魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター 作:MTHR
今回は少し短めです。
イルマとリコが、物資の補給と称したデート(?)でイルマの天然な口説き文句を言ってリコを誑かしていることにキレたニャオハがフクフロー立ち枯れ必死に止めたり、女の子の依頼で船で引っ越しをしようとしているその子の友達に手紙を届けたりした後、イルマは町の中で出会ったジヘッドが、彼を捨てたトレーナーへの怒りによりジヘッドがサザンドラに進化し、暴走するサザンドラをイルマが落ち着かせた後、トレーナーよ決別を果たしたサザンドラがイルマのポケモンになった日の夕方。
ブレイブアサギ号の展開されたバトルフィールドの上に、二人の男が向かい合っていた。
そこに立っていたのは、イルマとフリードの二人だった。
「リザードン、行くぞ!」
「リザァ!」
フリードの隣に立っていたリザードンがバトルフィールドに立ち咆哮を上げる。
それを見たイルマはモンスターボールを投げ、つい先日仲間になったポケモンをモンスターボールから呼び出した。
「頼んだよ、サザンドラ!」
「サザァアアアアッ!!」
ボールから出てきたサザンドラは、翼を広げて滞空しながら、リザードンに負けず劣らずの咆哮を上げる。
「イルマ、頑張って!」
「サザンドラの初陣かぁ!見逃せないね、ホゲータ!」
展望室の前では、リコとロイといったライジングボルテッカーズの面々がバトルの行く末を見守っている中、審判を勤めていたバチコが声を上げた。
「それではバトル、始め!」
「リザードン、“かえんほうしゃ”!」
「サザンドラ、“りゅうのはどう”!」
リザードンが強力な炎を吐き、サザンドラは竜のエネルギー派を放って迎え撃つ。ぶつかり合った技同士が爆発を起こす。
「“ドラゴンクロー”!」
「リザ!」
リザードンは翼を広げて飛び上がり、竜の力を宿した爪を生成して切りかかる。
「サザンドラ、かわして!」
「……」
イルマはサザンドラに回避を指示すると、サザンドラはチラリとイルマを一別した後、全身に青いオーラを纏い、なんとリザードンに突撃したのだ。
「サザンドラ!?」
「あれって“ドラゴンダイブ”!?」
「何でイルマの指示を無視してるの!?」
サザンドラのまさかの行動にイルマだけでなくリコ達も驚愕するなか、竜のオーラを纏った突進とリザードンの竜の爪が激突し、サザンドラとリザードンは爆発の衝撃波に飛ばされ、各々のトレーナーの前で浮遊して止まる。
「サザ……ッ!」
「リザ……」
効果抜群のドラゴン技を受けたサザンドラは痛みに顔を歪めるが、リザードンもかなり聴いていたのかサザンドラとぶつけ合った腕を押さえていた。
(突進と爪じゃあ前者の方が重いとは言え、リザードンと正面からぶつかってダメージを与えるとは……トレーナーに恵まれなかったらしいが、中々の逸材だな)
「リザァ」
その様子を見て、フリードとリザードンはサザンドラの並々ならぬ実力に目を見張る。サザンドラ自体は元々覚える技も豊富で攻撃や特攻も高い強力なポケモンであるが、歴戦のポケモンであるリザードンとの正面衝突でダメージを与えられるのは、バチコやエクスプローラーズ幹部のような強者ばかりだ。だがイルマのジヘッドは、つい先日進化したばかりでありながらリザードンにダメージを入れられる程の実力を持っていた。
ジヘッドの生態による弊害で前のトレーナーが育成を面倒臭がったせいで捨てられたらしいが、しっかり育成していればもっと凄いことになっただろうなも考える。イルマも中々の逸材と出会えた様だなとも思う。
(……だが、まだイルマの事を信じきれていないのが問題か)
同時に、サザンドラが抱えている問題も見抜いていた。元々スペックが高いゆえにそれを克服すればサザンドラとイルマは大きく成長できるだろう。
「リザードン、“かえんほうしゃ”!」
「リザァーーッ!」
「サザンドラ、“あくのはどう”」
「サザァッ!!」
「って、あぁっ、また!!」
バトルに意識を戻したフリードの指示を聞き、リザードンが強力な炎を吐き、それを見たイルマが迎撃を指示するが、サザンドラは三つの頭の口を開き、その牙に炎を灯して食らいつく“ほのおのキバ”を発動してリザードンに飛びかかったのだ。
しかし、突っ込んでしまってはリザードンの炎を回避できるはずがなく、リザードンの強力な炎を浴びてしまうが、サザンドラは炎を浴びながらもリザードンに突撃していき、距離を積めていく。
「言い根性だな、“ドラゴンクロー”!」
「ガウゥッ!」
「サザッ!?」
強力な攻撃を前にしても引くどころかとつげきしてくるサザンドラの度胸を誉めつつ、フリードは反撃を指示。リザードンは再び竜の爪を振り下ろし、サザンドラを叩き落とした。
「ドラァ……!!」
「サザンドラ、言うこと聞いて!“りゅうのはどう”!」
「サザァッ!!」
「サザンドラ!!」
イルマが指示を出すが、サザンドラは言うことを聞かず、“ドラゴンダイブ”を発動して飛び上がる。全身に青い竜のオーラを纏ったサザンドラが、一気にリザードンへと向かっていく。
「リザードン、“エアスラッシュ”!」
「リザァ!」
「サザァッ!?」
リザードンが無数の風の刃を放ち、それが全てヒットしたサザンドラは“ドラゴンダイブ”を強制的に中断される。
「止めの“ドラゴンクロー”だ!」
「リザァアア!」
「ドラァァアアアアッ!!?」
“エアスラッシュ”の隙をついて接近したリザードンが、竜の力を宿した爪でサザンドラを一閃、何度も効果抜群の技を受けたサザンドラは、ついに限界を向かえ、イルマの前に仰向けになって墜落した。
「サザンドラ!?」
「ドラ……」
イルマが慌ててサザンドラに駆け寄ると、サザンドラは目を回して気絶しており、どう見てもこれ以上のバトルは不可能であった。
「サザンドラ、戦闘不能!リザードンの勝ち!」
審判を勤めていたバチコの言葉で、イルマとサザンドラの特訓は終了し、リコとロイはイルマとサザンドラに歩み寄る。
「イルマ、大丈夫?」
「大した怪我はないよ」
「でもサザンドラ、イルマの指示を全然聞いてなかったね……」
「うん。でも、何で……」
イルマ自身、ゲットしたばかりのサザンドラでフリードとリザードンを相手に勝てるとは思っていなかったが、あまりにも一方的なバトルになってしまった原因である、サザンドラが全く指示を聞かないという事にイルマは頭を捻る。
サザンドラはせっかちな性格で時たまイルマの頭に噛みついてくることはあるが、常に暴れているわけではないのに、バトルの時は自分の好きなように暴れている感じがしたのだ。
そんなイルマに、フリードが歩み寄った。
「恐らく、サザンドラがまだ人間を信じきれていないんだろう」
「サザンドラが?」
「でも、サザンドラは自分からイルマにゲットされたのに?」
「ゲットしたポケモンがトレーナーの指示を無視して勝手にバトルをする事例は、結構あるんだ。だがイルマを嫌悪したりぞんざいに扱っていない所を見る限り、もしかしたらサザンドラはイルマに可能性を見出だそうとしているのかもしれないな」
「可能性…?」
イルマ達は頭にクエスチョンマークを浮かべながら首をかしげるが、フリードは笑みを浮かべて「自分で考えた方がいい」と答える。
取り敢えずサザンドラをモンスターボールの中に戻したイルマは、サザンドラのボールを眺める。
「人間を信じきれていない、かぁ……」
「いつか、サザンドラと仲良くなれると良いね」
「うん……」
リコの言葉に答えながら、イルマはサザンドラのボールをポケットの中にしまうと、スマホロトムが飛び出し、マードックから夕食ができたという連絡が来て、イルマ達は船内に戻っていった。
1時間後。
「は~、美味しかった!」
「ホゲゲ!」
「皆、今日も良い食べッぷりだったなぁ。今食後の飲み物を用意したから、好きなのを選んでくれ」
「マッホ」
「ポトー!」
「ツボツボ~」
ミーティングルームでマードックの作った夕食を完食したイルマ達のもとに、コーヒーを淹れたマードックが、マホイップとポットデスとツボツボと共にやって来た。
「僕、ツボツボジュース!」
「僕はコーヒーで」
「私は…紅茶かな」
ロイとイルマとリコに続き、フリード達も飲み物をリクエストし、それに応えたマードックがテーブルに飲み物を並べていく。
「よし、マホイップ。仕上げを頼むぞ」
「マホー!」
テーブルの上に乗ったマホイップが、体からクリームを出して、コーヒーを注文した面々のカップにクリームを盛り付ける。
そして、最後にイルマのコーヒーカップにクリームを乗せようとしたら……
「……ズズッ」
「マホ?」
「イルマ、コーヒーそのまま飲んでる!?」
「え?」
席に座ったイルマは、コーヒーカップを手にして中に入っているコーヒーをそのまま飲んでいたのだ。
その様子を見てマホイップは不思議そうな表情で首をかしげ、ロイは軽く驚いたように声をあげると、イルマはカップから口を離して、手に持っていたカップを見る。
「イルマ、コーヒーはあんまり得意じゃなかったよね?」
「……あれ?そういえば飲めてるや」
昔が昔だった為、味の好き嫌いは特に無いイルマだが、流石に苦いものは好んでいないのか、マードックのコーヒーを飲む時は必ずマホイップのクリームを乗せていた。
イルマ自身、なぜ突然コーヒーをそのまま飲めるようになったのかが分からない様子であり、不思議そうな表情をしながら、コーヒーが入っているカップを見つめるが、「まぁ美味しく飲めるなら良いや」と考え、再びカップに口を付けた。
その後、入浴を済ませて自室へと戻ったイルマは、ベッドや机の上で寛ぐフクフロー達を見て、あるボールを取り出してそれを投げ、中にいたポケモンを出した。
「サザッ」
それは、先程リザードンにやられて気絶していたサザンドラであった。気絶していたが、既に目を覚ましたらしく、キョロキョロと興味深そうに部屋を眺めている。
「あのねっ、サザンドラ。ここが僕たちの部屋だよ。今日からここが君の部屋でもあるから、好きに使ってね」
「くふぅ」
「ぽにっ!」
「ラル」
「ぶーい!」
「サザ……?」
イルマの言葉に、サザンドラは気ままに過ごしているフクフロー達を見ていると、イルマはクローシュが被せられたトレーをサザンドラに差し出した。
「これ、マードックさんに頼んで作ったんだ」
「…!」
イルマがクローシュを開けてみると、それはワンホールのチョコレートケーキだった。その上には、チョコペンで『サザンドラ。ようそこライジングボルテッカーズへ!』と書かれていた。
サザンドラはマジマジとそのケーキを見つめていると、フクフロー達が彼に声をかけた。
『ほら、食ってみろ。あのイル坊がつまみ食いしないで、マードックの手伝いして作ってたんだからよ』
「ぽにっ、ぽにぽにぃ!(おら達がこの船に乗った時も、これ出してくれたんだよな)」
「ラルルゥ♪(イルマさんの歓迎の贈り物ですね♪)」
「ぶい、ぶーい!(美味しいんですよ、私もこのケーキ大好きです!)」
「……」
フクフロー達の言葉を聞き、サザンドラは3つの大きな口を開け、ケーキをパクリと食べる。顔が3つあるゆえか、あっという間にケーキはなくなってしまった。
「………サザ」
『上手いってよ』
「ホント!?よかったぁ!」
フクフローが訳したサザンドラの感想を聞き、イルマがパアッと顔を明るくする。その笑顔を見たサザンドラは奇妙な居心地の悪さを覚え、そのまま床に丸くなると、目を閉じてしまった。
「眠くなったのかな……?」
『いや、照れ隠しだろ』
「ぽにぽに」
「ラルル」
「ぶい」
そう話し合っていると、イルマも眠気が誘われてきたのか、大きく欠伸をして、ケーキがなくなった皿を片付け、ベッドの上で横になる。
「なんか、今日は色々あったなぁ……」
『だよなぁ。あたらしい仲間もそうだけど、嬢ちゃんとデートしたりなぁ』
「デッ、デートって……違うから!ただ二人でお出かけしただけだから!」
『それをデートって言うんだけどな……(まっ、
「でも……サザンドラに認めもらうためにも……これからもっと頑張って……スヤァ……」
『寝るの早ぇーは……ふむ、イル坊も色々と考えてるんだな』
話し合っているうちに、イルマはあっという間に夢の世界へと旅立っていった。
その様子に呆れたように溜め息を吐いたフクフローは、ベッドの上で穏やかな顔で眠るイルマから、部屋の床で丸まっているサザンドラに視線を移した。
『……で、オメーはどうするつもりなんだ?』
「……サザ、ドラァ?(……なんだ、文句でもあんのかよ?)」
フクフローが尋ねると、サザンドラは素っ気ない態度で声を上げる。
『別に、そんな事は言わねーよ。お前の過去も色々あったみたいだし、何の考えがあって自分からイル坊の仲間になったのかもしらねー。けど、お前にはお前なりに、イル坊を信じたくなったから着いてきたんだろ?』
「……」
フクフローの言葉に、サザンドラは黙り込む。サザンドラはまだモノズだった頃に、森の中で平和に暮らしていた中でよっちゃんにゲットされた。しかし、ゲットされてから掛けられていたのは「早く進化して強くならないか」という事ばかりだった。しかし、イルマは瀕死になっていた自分を常に心配し、今までサザンドラが向けられなかった目を向け続けていた。だからこそ、サザンドラはよっちゃんを見限り、イルマにゲットされることを選んだ。そして少し接してみただけでも、前のトレーナーと今のトレーナーをしみじみと感じていた。よっちゃんのもとにいた頃の食事は常に安いポケモンフーズばかりだったのに、ついさっき食べたケーキは、今まで食べてきたものの中で一番と言える程の味だった。
すると、眠りに入ろうとしていたオーガポン達が、サザンドラのもとに歩み寄った。
「がおっ、ぽにぽにぃ!(大丈夫だべ、イルマはおめぇの前のトレーナーとは違って、わや優しいんだ!)」
「ぶーい、ぶいぶいっ(強いとか弱いとかじゃなくて、常に私達と同じ目線に立って、一生懸命になってくれるんですよね)」
「ラルル、ラールルル(私達も、そんなイルマさんの事が好きで、自分からゲットされたんですよね)」
オーガポン、イーブイ、ラルトスが、しみじみと思い出に浸るようにサザンドラに話す。
実際、手持ちではないイーブイは兎も角、イルマはこれと言ってポケモンを自分から手持ちにしたいと言ったことはない。オーガポンの時もラルトスの時も、ポケモンの方から仲間になりたいと志願したのであり、イルマはそれを受け入れてくれた。
イルマのポケモンには、何らかの事情を抱えたポケモンが多い。そんな彼女達にとって、常にポケモン目線で立って考えてくれる。それは、彼の幼馴染みであるリコも同様である。だからこそ、イルマ達の周りには自然とポケモンがやって来きて、いつの間にか絆を結んでしまうのだ。
「……サザ、ドラァ。サザン(……お前らがイルマをどう思ってるかは分かったが、それとこれは話が別だ。アイツを認めてやるかどうか、それはオレが決める)」
『まっ、強制してる訳じゃねーからな。それに、イル坊ならそのうちお前を認めさせることは出来るだろうしな』
「サザン?(随分確信してんじゃねぇか。その根拠は何だ?)」
『…お前が思うより、
それだけ言うと、フクフロー達も各々の寝床に行き、目を閉じて眠り始めた。
「………ここ、何処?」
イルマは今、不気味な空間にいた。
辺りには建物も何もなく、足元から吹き上がる赤黒い色の霧には『殺』『凶』『怒』『死』といった『悪意』を連想させる文字が漂っている空間だった。
イルマがその光景に戸惑っていると、背後から足音が聞こえてきて振り替えると、イルマはその足音の人物の顔を見て、目を見開いた。
「貴方は……!?」
その瞬間、イルマの足元から、『悪意』を連想させる文字が漂っている靄が吹き上がり、まるでイルマの動きを封じるように纏わりついたのだ。
同時に、イルマの意識は闇に消えていき……
翌朝。
リコとニャオハは朝の日差しに目を覚まし、私服に着替えて廊下を歩いていると、その先に後頭部を擦っているイルマの背中を見付けた。
何故か何時ものように髪を一つに結っておらず、髪を纏めてない時は外ハネしている筈の髪が内側にカールされている事に違和感を抱きつつも、リコはイルマに声をかけた。
「イルマ、おはよう。フクフロー達は一緒じゃないの?」
「……せぇ」
「………へっ?」
「ニャ?」
リコとニャオハは、イルマから聞こえてきた台詞に、目を丸くする。
イルマは頭を抱えて、リコ達の方を振り向き、口を開いた。
「朝っぱらから、うるせぇっつったんだよ。リコ」
髪の色が紫がかった青色に変わり、いつもは外ハネしている髪は内側に丸くカールし、アホ毛も逆向きになっている。心なしか、鼻もすこしシャープになっているイルマと思わしき人物は、とても鬱陶しそうに、切れ長な目でリコを睨み付ける。
しばらくの間、豹変したイルマに呆然としていたリコとニャオハだったが、数秒後……
「えぇえええええええええええええええええっっ!!!!????」
リコの絶叫が、ブレイブアサギ号に木霊した。
~言うことを聞かないサザンドラ~
元ネタはポケットモンスターベストウィッシュのアイリスのカイリュー。
~豹変したイルマ君~
元ネタは『仮面ライダーリバイス』のカゲロウや、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』の闇ジロウを参考にしました。性格そのものは悪入間くんと大差はない。
感想、評価お待ちしております。