感の正体に気付いて動きを止め、ゆっくりとフクスローを見下ろす。
「──しゃっ、喋った……!?」
『はぁ?なに言っちゃんの。今まで俺ちんが喋った事あります?あのなぁ……』
「え?」
『えっ』
「え?」
『ええっ?』
フクスローはイルマに見つめられてキョトンとし、二人の間にクエスチョンマークだらけの不毛なやり取りが数往復する。
『あっ、ホントだ!喋ってる!!』
「今っ!?」
そして、驚いたように声を張り上げるフクスローに、気付いていなかった事を知ったイルマがツッコミを入れた。
「……イルマ、どうしたのかな?」
「さぁ……フクスローになんかあったのか?」
一方、
~モクロー、フクスローに進化~
本当はもっとテラスタルデビュー辺りに進化させる予定だったが、テラスタルデビュー編でカイデンやミブリムが進化したのを見て、別のポケモンが進化する話を書きたいと思った為、この時点で進化させた。進化したことで“このは”が“リーフストーム”に進化した。
~イルマ&リコ~
実は2人だけでバトルするのは今回が初めて。しかしレックウザ相手には難しいだろうと直ぐに終わった。機械が書けば今度は最後までバトルをさせたいと思っている。
グータッチのシーンは『仮面ライダーリバイス』から仮面ライダーリバイと仮面ライダーバイスのオマージュ。
~オリジナル技“シャドーシュート”~
特性“えんかく”の相手に接触しないで攻撃する機能を利用し、“シャドークロー”の爪のエネルギーを飛ばし、遠くの敵を狙い撃つ。距離が遠くなればなるほど威力は低くなる。
元ネタは『トリコ』から、主人公トリコの“フライングフォーク”。
~イーブイ“スピードスター”発動~
イルマ達の役に立つ為に飛び出し、レックウザという圧倒的な強者から生き残ろうと言う生存本納から使用可能になった。レックウザを相手に効果はないだろうと、足場として使うように工夫した。
~巨大“シャドークロー”~
事前に“かげぶんしん”出分身を生み出した後に、その分身を“シャドークロー”に吸収させて強化させる。
元ネタは『ポケットモンスターXY&Z』のカロスリーグ準決勝でサトシゲッコウガが行った戦法。
感想、評価お待ちしております。