魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター   作:MTHR

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前回実施したアンケートは、後3~4話ほど続けるつもりです。


4話 夜の出来事

 初めてのバトル授業を終えた日の夜。

 パートナー(ニャオハ)との息が全くあっていなかった事によって大敗したリコは、先日ニャオハを追って屋上から墜落しイルマと衝突した後に見つけた湖の畔を秘密の特訓場として使うこととなった。

 

「ニャオハ!“このは”!」

「ニャ……ニャー……ニャァ…」

 

 リコの指示を渋々といった風に聞き、力を込めていくニャオハ。

 首の周りに緑の光が蓄積していき……弾けた。

 

「…ハァ、ダメかぁ……」

「何がダメだったの?」

「うひゃあッ!!?」

 

 肩を落として溜息を吐くと、不意に後ろから声を掛けられ、リコは大声を出しながら、反射的に飛び退いて振り返る。

 そこには、見慣れた三本の触覚を持つ青い髪の少年──イルマの姿があった。右肩にはモクローが乗っている。

 

「い、イルマ!?何でここにっ!?」

「えーと……」

 

 顔を赤くしながらあたふためくリコに、イルマは頬をポリポリと掻きながら苦笑し、事情を説明しようとしたその時、

 

「オイ、そこに誰かいるのか?」

「「ッ!?」」

 

 突如、聞き馴染みのない大人の男の声が聞こえた。本来なら就寝時間になっているこの時間帯に堂々と学内にいる者といえば十中八九、夜間警備員だろう。たまたまこの辺りの見廻りをしている時に、先程のリコの声を聞き付けたのだろう。

 その予想は的中していたらしく、ガサガサと茂みを掻き分けていく音と、懐中電灯らしき光が近づいてくる。

 

「リコ、こっち!」

「ふぇっ!?」

 

 見つかったらマズイ事になる。イルマは咄嗟にリコの腕を掴んで引き寄せた。そしてリコを抱き寄せながら、すぐ近くにあった木の影に身を隠した。ニャオハはイルマとリコの足元まで走り、モクローはイルマの肩から飛び出してイルマ達が隠れている木の枝に止まる。

 

「そこにいるのか……あれ、誰もいないな…」

 

 その直後、予想通り警備服を来た男が懐中電灯を手にし、茂みを掻き分けながら現れた。

 警備員がキョロキョロと辺りを見渡す中、イルマはリコを抱き寄せながら、出来る限り勘付かれないように息を殺す。

 

 一方、怒涛の展開に意識が追い付かず、気がつけばイルマに腕の中にいるという事を認識すると、一気に顔を沸騰させる。

 

(ち、近い近い近い近い近い…!!)

 

 リコとイルマの身長は大して変わらない。つまり、再びイルマの顔が近くにあるという事だ。

 昨日、ニャオハを追って屋上から落ちてイルマに衝突してよろしくない体勢になり、ニャオハを連れ帰ってもベッドの上で身悶え、授業でようやく心を落ち着けたと言うのに、その直後にこの状態は心臓に悪すぎる。鏡を見なくても顔が真っ赤になっているのだと分かり、心臓が耳に移動したのではと疑いたくなる程にドキドキという音が聞こえてくる。

 これ以上は色んな意味で危ないと、リコはイルマから離れようとするが、それを制するように、イルマはリコを強く抱き寄せる。

 

「ひぃ!?」

「リコ、ごめんね。警備員(あの人)がいなくなるまで少しじっとしてて…」

 

 ここで物音を立てては確実に見つかってしまう為、警備員に聞こえない程度の声量でリコの耳元に話し掛けるイルマ。警備員に見つからないようにする事に集中しすぎて、今自分がしていることを自覚していない。

 

 しばらく湖の周りを見渡していた警備員は、自分の勘違いかと結論付けたのか、「気のせいか…?」と呟いた後、踵を返して茂みの向こう側へと歩いて行き、学内の見廻りに戻っていった。

 

 ふぅ~、と大きく息を吐いたイルマは、腕の中の感触にハッとなると、ようやく自分がしていた事を自覚し、顔を真っ赤に沸騰する。

 

「ご、ごめん!隠れなくちゃと思ってつい……ってアレ!?」

 

 顔を真っ赤にしてあたふためくイルマ。しかし、腕の中にいたリコが顔を真っ赤にし、「ふぇえ…」と情けない声を漏らしながら気絶している事に気付いた。

 

「リコ!?何で気絶して……って熱いッ!?何でこんなに熱が!?」

「もっふぅ」

「ニャ~」

 

 お前のせいだろ。と語るような目を向けるモクローとニャオハ。

 しかし、イルマは頭から湯気を噴き出して幸せそうに気絶しているリコを介抱するのに夢中で、ポケモン達からの冷めた視線に気付くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ~、ここで技の特訓をねぇ…」

「う、うん。昨日ニャオハを追いかけてる時にここを見つけたんだ」

 

 10分後。

 リコが目を覚まし、イルマはリコに土下座せんばかりの勢いで謝罪した後、湖の畔で腰を下ろした二人は、お互い何故こんな時間にこんな場所にいたのかを説明することとなった。顔は未だに赤いままだったが。

 

 なお、イルマが深夜にこんな所に来たのは、ハッキリと言えばリコを追ってきたからだ。といっても別にストーカーをしていた訳ではない。

 熟睡していたイルマは、モクローの嘴でつつかれた事で無理矢理起こされ、モクローに促されて窓の外を見ると、コソコソと校舎を移動する人とポケモンの影を見つけたのだ。そう、部屋から抜け出したリコとニャオハである。

 こんな時間帯に校舎を彷徨いているのは警備員くらいだが、ならば懐中電灯も持たずにコソコソするのは少しおかしい。もしや泥棒かと思ったイルマは、取り敢えず教員に連絡しようとスマホロトムを取り出したのだが、興味本意か正義感か、影を追って窓からモクローが飛び出してしまったので、仕方なく電話を中断してアリスが起きないように部屋を抜け出してモクローを追ったイルマは、秘密の練習場の近くでモクローを捕まえた後にリコの声を聞いて、ここまで来たと言う事であった。

 一歩間違えれば不審者として通報されていたかも知れなかったと知り、リコは少し苦笑いした。

 

 一通りの話を終えた二人は、特に理由もなく月を眺める。湖の水面に空に浮かぶ月が映り、キラキラと光を反射する。

 リコはふと視線を横に視線を向けると、近くにあった岩で爪とぎをしている。イルマの方に視線を向ければ、イルマはモクローを膝に乗せ、何処からか取り出したブラシでモクローをブラッシングしている。モクローはリラックスした表情だ。

 

「……ねぇ」

「ん?」

「…イルマとモクローって、凄く仲良いよね。今日のバトルも凄かったし…」

「……ニャオハの事?」

「……うん」

 

 態々こんな時間にこんな場所で特訓していたのだ。リコがニャオハとの関係で思い悩んでいることは簡単に分かった。

 

「気紛れで直ぐにどっか行っちゃうし…本当、何考えてるのか全然分かんないよ……」

「『何考えてるのか分かんない』…それ、パルデアでリコがよく言われてたよね」

「うっ……」

 

 事実だが割と気にしている事なので、ストレートに言われてしまい。やや落ち込んでしまうリコ。

 その様子に言葉選びを間違えた事に気付いたイルマは、苦笑いしながら「ゴメン」と謝罪すると、モクローを膝に乗せたまま、笑顔でリコに語り掛ける。

 

「……まぁ、僕は人に物を教えられる立場じゃないんだけど、リコとニャオハなら直ぐに仲良くなれるよ、絶対」

「…どうしてそう思うの?」

「僕は分かってるんだよ。僕やアリス君なんかより、リコはずっとずっと凄い人だってね」

「……それは、過大評価だよ。私、ニャオハと全然仲良くなれてないし、今日のバトルだって散々だったし…」

「いや、別にバトルが強いって訳じゃないよ。リコにはリコの良い所があるって言うか……」

 

 そこで、話が少しそれてしまった事に気付いたイルマは、モクローを肩に乗せて立ち上がり、正座していた事で膝についた砂をパンパンと払う。

 

「…話を纏めると、リコもニャオハも()()だと思うから、自分がどうしたいのかハッキリすれば良いんじゃないかな?」

「私がどうしたいのか…?」

「うん。それじゃあ、僕は寮に戻るよ。この事は(僕も同罪だから)誰にも言わないでおくよ。特訓、頑張ってね」

 

 ニャオハを眺めながら考え込んでいる様子のリコにそう言うと、イルマは踵を返して歩き出す。ここから先はリコとニャオハの問題だし、先程言ったように、イルマはリコなら大丈夫だろうという確信を持っている。なので、後はリコの自由にさせようと寮に戻ろうとする。すると、茂みを掻き分けようとする直前に、イルマは自分の服の裾を弱々しく引っ張られた感覚がした。

 疑問に思って振り返ると、リコが俯きながら自分の服の裾を掴んでいた。

 

「リコ?」

「ッ!?あ、あのね!もう遅いし、私も帰ろうかなって思ってね!」

「それもそうだね…じゃあ、一緒に戻ろうか」

 

 スマホロトムを取り出して時間を確認すると、もう22時半を過ぎている。あんまり夜更かしし過ぎると生活習慣にも悪影響が出てしまうたろう。なので特に反論することもなく、イルマとリコ、モクローとニャオハは、誰にも気付かれないようにこっそりと学生寮へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……成程ね。ルッカちゃんの依頼で…」

『ええ、リコをパルデアまで送ってきてくれと』

 

 一方、セキエイ学園の理事長室では、イルマの祖父にしてセキエイ学園の理事長を勤める男──サリバンが、スマホロトムを使って誰かと連絡を取っていた。電話の向こうから聞こえてくる声は、ややハスキーで明るい声質の女性の物だ。

 

「まぁ、そう言うことなら問題ないよ。教師陣にも君達を見かけたらリコちゃんに合わせるように言っておくよ」

『ありがとうございます。フリードだったら何の説明もなく連れて行きそうなので……』

「フリードくんも変わっていないみたいだねェ…」

 

 そう言って懐かし気に目を細めるサリバン。

 その時、ふとある考えを思い付き、サリバンは悪戯っぽく微笑むと、通話相手に向けて話し掛ける。

 

「ねぇ。ついでと言っちゃなんだけどさ、ついでにもう一つ、僕から君達に依頼しても良いかな?」

『?まぁ…最終的に決めるのはフリードとキャップなんですが、サリバンさんの頼みですし、大丈夫だと思います』

「そっか。でも安心して、大した事じゃないからさ…」

 

 そう言って一端口を閉じたサリバンは、靴音を鳴らしながら理事長の窓の前まで歩くと、窓の向こうに目を向けた。

 窓の向こうにある校舎全体の明かりは全て消えており、理事長室のまどからでは警備員の持つ懐中電灯の光くらいしか明確に見える物がない。しかしサリバンの目には、そんな警備員の目を掻い潜りながらコソコソと学生寮に向かう少年と少女の姿が写っていた。

 

「君達の旅に、一人連れていって欲しい子がいるんだ。きっとフリード君やバチコちゃんも気に入ると思うよ」

 

 そう言ったサリバンの脳裏には、青い髪を持った最愛の孫の姿があった。

 

 




感想、評価お待ちしております。

イルマくんの二体目の手持ちポケモンは誰がいいですか?

  • ラルトス
  • イーブイ
  • リオル
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