魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター   作:MTHR

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 この小説を楽しんで読んでいただいている皆様の感想の中から、オリオ、モリー、ドットの本編でのヒロイン入りの希望のお願いを何度かいただいた為、特にモリーやオリオは年齢的に難しいとは思いますが、この3人のイルマハーレム入りを決定しました(ハーレムENDにするつもりはありません)。

 今回は久し振りにアニメ原作のお話に戻り、カヌチャン回となります(イッカネズミの回は飛ばしております)。


55話 カヌチャンのハンマー

 イルマの中に、ワイルドな性格で毒舌なもう一人のイルマ──悪イルマが存在していた事が発覚し、その悪イルマによってブレイブアサギ号の居候にミミッキュとボクレーが加わってから、数日が経過した。

 

 イルマが元に戻った日の夜に、ブレイブアサギ号は嵐に襲われ、その翌日にモリーがポケモン達の健康診断をしていると、ブレイブアサギ号の外に本来2ひき一緒にいるはずの【ワッカネズミ】が傷だらけで倒れているのを発見し、リコが相方を探していると、実はワッカネズミはその進化系である【イッカネズミ】であることが判明し、ミブリムが“いやしのはどう”を習得し、イッカネズミがブレイブアサギ号に住み着くようになった後日の事。

 

『じゃあ、本当に覚えてねーのか?悪くなったお前の事』

「いや、本当に全然覚えてなくて……」

 

 ドットがぐるみんの配信を行うなかで機材が爆発し、リコが慌ててドットの部屋に駆けつけている中で、展望室の前の階段に座るフクフロー、オーガポン、ラルトス、イーブイ、サザンドラが、ウイングデッキの上で正座するイルマに、先日の悪イルマの事について尋ねるが、悪イルマであった時の記憶が全てなくなっているイルマは、相棒の言葉に首をかしげるしか出来ない。

 

『つまるところ、お前の中には、もう一人のお前がいるってことだな』

「えー……全然記憶にない。悪い方の僕ってどんなだったの?」

「ぽにぽに!(かっこよかったべ!)」

「ぶい……(ちょっと迫力がありましたよね……)」

「ラールルル(あの人のお陰でお“アイスブレイド”を習得できましたね)」

「……サザン(……中二っぽかったな)」

『……だそうだ』

「本当にどんなだったんだろう……」

 

 フクフローが訳した言葉に、イルマは「悪イルマ」と名乗るもう一人の自分の人柄が気になって頭を抱える。

 その時、イルマのスマホロトムにフリードからの着信が入り、イルマはポケモン達を引き連れてミーティングルームへと向かっていった。

 

 

 

 

 

「次の停泊先は、テツロンタウンだ。物資の補給を頼む」

「いいね、テツロンタウン!船の補修に使う鉄が足りなかったんだ~」

「テツロンタウンって?」

「機械なんかの工業製品で有名な町だよ」

「成る程」

 

『ロトロトロト……ロトロトロト……』

 

 その時、リコのスマホロトムが飛び出したかと思うと、画面にドットの顔が映った。

 

『町に行くなら、マイク買ってきて!コンデンサータイプでカーディオイド、単一指向性のを頼む!』

「コンデ……ティオ?」

 

 早口言葉のような速度でマイクの注文をするドットだが、イルマ、リコ、ロイの3人は目を丸くするしかない。

 

「ちょっと待って。何言ってるのか分かんない……」

『マイクの種類だよ!配信できなくて困ってるんだ!』

「私、その辺疎いからなぁ。う~んと……その、もし良かったらドットも一緒に来ない?」

『えっ?いや、それは、ちょっと……』

 

 リコが同行するように提案した途端、スマホロトムに映るドットの表情が気まずそうなものになる。

 

「え?でも、自分で買った方が種類も分かるし効率的なんじゃ……」

「そうだよ!一緒に行こうよ!」

「ダメダメ!ドットにはやってもらうことが沢山あるんだ!ましてや町で買い物なんて……」

『むむむ……』

(僕が初めて一人で買い物行く時もこんな感じだったなぁ……)

 

 イルマとロイが同行を進めるが、マードックが否定の声を上げ、それを聞いて悔しそうな声を上げるドットを見て、イルマは幼い頃の自分も一人で買い物に行こうとしたら、祖父にマードックよりも物凄い心配をされたことを思いだして苦笑いする。

 

 そして、ライジングボルテッカーズはテツロンタウンから数キロ程離れた場所にある砂漠にブレイブアサギ号を停め、イルマ、リコ、ロイが甲板に出て、離れた先に見えるテツロンタウンから立ち上る煙を見てロイがテンションを上げる中、突如船内に続くドアが開き、意外な人物が現れた。

 

「ドット!?」

「買い物、一緒に行く」

 

 こうして、ドットの初めてのお使いが開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、イルマ、リコ、ロイ、ドットの四人はテツロンタウンへとやって来ていた。

 ドットはお目当てのマイクを入れたビニール袋を持ちながら、様々な工場や鋼タイプのポケモンの姿を見かける町並みを歩く。

 

「マイク、無事に買えて良かったね」

「まぁ、これくらい当然だし」

「ついさっきまで自信なさげだったのに……」

「う、うるさいな。さっきまでは行く気がなかっただけだ」

 

 気分上場といった様子のドットにイルマが苦笑し、ドットはスマホロトムを手にしながら町の中を進んで行き、リコ、ロイ、イルマの3人は彼の行き先を知らないままその後ろを付いていくと、様々なものが店頭に並べられた場所にやって来た。

 

「ねぇねぇ、ここは?」

「専門エリアだよ。よりマニアックなものが売ってるんだ」

「面白そう!」

「行ってみよう!」

「あっ、ちょっと……」

「迷子にならないようにね~」

 

 リコとロイが、ニャオハとホゲータもクワッスとオーガポンを連れて専門エリアを進み、イルマとドットは苦笑しながらも二人と四体の背中を追いかけた。

 そして、リコとロイはある店の前で、店に並べられたうちのひとつをマジマジと眺めていた。

 

「これって、昔のテレビ?すごく大きいけど……中に何か入ってるのかな?」

「アナログテレビだね。アナログ放送は70年前から12年前までだから、これは地上デジタルチューナーを接続してるやつかもね」

「凄い、イルマ詳しいんだ!」

「昔、棄てられた家電製品とか直さないと死ぬ生活してたからね~。多少の知識は頭に入ってるんだ」

「……それ、イルマが考えてるみたいに軽い話じゃないからね?」

 

 店頭に並べられている品々を眺めながら軽い感じで言っているが割と笑えない話をするイルマにリコがツッコミをいれる。

 

「あっ!あそこにも何かある!」

「何々?」

「遠くに行きすぎないようにね~」

 

 ロイとリコが他の店へと走りだし、イルマが二人に迷子にならないように注意をする中、それに気づいていなかったドットは、店の中からピンク色のマイクを見付けて手に取った。

 

「これは……動画の小道具に良いかも……うん、これください!」

「まいど」

 

 店員にお金を払ってマイクを受け取ると、リコとロイが見ていたテレビが置かれていた方を見てみると……そこにいたのは、イルマと彼のポケモン達だけであった。

 

「って、リコ?ロイ?」

「リコとロイ君なら、向こうに行ったよ」

「勝手に動くなって言ったのに……」

 

 キョロキョロと探すドットに、イルマはリコ達が他の店に行ってしまったことを伝えると、ドットはため息を吐きながら頭をかく。

 

(特に、イルマと二人きりとか気まずいし……)

「?」

 

 ドットはイルマを見てさらに深いため息を吐き、イルマは首をかしげる。

 イルマとドットは同い年だが、リコやロイと比べるとあまり接点がない。イルマはリコとロイのように積極的に話しかけては来ないので、船の中で直に顔を会わせるのはキッチンで偶然鉢合わせた時くらいだ。

 それともう一つ、ドットは彼に対してやりにくいと感じている部分があった。

 

(コイツ……バトルの腕前は確かなんだけど、色々と訳が分かんないんだよな。フクスローが喋るだの、突然性格が変わるだの……)

 

 ドットは、イルマのバトルの腕自体は高く評価している。

 手持ちのポケモンが、キタカミの里で伝説と呼ばれているオーガポンや、珍しい色違いのラルトスである(イーブイも色違いだが手持ちではないし、サザンドラは未だに言うことを聞かないので微妙な所だ)という事もあるが、イルマがウイングデッキでフリードやロイとバトルしている様子を何度か見たことはあり、その中でもフクスローがよく使う相手の技を掴んで投げ返す独特の戦法や操られたレックウザを相手に見せた“シャドーシュート”と呼ばれるオリジナル技、オーガポンの状況に応じてお面を交換することによる臨機応変なバトル、ラルトスも“テレポート”と“ゆびをふる”による変幻自在の攻撃や一度だけ見せてもらった“れいとうパンチ”を応用した“アイスブレイド”など、個々のポケモン達の強さだけでなく、それを利用したテクニカルなバトルスタイルや、逆境を覆す勝負強さは中々のものである。

 しかし、イルマは頻繁にリコを口説いているような台詞も行動を無自覚で行い続けており、六英雄のラプラスと黒いレックウザの騒動が終わった後には、突然イルマが、相棒のフクスローが喋ったなどと言い出した時は彼の正気を疑ったし、つい先日には突然性格が変わってリコに対してかなり大胆な行動をしていた。後に彼が二重人格者だと判明したのだが、それを知ったとしてもドットは彼が異常だと分かったので、付き合いにくい奴だと考えていた。

 

「それで、ドットさん。リコはあっちにいるみたいだけど、今から迎えに行く?」

「わ、分かった……」

 

 ドットがそう考えているなか、スマホロトムでリコとメールでやり取りをしたイルマがリコ達との合流を促すと、ドットはその提案に頷いた。イルマがいなければ、ドットはこちらが迷子と思われるのが嫌でスマホロトムで連絡しようとしなかったかもしれないので、彼がいてくれて良かったとクワッスはホッとする。

 

「イルマー!ドットー!」

「あっ、いた」

「来るの早……」

 

 すると、少し離れたところで、こちらに向かって手を振って呼び掛けてくるリコとロイの姿が見えてきた。

 

「おい!こら、またか!」

 

「…ん?」

「あれ、ドットさん?」

 

 その時、ドットは建物と建物の間にある道の先から男の声が聞こえてくることに気付き、何となく気になってクワッスと共にその道を進んでいく。それに気づいたイルマは彼女達の背中を追いかける。

 

 道を抜けると、そこには大きな工場があり、その入り口付近で、一人の人間がポケモンとなにかもめているのを見付けた。

 工場の職員と思われる男性の腕にしがみついているのは、桃色の赤ちゃんの様な姿で胸には前掛けの様な金属片が垂らされている鋼鉄ハンマーを手にしたポケモンだった。

 

「いい加減離せ!何度言ったら分かるんだ!」

「カッ!」

 

 職員の男が、腕にしがみついているそのポケモンを振り払う。彼の手には、歪な形になった鉄が握られている。

 

「この鉄はウチのなの!勝手にハンマー作っちゃダメなの!いいね!分かる!?」

「カ……カヌチャン!!」

 

 職員が言うと、尻餅を付いたポケモンは涙目になりながら立ち上がる。

 

 工場の入口前でその様子を見ていたドットの耳に、同じくその様子を目にしたイルマの呟きが入ってきた。

 

「あれは……確かカヌチャン。鉄をハンマーにしちゃうポケモンだね」

「カヌチャン……?」

 

 イルマが呟いたピンクのポケモンの名前を聞き、ドットはスマホロトムで【カヌチャン】と呼ばれたポケモンを検索する。

 

『カヌチャン。かなうちポケモン。フェアリー・はがねタイプ。鉄屑を叩いてハンマーを作る。納得がいくものを作るまで、何度も作り直す』

 

「もう二度と来るなよ」

「カヌカヌ……カッ!」

 

 工場の職員はカヌチャンによって歪な形にされた鉄を持ちながら工場の中へ戻っていく。カヌチャンは職員が持っている鉄を追いかけようとするが、すぐに転んでしまい、手に持っていた鋼鉄ハンマーを手放してしまった。

 それを見たドットは、カヌチャンの前に歩み寄り、鋼鉄ハンマーを拾い上げて差し出してあげる。

 

「……ほら、大丈夫か?」

「……カッ!」

「えぇ~……」

「か、カヌチャンが携帯してるハンマーは、身を守るためにも使う大事なハンマーだから、触れられたくないんだよ。きっと……」

 

 カヌチャンはドットが差し出したハンマーを奪い取り、取られてなるものかと言うように抱き締める。

 イルマがドットにフォローをいれていると、カヌチャンはドットの足元に置かれてあるビニール袋にある先程動画の小道具用に買ったマイクを見付けると、隙を付いてそのマイクを奪い取った。

 

「ちょっと待って!それ買ったばかり!」

 

 ドットが制止しようとするが、カヌチャンは手にした鋼鉄ハンマーを振るい、金属がぶつかり合う音と共にマイクの形が歪んでいく。

 

「あちゃー……カヌチャンは鉄であればなんでもハンマーに変えるから……」

「マイクでハンマーを……変な奴。にしても、よく知ってるな」

「昔、何度か会ったことあるから……」

 

 そう語るイルマの脳裏に浮かぶのは、家電を直そうとしたら野生のカヌチャンにハンマーの素材にされたときの記憶。その時、イルマとドットの後ろから声が掛けられた。

 

「ドット、どうしたの?」

「この子は……?」

「あぁ、二人とも…。この子はカヌチャンだよ」

 

 それは、突然曲がり角に進んでいったリコとロイであった。

 イルマが2人にカヌチャンの事を話していると、ドットは突然立ち上がり、踵を返して歩きだした。

 

「クワ?」

「ドット?」

 

 クワッスやリコが首をかしげながらも、イルマ達は彼女の後ろを付いていく。

 カヌチャンは一度だけ彼女達の後ろ姿に視線を向けたが、直ぐにハンマー作りに意識を向け、ドットの購入したマイクを自身のハンマーで叩き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、イルマ達が買い物を終えた船に戻ると、マードックが涙を流しながらドットを抱き締めて迎え、ドットを除いた面々が今夜はカレーパーティーとはしゃぎながら船に戻ってから少しした後、イルマ達はオリオによって呼び集められていた。

 

「いったい誰の仕業!?怒らないから名乗りでなさい!!」

「もう怒ってるけどな……」

「マードック、あんたが鍋とかフライパンにしたんじやないでしょうね!?」

「は?いや、そんなわけないだろ」

「だったらモリー!?」

「あたしが鉄で何するっての」

「それはそうだけど……」

 

 船の補修の材料を買ってきたオリオがテツロンタウンで購入した大量の鉄が、無惨に荒らされていた。残っている鉄には噛み砕かれたような後があり、オリオは怒髪天を衝くように怒鳴る。

 そんな中、ドットとクワッスが荒らされた鉄を眺めていると、イルマは壁にある異変を見つけた。

 

「……この穴は何だろう?」

「穴?……ホントだ」

「ポケモンの仕業?でも、カヌチャンに出来るわけないし……」

 

 イルマが気付いた穴に、リコ達も集まってその穴を観察する。

 そんな中、その穴を触れて観察していたフリードが、何かに気付いたように口角を吊り上げた。

 

「これは、食い破られた跡だ……そうか、犯人が分かった!」

「分かったの!?」

「あぁ、鉄の有り様からみて間違いない。だとすれば……」

「フリード、ちゃんとあッチ等にも説明しろよ?一度それで危ない目に遭ってんだからな」

「わ、わかってるよ……皆、これから犯人をおびき寄せる手伝いをしてくれ」

 

 バチコに促されて口を開いたフリードの言葉に、イルマ達は耳を傾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 砂漠に止められたブレイブアサギ号の甲板の上に、一人のポケモンが降り立った。

 桃色の赤ん坊のような姿をしたポケモン──カヌチャンだ。彼女の手にはピンクと銀のハンマーが握られている。ドットが購入したマイクを変系させて作ったハンマーだ。

 

 カヌチャンはハンマーを手にして甲板の上を歩いていると、カヌチャンはブンブンッと、素振りのような音を捉え、興味を抱いて、その音が聞こえる場所──ウイングデッキにやって来ると、ウイングデッキの様子をうかがう。

 

「ラルゥ~……」

「ぽにっ!」

 

 ラルトスが紙や石等を芯にして氷の剣を生成する練習をしており、オーガポンがバッターのように素振りをしていた。直ぐそばでは、イーブイとサザンドラが昼寝をしている。

 

「……ぽ?ぽにぽにっ!」

「ッ、カッカヌッ!」

 

 その時、素振りをしていたオーガポンがカヌチャンの存在に気付き、棍棒を下ろして手を振る。声をかけられたカヌチャンは恐る恐る顔を出すと、ラルトス達も彼女の存在に気付いたようで、ラルトスは練習を止め、イーブイとサザンドラは目を覚ます。

 

「ぽに?ぽーにぃ?」

「カッカー!」

「ぽ!ぽにおーっ!」

「カーッ!」

 

 カヌチャンの前にやってきたオーガポンは、カヌチャンと会話をすると、カヌチャンを抱き上げて頭の上に乗せたかと思うと、船内に向けて走り出していき、その様子を見たラルトス達も、慌ててオーガポンとカヌチャンの後を追いかけた。だが、サザンドラだけは興味がないのか、大きく欠伸をしてから再び昼寝を始めた。

 

 そうして船内を歩き回っていると、オーガポン達はドットの後ろ姿を見つけた。

 

「ぽっ、ぽにおーっ!」

「オーガポン?どうしたんだ……って、カヌチャン?お前、何でこんなところに?」

 

 オーガポンがドットに声をかけると、振り返ったドットはオーガポンの頭の上に乗っているカヌチャンに気付き、カヌチャンを抱き上げた。

 

「カー、カヌチャン。カッ!」

「それを見せに来たのか……。いいハンマーだ、大事にしてくれよな」

「オーガポン?ラルトス?イーブイ?そんなところでどうしたの……って、あれ、そのカヌチャンついてきてたの?」

「イルマ…あぁ、コイツは僕にハンマーを見せに来たんだよ」

 

 そこへ、オーガポンとラルトスとイーブイの後ろから、フクスローを連れてオーガポン達を探しに来たイルマが声をかけてきた。イルマはドットの前にいるカヌチャンに気付いて呟くと、ドットがそう説明する。

 その時、船内に豪音が響き渡った。

 

「「ッ!?」」

 

 イルマとドットは顔を見合わせ、直ぐ様その音が聞こえてきた方に向かって行き、船の倉庫にたどり着くと、そこには既にリコ達が集まっていた。

 

「リコ、犯人捕まえたの!?」

「イルマ、ドット…うん、フリードの罠にかかったみたい!」

 

 イルマとドットも視線を向けてみると、そこには真っ赤でぷっくりとした節のある細長い出立ちで、「環帯」に当たる胴体部分が金属質になっており、顔の先に目と口があり、体の所々に窓のような青い円形の部位があるポケモンが、体にロープを巻き付けられてもがいていた。

 

「ミ、ミズズズゥ……!」

 

『ミミズズ。ミミズポケモン。はがねタイプ。乾燥した砂地に住んでいる。土の中の鉄分をたべて金属の体を保っている』

 

「想定よりも大物だな……」

 

 リコが取り出したスマホロトムがミミズズの生態を読み上げる。

 イルマが気付いた大穴と、鉄に齧られた後があることから、フリードは砂漠に生息する鉄を主食とするポケモンであるミミズズが犯人だと看破し、罠を仕掛けていたのだ。

 

 すると、ミミズズは体に巻き付いていたロープを食い千切ると、罠を仕掛けたライジングボルテッカーズの面々に飛びかかった。その先にいたのは、カヌチャンを抱えたドットだった。

 

「ッ、危ない!!」

「うわぁっ!?」

「カッ!?」

 

 それを見たイルマはドットとカヌチャンを抱き締めるようにして自身の方に引き、ミミズズの突撃から二人を助ける。

 

「ドットさん、カヌチャン、大丈夫!?」

「はっ!?だ、大丈夫だし……」

「………二人とも、ミミズズの方に集中して」

 

 腕の中にいるドットの安否を確認するようにドットの顔を覗き込むと、ドットは突然イルマに抱き寄せられて顔が近くにあることにどぎまぎし、リコはその光景に面白くなさそうな表情をしながら注意する。

 そんな中、突撃が空振りになったミミズズは一同ライジングボルテッカーズの面々に顔を向けると、ミミズズはカヌチャンが手にするハンマーに気付くと、口から泥を吐き出す“どろかけ”を放った。

 

「わわわっ!?」

「うおっ!?」

「カッ!?」

 

 イルマはカヌチャンを抱えたドットを抱き締めながらその泥を避け続ける。泥は一発も当たらなかったが、ドットの腕の中にいるカヌチャンは、つい手に持っていたハンマーを手放してしまう。すると、ミミズズはそのハンマーに飛び付き、パクリと咥えてしまった。

 

「カヌー!?」

「ハンマーが!?……って、何時まで抱き締めてるんだよ!」

「あだッ!?」

「イルマ……後でO☆HA☆NA☆SHIがあるから、私の部屋に来てね」

「なんでぇっ!?」

 

 ドットがイルマの腕を振り払い、リコが怖い笑みを浮かべながらお説教を宣告し、イルマがそれに顔を青くしていると、ハンマーを咥えたミミズズは床を突き破って行ってしまった。

 ミミズズが開けた穴を呆然と眺めて涙目になるカヌチャンにドットが声をかけた。

 

「カヌチャン、ハンマーを取り替えそう。お気に入りの大事なやつだろ?」

「カッ……カヌッ!」

「行こう!」

 

 ドットはカヌチャンとクワッスを連れてミミズズが作った穴に飛び込む。イルマ達もドットに続いて穴に飛び込もうとした瞬間、船内が大きく揺れ、イルマ達は床を転がりそうになるのを何とか堪える。

 

 ミミズズを追って砂漠の上に降り立ったドットは、ブレイブアサギ号が大きく傾いているのを見て、目前にいるミミズズを睨み付けた。

 

「お前……アンカーを切ったな!」

 

 ドットの怒声を聞いても、ミミズズは微塵も臆した様子を見せず、咥えていたカヌチャンのハンマーを飲み込み、体をユラユラと揺らす。

 

「カヌー!」

「おちょくりやがって!クワッス、“みずでっぽう”!」

「クーワッスーーッ!」

 

 クワッスが口から水流を吐いてミミズズを攻撃しようとするが、ミミズズは即座に砂漠の砂に潜り回避する。思いの外ミミズズの動きが素早かったことにドット舌打ちしたその時、ドット達の足元からミミズズが飛び出して突進するが、ドット達はそれを何とか回避する。

 

 そんな中、フリードを乗せたリザードンがミミズズに切られたアンカーを掴み、リコ達が甲板の上からその様子を見る。

 

「ドット、こっちは任せろ!カヌチャンのハンマーを取り返せ!」

「うん!自分スイッチ、オン!」

 

 フリードの言葉を聞き、ドットは前髪を上げて、隠された目を露にする。

 

「クワッス、“みずでっぽう”!」

 

 ドットの指示を聞き、クワッスは水を吐き、カヌチャンはミミズズに突撃する。対するミミズズはクワッスの水流を避け、カヌチャンの前で一旦止まったかと思うと、目をグルグルと回してカヌチャンをおちょくるような動きを見せると、カヌチャンから視線をそらして砂の上を進む。

 その時、ミミズズが最初に放った“みずでっぽう”によって濡れた地面を割けたのを見て、ドットな頭にある考えが浮かぶ。

 

「そうか……クワッス、あっちに“みずでっぽう”!」

 

 クワッスは水流を吐き、ミミズズの進行方向の地面にを塞ぐように水をかけると、ミミズズは方向を変えて砂の上を進む。

 

「もう一度“みずでっぽう”!」

 

 更に水流を吐くクワッス。その水流はミミズズに当たらずに地面の砂を濡らし、ミミズズは方向を変えて砂の上を進む。クワッスは更に“みずでっぽう”を放ち、やがて水に濡れた地面で大きな円が作られた。

 それを見て、リコはドットの狙いに気付いた。

 

「わかった!ミミズズを追い詰めてるんだ!」

「どう言うこと!?」

「ミミズズは体が濡れると、簡単に錆びてしまうポケモン」

「だから乾いた地面ばかり進んでいるのか」

「だから、自分の周りには水を撒かなかったんだ、誘い込むために!」

 

 リコの言うように、ミミズズは唯一地面が乾いているドットがいる場所に進んでいく。その隙を狙い、ドットが指示を出そうとした瞬間、予想外の出来事が起きた。

 

「ミズズズゥッ!」

「クワッス!?」

「ッ!?」

 

 クワッスと激突する一歩手前で、ミミズズが“あなをほる”で地面に潜ったのだ。

 

「隠れちゃった!?」

「不味いよ、地面の中の砂は常に乾いてる!」

 

 船の上でイルマがそういった瞬間、ミミズズはドットの足元を抜けてドットの後ろに飛び出し、ドットに襲いかかろうとした瞬間……

 

「ドラァッ!!」

「ミズッ!?」

 

 赤黒い波動がミミズズを襲う。

 ミミズズが砂の上を転がり、ドット達が驚いて上を見上げると、そこにはサザンドラが滞空していた。

 

「サザンドラ!?」

「サザァアアアアアアッ!!!」

「あっ、ダメだ。サザンドラ、昼寝を邪魔されて怒ってる……」

 

 空を飛んで怒りの咆哮を上げるサザンドラの様子を見て、イルマはサザンドラがブレイブアサギ号が傾いたことで昼寝の邪魔をされた事に怒りを露にし、ミミズズをぶちのめそうとしているのだと気付く。

 すると、ミミズズは小刻みに震え、動かなくなっていた。サザンドラが放った“あくのはどう”の追加効果、怯みだ。

 

「クワッス、“はたく”!」

「クワーーッス!」

 

 その隙を狙い、クワッスは今度こそ“はたく”を命中させる。怯んでいたところでそれをモロに受けたミミズズは、口からカヌチャンのハンマーを吐き出しながら吹き飛ばされる。

 

「今だ、カヌチャン!」

「ヌーーッ!」

 

 走り出したカヌチャンは、上空のハンマーをキャッチし、そのハンマーをミミズズに叩き付ける。それを受けたミミズズは地面を倒れる。

 

「サザァッ!!」

「サザンドラ、やり過ぎ……もう戻ってて!」

 

 サザンドラが“ほのおのキバ”で追撃を咥えようとしているのを見て、イルマはモンスターボールでサザンドラを強制的にボールに戻した。

 そうしている間にも、ミミズズは地面に潜り、ブレイブアサギ号から去っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕方。

 ミミズズに食い千切られたアンカーを戻し、体勢を立て直したブレイブアサギ号の近くで、ドット、リコ、ロイ、イルマの四人がカヌチャンの前に立っていた。

 

「良かったね、ハンマーを取り返せて」

「カヌカヌ!」

「それじゃあ、元気でね」

「お気に入りのハンマー、もう誰にも取られるなよ……じゃあ、行こう」

「うん」

 

 ロイとリコとイルマが踵を返してブレイブアサギ号へと歩きだし、ドットもそれに続こうとするが、直ぐに足を止め、それに気付いたイルマ達は振り返る。

 

「カヌ~……」

「……こういう時、どうしたら良いのかな……僕で良いのかな?」

「カッ、カカー!」

 

 涙目になったカヌチャンが、ハンマーを掲げながら必死に訴えかける。

 リコ達がドットとカヌチャンの様子を見守っているなか、ドットはカヌチャンの方を振り返ると、足元のクワッスが転がしたモンスターボールを拾い上げた。

 

「カヌチャン……ゲットしてもいいかな?」

「カッ!」

 

 カヌチャンは飛び上がり、ハンマーでボールのボタンを押す。ドットの手の中にあるモンスターボールにカヌチャンが吸い込まれていくと、ボールが揺れ動く。

 

キュインキュインキュイン…カチッ!

 

「ありがとう。出てこい!」

「カッ……カヌーー!」

 

 ボールからゲット完了の合図と星のエフェクトが出てくるのと同時に、ドットはボールからカヌチャンを呼び出す。ボールから飛び出したカヌチャンは、思いっきりドットの胸に飛び付いた。

 

「これからよろしくな、カヌチャン」

「カヌー、カッ!」

 

 ドットの言葉にカヌチャンは笑顔を浮かべて声をあげ、その様子を見ていたリコ達はニャオハ達と顔を見合わせ、優しく微笑んでいた。

 





~イルマとドット~
 これまで、あんまり接点がなかった二人。これから少しずつイルマとドットがふれ合う機会を増やそうと思っています(オーガポンとカヌチャンが仲良くなるという話もかんがえています)。

~昼寝を邪魔されて怒るサザンドラ~
 前回、余りにも出番が少なかったので、オリジナル感を出そうと少しだけ参戦させてみました。


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