魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター   作:MTHR

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 今回はダイアナがブレイブアサギ号を降りる話です。前半に少しオリジナルになっていますが、お別れパーティーの辺りは原作通りになっておりますのでご注意下さい。エクスプローラーズサイドは完全に省いております。


47話 旅立ちの時

 レックウザとエクスプローラーズとの激闘と、イルマがフクスローと会話できるようになるという珍現象の翌日。

 

「レックウザは行っちゃったし……これから、僕達は何処に進路を取るんだろうね」

『それは、リコの嬢ちゃん達次第だろうなぁ』

「ぽにお~……(二人とも落ち込んでたべ……)」

「ラルルッ(二人なら大丈夫だと思うよ)」

「ぶいっ……(そうかもしれませんね……)」

 

 イルマはフクスロー達と会話をしながら、朝食が出来上がるまでの暇潰しとしてフクスロー達のモンスターボールを磨いていた。暫くキュッキュッという音を室内に響かせながらボールを磨いていたイルマは、一旦ボールを磨く手を止めて、フゥと息を吐いた。

 

『…モヤモヤしてるな』

「やっぱり、わかる?」

『分かりやすいからな』

 

 すると、イルマの部屋の扉がノックされた音が聞こえてきて、イルマはボールを磨く手を止めて自室への扉を開けた。

 

「はーい……って、リコにダイアナさん?」

「イルマ、ちょっといいかい?」

 

 扉の向こうにいたのは、リコとダイアナだった。

 そしてダイアナに促され、イルマ達は、ブレイブアサギ号の展開されたウイングデッキにやって来ると、ダイアナはウイングデッキの上で仰向けになっているロイを覗き込むように見下ろしながら声をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺達が見届ける!」

「ピカピカッ!」

「頑張れ、二人とも!」

「思いっきりやっちゃいな!」

「ホッホ、気になるようじゃの」

『まぁね。この対戦は見逃せないでしょ。記録しておけば、2人も後で参考に出来る』

「でも、ダイアナさんもウインディも只者じゃないよ。いくら二人でも勝てるかどうか……」

 

 フリードとキャップがバトルフィールドに中間点に立ち審判を勤め、展望室の前ではテラパゴスの治療を続けるモリーを除いた面々がバトルフィールドのリコとロイを応援し、リコとロイの前には、威風堂々とバトルフィールドに立つウインディとダイアナの姿があった。

 ダイアナの提案で、レックウザとの一見でリコとロイの胸の内にあるモヤモヤを吹き飛ばすためにと始まろうとする2対1のバトルに、イルマ達は興味津々といった風にバトルフィールドに注目していた。

 

「ウインディに一撃でもいれたら、アンタ達の勝ちだ!此方は万全だよ!アンタ達の力見せてみな!」

「分かった!いくよ!」

 

 そうして、リコ&ロイVSダイアナのバトルが始まった。

 先制としてニャオハが“このは”を飛ばすが、ウインディは“しんそく”を使ってそれを避けてニャオハに一撃いれると、次はホゲータが“かえんほうしゃ”を放つが、ウインディが放った“かえんほうしゃ”とぶつかり合って押し返されダメージを入れられる。

 そこへ追い討ちをかけるようにウインディは日差しを強くすることで炎技の威力を底上げする“にほんばれ”を発動させる。効果抜群を狙ったロイの指示でホゲータが打ち出した“じだんだ”は回避され、ニャオハの“このは”は日差しの影響でより強力になった“かえんほうしゃ”で打ち消されて返り討ちにされる。

 追い詰められたリコとロイだったが、“にほんばれ”の影響をニャオハとホゲータもうけているのだと悟ると、二人は気を引き締めて反撃に出る。

 最初に、ロイがホゲータと共に歌うことでテンションを上げ、その隙にニャオハが“このは”を放つが、ウインディは再び“しんそく”を使って2体と距離を積めようとするが、その瞬間ニャオハとホゲータはスライディングでウインディの下を滑り抜け同時に“このは”と“かえんほうしゃ”を放ち、ウインディは振り返って“かえんほうしゃ”で“このは”を打ち消してホゲータの炎を迎え撃つ。“にほんばれ”の影響で強化されたホゲータの“かえんほうしゃ”は先程のように押しきられることなくウインディの炎と拮抗していると、その隙に技の衝突によって発生した霧に身を隠して、ニャオハがソロリソロリとウインディの背後に忍び寄る。

 

「今だニャオハ、“ひっかく”!」

「ニャオーーッ!」

 

 その瞬間、ウインディに飛び掛かったニャオハが鋭い爪でウインディの体を引っ掻いた。

 

「当たったよ、ロイ!」

「あぁ!作戦成功だ!」

「ふむ、これは一本取られたね。二人ともよくやったよ」

 

 リコとロイは共に手を叩き合わせて喜びを露にし、ダイアナは2人を称賛する。

 

「相手との対格差を生かした作戦か。よく考えたな」

「私達なりのやり方でって」

「ホゲータが気を引いて、チャンスを作ってくれたんだ!」

「その上、“にほんばれ”の効果に気付けたのも満点だね。それじゃあ次は……アンタの番だよ」

 

 そう言ってダイアナが視線を向けた先にいたのは、展望室の扉の前にいたイルマだった。

 

「僕、ですか?」

「あぁ。詳しくは知らないが、アンタはレックウザを操ったポケモンを連れた子に何か思うところがあるんじゃないのかい?なら、アンタもバトルを通してそのウジウジモヤモヤを吹き飛ばそうじゃないか!」

(……まさか、気付かれてたなんて……)

 

 ダイアナの指摘に、イルマは小さく目を見開いた。

 フクスローと会話できるようになったという事の驚きが強くてそちらの方に集中してしまっていたが、キタカミの里でモモワロウを横取りした相手──キリヲがエクスプローラーズのメンバーだったという事実は、イルマの中では多少なりとも気にしていた事だったからだ。

 キリヲとはスグリやゼイユ程でないとは言え、イルマは彼に対して多少なりとも友情を感じていたので、彼がエクスプローラーズでキタカミの里で自分達を利用していた事を知り、表には出さないが思い悩んでいたのだ。

 レックウザに力が及ばなかったリコとロイの抱えるものとは全く別物な為、バトルでこのモヤモヤが晴れるかどうかは分からないが、気晴らしにはなるかもしれないとイルマは判断する。

 

「……分かりました。やりましょう!」

「いいね。ウインディとの一対一で、イルマはポケモンの交代は自由だ。全力でかかってきな!」

「ウィイイイイイッ!!」

 

 リコとロイに交代してバトルフィールドの前に立つイルマに、ダイアナとウインディの前に立つ。ニャオハの“ひっかく”を受けてしまったが、バトルを続ける分には全く問題がなさそうだ。

 

「よし……最初は君だ。いくよ、フクスロー!」

「くふぅッ!」

「ぶい、ぶーい!」

 

 それに対して、イルマがモンスターボールを投げて最初に繰り出したのは、彼の相棒フクスロー。交代制ということなので、オーガポンとラルトスはモンスターボールに収めてポケットの中で、イーブイはイルマの足元でフクスローをおうえんするような声を上げる。

 

「イルマもお婆ちゃんも頑張って!」

「どっちが勝つのかなぁ?」

「イルマ!情けない真似したら承知しねーぞ!」

 

 展望室前に移動したリコ達がイルマとダイアナを応援していると、イルマの指示がフィールドに響いた。

 

「フクスロー、“リーフストーム”!」

「くふぅっ!!」

「いきなり大技!?」

 

 フクスローが放ったのは、進化と同時に習得した“リーフストーム”。強力だが、使えば使う程威力が下がるというデメリットを持つまさに諸刃の剣とも呼べる技だが、炎タイプのウインディには効果は今一つになってしまうため、最初からこの技を使ってくる事に驚く。

 

「ウインディ、“しんそく”!」

 

 視界全体が埋め尽くされる程の量の葉を前に、ウインディは視認すら困難なスピードで走り出し、先程のニャオハと同じように“リーフストーム”の僅かな合間を潜り抜けると、目の前に広がる光景に目を見開いた。

 

「ウィッ!?」

『くふぅ!』『くふぅ!』『くふぅ!』『くふぅ!』『くふぅ!』『くふぅ!』『くふぅ!』『くふぅ!』

「フクスローがいっぱい!?」

「“かげぶんしん”……“リーフストーム”は本体を見分けられなくするための目眩ましだったのかい」

 

 “リーフストーム”の向こうにいたフクスローは、無数に姿を増やして空中に滞空していた。“リーフストーム”で放った木の葉に身を隠したフクスローは、その間に“かげぶんしん”で分身を作り出して空を飛んでいたのだ。更に、フクスローは分身の数を増やしながら空を飛び交い、音を立てない飛行でウインディを翻弄する。

 

「ウインディ、“かえんほうしゃ”!」

「ガウゥッ!!」

 

 それに対し、ウインディは辺り一面に炎を吐き、フクスローの分身を一気に分身を焼き消した。

 ウインディが炎を吐くことを止めてダイアナと共に辺りを見渡すが、ウインディが焼いたのは全て分身であり、フクスローの姿は何処にもなかった。何処にいったのかとダイアナとウインディが辺りを見渡すと、ウインディの上に影がさし、反射的にダイアナ達が上を向くと、上空にいた何者かが太陽を背にした事による逆光で、ウインディの目が眩む。

 

「フクスロー、“シャドーシュート”!」

「くふぅっ!」

「“しんそく”で回避して“かえんほうしゃ”!」

「ガォオッ!!」

 

 太陽を背にしたポケモン──フクスローは、右手に作り出したエネルギー爪を打ち出すオリジナル技をウインディに向けて放つが、ウインディは神速のスピードでそれを避けたことで打ち出された爪がフィールドに突き刺さり、足を止めたウインディは上空にいるフクスロー目掛けて強力な炎を放った。

 

「ッ、もう一回“シャドーシュート”!」

 

 二段構えの目眩ましに対応されたことに驚くが、イルマはすぐに気を取り直して指示を出し、フクスローは迫りくる炎に対して再び暗黒の爪を撃ち放って爆発させると、フクスローはフィールドに降り立った。

 

「ウインディ、“しんそく”!」

「ガウゥッ!!」

「くふぅ!?」

「フクスロー!」

 

 その瞬間、再び神速のスピードで走り出したウインディの突進が炸裂し、フクスローは大きく吹き飛ばされる。

 

「フクスロー、一旦戻って!」

「くふぅ!」

 

 イルマはフクスローを一度モンスターボールに戻すと、肩掛けしているジャケットのポケットから別のモンスターボールを取り出すと、それを投げて中にいるポケモンを呼び出した。

 

「運任せみたいになるけど……頼むよ、ラルトス!」

「ラルッ!」

「2体目はラルトスだね」

 

 繰り出したのは、イルマのパーティーの新参者であるラルトス。

 “テレポート”による瞬間移動と、“ゆびをふる”によりランダムで多種多様な技を出せる彼女は、神出鬼没にして何をしてくるのか誰にも(本人達を含めて)予測できない。

 

「ウインディ、“かえんほうしゃ”!」

「ラルトス、“ねんりき”!」

 

 ウインディが強力な炎を吐くが、ラルトスはサイコパワーで炎を止めて四散させ、炎の直撃を防ぐ。しかし炎が強力すぎるのか、四散させた衝撃波でラルトスは後退る。

 

「ウインディ、“しんそく”だ!」

「ラルトス、“テレポート”!」

 

 ウインディに“しんそく”を指示するのを聞き、イルマも即座に指示を出す。視認困難な速度で迫りくるウインディの突進を、ラルトスはこれまでの人生で身に付けた回避スキルでいち早く瞬間移動を発動させ、ウインディの突進を空振りに終わらせる。

 しかし、ウインディの勢いは止まらず、Uターンしてラルトスに突撃する。

 

「それなら……ラルトス、自分の周りに“こごえるかぜ”!」

「ラルゥ~ッ!!」

「ガッ!?」

「ウインディ!?」

 

 ラルトスは指示通り、雪の結晶が混じった吐息を自身の周りのフィールドに吹き付けると、吐息に混じっていた雪の結晶が溶けて水浸しになったかと思うと、目前まで迫っていたウインディがその水に足を滑らせてしまった。

 

「今だよラルトス、ウインディを上空に“テレポート”」

「ラッ!」

 

 ラルトスは素早くウインディに触れ、その巨体を一瞬で上空に転移させる。重力に従い落下するウインディを見据え、イルマはラルトスに指示を飛ばした。

 

「ラルトス、“ゆびをふる”!」

「ラルルル……ラルゥッ!!!」

 

 指を左右に振って脳が刺激されたラルトスは、両手に大量の水を生成すると、それを一気に空中のウインディに撃ち放った。

 

「凄い威力……!」

「“ハイドロカノン”か……」

 

 “みずでっぽう”とは比べ物にならない威力を見て、フリードはそれが水タイプの中でも上位に位置する技“ハイドロカノン”であると看破する。

 そんな中、ラルトスが放った激流は、瞬く間にウインディと距離を積めていくなか、ダイアナが指示を飛ばした。

 

「ウインディ、“にほんばれ”!」

 

 空中にいるウインディが日差しを強くした瞬間、ラルトスの“ハイドロカノン”が炸裂し、ウインディは爆煙に包まれる。

 上空の爆煙をジッと眺めているイルマだったが、次の瞬間、ダイアナの指示が響き渡った。

 

「ウインディ、“かえんほうしゃ”だよ!」

「ガォオオオオッ!!」

「ラッ!?」

 

 煙の中から強力な炎が飛び出し、“ハイドロカノン”の副作用で動くことが出来なくなっていたラルトスは一瞬で炎に包まれた。

 

「ラルトス!?」

「ラル……ト……」

 

 炎が収まると、そこには目を回して仰向けに倒れている黒焦げのラルトスの姿があった。同時に、僅かにダメージを負いながらも威風堂々とした佇まいを崩さないウインディがいた。水タイプの上位技の“ハイドロカノン”だが、ラルトスのレベルがまだまだ低いことと、直前で“にほんばれ”を使ったことで水タイプの技の威力を下げて、逆に威力が上がった“かえんほうしゃ”で倒したということだ。

 

「もどって、ラルトス……やっぱり、一筋縄じゃあいかないよね……」

「いや、ラルトスも大したもんさ。ウインディに一撃いれられるんだからね」

「ありがとうございます。なら次は…フクスロー、もう一度お願い!」

「くふぅ!」

 

 ラルトスをモンスターボールに戻したイルマは別のモンスターボールを投げ、再びフクスローを繰り出した。

 

「フクスロー、“エアカッター”!」

「ウインディ、“かえんほうしゃ”!」

 

 フクスローが放った風の刃を、ウインディは強力な炎で打ち消した。技がぶつかり合った衝撃で爆発が起きて、互いの姿が煙に消える。

 

「“シャドーシュート”!」

「“しんそく”!」

 

 フクスローがウインディが立っていた位置に向けて右側の翼に生成した影の爪を撃ち放つが、ウインディは神速のスピードでそれを避け、瞬く間にフクスローと距離を積めて突撃を御見舞いしようとするが、フクスローは咄嗟の判断で左側の翼に纏わせたままだった“シャドークロー”を盾の代わりにして直撃を防ぎ、イルマの目前まで後退する。

 

(……やっぱり強い。ラルトスは“テレポート”で隙を作れたけど、フクスローには“かげぶんしん”以外に相手を翻弄する術がない。オーガポンみたいなごり押しも無理。倒せないなら……オーガポンに繋げるしかない)

 

 そこまで考えた所で、イルマはフクスローに声をかけた。

 

「フクスロー!これから少し無茶できる!?」

『おい、いつもの事とは言え、此方も大変なんだからな?』

「分かってるけど……ダイアナさんに勝つために、オーガポンに繋げたいんだ」

『……ふふ~ん?()()()()ねぇ……いいぜ。進化した俺ちんが、イル坊に応えてやんよ』

 

 そう言って、フクスローはウインディに向かい合う。

 フクスロー自身、進化したからといってリザードンと同レベルの力を持つウインディ相手に勝てるほど理解している。進化したとは言え、そこまで成長するわけではない。なので、ウインディに勝つつもりならオーガポン(最高戦力)の勝利に繋げるのがベストだ。

 

「……イルマ、さっきから一人で何を喋ってるの?」

「昨日も何かフクスローの言葉が分かるとか言ってたけど……本当にあの子大丈夫かな?」

 

 外野の言葉を無視して、 イルマはフクスローに指示を飛ばした。

 

「フクスロー、“かげぶんしん”!」

「くふぅ!」

「目眩ましは食らわないよ。ウインディ、“しんそく”で分身全部を攻撃だよ!」

 

 フクスローが周囲に無数の分身を発生させるが、ウインディはニャオハの“でんこうせっか”もは比べ物にならないスピードで走り出し、次々と分身を消していき、背後から迫っていた本物を吹き飛ばした。

 地面に摩擦を上げながら後退するフクスローに、イルマが指示を飛ばす。

 

「“エアカッター”!」

「ウインディ、“かえんほうしゃ”だよ!」

 

 フクスローは翼を羽ばたかせて連続して風の刃を撃ち放つが、ウインディは強力な炎を吐く事で迎え撃とうとする。その時、再びイルマの指示がバトルフィールドに響いた。

 

「フクスロー、“シャドークロー”で全部の技を利用して!」

「何だって!?」

 

 “エアカッター”を放つと同時に走り出していたフクスローが、両翼に影の爪を展開すると、目前で炎をぶつかり合おうとしていた“エアカッター”が“シャドークロー”に絡めとられ、フクスローの暗黒の爪に風が覆われる。

 更に、目前まで迫っていた炎が“シャドークロー”に風が纏われていた風に絡めとられ、フクスローは炎の勢いを殺さないようにその場で回転し、跳躍しながら飛び出し、ウインディに向けてすれ違い様にその爪を一閃させた。

 

「ウィッ!?」

 

 技を放っている最中に予想外の行動に驚いたウインディは反応が一瞬だけ遅れ、風と炎を纏った影の爪にその身を切り裂かれる。しかし、炎の攻撃は熱に体勢のあるウインディに炎はそこまで通らず、ダイアナの目前まで後退しながらも威風堂々とした佇まいを崩さなかった。

 

「ウインディ、“かえんほうしゃ”!」

「ガウゥッ!!」

「くふうぅっ!!」

「フクスロー!」

 

 そして、即座に口から灼熱の炎を放ち、先程の技の披露で避ける余裕がなかったフクスローはその炎に呑み込まれる。

 ウインディの炎が止むと、目を回して倒れているフクスローがいた。

 

「フクスロー、ありがとう。ゆっくり休んでね」

「驚いたよ。まさか自分と相手の技を重ね合わせて強化するなんてね。ウインディにも効いたようだ」

 

 イルマはモンスターボールにフクスローを戻し、ボールの中にいるフクスローに労りの言葉を掛けると、ダイアナはフクスローの高い実力とイルマの発送を誉める。“かえんほうしゃ”といった遠距離系の技を自分の技に利用すると言う考えは確かに相手の虚を突くのに有効だが、一歩タイミングを間違えたらその攻撃を無防備に食らってしまうと言う危険性もあり、効果抜群の技に対してその戦法はギリギリの賭けとも言えた。

 

「ここで決めるよ!オーガポン!」

「ぽにぃっ!!」

「オーガポン……ようやくエースの登場だね」

「ガウッ」

 

 そうしてイルマが繰り出したのは、イルマのパーティーのエースを勤めるオーガポン。

 ダイアナも彼女がバトルする場面をあまりみたことがないが、歴戦のトレーナーであるダイアナとその相棒のウインディは長年の勘から彼女の計り知れないポテンシャルを見抜き、油断ならない相手だと本気で相手をすることを決める。

 そして、二人はほぼ同時に指示を出した。

 

「オーガポン、井戸の面に変えて“かたきうち”!」

「ウインディ、“かえんほうしゃ”!」

 

 苦手な炎タイプを克服するために青い姿に変身したオーガポンはフクスローが倒された事への怒りを力に変えてウインディに突撃し、ウインディは強力な炎を吐いて迎え撃つ。しかし、水タイプが追加されたことで炎技が等倍になったオーガポンは、強力な炎に少し怯みながらも真っ直ぐにウインディへと向かい、ジャンプしてから急降下キックを浴びせようとする。

 

「“しんそく”!」

「ガウゥッ!!」

「ぽっ!?」

 

 その瞬間、ウインディは目に見えないスピードで走り出し、突撃してきたオーガポンに突撃を食らわせる。オーガポンは土煙を巻き上げながら後退するが、大したダメージにはなっていないようで、直ぐに棍棒を構え直した。

 

「(やっぱり、捉えきれない“しんそく”は厄介すぎる。見切れる事は出来ないし……)オーガポン、礎の面に変えて“ツタこんぼう”!」

「ぽにぃっ!」

「“かえんほうしゃ”!」

 

 ウインディの“にほんばれ”の効果はまだ継続しているため、水タイプの技が半減されない岩タイプの姿に変身したオーガポンは棍棒に岩石を纏わせて突撃する。

 ウインディは“かえんほうしゃ”で迎え撃とうとするが、オーガポンは棍棒でその炎を防ぎ、炎の勢いに吹き飛ばされそうになるのを堪えながら、脚に力を込めて前へと進んでいくと、遂にウインディの目前までやって来て、そのままウインディの顔面に棍棒を叩き付けた。

 

「がおっ!」

「ウィッ!?」

 

 効果抜群の岩タイプに変化していた棍棒で顔を殴られたウインディは勢いよく吹き飛ばされる。しかし、直前で後ろに下がることで可能な限り衝撃を和らげたのか、倒れることはなかった。

 ここまでのバトルで息を切らして肩を上下させているオーガポンを見て、ダイアナは納得したように口を開いた。

 

「──そのオーガポン、まだ勘を取り戻せていないみたいだね」

「勘?」

 

 ダイアナの言葉に首をかしげるイルマ。

 

「私はオーガポンについては詳しく知らないけど、何百年も昔からいたポケモンなんだろう?でも、きっとバトルのない日々が長すぎんだろうね。身体が思うように着いていけていないって感じだよ」

「ぽに……」

 

 オーガポンは図星を着かれたように動揺する。

 ダイアナの言う通り、オーガポンは準伝説として位置つけられているポケモンで、隔絶したスペックの持ち主だ。しかし、オーガポンがイルマのポケモンになるより前までで戦いをしたのは、かつての相棒を殺したともっことモモワロウを瞬殺した時が最後であり、それから数百年ものあいだ、オーガポンはスイリョクタウンの人々から忌み嫌われ続けて祭りの夜しか山を降りることがなく、鬼が山でひっそりと暮らす日々を送っており、体力も落ちて戦いの勘も鈍っており、モモワロウやガラル鉱山のバトルでは、昔のような動きが出来ず苦戦を強いられる事が何度もあった。

 最近になってバトルをするようになった事で少しずつ昔の勘を取り戻しつつあるが、たった数週間で数百年というブランクは埋められない。

 

「けど、それはこれからのバトルで取り戻せるだろうね。アンタの指示も大したもんだ。アンタ達はこれからもっと強くなれると断言するよ」

「……ありがとうございます。ならそのために、貴方をここで越えてみせます!」

「良いね!大した度胸だ!」

 

 イルマの宣言にダイアナは笑い、オーガポンとウインディは互いに臨戦態勢を整える。

 これ以上のバトルを続けるのは難しいと判断し、イルマとダイアナはほぼ同時に最大を技を放つように指示を出した。

 

「オーガポン、“ツタこんぼう”!」

「ウインディ、“フレアドライブ”!」

 

 オーガポンの岩石を纏わせた棍棒と、ウインディの極炎を纏った突進がぶつかり合い、爆発と共に凄まじい衝撃波がバトルフィールドを襲い、リコ達は腕で顔を覆う。

 イルマとダイアナは一瞬としても目を逸らさずに爆煙の中にいるオーガポンとウインディを見守り、衝撃波が収まってゆっくりと顔を上げたリコ達もその爆煙に視線を集める。

 そして、煙が晴れて二体の姿が見えてくると──……

 

「ぽ……ぽに……」

「ガゥ……」

 

 互いにフィールドの上に倒れ、目を回しているオーガポンとウインディの姿だった。

 

「両者戦闘不能!この勝負、引き分け!」

「負けなかった……けど、勝てなかったかぁ……」

「いいや、大したもんさ。ここまで燃えたのは本当に久し振りだったよ」

「ありがとうございます。僕達も、何か少しスッキリした気がします」

 

 フリードの審判で、イルマはオーガポンを抱き起こしながら負けはしなかったが勝つことは出来なかったと肩を落とすが、トレーナーとのバトルで引き分ける程熱くなれるバトルを久々に経験できたダイアナは気にするなというように笑う。

 キリヲの事でのモヤモヤが晴れた気がして、ダイアナに礼を言いながら握手を交わすイルマに、ニャオハを抱き抱えたリコが歩み寄った。

 

「イルマ、今のバトルすごかったよ!お婆ちゃんのウインディと引き分けるなんて!」

「ほめてくれてありがとう。でも、ラルトスとフクスローが多少なりともダメージを入れてくれたからだよ。交代無しだったら勝てなかっただろうし……」

「それでいいのさ。チームで協力して相手に打ち勝つことも立派な戦術の1つさ」

 

 孫ゆえに祖母の相棒であるウインディの強さをよく知るリコは引き分けとは言え敗北を免れたイルマに目を輝かせるが、ラルトスとフクスローとオーガポンの3体で戦った結果のためそこまでスゴいことじゃないと思うイルマだが、ダイアナはチーム一丸となったからこそだと言う。

 ダイアナはイルマの肩に手を置き、微笑みながら話し掛ける。

 

「イルマ……これからもリコの事、よろしく頼むよ」

「…?はい、勿論。リコは僕にとって大事な人(友達という意味で)ですから!」

「イッ、イルマッ!?///」

「ニャフッ!?」

 

 イルマとしては『大事な友達』という意味からくる言葉だったのだが、リコには別の意味合いに聞こえてしまい、途端に顔を真っ赤にしてニャオハを抱き締める力を強くした事で、ニャオハは悲鳴を上げる。

 

「……イルマ、祖母の前で随分積極的だな」

「……いや、あのバカ弟子、多分そういう意味で言ったんじゃないと思うぞ。自然体であれなんだよ、アイツは」

「……イルマ、罪な男だね」

「?」

「ホゲ~?」

 

 その様子を見ていたバチコ達もイルマの無自覚ぶりに頭を抱え、よく分かっていない様子のロイとホゲータは首を傾げる。

 

「……そう遠くないうちに、曾孫の顔が見られるかもしれないねえ」

「おっ、お婆ちゃんっ!?曾孫なんてまだ気が早……じゃなくて!そもそも私達はまだそんな関係じゃ……」

「………曾孫?」

「ぽに?」

 

 揶揄する様なダイアナの言葉に、頭が爆発するのではないかと思う程顔を真っ赤にしたリコは手を首をブンブンと振って慌て、イルマとオーガポンは揃って首を傾げる。

 その時、リコのスマホロトムに、テラパゴスの治療をしていたモリーから通信が入った。

 

『リコ、テラパゴスが目を覚ましたよ』

「ホ、ホント!?様子を見に行こう!」

「リコ、なんか顔赤くない……?」

「なっ、なんでもないから!」

 

 まるでその羞恥心を誤魔化すように治療室に向かうリコにイルマは首を傾げるも、フリード達と共にリコに続いて治療室に向かう。

 

「……パーゴ!」

「ミーッ!」

「心配したんだよ」

 

 治療室に辿り着くと、目を覚ましたテラパゴスがバクバクと物凄い勢いで木の実を頬張っていた。「美味い!」というような声を上げるテラパゴスに、ミブリムは彼の周りを走り回りながら歓声を上げ、リコ達はその様子に揃って笑い声を上げる。

 甲板から、治療室の様子を覗いていたダイアナとフクスローのバトルから目を覚ましたウインディは、その光景に笑みを浮かべる。

 

「テラパゴスが元気そうでよかった」

「ワフ」

「さて、次は私が戦う番だ」

 

 

 

 

 

 

 一時間後。

 モリーに治療してもらったお陰で目を覚ましたラルトスとフクスローを連れ、イルマはオーガポンとイーブイを含めた一人と四体で甲板を歩いていた。

 

「フゥ……みんな元気になったみたいでよかった」

「ラルル!」

『おう、もう大丈夫っさ』

「ぽーにぃ!」

『そんで、イル坊。あの変態眼鏡の事は、吹っ切れたのか?』

「まぁ……多少なりともね。1つだけ決めたことがある」

『ほぅ?』

「キリヲさんは……僕が止める。そのために、僕はもっと強くなる」

『……そうか。なら、俺達も付き合ってやんよ』

「ぽにっ!」

「ラル!」

「……」

 

 フクスローの言葉に、オーガポンとラルトスも頷くが、イーブイは思い悩んだような表情で俯くだけだった。その様子に疑問を持ったイルマがイーブイを抱き上げて「どうかしたの?」と声をかける。

 

 そうしてイーブイを抱えながら歩いていると、イルマは展望室の前で、室内に姿が見えないように身を潜めて中の様子をうかがっているリコとロイ、そして欄干にいるカイデンとイキリンコを見付けた。

 

「二人とも、どうかしたの?」

「シィーッ!」

「えぇ……」

 

 声をかけたらロイに「静かにしてほしい」というサインをもらい、イルマ達は首をかしげながらも声を潜めて二人と目線を合わせるように座り込むと、リコが小さな声で話し始めた。

 

「お婆ちゃん、次の港で降りるって」

「そうなんだ……リコは、それでいいの?」

「お婆ちゃんが決めたことだもん。でも、それがいつものお婆ちゃんだもの」

「そっか。じゃあさ、お別れパーティーしようよ。カレーとか、出し物とか賑やかに!」

「ロイ、ナイスアイディア!」

「早速準備だ!」

「皆にも手伝ってもらおう」

 

 思い立ったが吉日。

 リコとロイ、そしてイルマ達はドットの部屋に向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 夕刻。

 荷物を纏めたダイアナはブレイブアサギ号の展望室の外で夕焼けを眺めていた。

 

「この船で過ごすのも今夜が最後」

「ワフ」

「ん?何だい?」

 

 ウインディに呼び掛けられ、ダイアナは船内に入りミーティングルームのドアを開けた瞬間──

 

パンッ!パンパンパンッ!

 

 破裂音と共に紙吹雪が舞い上がる。

 ダイアナが目を見開いていると、彼女の目にクラッカーを手にしたリコ達と、様々な御馳走を並べたテーブルと、華々しく飾り付けしたミーティングルームが写った。

 

「どうしたんだい?」

「お婆ちゃん、ありがとう」

「お別れパーティー。カレーも作ったんだ」

「ロイ君の提案でして。皆で準備したんですよ」

「あれまぁ、私のために?」

「これまでお世話になったし」

「お別れは寂しいけど、今日は思いっきり騒ごう!」

 

 オリオの言葉に続くように、ホゲータ達ポケモンが歌い始める。

 

「皆、素敵な歌をありがとう」

「特製デザートもあるぞ!とっておきのスペシャルケーキだ」

「スポンジケーキ……」

「……どこがケーキ?」

「ここからだ。マホイップ、頼むぞ」

 

 テーブルの上に置かれたスポンジケーキを見てオリオを筆頭にメンバーは首をかしげるが、マードックの肩の上にいたマホイップがテーブルの上に降りてクリームを放出してスポンジケーキにクリームとフルーツを盛り付けると、瞬く間にフルーツケーキが完成した。

 

「うわ、素敵。それじゃあ、食後にはとっておきの茶葉を出して、一緒にいただくとしようか」

 

 そうして、リコ達によるダイアナのお別れパーティーが開催された。

 リコとロイの作ったカレーやマードック特製ケーキを頬張り、ダイアナが淹れてくれた紅茶を美味しそうに飲んでいる中、フリードがティーカップに刷り変わったヤバチャの紅茶を吹き出し、マードックがポットデスの紅茶を飲みすぎてぶっ倒れてウインディが彼をベッドに連れていった後、ドットが作った旅の思い出の動画を鑑賞を終えると、ダイアナは黙り込み、それを見たリコが不安そうに訪ねる。

 

「お婆ちゃん?」

『気に入らなかった?』

「……ハハハッ、最高だ!」

「大成功!やったねドット」

「皆で作ったんだ。殆どドットのお陰だけど……」

「素敵な思い出ばかりだったね。ありがとう、皆」

 

 目元を指で拭うダイアナの言葉で、お別れパーティーはお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

「はあぁ~~、楽しかった~~!」

『大盛り上がりだったもんな』

「ぽに~!」

「ラル~」

「ぶいぃ~」

 

 お別れパーティーの飾りの片付けを終えたイルマは、ベッドにダイブするように仰向けになり、大きく息を吐いた。

 

「ダイアナさんとは明日でお別れかぁ……何だか感慨深いなぁ……」

『まぁ、あのバーさんには色々と世話んなったしな』

「うん。この指輪のことも知ることが出来たのも、ダイアナさんのお陰だしね」

 

 イルマは右手に嵌められた指輪をジッと見ながら、古城でダイアナが教えてくれた情報を思い返し、その中である言葉を思い出した。

 

 ──その指輪には悪魔が宿っていて、着けているものに不思議な力をもたらすと言われてる。

 

(……悪魔、かぁ……)

 

 イルマがフクスロー限定とはいえポケモンと会話できる力を与えたと思われるこの指輪だ。もしかしたら、この指輪には本当に悪魔がいるのだろうか。もしくはテラパゴスのようになにかポケモンがいるのか……そんな風に考えていると、イルマの目蓋が重くなって行き、数秒後にはスヤァ…と夢の世界へと旅立っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 リコはブレイブアサギ号の上から、港に降りたダイアナ・ウインディ・イキリンコに手を振り続けていた。

 

「私達も頑張らなくちゃね」

「リコ……」

「ガウガウ」

「クヨクヨしてる暇はないよ。さぁ、行こう!」

「ガウ!」

 

 ダイアナは荷物を持ち上げながら、町の方へ歩き出す。

 

 そして、パルデア地方に向けて海の上を飛んでいくブレイブアサギ号の甲板の上で、ドットを覗くライジングボルテッカーズは海を見つめながら、フリードが口を開いた。

 

「俺達は六英雄を見つけ出す」

「黒いレックウザ」

「オリーヴァ、ガラルファイヤー、ラプラス」

『それと、バサギリとエンテイ』

「古の冒険者、ルシアスと一緒に旅をしたポケモン達」

「お前も、ルシアスと一緒だったんだよね」

「パゴ!」

「共に歩もうぞ」

 

 船首の近くで海を見つめるテラパゴスを見つめながら、最初にマードックが拳をつき出した。

 

「全ての六英雄も出会えば…」

「テラパゴスは本来の力を取り戻して」

「ラクアへの道が開かれる」

「必ず、連れていって上げる」

『神秘的で刺激的、ワクワクする』

「残るはあと三体!」

「黒いレックウザと……」

「バサギリとエンテイ」

「六英雄の調査を進めつつパルデアに向かい、テラパゴスの事を調べる」

「ピカチュー!」

 

 リコ達は打ち合わせた拳を上へ上げてから下に下げ、そして一斉に大きく腕を上げた。

 

「ライジングボルテッカーズ、出発!」

 




~オーガポン~
 既に戦闘中に自由にお面を変えられるというチート性能を与えた為、バランス調整の為にオーガポンの勝率がいまいちだった理由。数百年もお面を取られて力の大半を失ってるなら衰えても仕方ないと思いました。


~イルマのキリヲに対する感情~
 原作ほどではないが、キリヲに対して複雑な感情を抱いている。これからも彼との衝突はあります。


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