魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター   作:MTHR

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 今回はやや短めになっています。
 フクスローと会話が出来るようになったイルマ君と、フクスローの話し合いのお話です。


46話 イルマの相棒

 エクスプローラーズの刺客バールという男の策略でレックウザがモモワロウに操られ絶体絶命の危機だったところを、イルマ達の奮闘によりなんとかモモワロウを倒してレックウザの洗脳を解くことができたライジングボルテッカーズ。

 そのまま何処かへ去っていってしまったレックウザを見送ったリコ達は今、幸いなことに激闘の余波を受けなかったブレイブアサギ号へと戻ってきて、それぞれの時間を過ごしていた。

 

 医務室のベッドに横になって寝息を立てているテラパゴス。窮地に陥っていたリコ達を、ルシアスの手記に描かれた通りの姿に変身して救ってくれたテラパゴスは、元の姿に戻ってから眠り続けており、モリーの診察を終えてベッドで横になっていた。

 ベッドの側で心配そうにテラパゴスを見つめているリコに、医療道具を片付けたモリーが声をかけた。

 

「怪我をした様子はないよ。限界まで力を使って、疲れたんだろう」

「……」

「今夜は私がついてるから、リコは寝な」

「うん……」

 

 モリーの言葉に、リコは眉を下げながら頷いて席を立つと、ニャオハを抱き上げて踵を返して部屋の扉のドアノブに手を掛けると、もう一度テラパゴスを見てから、部屋へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 その頃、ブレイブアサギ号の甲板では、ロイとホゲータが欄干に寄りかかりながら、満点の星空を眺めていた。

 ウトウトと睡魔と戦っているホゲータの隣で、星が輝く夜空を見上げているロイの表情は暗い。

 

「……ずっと会いたいと思ってきたんだ……けど、何も出来なかった……エクスプローラーズにも勝てなかった……」

 

 レックウザをゲットする為にホゲータとパートナーになり、故郷の島を飛び出し、新しい仲間を得て、沢山の経験を積み、ようやくレックウザと再び出会うことが出来た。

 しかし、レックウザをゲットするための壁は厚く、レックウザに挑むどころか、レックウザを洗脳して手に入れようとするエクスプローラーズの刺客を倒すことも出来なかった。

 

「……でも、次こそはきっと……ホゲータ?」

「ホー……ホー……」

 

 そこで、ホゲータがロイの腕に凭れきってきて、ロイがホゲータに視線を向けると、ホゲータは安らかな表情でいびきを立てながら夢の世界の住人と化しており、それを見たロイは苦笑いを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 そして、イルマの自室。

 オーガポン、イーブイ、ラルトスが視線を送る先には、ベッドの上で向かい合うイルマとフクスロー。

 暫くの間、一人と一羽は互いの顔を見ながら黙り込んでいたが、最初に口を開いたのはフクスローだった。しかし、イルマの耳に聞こえてきたのは鳴き声ではなく、良い声の男性の人語だった。

 

『……んで、俺ちんはフクスロー。ついさっきまでモクローだったけどな……何でイル坊に俺ちんの言葉が通じんのかは、知らんッ!!

「そ、そんなハッキリ……(というか、モクロー…いや、フクスローか。こんなキャラだったんだ……)」

 

 潔い回答だが、結局何も分からない。

 とある悪の組織にいるポケモンが喋ったり、テレパシーを使うことで擬似的な会話をする事例は存在するが、フクスローはテレパシーなんて使えないし、話すことなんて出来る筈がない。

 

『いや!きっと、俺ちんの魂の叫びが!思いが、形になったんだ!』

「……思い?」

『そうさ、イル坊!俺ちんはキミに、言いたいことが山っほどあるのさ!』

 

 フクスローは身を乗り出すと、イルマの額を翼でビシリと小突いた。

 

『最近のイル坊は、俺ちんの扱いがなってない!』

「え?」

『というか雑ッ!バトルじゃ動けなくなった所でジュナ姐さんの突撃を迎え撃てだの!タイプの相性悪すぎる相手と戦わされたり!リコの嬢ちゃんとの関係にこっちは苦労させれるし!そんで新しいポケモンが入ったら俺ちんの出番減るし!何なのッ!?』

「リ、リコとの関係って何!?」

『そーゆーとこなんだよこのニブチンが~!全く、リコの嬢ちゃんと副会長ちゃん……それとゼイユとかいうねーちゃんの苦労がしれるぜ……』

 

 前半の2つには心当たりあるが、最後のリコとの関係というのには全く心当たりがないし、何故アメリとゼイユが出てくるのか全く分からない。目をパチパチさせて困惑するイルマに、フクスローは深い、それは深~い溜め息を吐いた。

 

『ホンット、イル坊の病的なまでの鈍感には俺ちんもニャオハも呆れて物も言えねーな。そんな無自覚タラシ野郎には、もう力貸してやらないよ~?』

「えっ、ちょっとそれは……」

『──まっ、軽いジョークはここまでにして』

「冗談なの!?」

 

 パッと態度を変えたフクスローにイルマはズッコける。

 陽気な性格をしているフクスローだったが、実際に言葉を聞いてみると想像よりもキャラが違っていたようだ。

 

『まぁ、さっきのリコの嬢ちゃんの件は半分本音だったがな。軽い冗談よ。それにこう見えて、俺ちんも驚いてんだぜ?』

「まぁ、そうだよね普通は……」

『そんじゃあ、先ずは状況を整理すんぞ』

 

 フクスローは何処からか取り出したメガネを掛けて話を切り出すと、イルマも真面目な表情となって正座をし、フクスローの言葉に耳を傾ける。

 

『まず、イル坊は突然俺ちんの言葉が分かるようになったらしいが……オーガポン(アイツ)等の声はどう聞こえてるんだ?』

「ぽーにぃ?」

「ぶいっ?」

「ラルッ?」

「……いや、普通に鳴き声に聞こえてるけど」

 

 フクスローから事情を聞いたオーガポン達が「私達の言ってること分かる?」と尋ねるように首をかしげながらイルマを見て声を上げるが、イルマの耳にはただのポケモンの鳴き声にしか聞こえない。

 

『つまり、イル坊には俺ちんの言葉しか理解できねーわけだな。逆に、他の奴らには俺ちんの声は理解できねーと……これは、俺ちんに変化があるんじゃなくて、イル坊に何か起きたって解釈で良いんじゃねぇか?』

「そうみたい。リコ達には、鳴き声にしか聞こえなかったって言って心配されたよ……。フクスローは爆笑してたけど」

 

 イルマの耳には男の声にしか聞こえないが、どうやらフクスローの口から発せられる言語は、イルマ以外の人間には普通の鳴き声に聞こえるらしい。

 フクスローが喋りだしたことにイルマが驚いていた時、リコ達は「どうかしたの?」とイルマに尋ねてきたので、イルマが事情を話したが、フクスローの声は鳴き声にしか聞こえないリコ達にはそれを信じることが出来ず、変なものを見るような目を向けられ、遂には頭がおかしくなっているのかと心配され、テラパゴスと一緒にモリーの診察を受ける羽目になってしまった。それを見て、フクスローは爆笑していた。

 

「僕が幻聴が聞こえてくるようになったのか、それともフクスローに変化が起きたのか……少なくとも、フクスローに進化してから言葉が分かるようになったのは確かかな……フクスローは何か分かる?」

『そうだな~~、変化があるとすれば、あの時かな』

「あの時?」

『そう。あの変態眼鏡をぶっ倒そうって気持ちが昂ったら進化してたんだけどな。その後にやったテラスタルが解除されて、レックウザがどっかに飛んで行った辺りから、俺ちんには力が漲ってたんだ……』

「でも、テラスタルにはそんな効果あるなんて聞いたことないし、あくまでテラスタル時にポケモンの強化させるものであって、テラスタルしたポケモンが解除されてから強化するなんてないし……」

 

 そこまで考えていくと、イルマはボスンとベッドに仰向けになるように倒れた。

 ポケモンの事となればフリードに聞くべきだろうが、そのフリードにはフクスローの声が聞こえないので、信じてもらえていない。まあ、ポケモンの言葉が分かるようになったなんて突拍子もなさ過ぎる話なので仕方ないが、これでは他人の手を借りる事は出来なさそうだ。

 

「結局は……詰みかぁ」

『そうねー。……まあ、言うなれば、俺ちんの変化はトランセルからバタフリーへの羽化?誕生?何かね、今は色々出来るような気がするの!今なら“シャドーシュート”以外にも色々と新しい技も──……どしたの?』

 

 そこまで言っていたところで、フクスローはジッとこちらを見つめて、何かを悩んでいるような表情をしていることに気付いた。

 気になって尋ねた見ると、イルマは我に返ったようにフクスローを見て、おずおずと話し始めた。

 

「いや……色々考えちゃって。もっ、勿論ビックリもしてるんだけどね。フクスローは、モクローの時からずっと無茶させてきたし、こうした話せるようになっちゃったら、今までみたいにやっていけるかなって……」

 

 ポケモンと言葉は通じなくても気持ちは通じ合えると誰かが言っていた。確かにその通りかもしれないが、やはり言葉にしなければ伝わらない事もある。

 イルマ自身、さっきまでフクスローが言ったようにかなり無茶なバトルをさせてきた自覚はあるし、高い知能を持ち、いつもその指示に応えてくれるフクスローに甘えていたのかもしれない。だからこそ、フクスローの意思が以前よりも分かるようになった今、果たして今までのような関係を続けていけるのかという不安を口にする。

 その不安を聞き、フクスローはポスンと座り直してイルマに向き合い、口を開いた。

 

『イル坊、あのね。俺ちんとお前は家族じゃないし、お友達とも違う。教師でもなけりゃ、恋人でもない』

「そっ、そうだね……」

『俺達は互いに半人前で、お互いがいて初めて一人前になれる……』

 

 フクスローは、モクローの頃よりも大きくなった羽でイルマの肩を組み、もう片方の翼をチョンッとイルマの鼻先を小突く。

 

『唯一無二の、相棒っさ』

 

 フクスローの真っ直ぐな言葉に、イルマはハッと目を見開いてフクスローを見つめ、フクスローは呆れと微笑みが一緒になったような表情をして言葉を続ける。

 

『言葉が分かるようになっても何も変わらねぇよ。セキエイ学園で出会ったあの日から、俺達は相棒(バディ)なんだから』

「……うん……ありがとう、フクスロー……」

 

 イルマもフクスローと肩を組み、2人は互いに笑い合う。

 

「がおっ、ぽにおーっ!(イルマ、おらもイルマと一緒だべー!)」

「ラ、ルルッ!(わ、私もです!)」

「ぶい、ぶぶ~い……(私も、家に帰るときまでは……)」

「わっ!?ど、どうしたの皆~?」

 

 すると、今まで二人の様子をジッと見ていたオーガポン、ラルトス、イーブイが飛び出し、フクスローと肩を組んでいたイルマに飛び付いた。イルマとフクスローの仲に、仲間外れにされた気がして寂しくなったのだろう。

 不意に飛び付かれたイルマは思わず姿勢を崩してベッドの上に倒れてしまい、苦笑しながら3匹の頭を撫でて落ち着かせようとするが、3匹とも落ち着く様子はなく、ぎゅうぎゅうと押しくら饅頭をするようにイルマに抱き付いていく。

 

「もう~、3人とも今日は甘えん坊だなぁ……」

『お前も顔ユルッユルだけどな』

 

 困ったような台詞を言いながらも嬉しそうな表情のイルマにフクスローは呆れながらもツッコむ。

 そしてふと時計を見てみると、時刻は既に夜の11時を過ぎており、満場一致で全員ベッドで眠ろうと言うことになり、イルマは普段着を脱いで寝巻きに着替え始める。

 そして、右手の手袋を取って、セキエイ学園に入学が決まった際にサリバンから貰ってから、学園の授業時以外は常に着けていた黄金の指輪*1を取り外そうと、親指と人差し指で指輪を摘まんで引っ張ったとき……

 

「……ん?」

『どうした?』

「ぽ?」

「ラル?」

「いぶっ?」

「いや、なんか……」

 

 右中指に嵌められた指輪を引っ張り続けるイルマは、やがて2本の指で摘まむのではなく片手で掴んで引っ張り始め、その様子を見ていたフクスロー達が訝しんだ。

 

「指輪が……外れない……!?」

 

 イルマはその指に嵌まっている黄金の指輪を外そうとするが、その指輪はまるでイルマの右中指と同化しているようにピッタリと嵌まっており、どれだけ力を込めても外れるどころかピクリとも位置が変化しない。

 

「外れない……何でいきなり……?」

『それじゃあ、オーガポンに任せてみるか?』

「ぽにおっ!(任せるべ!)」

「イタッ!痛い痛い痛いッ!」

「が、お、ぽ、に、おぉ……!(は、ず、れ、な、いぃ……!)」

 

 試しにパワー自慢のオーガポンが指輪を掴んで引っ張ってみるが、オーガポンが外そうとした際の力で物凄く指が痛くなって悲鳴を上げる。慌ててオーガポンが手を離し、イルマが右手をスナップさせ、フクスロー達が訝しげにイルマの指輪に視線を向けると、フクスローがあることに気付いた。

 

『……?イル坊。その指輪、なんかデザインが変わってないか?』

「え?……あっ、ホントだ」

 

 イルマもその言葉を聞いて指輪を覗き込んで見ると、確かに一本の切れ込みのような線が彫られただけのシンプルなデザインをしていた指輪には、奇妙な一本の線のような模様が刻まれていた。傷が付いたのかと思ったが、それにしては傷口が綺麗すぎる気がする。

 

『にしても、この指輪って俺ちんがイル坊と会った頃から嵌めてたけど、この指輪なんなんだ?』

「セキエイ学園に入学する事が決まった時、お爺ちゃんが渡してくれたんだ。お爺ちゃんがダイアナさんと一緒に冒険してた時の持ち物らしいんだけど……」

『そういや、古城でもあのバーさんがなんか言ってたな……』

 

 フクスローにそう言われて、イルマは古城でダイアナと再開した日の夜を思い出す。

 あれは、腹を空かせたホゲータの腹の音を聞いて、ダイアナが用意してくれた夕食の缶詰めを食べていた時の事……。

 

『はい、イルマはこれでおしまい!』

『えー、何で!?まだ6個しか食べてないのに!?』

『ダーメ!あんまり食べすぎちゃうと体に悪いよ!』

『いや、何かははおやみたいか事言ってるね』

『イルマ、今回はリコの言う通りだぞ』

 

 テーブルに並べた缶詰めを6個も瞬食した為、これ以上は体に悪いとイルマの前から缶詰を取り上げるて母親みたいな事を言うリコに、フリードが苦笑しながらそう言う。

 その光景を微笑ましそうに見ていたダイアナは、リコが取り上げた缶詰に向かって手を伸ばすイルマの右手にキラリと光る黄金の指輪に気付いた。

 

『イルマ。あんたのその指輪、サリバンが着けていたものかい?』

『え?……あっ、はい。セキエイ学園の入学が決まった時にもらったんです……』

『へぇ~、イルマも私と同じで入学祝い貰ってたんだ』

 

 右手に嵌められた指輪を見せながらそう言ったイルマは、ふと指輪を貰った時、これを納めていた箱の内側に記載されていた文章を思い出し、サリバンの旅仲間だと言うダイアナに尋ねてみることにした。然程気になっている訳ではないが、冒険家であるダイアナに何となく聞いてみたくなったのだ。

 

『そういえば……これを貰う時、指輪が入ってた箱に変な記述があったんですけど、ダイアナさんはあの文章の意味を知ってますか?』

『私も、その指輪が何処で造られたものか分からない。けど、冒険の中で少しだけ、その指輪に関する事と思われるものは見つけたよ』

 

 そう言ったダイアナは、記憶の中にある冒険の記録からイルマの指輪についての情報を掘り起こし、それを伝える。

 

『その指輪は……数百年前に存在していた、ある王国の王が着けていた物とされているんだ。その指輪には悪魔が宿っていて、着けているものに不思議な力をもたらすと言われてる』

『不思議な力……僕は特に何もありませんよ?』

『まぁ、かなり古い情報だし、単なる噂かもしれないからねぇ……』

 

 ダイアナの言葉を思い出しながら、イルマとフクスロー、そして他のポケモン達はジーッと、イルマの右手に嵌められている指輪を凝視する。

 

「そういえば、指輪が入ってた箱に書いてあったね。『()は預かりし魔獣の魂を黄金(ソロモン)の指輪に宿す』、とかなんとか……」

『ふーん……あのバーさんやその話がホントだとしたら、やっぱり俺ちんに変化があると言うより、イル坊が俺ちんの言葉を理解できるようになったってことか。つまり今俺ちん達に起きていることは……』

「この指輪のお陰……?」

 

 そこまで言ったところで、イルマ達はおお~っと言いながらイルマの指輪に注目する。

 

『リコの嬢ちゃん達のペンダントになってたテラパゴスの事もあるからな。ルシアスや六英雄とか言うのとは関係なさそうだが、他にもこんな不思議なモンがあっても不思議じゃねぇかもな』

「でも、今までこんなこと一度もなかったし、何でフクスローだけなんだろう?」

『知らん!』

「だよねぇ……あっ、でも本当にこの指輪のお陰でポケモンと話せるなら、オーガポン達と会話することも出来ないかな?」

 

 ニコニコと笑うイルマに、フクスローはイルマをジッと見上げながら指摘する。

 

『ヘイヘイ、イル坊。さっきお前、ポケモンの言葉が分かるのが不安だって言ってなかったか?』

「確かにそう思うけど……でも、フクスローも言ってたでしょ?何も変わらないって。だから、オーガポン達の言葉が分かるようになっても、きっと何も変わらないと思うんだ」

「ぽにおっ!」

「ラルッ!」

「ぶーい!」

 

 イルマの言葉に同意するように笑顔で鳴き声を上げるオーガポン、ラルトス、イーブイ。

 そんな彼等の姿を見て、翼を腕組のような形にして溜め息を吐く。

 

『ほんっとうにお人好しだね……でもまぁ、確かにそれも面白そうだし、ノっちゃおうかしらん、イル坊』

「そういえばさ、そのイル坊ってのは……?」

『ん?俺ちんが前々からそう呼んでるのっさ。分かんなかったろうけど』

「そうなんだ……」

『それと、この事は俺達だけの秘密な。じゃなきゃ、お前また皆に変人扱いされるぞ』

「うん……」

 

 かくして。

 モクローがフクスローに進化し、何故か言葉を話せるようになったことで、イルマの周りは少しだけ賑やかになるのであった。

 

「アイツ……さっきから何を一人でベラベラ喋ってんだ?モリーにもう一度診て貰った方がいいかな……」

 

 一方、イルマの部屋の前を偶然通り掛かり、フクスローの言葉を理解することが出来ないバチコは、頭痛を抑えるように頭に手を当てて、退避するようにイルマの部屋の前を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり、エクスプローラーズの本拠地。

 レックウザの捕獲に失敗して攻撃されそうになった所、突如現れたオーベムの“テレポート”で一度アメジオをコニアとジルが潜水艦に帰還させてから、再び“テレポート”で組織の本部に帰還したバールは、エクスプローラーズのボス【ギベオン】の執事である【ハンベル】に今回の事を報告していた。

 

「ご報告ありがとうございます。それでは、この情報はアメジオ様達にも共有しておきましょう」

「あぁ、頼んだぜ」

 

 ハンベルに飄々とした態度で今回の件の報告書を渡したバールは踵を返して部屋を後にする。

 自動ドアを潜り抜けると、事前に待機していた今回の作戦の同行者でもあるキリヲとアトリ、そして彼らが使用していた航空機の操縦士を勤め、彼等を“テレポート”で撤退させた水色の目をした色違いのオーベムを連れた平凡な容姿をした男性が彼の後に続く。

 

 しばらく部下を引き連れて長く続く廊下を歩き続け休憩室のドアを開いて中に入ると、視界の先にバールと同じエクスプローラーズの幹部を勤めている【スピネル】【サンゴ】【オニキス】【アゲート】が、各々のパートナーと共に寛いでいた。

 

「おや、戻りましたか」

「プププッ!あんたが態々出てきたのに捕獲に失敗してくるなんてオニウケるんですけど~~!」

「あぁ、まんまと取り逃がしちまったよ」

 

 案の定、サンゴが全力でこちらを馬鹿笑いしてくる。何の躊躇もなくオニゴーリに“じばく”を発動させて滅茶苦茶やるこの女に笑われるのはストレス以外の何者でもないが、実際にレックウザを取り逃がしたのは事実なので、バールはドカッとソファーに座り込んだ。

 

「お前が失敗とは……レックウザとはそれ程の相手だったのか?」

「……確かに正面からぶつかりゃ敗北は免れない奴だが、策に嵌めて、毒餅で洗脳して此方側の戦力に出来そうだったが……敗因は、あのガキを甘く見すぎていたことだ」

「あのガキとは……ターゲットの少女の事か?」

 

 バールの言葉に、色黒の女性アゲートが尋ねるが、バールは首を振る。

 

「いいや、ライジングボルテッカーズにいたイルマとかいうガキだ。オーガポン(強いポケモン)を連れてアトリと渡り合ったとは言え、ただのガキだと思っていたんだが……アトリの野郎が実力を見極められなかったのか、それとも成長が早いのか……」

「イルマ……確かに、ライジングボルテッカーズのメンバーであるその少年についての報告はありましたが、そこまでだったのですか?」

 

 パルデア地方にいた時には自分で調べ、キタカミの里での出来事やガラル地方の古城での出来事の報告書にはしっかりと目を通していたスピネル。確かに、パルデア地方からガラル地方に行くまでの間にオーガポンという珍しいポケモンを手にしたらしいが、強いポケモンを連れてるだけでバトルが強くなる訳ではないだろうそこまでの驚異と思わなかったので、エクスプローラーズ幹部の中でも指折りの実力者であるバールの言葉にそこまでだったのかと尋ねる。

 すると、バールの後ろに控えていた色違いのオーベムを連れた男性がスマホロトムを操作した。

 

「その少年については、こちらで今回の件でデータを纏めておきました。今からそちらに送ります」

 

 その男がスピネル達のスマホロトムに今回のレックウザ戦で密かに撮影していた映像を送ると、スピネル達はその映像に目を通していく。

 

「……成る程、紛いなりにも伝説のポケモンを連れてるだけはありますね。まだ粗削りですが、型破りなバトルスタイル。おまけに、他の手持ちも弱くはない。ある意味においては、アメジオも越えているかもしれませんね」

「アハハハハッ!オニ面白そうなんですけど!早くボッコボコにしたいな~~!」

 

 スピネル達はその映像から、パルデアにいた頃と現在のイルマの実力を見極めて油断ならない相手だと認識を改め、サンゴはイルマを倒したいと楽しそうに笑う。

 

「そういえば、アメジオは一緒ではなかったのか?」

「アイツは俺やスピネルを毛嫌いしてるからなぁ、置いてきた。後から報告に帰ってくるだろうが、どうせその後はレックウザを越える為に修行だろうよぉ」

 

 アメジオの姿が見当たらないことにオニキスが思い出したように尋ね、実力はあるが目的のためなら卑怯な手段を使うことも躊躇わないバールをスピネルと同様に毛嫌いしているアメジオの事を考えて予測するように答えるバール。

 

「好きにさせておきましょう。こちらにはテラパゴスの共鳴反応データがあります。レックウザを手に入れるのは我々です」

「だが、バールの報告でレックウザは古のモンスターボール以外ではゲットできないのだろう?そこはどうするんだ?」

「なぁに、そんなのは奪えばいいだけだ。戦力増強の手配は既に済ましてある」

 

 そう言った所で、バールのスマホロトムから着信音が鳴り、バール画素の画面を確認してみると、『任務完了』という文字が表示された。

 イルマが驚異と認識させられたが、それ以外にフリードとバチコといった面子も油断がならない相手だ。その為にも、()()()()()()()()()()()()()()()()を無理矢理にでも連れてきて戦力にしようと配下を向かわせたが、その任務も達成されたようだ。

 

「フフフ……準備は万全ですね。キリヲくんのポケモン達にも、もう一仕事働いていただきましょうか」

「えぇ、喜んで」

 

 スピネルに声をかけられても、モモワロウとイオルブを控えさせながら休憩室の入り口付近で佇んでいたキリヲは、ニコニコと明るい笑顔で承諾する。

 

「任務が失敗したのに、随分明るいな」

「いいえ。確かに、計画は失敗したけど……でも、全く後悔はしてないんです」

「はぁ?どゆこと?」

 

 訳が分からないと言うようなサンゴの言葉に、キリヲをレックウザ戦での出来事を思い返し、口角を吊り上げる。

 フクスローの“シャドークロー”に破壊されて砕け散った“リフレクター”の破片に写った自分の顔を思い出して、キリヲは口を開いた。

 

「疑いもしなかった勝利を一瞬で全部ぶち壊された……あの瞬間に絶望した()()()()()、中々悪うなかったから」

 

 頬を赤く染めうっとりとした表情で頬を手に当てて呟くキリヲ。

 対照的に、バールやアトリエ、色違いオーベムを連れた男以外のエクスプローラーズの面々は「うわぁ…」と言うような表情をして、彼から一歩距離をとった。

 

「……相変わらずだな、お前の部下は」

「オニキモいんですけど!」

「良いじゃねぇかよ。俺はコイツの歪さを買ってるんだからよ」

 

 バールは面白いものを見るような目でキリヲを見ながら、幹部の面々にそう言った。

 

 黒いレックウザを狙うエクスプローラーズの暗躍は、まだ終わっていなかった……

 

*1
『閑話 パルデア地方のイルマくん』参照




~フクスローとの会話とイルマの指輪~
 元ネタは魔入りました入間くんの悪食の指輪と、指輪の化身にしてフクスローのキャラのモチーフにもなったアリクレッドの設定から。
 魔入間のキャラを登場させるだけではつまらないかなと思って付け足してみた設定ですが、これが後にどう影響するかは作者にも分からない。

~エクスプローラーズの会話~
 幹部達から危険人物として認定されたイルマくんと、次の作戦会議のお話。分かる人がいるかもしれませんが、またあのポケモン達が出ます。詰め込みすぎて原作崩壊しないように頑張る。


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