魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター   作:MTHR

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 今回はオリジナル回となります。
 イルカマンの話に辿り着くまで、オリジナル回を交えて執筆したいと思います。


48話 迷子を探して

 ダイアナが船を降り、テラパゴスのパワーがパルデア地方で確認されるテラスタルのエネルギーと酷似している事に目を付けたフリードにより、ブレイブアサギ号はパルデア地方に向かって空の旅を続けていたのだが……

 

「皆、聞いてくれ。俺達ライジングボルテッカーズの貯金が危機的状況だ」

 

 ミーティングルームで仲間達に収集をかけたフリードの言葉に、イルマ・リコ・ロイの3人は目を丸くし、それ以外のメンバーは納得したような表情をした。

 

「思ったより早いな……」

「そりゃ仕事もしないで旅を続けてりゃ……」

「資金は減る一方だよね」

「んで?後どれくらいだ?」

「大まかにだが……次の町で食料を買ったら終わりだな」

「思ったよりないですね……」

 

 ライジングボルテッカーズが最後に仕事をしたのはキタカミの里でガチグマの調査をした時だが、その間にも乗組員達の食費や船の修理の材料費等でかかる費用は馬鹿にならないため、このままではオケラになることだろう。

 

「ラクアを目指す旅はこのまま続けていく。ただ、皆もそれぞれ資金稼ぎの方も力を入れてくれ」

「「「「了解」」」」

 

 フリードの言葉に頷くと、面々は資金稼ぎの方法を考える。

 

「スイーツのデリバリーでも始めてみるか……」

「メカ修理の依頼がないか、ツテを当たってみよっかな……」

「モリーは、ポケモンの健康相談とかやってみたらどうだ?」

「そうだね。ドット、宣伝の動画、作ってくれない?慣れたもんでしょ?」

「おっ、いいな!スイーツの宣伝動画も頼む!」

『え~、めんどくさっ……』

「そう言わないでよ!アンタは動画の収入があるから良いけどさ」

「はい!僕、力仕事だったら出来るよ!あと、山歩きも得意!」

「専門的なことは出来ませんけど、皆さんの補助くらいなら……」

「あっ、私も……何でもやります!」

「学生はまず、しっかり勉強に励め」

 

 自分達にも手伝える事があるならとイルマ達も声を上げるが、リコの肩に手を置いたフリードの言葉で、リコ達は一先ずオンライン授業を受けるためにミーティングルームを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 イルマは自室に設置された机に座り、フクスロー達と共にカルエゴ先生の授業を受けていた。

 本日の講義も一通り終わり、スマホロトムに映る担任カルエゴがこちらを振り向いて口を開く。

 

『今回の課題は、『理想の絆』だ。自分が目標とするトレーナーとポケモンを一組選び、素晴らしいと思う事をレポートに纏め、次回の授業で発表してもらう』

 

 そう言って授業が終わり、スマホロトムを元のサイズに戻したイルマは自室を出て、船内を歩き回りながら考える。

 

(理想の絆……考えたことなかったな。身近なトレーナーって言うと、フリードさんか師匠だし、ここはやっぱり……)

 

 そこまで考えたところで、イルマはミーティングルームの扉の前で来たところで、展望室前でイルマと同じ授業を受けていたリコとニャオハとミブリムと鉢合わせた。

 

「あっ、イルマ」

「リコ。リコはレポート、誰にするか決めた?」

「うん。私はやっぱり……」

「早速仕事が来たぞ!」

「こっちもだ」

 

 そこまで話したところで、ミーティングルームからフリードとバチコの声が聞こえてきて、イルマとリコは扉を開けて中を覗き込む。

 

「知り合いから、迷子のポケモンを探してほしいって依頼だ」

「此方も似たようなもんだ。あッチの方は、依頼主はあッチの祖父の友人の親族からなんだがな……」

「と言うわけで、俺達は行ってくる」

「手伝わなくて良いのか?」

「あぁ、迷子探しくらいなら十分だ」

「以下同文」

 

 そこまで言ったところで、フリードとバチコは部屋に入っていたイルマとリコに気付き、続けてロイがミーティングルームに飛び込んできた。

 

「ねぇ、フリード!僕にも手伝わせて!」

「あっ……私も!」

「それじゃあ、僕は師匠のお手伝いをします!」

 

 リコとロイがフリードに同行することを聞き、イルマはバチコに同行する主張する。

 

「あぁ、なら頼む」

「決まりだな」

 

 フリードとバチコも快諾したことで、リコとロイはフリードとキャップと共に依頼主との待ち合わせ場所に向けて船を進めていき、バチコはイルマを連れてチルタリスの背中に乗って依頼主のいる場所に向けて飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二時間近くのフライトの末にチルタリスが降りたのは、大きな屋敷の前だった。

 

「依頼主との待ち合わせ場所って……ここですか?」

「あぁ、あッチの祖父が、この屋敷の主の旧友らしくてな。あッチ自身は殆ど接点はねーんだが、家族経由で連絡先くらいは知ってたんだろうな……」

 

 そう言いながら、バチコは屋敷のインターホンを鳴らし、『どうぞお入り下さい』という言葉と共に屋敷の扉が開き、中から一人の女性が姿を現した。

 

「ようこそ御越しくださいました、バチコさん。私はテルアキの娘で、アキコと申します」

「はじめまして、バチコです。祖父からテルアキさんの事は聞いております。この度は、御愁傷様です」

「ありがとうございます……」

 

 彼女の話では、バチコの祖父の友人である【テルアキ】という男は既に亡くなっているらしい。この時は、バチコも真面目な表情をしており、イルマも自然と背筋を伸ばす。

 

「それで……フリード博士はいらっしゃらないのでしょうか?確か、バチコさんが所属するライジングボルテッカーズのリーダーを勤めているときいて、てっきり同行してくるものかと……」

「あぁ、フリードは今別件の仕事で不在です。それで、このイルマが今回の仕事の助手を勤めています」

「……イ、イルマです」

 

 イルマはアキコという女性に頭を下げて挨拶をする。

 

「そ、そうですか……では、探してほしいポケモンについては、中でお話します」

 

 フリードが来ないことに残念そうな表情をしたアキコにそう言われて、屋敷の中へと案内され、フクスローやジュナイパー達にポケモンフーズを提供してもらったイルマとバチコは、応接室で淹れてもらったお茶を飲みながらアキコが机の上に差し出した写真に目を向けた。

 そこには、年配の男性と、紫の体毛に額にハート型の赤い宝石のような構造を持ち、首には目映い光沢を放つ宝石が埋め込まれた首輪を付けているポケモンが写っていた。

 

「探してほしいのはテルアキさんのパートナーだったポケモン……このエーフィなんです」

 

 イルマはスマホロトムを取りだし、そのポケモンの情報を検索する。

 

『エーフィ。たいようポケモン。エスパータイプ。イーブイの八つある進化系の一つ。前進の細かな体毛で空気の流れを感じとり、相手の行動を予測する』

 

「イーブイの進化系か……」

「いぶ……」

 

 スマホロトムに表示された表情に、イルマとイーブイは興味深そうに写真の中のエーフィを見つめる。

 

「額の宝石の形がハート型なんて、珍しいですね……それで、このエーフィについての情報を頂けますか?」

「はい……そのエーフィは、テルアキさんが若い頃から一緒にいたポケモンだったんです。父は厳格な人でしたが、そのエーフィと一緒にいる時だけは、別人のような表情をして彼女を可愛がっていたんです……」

「……よっぽど大事なポケモンだったんですね」

「ですが、テルアキさんが亡くなり、私達親族がテルアキさんの葬儀の手続きで屋敷の中が慌ただしくなっていた時のゴタゴタに紛れ込んで姿が見えなくなってしまったんです。屋敷中を探しても見当たらず……」

「それで迷子ということですか」

「お願いします!この子は、父との思い出なんです!何とか探してもらえないでしょうか?」

 

 何処からか取り出したハンカチで顔を覆いながら涙声で懇願するアキコ。

 

「昔の話ですが、テルアキさんにはお世話になっていましま。全力を尽くしましょう」

「僕も手伝います!」

 

 イルマとバチコはその依頼を了承した瞬間、応接室の扉の向こうからドタドタという音が聞こえてきたかと思うと、勢いよく扉が開かれた。

 

「姉さん!天才博士にエーフィの捜索を依頼したって本当かい!?」

「ズルいわよ姉さ……って、あれ?」

 

 アキコと大差ない年齢の男に、年若い女性更にゾロゾロと入ってくる人達に、イルマはやや頬をひきつらせながらアキコに訪ねる。

 

「……親族の方ですか?」

「私もビックリです。皆がこんなにエーフィの事を心配していたなんて……」

「……スミマセンね、フリードは忙しくて来れないんですよ」

「い、いえいえ、そんなことは……」

 

 親戚達も一緒になってエーフィを探しているのだと知り、イルマはこれもテルアキさんの人徳ゆえなのかと感心し、バチコは僅かに目を細めて親族達を見ながら、「依頼を受けたのは自分なのにフリードに用があるならフリードに言え」と言わんばかりに不機嫌そうに親族達にそう言うと、アキコ達は気まずそうに目を泳がせた。

 

 

 

 

 

 

 そして、依頼を受けたイルマ達は、屋敷を出てある場所に向かっていた。

 

「ご注文、お決まりですかぁ?」

 

 愛嬌のある笑顔を浮かべる女性の言葉に、イルマとバチコはショーケースに並ぶ色とりどりの『それ』を見ながら、同時に口を開いた。

 

「「取り敢えず!端から端まで全部!!」」

 

 数分後、案内された席に座ったイルマとバチコの前のテーブルに、パフェやらケーキやらドーナツといった多種多様のスイーツが並べられ、2人はそれを口に運びながら呟くように口を開いた。

 

「この新作は中々いけるな。ゼリーはさっぱりしすぎだがケーキの後なら丁度良い軽さだ。成る程……」

「これも、オレンの実ソーダの寒天とラムの実のソースの相性がとても良いですね。結論……」

「「幸せ~~」」

 

 イルマとバチコは互いに頬を緩め、辺りにお花が飛んでいるような幸せオーラを漂わせながら、スイーツを次々と口に運んでいく。

 そう、イルマとバチコがやって来たのはテルアキの屋敷からそう遠くない場所に建てられたスイーツ専門店。そこでイルマ達は、カウンターのショーケースに並べられている新作スイーツや期間限定商品や人気商品を全て注文して食べるるという財布と体重に大打撃になることこの上ない事をしていた。

 

 その直ぐ側では、二人のポケモン達もポケモン用のスイーツを食べており、オーガポンとラルトスとイーブイがケーキを頬張っている中、フクスローが声を張り上げた。

 

『……って、アホかーー!!イル坊もちんちく師匠も、今は迷子のエーフィを探してんだろうが!マイペースか!』

「ジュナナイ……(落ち着きなさい。バチコは何時もこんな感じなのよ……)」

 

 フクスローの言葉に、ジュナイパーが彼の肩に手を置いて宥める。

 しかし、フクスローの言葉を聞いて、イルマもハッと正気を取り戻す。

 

「あのっ!僕達、こんなところで呑気にお茶してて良いんですか!?」

「ん?……っと、確かにほわほわしてる場合じゃねぇな。食ったらエーフィを探しにいくぜ」

「そうですね。このエーフィ、額の宝石がハート型だし首輪もしてますからね。特徴があるから見つけやすいでしょうしね。調べたところ、エーフィは日光をサイコパワーに変換するらしいですし、日当たりの良い場所を探してみれば……」

 

 バチコもそれを聞いてエーフィ探しを始めようとして、イルマはスマホロトムでエーフィの生態を検索し、エーフィがいそうな場所に辺りをつける。

 

「お姉ちゃん達、おでこがハートになってるエーフィを探してるの?」

「「え?」」

 

 その時、不意に声を掛けられたことで、イルマもバチコが声がした方に目を向けると、6歳くらいの小さな女の子が、相棒のルリリと共に此方を見ていた。

 

「……君、この写真に写ってるエーフィを見たの?」

 

 イルマはテルアキとエーフィの写真を見せながら、少女と目線をあわせて尋ねる。

 

「うん!この前、ルリリと遊びに行った時にね、私達ハネッコを追いかけて、町の外れの森の中に迷い混んじゃったの!それでね、怖いポケモンに襲われそうになったところで、おでこがハートの形をして首輪を付けたエーフィが助けてくれたの!」

「森かぁ……行ってみるしかないな」

「そうですね。ありがとう」

 

 教えてくれた女の子にお礼を言いつつ、イルマとバチコはテーブルの上に並べられたスイーツを平らげると、代金を払って女の子が押してえくれた森に向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうしてイルマとバチコが次にやって来たのは、町から200m程離れた場所で生い茂る森の中だった。立ち入り禁止区域というわけではないが、中にはそれなりに強いポケモンが多くすんでいる為、相応の実力を持つトレーナーでないと入り込むのは危険とされている。

 辺り一面に生えている木々が太陽光を隠して影を作り、森の中を吹き抜ける風により涼しく感じられる場所だった。

 

「なんと言うか……エーフィの生態に似合わない場所ですね。確か日当たりの良い場所にいるって見込みだったのに……」

「それもあるが……やっぱり変だな」

「変?」

 

 イルマは首を傾げてバチコに尋ねると、テルアキとエーフィの写真を見せながら自信の推測を口にする。

 

「あッチはそこまでエーフィに詳しい訳じゃねえが、エーフィはなつき進化するポケモンの筈だ。その関係でトレーナーにも忠実な奴が殆んどだ。そんな奴が、主人の葬儀の最中に抜け出すなんてすると思うか?」

「あっ、確かに……」

 

 イルマは顎に手を当てて考える。

 バチコの言う通り、長年の付き合いであるパートナーの葬儀を抜け出すと言うなら、余程トレーナーとの間に深い溝があったのかと思われるが、バチコの言う通りエーフィはトレーナーとの信頼関係の強さによって進化するポケモンであり、トレーナーの手持ちであるなつき進化ポケモンは総じてトレーナーと強い信頼関係がある。葬儀を抜け出すなんて薄情な真似をするとは考えにくいのだが……

 

「……心に傷を負って、人と関わりたくないからこんな森でひっそりと暮らしてるとか、ですかね?」

「それもあり得なくはねぇが……あッチは別の理由を考えているんだが……」

「別の理由?」

「……まぁ、それは良いか。とにもかくにも、エーフィを探さねーと進まんねぇな」

「……ジュナ」

 

 そう言って、隣から声を掛けられたことで、バチコは声をかけた主であるジュナイパーに視線を向けると、ジュナイパーはコクリと頷き、バサバサと翼を羽ばたかせながら飛び立った。

 

「あの、ジュナイパーは何処に……?」

「知らねー。でも、アイツは元々森の中で育った奴だからな。単独行動の方がアイツも動きやすいんだろうな」

「成る程……でも、もしもの時は大丈夫なんですか?」

「チルタリスがいる。それにもしもの事があれば、アイツは直ぐに来るさ」

(凄い信頼関係……)

 

 バチコとジュナイパー。例え一緒にいなくても互いを信頼しあっている言葉に、イルマは心の中で「おぉっ」と感心する。 

 

「……ぽにっ!」

「オーガポン?」

 

 その時、森の中をキョロキョロと見渡していたオーガポンがある方向を指差しながら声を上げた。

 イルマとバチコ、それにフクスローとラルトスとイーブイが何事かとオーガポンが指差した方向を見つめてみると、そこには薄紫色のポケモンの影があった。

 

「あっ、あのポケモン!」

「あの特徴的な宝石と首輪……間違いない、テルアキさんのエーフィだ!」

 

 茂みの中から出てきたその姿は、アキコから渡された写真に映っているエーフィと瓜二つだった。

 

「エフィ……」

「あっ、待って!」

 

 エーフィはイルマ達の姿を見るなり、踵を帰して何処かへと走り去っていってしまい、イルマとバチコは慌てて走り去っていくエーフィの後ろ姿を追い掛けて走りだす。

 しかし、エーフィは身軽でこの森にも詳しいのか、森の木々や茂みの中に身を隠しながら逃げ去っていく為、エーフィとの距離が縮まるどころか遠ざかっていく一方だ。

 

「は、速い……」

「割と鍛えられてるなあのエーフィ……」

 

 やがて森の木々を抜けたところで、イルマ達の方が息切れし始めてその場で座り込んで呼吸を整える。

 

「ここって……森の入り口じゃないですか?」

「しかもエーフィの姿が見えなくなった。入ってくるなってことかよ……」

 

 説得しようにも、見つけた際に逃げられてしまうのならどうしようもない。バチコのジュナイパーの“かげぬい”なら動きを止められるかもしれないが、強行手段に移ったらエーフィは消して心を開いてくれないだろう。

 その時、森の奥から地響きのような音が聞こえてきた。

 

「っ!?今のは……」

「行ってみるぞ!」

「はいっ!」

 

 イルマとバチコは互いに顔を見合わせ、フクスロー達を連れて森の奥に走り出す。

 走ること10分、イルマとバチコは生えている森の中でも木々が少ない場所にやって来ると、そこには巨大なポケモンの後ろ姿があった。

 

「ブロロロロロォオンッ!」

「あれは…!?」

 

 レースカーのような姿をしたポケモンが、8つのシリンダーから煙を吹き出しながら走っている姿を見たイルマはスマホロトムを取り出してそのポケモンの情報を検索する。

 

『ブロロローム。たきとうポケモン。はがね・どくタイプ。毒素と岩の成分を混ぜたガスを8つのシリンダーで爆発させエネルギーを作る』

 

「なんか、あのブロロローム暴れてませんか!?」

「あの子が言ってた『怖いポケモン』ってのは、アイツで間違いなさそうだな」

 

 イルマとバチコが推測を口にする間にも、ブロロロームは大木が生えている場所に向かって突撃すると、その先にいたポケモンが出現させた障壁とぶつかり合い、ブロロロームは障壁から弾かれて距離をとった。

 

「……エーフィッ!」

「あのエーフィ……!」

 

 大木の前に立ち、“リフレクター”でブロロロームの突進を弾いたのは、先程イルマとバチコが見失った筈のエーフィだった。

 エーフィは此方に気づいた様子はなく、ブロロロームの相手に集中しており、その場で姿勢を低くしてブロロロームを威嚇していた。

 すると、ブロロロームは体を高速回転させる“ジャイロボール”でエーフィに突撃するが、ブロロロームとエーフィが衝突した瞬間、エーフィの体が靄のように消え、ブロロロームはそれに驚いて動きを止める。

 

「──フィッ!!」

「ブロッ!?」

 

 次の瞬間、ブロロロームの頭上に現れたエーフィが“サイコファング”を使って攻撃し、それを受けたブロロロームは地面に叩き付けられる。

 エーフィが大木の前に降り立つと、地面に倒れたブロロロームが浮かび上がる。

 

「“みがわり”か……途中で見失うわけだ」

「言ってる場合じゃありませんよ!加勢しましょう!フクスロー、“シャドーシュート”!」

「くふぅ!」

「ブロロッ!!?」

 

 フクスローが影の爪を放ち、ブロロロームは後退する。

 何事かと目を見開くエーフィは、咄嗟に振り向いて、イルマ達の存在に気づく。しかし、エーフィはイルマ達の元に駆け寄ることなく、大木の前で姿勢を低くしてブロロロームを睨み付ける。

 

「……妙だな。コイツ、さっきからこの木の前から動こうとしないぞ」

「確かに……ん?」

 

 その時、イルマはエーフィの後ろで何かの影が動くをの捉えて目を凝らして見ると、エーフィが立っている大木の下の空洞に何かがいることに気付いた。

 

「ブイ……」

「あれは……イーブイ!」

「ぶいっ!」

「そうか……あのエーフィはイーブイを守ってたのか」

 

 そこにいたのは、茶色の毛並みをした原色のイーブイであった。イーブイは怪我をしているようで、大木の幹の下で倒れていた。

 エーフィが頑なに大木から動かない理由は、あのイーブイを守っていたからだろう。野生と思われるあのイーブイがテルアキのポケモンだったエーフィとどういう関係なのかは分からないが、エーフィがイーブイの為にあそこまでしているかは不明だが、これを放っておくわけにはいかないだろう。

 

「やりましょう、師匠!」

「……悪いな。チルタリスじゃあ愛称が悪い、無理」

「さっきと言ってること真逆!?それならイーブイ、ブロロロームの注意を引き付けて!“スピードスター”!」

「ぶいぃっ!!」

「ブロッ!?」

 

 白銀のイーブイがブロロロームに向けて星の弾幕を放ち、それが全弾命中したブロロロームは怯み、イルマの狙い通りイーブイ達に視線を向けると、“ジャイロボール”を発動し猛スピードで突進してきた。

 

「オーガポン、竈の面で“ツタこんぼう”!」

「ぽにぃっ!」

「ブロロンッ!?」

 

 それに対し、紅い姿に変身したオーガポンが炎の棍棒でブロロロームを殴り飛ばし、ブロロロームは独楽のように回転しながら後退する。

 

「ブロロン!!」

「ぽにっ!?」

「オーガポン!」

「ぽに……ぽっ!?」

 

 しかし、ブロロロームは回転して後退しながら口から“ダストシュート”を乱射し、直撃したオーガポンは吹き飛ばされる。スペックの高さ故に、大したダメージにはなっておらず直ぐに立ち上がったかと思ったが、オーガポンは体を蝕む毒に膝をついた。追加効果の毒状態だ。

 

「オーガポン、一度戻って」

 

 戦闘の続行は出来なくはないが、このままではオーガポンの体力が削られながら戦い続けることになってしまう為、イルマはオーガポンをボールに戻し、代わりに自分達がやると言うようにフクスロー、イーブイ、ラルトスがイルマ達の前に立つ。

 

「ブロロロロロォオンッ!」

 

 それを見たブロロロームは、体を縦向きに回転させ、まるで鋼で出来たタイヤのようになって突進する大技“ホイールスピン”を発動し、超高速でフクスロー達に迫る。

 その瞬間、

 

チュドォオオオンッ!

 

「ブロロロロロォッ!!?」

 

 突如飛来した無数の矢が、ブロロロームを貫いた。

 身体中に矢が突き刺さったブロロロームは“ホイールスピン”を強制的に中断されて倒れ、目を回して気絶した。

 目を丸くするイルマ達の前に、一体の鳥ポケモンが降り立った。

 

「ジュナッ!」

「ジュナイパー!?」

「やっと来たのか…遅せぇんだよ」

 

 それは、この森に入った当初にジュナイパーだった。

 ジュナイパーの姿を見たバチコは、感心半分呆れ半分といった表情でジュナイパーの頭にポンッと手を置いた。

 

「でも、どうしてここに…?」

「あの女の子がこの森にいる怖いポケモンに襲われたって言っていた時から、この森にはヤバそうなのがいるって事は分かってたからな。ジュナイパーは先にソイツを探してたんだよ。まっ、あッチ等が先に出くわしたのは予想外だったがな……」

「エフィ……」

 

 バチコの言葉にジュナイパーがコクリと頷いていると、エーフィがイルマ達の元に歩み寄ってきた。

 

「エーフィ……」

『“助けてくれてありがとう。あの暴れん坊は力だけはあるから大変だったんだ”って言ってるな』

 

 礼を言うように頭を下げるエーフィの言葉を通訳するフクスロー。

 彼の話によると、あのブロロロームは最近になって森に迷い混んできたが、かなり気性が荒いらしく、森に住む他のポケモン達を脅しては木の実等を独り占めすることが多々あったらしい。

 

「(オスだったんだ、このエーフィ……)そうだったんだね……そうだ、ねぇフクスロー、エーフィさんに僕らの事説明してくれない?」

『俺ちんは通訳係かっつーの。まぁ、他に任せられる奴もいねーからやってやるけどっさ』

 

 そうしてフクスローはエーフィに向かい合い、話し掛けるような鳴き声を上げ、エーフィはしばらくの間ジッと見つめた後、フクスローの質問に答えるように鳴き声を上げる。

 

『ふむふむ……どうやら、あのイーブイはトレーナーが生きてた頃からの付き合いらしいぞ。トレーナーが死んで、家にいたくないから、この森にやって来てたらしい』

 

 フクスローが言うには、エーフィが守っていたイーブイは、エーフィのトレーナーのテルアキがまだ生きていた頃から、テルアキの屋敷に遊びに来て、進化前であることからエーフィとも親睦を深めていたらしい。そしてテルアキの死後、ある理由で屋敷を飛び出したエーフィは、この森でイーブイと共にひっそりと暮らしていたらしい。

 

 フクスローがエーフィに質問し、エーフィがテルアキの家から飛び出した理由を話そうとした時、バチコはアキコから渡された写真を取り出し、その写真に映っているエーフィと目の前にいるエーフィを見比べる。

 

「……間違いなさそうだな」

「そうですね。この子の額の宝石と首輪、間違いなくテルアキさんのエーフィですね」

「……いや、それじゃない」

「?」

 

 イルマはバチコの言葉に疑問を浮かべ、バチコはエーフィの首にかけられている首輪に触れる。

 

「お前…()()が何か分かるか?」

「何って……あっ、これって……」

 

 イルマも首輪を凝視してから数秒後にある事に気付き、イルマはバチコの顔を見る。

 するとバチコは、スマホロトムを取り出して画面を操作し始める。

 

「師匠、何を……?」

「……祖父に確認しなくちゃなんねー事がある」

 

 バチコは、怪我をしたイーブイに寄り添い、傷口をペロペロと舐めているエーフィを見ながら、小さく呟いた。

 

「この依頼……ちょっと苦い結末になりそうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 一時間後、ブロロロームにより怪我をしたイーブイをポケモンセンターで治療してもらった後、イルマとバチコはエーフィを連れてテルアキの屋敷にやって来ていた。

 依頼を受けた時と同じ応接室で、ソファーに座るイルマとバチコ。そしてフクスロー、オーガポン、イーブイ、ジュナイパーは直ぐそばで控えており、アキコとイルマ達の間に置かれたテーブルの上に座る()()()()()()()()()()エーフィを見て、アキコは表情を明るくした。

 

「あぁっ、エーフィ!良かった、見つかったんですね!」

「エーフィ…!」

 

 対するエーフィは、鋭い表情でアキコを睨む。

 アキコは、そんなエーフィを見てからあることに気付いたように表情を曇らせ、キョロキョロと角度を変えながらエーフィを観察する。

 

「……どうかしましたか?」

「あっ、いえ……その…()()()()()()()でしたか?」

「このままの状態って言うのは……どういう意味ですか?依頼はエーフィを探すことですよね?この額の造形、どう見ても写真に映っているエーフィでしょう?」

 

 イルマとバチコの質問に、アキコは言い淀むように俯いて黙り込むと、バチコが口を開いた。

 

「例えば……貴方が探していたのはエーフィじゃない、とかですか?」

 

 バチコの言葉に、アキコは目を見開く。それを見て、自信の推測が当たっていたことを察したバチコは、テーブルの上にテルアキとエーフィの写真のある部分をトントンと指差しながらその推測を口にする。

 

「アンタが探していたのは、エーフィじゃない。この子が着けている首輪の方だったんだ」

「な、何を言ってるんですか。私は、死んだ父のために……」

「ピンクダイヤモンド」

 

 バチコの言葉に、アキコは目を見開く。

 

「あッチはライジングボルテッカーズに加入する前、デザイナーをしていた。その勉強をしている中で、本の少しだけジュエリーデザインも齧っていた。それで分かったよ。この写真に映っているエーフィの首輪に付けられたピンク色の宝石、これはダイヤモンド全体の約0.01%の産出割合を持つと言われる宝石、ピンクダイヤモンドだ」

 

 ピンクダイヤモンドとは、無色透明ではなくピンク色のダイヤモンドで、希少性の高い宝石だ。ジュエリー市場で流通しているダイヤモンドのわずか0.01%未満と言われ、世界でもメレシーの突然変異種とされているポケモンが産み出せるという例外を除けばごく数か所の鉱山でしか産出されていない希少な物だ。オークションに出品された際には、83億といった落札額を出したとか。

 エーフィの中央部が特殊なパッキングで出来ており、その中に入っていたのがピンクダイヤモンドだったのだ。

 

「アンタの父親と古い飲み仲間だったあッチの祖父に聞いてみた。だが、祖父はテルアキさんとアンタ等が仲良くしているなんて話一度も聞いたことが無いそうだ。生前祖父と一緒に酒場に来て飲む度、遺産の分配を巡った言い争いの愚痴ばかりしていたと言ってた」

 

 エーフィを見つけた時にバチコが祖父に連絡して聞いたことは、テルアキの身辺調査だった。

 バチコが生前のテルアキとの交流は10年近く前が最後であり、当時の事など殆んど覚えていないため、生前の彼を知るバチコの祖父に話を聞いたのだ。その結果、彼女はこの依頼の裏に隠された真意を知り、その推測を口にする。

 

「話を纏めるとこうだ。テルアキさんの死後、遺品の中で尤も高価なのがエーフィの首輪に取り付けられた宝石だと知った。けど、アンタ等は遺産の話に夢中で、エーフィがゴタゴタに紛れて屋敷から逃げ出していたなんて知らなかった。焦ったアンタ達はエーフィを独占しようと躍起になり、テルアキさんの友人の孫であるあッチが所属しているライジングボルテッカーズを見つけたんだろう。フリードはアレでも優秀なポケモン博士だ。エーフィの生態だって把握しているアイツなら直ぐに見つけてくれると思ったんだろう」

 

 最初にあった時にフリードが来ていないことを聞いたことも、親族達がフリードが依頼を受けてれたと勘違いして慌てていたことも、全て辻褄があった。

 

「……あ、当たり前でしょう…!」

「?」 

 

 バチコの推測を黙って聞いていたアキコから、絞り出すような声が聞こえた。

 

「20億よ!生前、鑑定した宝石商がそう言っていたの!その時点で20億も値打ちのある宝石だったの!父の遺品の中で、何よりも価値がある物よ!なんとしても見つけ出さなきゃと思うのは当然でしょ!手段なんか選んでられないわ!」

 

 依頼内容の説明の時とはまるで違う、鬼気迫る様な表情で本音を口にするアキコ。

 それを聞き、イルマもバチコも顔をしかめる。

 

「そうよ!そもそも、父は何でそんな高価な物を首輪なんかに付けたのよ!」

 

 続いて出てくるのは、エーフィに20億もの価値があるという宝石を首輪に付けていたという父への不満。

 長らく面識の無かったバチコと、そもそもテルアキとの交流すらないイルマにそんなこと聞かれても正解が帰ってくる筈がないが、バチコは不快そうな表情で口を開く。

 

「……そんなのはあッチ達には分かんねーが、妥当な理由としてはエーフィの為だろうな。ピンクダイヤモンドの石言葉は“永遠の愛”と“完全無欠の愛”、パートナーとの絆や愛を表す意味がある。テルアキさんとの絆の証だったんだろうよ」

「……ッ、正気じゃないわ!いくらする宝石だと思ってるの!?何でそんなバカな事を!」

 

 そう言ったところで、応接室の向こうからドタドタという騒がしい音が聞こえてきたかと思うと、勢い良く扉が開かれ、アキコの親族達が応接室に入り込んできた。

 

「エーフィが見つかったんだって!?」

「汚いぞ、姉さん!独り占めしようとして!」

「抜け駆けは許しませんわよ!」

「アンタ達、何を言っているの!?あのピンクダイヤは……」

 

 

バァアンッ!!

 

 

 その時、バチコの推測を話し始める辺りからずっと黙り込んでいたイルマが机の上を叩き、応接室全体に轟くような音がする。

 その音に、アキコ達はビクッと身を震わせてイルマの方を振り返り、バチコ達は静かにイルマに目を向けた。

 

「…………いい加減にしてください」

 

 数秒間の沈黙の後、イルマが重々しく口を開く。

 

「貴方達のお父さんは、お金なんてどうでも良かったんです!ただ、エーフィが喜んでくれると思ったからピンクダイヤを渡した……それって、そう思ってくれる人が誰もいなかったからじゃないんですか?なのに、貴方達の頭の中にあったのはお金の事だけだった……貴方達には、パートナーを喪ったエーフィの気持ちを、少しでも考えなかったんですか!?」

 

 イルマの言葉に、親族一同は返す言葉が見つからないように視線を右往左往させる。

 それを見たバチコは呆れたように溜め息を吐きながら、机の上に乗るエーフィの頭を撫でた。

 

「エーフィは見つけたが、宝石はなかったんだ。この依頼、無かったことにさせてもらう。勿論金もいらない。その代わり、このエーフィはアンタ等には渡さない」

「えっ、で、でも……」

「渡したところで、どうせ貴方達はエーフィをほったらかして遺産争いしかしないでしょう?エーフィは、エーフィの大事なものがある。例えそれがこの子のパートナーの家族だったとしても、この子の人生を決める権利は誰にもない」

「くふぅ…!」

「ジュナ……」

「ぽにいっ!」

「ぶいぃ…!」

 

 バチコの言葉に反論しようとするアキコに、目付きを鋭くしたイルマはピシャリと言い放つ。そしてイルマの言葉に同意するように、フクスロー、オーガポン、イーブイはアキコ達に敵意を露にし、ジュナイパーは静かに彼女達を睨み付ける。

 反論の言葉が見つけられず親族達は言葉をつまらせるが、直ぐにその内の一人が声を上げた。

 

「し、しかし!何の収穫無しでは帰れん……!」

「……はぁ、そんなに宝石が欲しいなら、勝手にしてください」

 

 そう言って、イルマはジャケットからあるものを取り出してそれを見せた。

 それは、中央部にピンク色の宝石を嵌め込んだハート型の首飾りであり、それを見たアキコ達の顔が明るくなる。

 

「あぁっ!首輪!!あったの!!?」

「そ、それの首輪を私に!」

「いいえ、私です!」

 

 一刻も早くその首輪を手に入れようと騒ぎ出す親族達。それを見たイルマは首輪を握り締めてツカツカと靴音をならしながら窓際に歩み寄ると、ガラッと音を立てて窓を勢い良く開けた。

 

「オーガポン!」

「ぽーにぽにぽにぃ!(かーっとばすべ!)」

 

 イルマが振り返ると、そこには碧の面を被り、愛用の棍棒を野球のバッターのように構えるオーガポンがいた。

 その場にいた全員がイルマのやろうとしている事を察し、エーフィと白いイーブイは目を見開き、バチコとジュナイパーとフクスローは呆れたような溜め息を吐き、アキコ達は慌ててイルマを止めようと飛び出すが、時は既に遅く、イルマはオーガポンに向けて思いっきり投擲した。

 

「ぽにいっ!!」

 

カッキィイィィィィィンッ!!!

 

「「「「「あぁあああーーーーっ!!!!!」」」」」

 

 イルマが投げた首輪を、オーガポンはプロのメジャーリーガー顔負けのフルスイングで打ち上げ、首輪は流星のような勢いで窓の外へと飛び出し、そのまま空へとキランッ!という音を立てながら星となった。

 親族達は絶叫しながら外へ飛び出して首輪を追いかけ、バチコは窓の外を見ながら呟く。

 

「20億もする宝石がサヨナラホームランかぁ……それで?エーフィの大事な首飾り、どうするんだ?」

「………あっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「エーフィ!」

『“ありがとう、お陰であの家との縁を断ち切れたよ”だそうだ』

「それはよかったね……」

 

 エーフィと遭遇した森の前。

 首輪を追いかけて行ったアキコ達の屋敷を後にしたイルマとバチコは、エーフィを送り返すために、彼がイーブイと共に暮らしていた森の前まで彼を送り届けに来ていた。

 尚、あの時の状況を終わらせるためとはいえエーフィの大事な首輪をサヨナラホームランしたイルマは『ごめんなさい』と書かれたプラカードを首に下げながら正座しており、森の前に立つエーフィはイルマ達に礼を言い、フクスローがその言葉を通訳する。

 その時、町がある方角からポケモンの鳴き声が聞こえてきた。

 

「ブイ、ブーイ!」

「ラル~」

「ん?ラルトスにエーフィと一緒にいたイーブイじゃねぇか」

「ラルトス……いないから心配したよ……」

 

 そこにいたのは、イルマの手持ちであるラルトスと、エーフィに守られていた原色のイーブイであった。イルマがプラカードを下げたままラルトスを抱き上げ、野生のイーブイはエーフィの元に歩み寄ると、首元のモフモフしている毛の中からあるものを取り出した。

 

「……イーブイッ!」

「!エーフィ……」

「その首輪、エーフィの……」

「なんでこのイーブイが!?」

 

 それは紛れもなく、ついさっきイルマとオーガポンが空の彼方に飛ばした筈の、ピンクダイヤが嵌め込まれた首輪だった。

 

「ブイ、ブイブイブーイ!」

『ラルトスに頼んで敷地内に忍び込んで覗いてたんだとよ。そんでイルマが首輪を投げるのを見て、探しに行ってたんだと』

「あっ、“テレポート”で首輪をキャッチしたんだ」

 

 イーブイの説明によると、ポケモンセンターで治療を受けた彼女はエーフィが心配になってラルトスに協力を仰ぎ、ラルトスの“テレポート”で屋敷の敷地内に潜入して、窓からイルマ達のやり取りを見ていたらしい。そして、イルマが窓からエーフィの首飾りをホームランするのを見て、ラルトスの“テレポート”で空を飛び続ける首輪を追いかけて、やっとの思いで取ってきたのだと言う。

 

「……エーフィ」

「ブイブイッ」

 

 首輪を“サイコキネシス”で受け取ったエーフィは、茶色のイーブイにお礼を言うように笑顔を見せながらイーブイの頭を舐め、茶色のイーブイは嬉しそうに尻尾を振りながらエーフィにスリスリと頬擦りする。

 

「……ぶい」

「……」

 

 その光景を見ていた白銀のイーブイは、二匹をジッと眺めながら小さく鳴き声を上げ、イルマはそんなイーブイを見て、その場でしゃがみこんで優しく頭を撫でてやった。

 

 その後、エーフィと茶色のイーブイはイルマとバチコに礼を言いながら森の奥へと去って行き、森の入り口の前でその後ろ姿が見えなくなるまで2体を見送っていたイルマとバチコは、踵を返して町の方へと歩き出す。

 

「……あの2匹、大丈夫ですかね」

「…さーな。ここから先はアイツ等の問題だ」

 

 イルマはチラリと森の方を振り返りながら呟く。

 あの森には強いポケモンも多いので大したトレーナーは近付かないと聞いているが、そんな森にあの二匹を残して良かったのか、あるいはアキコ達が首輪を探してここまでやって来るのではないかと。

 

「……でも、嫌な人達でしたね」

「そう言うもんだろ。自分の欲望のためなら、何でもする悪魔みたいな奴もいるもんさ」

 

 バチコの言葉に、イルマはシュンと肩を落とす。見れば、似たような理由で追い回されたラルトスや、進化系であるために他人事とは思えなかったイーブイ、そして人間に嫌われ続けていたオーガポンも似たような雰囲気だ。

 何となくイルマやイーブイ達の様子にを見て、バチコは思い空気を振り払うように口を開いた。

 

「……あ~、慣れないことしたら肉の気分になっちまったよ。イルマ、焼き肉でも食いに行くぞ」

「あっ、良いですね焼き肉!動き回りましたし!」

「因みにお前の奢りでな」

「ええっ!?」

 

 焼き肉と聞いてパッと表情を明るくするイルマに、バチコはバッサリと切り捨てながら先を歩いて行き、イルマは全額負担と言う言葉に(払えるだけの金は持っているが)慌ててその後を追いかけていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ところでよ。イル坊、お前レポートのための観察はどうしたんだ?』

「………………あっ」

 




~今回のお話~
 元ネタは『風都探偵』16~18話の『cは何処(いずこ)に/』から。
 切っ掛けは、アノクサの話を見た時、ポケモンハンターがいるなら、こういった人間がいてもおかしくないだろうなと考えて、書きたいと思から。


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