魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター   作:MTHR

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アニポケが新章に突入し、金曜日の夜が更に楽しみになりました。

余談ですが、本作でリコの恋愛シーンを書く時、作者は『NARUTO』の日向ヒナタをイメージしています。『内気で恋をする少女』というキャラクターで真っ先に思い浮かんだからです。表現出来ている自信はありませんが。


5話 大型連休

 イルマとリコが秘密の特訓場での密会から二日が経った。

 その二日の間にも、イルマの学校生活にはある程度の変化があった。

 

 イルマの方の変化は、ルームメイトであるアリスとの距離が縮まった事だ。アリスは入学初日とポケモンが配布された日はイルマが何を言っても塩対応だったのだが、先日のバトルから態度が一変……とまでは行かないが、前と比べればかなり柔らかくなった。

 当初の『話し掛けるなオーラ』は消え、逆によく話し掛けてくるようになった。

 その上、

 

『……私の事は、今日から“アズ”と呼んで良い』

 

 と言われた。

 まさかのアダ名呼びには流石のイルマも目を丸くしたが、仲良くなりたいと思っていた身としては願ってもない事だったので、以降イルマはアリスの事を「アズくん」と呼ぶようになった。

 ただ、イルマと話している最中にアリスがよく顔を赤くしてそっぽ向く時が頻繁にあり、その度に近くに居合わせたリコが複雑そうで何処か嫉妬しているような視線を向ける事があるのだが、幾らイルマが頭を捻っても、その答えが出てくることはなかった。

 

「……まぁ、アズくんとは仲良くなれてるし、リコに嫌われてる訳じゃなさそうだから大丈夫…だと思うんだけど……」

「何を言っているんだ君は…?」

「え?あぁ、独り言だよ。アハハ……」

 

 空に浮かぶ飛行船を眺めながら、中庭のベンチでおやつのクッキーを食べていたイルマは、誰に向けるわけでもなくそう呟いた。隣に座っている同じ様に高級そうなクッキーを食べているアリスから訝しげな視線を向けられ、誤魔化すようにイルマは苦笑いで返す。ヒトカゲはベンチの直ぐ傍でアリスと共にクッキーを頬張り、モクローはベンチにもたれ掛かって昼寝をしている。

 

 すると、イルマは視界の端で、iPad型に拡大させたスマホロトムとペンを持って、自由気ままに散歩をしているニャオハを追うリコの姿が目に入り、イルマはリコに微笑ましそうな目を向けた。

 

(頑張ってるみたいだね~)

 

 リコは、あの日の夜の翌日にルームメイトのアンの助言を得て、自身のパートナーであるニャオハの事を色々知ろうと、あの様に自由気ままに行動するニャオハを尾行しているのだ。そして何か気付いたことがあれば、ああしてiPad型のスマホロトムにメモをしている。

 現状、ニャオハは未だにリコの指示を素直に聞く様子を見せないが、少なくともリコの表情は前よりも明るくなったような気がする。リコとニャオハなら直ぐに仲良くなれると断言したが、もしかしたらその時が来るのはイルマの予想よりもずっと早いのかもしれない。

 

 ニャオハを追うリコの背中を眺めながらぼんやりとそんな事を考えたイルマは、手に取ったクッキーを頬張った。

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夕方。

 明日から、セキエイ学園の大型連休が始まるため、殆どの生徒はその連休を実家で過ごすために、大型バスが停まるバス停の前に集まっていた。

 

「へぇ~、アズくんはカロス地方に行くんだ」

「…あぁ、母が連休には帰ってこいとしつこくてな。無視すると面倒なんだ……」

 

 バス停の前で、アリスの見送りに来たイルマ。

 アリスはカロス地方出身らしく、母から帰ってきてほしいと言われた為に帰省するらしい。とはいえ、アリスは何だか嫌そうな顔をしている。何だか、反抗期だけの理由ではなさそうな気がするのだが、特に聞きたいと思うことでもないのでイルマは何も聞かない。

 

 すると、アリスからスマホロトムを貸して欲しいと言われ、イルマは頭に疑問符を浮かべながらも自身のスマホロトムを差し出す。それに受け取ったアリスはイルマのスマホロトムの画面を操作すると、直ぐにイルマに返した。

 イルマはそれを受け取って画面を見てみると、スマホロトムの連絡先に『アリス』という名前が登録されていた。

 

「これって…」

「…私の番号とメールアドレスを登録しておいた。連絡がしたくなったらいつでも連絡すると良い」

「え、いいの!?」

「君がどうしてもというなら相手をしてあげよう」

「わぁ、ありがとう!」

 

 どうしても処か頼んですらいないのだが、それに対する疑問よりも嬉しさが勝っているイルマはそれに気付かず、心からの笑顔で礼を言う。アリスはまた赤面し、メガネをかけ直しながらそっぽ向いた。

 そんな仲の良い(?)二人を、遠目で眺めている人影があった。

 

「………」

「リコ、何ふくれてんの?」

「うひゃあ!?」

 

 その人物──リコは、不満そうな顔でイルマとアリスの方を眺めていたが、不意に後ろから声をかけられ、奇声を発しながら慌てて後ろを振り返った。そこには、何時ものように人懐っこい笑みを浮かべているアンの姿があった。

 彼女は元々、アリスと同じ様に長期休暇を利用して実家に帰省するアンの見送りに来ていたのだが、途中でイルマとアリスの二人を目撃した事でそちらに集中してしまっていたリコは、不意に意識を呼び戻され、放置してしまったアンの事を思い出して慌て始める。

 

「ア、アン。ゴメンね、ちょっとボーっとしてて……」

「ボーっと、ねぇ……」

 

 するとアンは、先程までリコが視線を向けていた場所にイルマとアリスがいる事に気付くと「へぇー…」と声を漏らし、面白がるような笑みを浮かべ、リコに顔を寄せた。

 

「ライバル登場って感じ?」

「え?ラ、ライバルって何の事?」

 

 顔を赤らめながら、目をパチクリとさせるリコ。その表情はどちらかと言えば、恥ずかしがっているというより言葉の意味がよく分からなくて困惑しているといった感じに見える。

 

「リコは、この大型連休にパルデアには帰らないんだよね?」

「う、うん。お父さんもお母さんも忙しいだろうし」

「それで、イルマもパルデアに帰る予定はないんでしょ?」

「うん。イルマは『もしも帰ったら使用人(オペラさん)が大変だし、お爺ちゃんが泣いちゃうかもしれないから』って言ってたよ」

「それは言えてるね」

 

 入学式でのサリバンの孫バカっぷりは、未だに学園内でも密かに話題にされている。理事長挨拶で生徒全員に配布すると公言した拡大写真(ポスター)も、カルエゴ達が必死に止めなければ本当に配布されるところだったとも聞く。

 もしも(イルマ)が休暇中にパルデアに帰ったりなんてしたら、理事長室で仕事そっちのけで滝のような涙を流して寂しがるサリバンの姿が簡単にイメージできてしまい、リコとアンは揃って苦笑いする。イルマの幼馴染みであるリコは兎も角、理事長とは本当に接点がないアンですらそうなのだから、孫本人が想像できない筈がないだろう。

 

 と、そこで話がそれてしまったことに気付き、アンはニヤニヤとした表情でリコの耳元に顔を寄せ、未だに仲良く話し合っているイルマとアリスの横目に小声で話しかける。

 

「リコ、アリスがいないこの機会に、ガンガンアタックしちゃいなよ!うかうかしてると他の誰かに取られちゃうよ~?」

「ア、アタック!?取られちゃうって……ち、違うよ、アン!イルマはただの幼馴染みで!ま、まだそんな関係じゃ……」

「『まだ』ってことは、その内そう言う関係になる予定があるって事~?」

「~~~ッ!!/////」

 

 アンの無邪気な揶揄の言葉に、顔をオクタンよりも真っ赤にして声にならない悲鳴を上げるリコ。腕の力が強まり、腕の中にいるニャオハが「ニャアッ!?」と苦しそうな悲鳴を上げる。

 その姿を見て、少しばかりからかい過ぎたと思い、アンは「ゴメンゴメン」と軽く謝ると、再びリコに普段通りの明るい笑顔を向けた。

 

「それじゃあリコ。部屋の留守は任せたよ~」

「ミジュ~」

 

 そう言って、アンはリュックに乗っているミジュマルと共にリコに手を振りながらバスに乗り込むと、直ぐにバスのドアが閉まり、生徒達を乗せたバスは発進した。

 

 リコは未だに顔を赤くしたまま、ニャオハと共にそのバスの後ろ姿を見送っていたが、やがてその姿が見えなくなると、少し離れた場所でアリスが乗ったバスに手を振っているイルマに目を向けた。

 

(アタックなんて…私にそんな事できるわけないよ)

 

 そもそも、自分はイルマに恋をしているのかさえ分かんないんだし。そう考えながらも、リコはジーっと見つめている。腕の中にいるニャオハが、アンを乗せたバスが行ってしまったのに一向に部屋に戻ろうとしないリコを不思議そうに見つめている。

 

 一方、アリスが乗ったバスに手を振り、やがてその姿が見えなくなったイルマは、モクローを肩に乗せたまま寮へと戻ろうとした所で、視線を感じてそちらに目を向ける。そこには、ニャオハを腕で抱えているリコがやや赤い顔で此方をジッと凝視していた。先程から何か騒がしかったが、何か用があるのだろうか…そう考えながらリコに歩み寄り、声を掛ける。

 

「どうかしたリコ。僕に何か用?」

「ふぇ!?な、ななななんでもないよ!!」

 

 リコは先程から赤かった顔を更に赤くして、慌てたように答えるリコ。イルマはその態度に首を傾げるが、まぁいいかと特に追及することはなかった。

 

 そうして、二人は一緒に寮へ戻っていく。一緒に行く理由は何て事はない、ただ方角が一緒なだけだ。

 二人きり(ニャオハとモクローがいるが)でいることはこれが始めてではないので、普段ならば何て事もないが、今のリコは普段通りではいられなかった。原因は間違いなく先程のアンの言葉だろう。

 寮へ向かって歩いている間もずっと、イルマの顔を凝視する。その視線を感じてイルマがリコに顔を向ければ、リコはサッとそっぽを向く。

 

 そんな意味の分からないやりとりが何度も続いており、イルマは心の内でどうするべきか悩む。用があるなら無理矢理にでも聞き出すべきか、それとも無視するべきか…。そんな風に悩んでいると、不意に横から声をかけられた。

 

「ね、ねぇ!!」

「?」

 

 突然の大きめの声にビクッとしながら足を止め、顔を横に向けると、そこには自分と同じように足を止めて顔を赤くしたまま俯いているリコの姿。イルマとモクロー、ついでにリコの腕の中のニャオハも頭に疑問符を浮かべてリコを眺める。

 すると、リコは顔を上げ、おずおずと話しかけた。

 

「イ、イルマ」

「何?」

「あ、あのさ、イルマはこの連休で、何処かに行く予定とかない?」

「え?………あぁ、うん。パルデアに帰らないってこと以外は特に決めてないよ?」

 

 予想の斜め上の質問に、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔になるイルマだったが、直ぐにリコの質問の内容を理解すると、リコの纏っている雰囲気と質問の内容のギャップに少しだけ戸惑いながらも素直に答える。

 

 イルマの答えを聞き、リコは頬を真っ赤に染め上げ、ニャオハを抱き抱えながら再びおずおずと話しかけた。

 

「あ、あのね…その……。せ、折角の大型連休何だからさ…イルマさえ良かったら……ふ、二人で何処かに行かない?も、勿論!ニャオハとモクローも一緒に……」

 

 絞り出すように声を出すリコの目尻にはうっすらと涙が溜まっている。この台詞はどう考えてもデートのお誘いにしか聞こえない。自分が吐いた台詞の内容を今更ながらに理解したリコの頭は、もう爆発するのではないかと錯覚する程の熱を帯びており、軽く湯気が出てきている。

 そんなリコに、イルマは…

 

「──いいよ!僕も出来ればそうしたかったし」

 

 普段通り、ニコッと可愛らしい笑顔で答えた。

 

「あ、それじゃあリコ。何時何処へ行くのか決めたいから、明日僕の部屋に来ない?女の子の部屋に行くのはダメだし──」

「…………」

「……リコ?」

「もふ?」

「ニャア?」

 

 リコからの返事がない。イルマが笑顔で答えたところからずっと沈黙しているリコに、異変に気付いたイルマと肩に乗っているモクロー、そしてリコの腕の中にいるニャオハも、再びリコに訝しげな視線を向けると……

 

「リコ?……って、また気絶してる!?」

 

 嬉しさと恥ずかしさから、リコは頭と口から湯気を吹き出しながら目を回し、ニャオハを手放してフラッと体勢を崩したあと、ドテーンと仰向けに倒れた。

 殆どの生徒がいなくなったセキエイ学園に、イルマの慌てたような声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リコ大丈夫かなぁ。アズくんとアンが出発した辺りからなんか様子がおかしかったんだけど……」

「もっふぅ」

 

 その後、気絶したリコが目を覚まし、保健室に行くかと聞いたが大丈夫だと言われ、取り敢えず明日打ち合わせをしようと言ってリコとニャオハと別れ、モクローと共に自分の寮へと戻ってきたイルマ。

 リコの事はまだ少し心配だが、本人が大丈夫と言ってるし、見た感じ元気もあり余っている風だったし、多分大丈夫だろう。

 そんなことを考えている内に、イルマとモクローは男子寮まで辿り着いた。

 

「……ん?」

 

 すると、寮のガラス扉の向こうである人影を見つけた。

 後ろ姿しか見えないが、ガラス扉越しで見ても小柄な女性である事は分かった。着ている服はセキエイの制服ではなく、改造制服でも無さそうなので、恐らく学園の生徒ではなさそうである。その女性はスーツを着た学園の教師と思わしき男性と何か話している様子であり、恐らくこの学園の誰かに会いに来たのだろう。

 

 そんな風に考えながらも、イルマは取り敢えず部屋に戻ろうと寮の扉を開ける。

 

「お、イルマ君。ちょうど良いところに!君にお客さんが来てるんだ!」

「!ダリ先生!」

 

 最初に話しかけてきたのは、茶色い短髪の平凡顔の男性、セキエイ学園で歴史学の教師を勤める【ダリ】だ。イルマ達の担任であるカルエゴとは対照的に柔軟で温和な性格をしており、生徒達から人気がある教師だ。

 

「お客さんっていうのは?」

「あぁ、この人だよ」

 

 イルマの問いに、軽い感じで答えながら自分の横にたつ人物を指差すダリ。イルマとモクローはダリに促された方に顔を向けた。

 そこにいた案の定、先程ガラス扉越しに見えた女性だった。一般的な男性に比べれば小柄な方であるイルマよりも更に低い身長で、濃いめのピンクの髪をツインテールにした、勝ち気な印象を持たせる女性だ。

 

 その女性の姿を数秒程まじまじと見つめた後、イルマは驚きで目を見開き、思わずといった風に呟いた。

 

「……バチコさん…!」

「おう、久し振り…。いや、もう懐かしいな、イルマ」

 

 イルマの言葉にニカッと笑い、言葉を返す女性──【バチコ】。

 彼女はイルマの祖父サリバンが前に勤めていたパルデア地方のオレンジアカデミー時代の教え子で、卒業してからもサリバンと縁がある為、5~6歳程の時のイルマとリコにも交流があった人物だ。

 だが、ある日を境にパッタリと会うことがなくなり、イルマも顔を見て思い出すのに数秒間だけ時間が掛かってしまうほどに忘れてしまっていた。そんな彼女が連絡も無しにいきなり学園にやって来るとは、一体どう言うことだろうか?

 

「それじゃあ、僕の案内はここまでですね。それでは」

「おう、ありがとよ」

「あ、はい。どうも……」

 

 困惑するイルマを他所に、ダリは手を振りながら校舎へ帰って行き、バチコが初対面の相手に対してかなりでかい態度で、イルマが未だに困惑を残したままその姿を見送る。

 

 ダリの姿がガラス扉の向こうへ行き、その姿が見えなくなると、ようやく頭の中を整理したイルマが、まだ少し困惑している様な表情で、「オメーがイルマのパートナーか~」と言ってモクローの頭をワシャワシャと撫でるバチコに話しかけた。

 

「え~と…。バチコさん、お久し振りですけど……どうして僕がここに通っているって知ってるんですか?僕に何か用事でもあるんでしょうか…?」

「ん?何だ、サリバンさんから聞いてねェのか?」

「お爺ちゃんから?」

 

 予想外の人物の名前が出てきて、イルマは目をパチクリと瞬かせる。だが同時に、何故イルマがセキエイ学園に通っていることを彼女が知っていたのかという謎が解けた。超が6つは付きそうな程の孫バカな祖父(サリバン)なら、ビデオ通話でバチコに何時間も孫自慢する光景が簡単に想像出来る。

 

 そんな風に考えているイルマに、バチコはイルマを指差しながら、自分がイルマを訪ねてきた理由を告げる。

 

「サリバンさんから『ライジングボルテッカーズ』に依頼されてんだよ。あッチ等の旅にオメーを同行させて欲しいってな」

「ライジングボルテッカーズ…?」

 

 聞き馴染みのない単語に、イルマは首を傾げる。話から推測するに何かのチーム名なのだろうが、そんなチーム聞いたことがないし、バチコがそんなチームに入っていたなんて初耳だ。いや、ここ数年で彼女が何をしているのかなど全く知らないのだが。

 

「まっ、詳しい話は後でしてやる。取り敢えず今は、あッチの仲間がリコを訪ねてるだろうから、アイツと合流してから話してやるよ」

「……話の内容が全く分からないんですけど…分かりました」

「もふ」

 

 何故リコまで出てくるのか、そして話の内容がよく分からないのだが…取り敢えずバチコに従うことにした。考えるのを諦めたとも言えるが。肩に乗っているモクローも異論は無いようだ。

 その時、

 

『ロトロトロト…ロトロトロト…』

 

「あれ、電話……リコから?すみませんバチコさん、ちょっと待ってくれますか?」

「おぅ、いいぞ」

 

 突如、イルマの懐にあったスマホロトムが飛び出し、着信音が鳴り始めた。連絡してきたのは、先程バチコが言っていたリコだ。

 イルマはスマホロトムを操作して通話に応答すると、ビデオ通話に切り替わった画面に、リコの顔が映し出された。画面に映っている顔は困惑と不安に満ちており、その表情を見たイルマの顔付きが変わる。

 

『イルマ、助けて!』

「リコ!何かあったの!?」

『り、寮に戻ったら、お婆ちゃんの代理人だって人が手紙を預かってきたって言って来たんだけど、お婆ちゃんが手紙を送ってくるなんておかしいし、お婆ちゃんのペンダントを持ってきくれてって言ってて、すごく怪しいの!』

「ペンダント?」

 

 そう言われてイルマが思い浮かべたのは、リコが幼い頃に祖母からもらったと言うペンダントだ。イルマは何度かそのペンダントを見せてもらったことがあるが、確かにあのペンダントは貴重そうな代物であった。と言うことは、高価なペンダントを求めてやってきた泥棒だろうか?

 イルマは顔を少し青褪めさせながら推測していると、隣で話を聞いていたバチコが突如イルマとスマホロトムの間に割って入り、真剣な表情で画面の向こうのリコに話し掛けた。

 

「リコ、その怪しい奴の見た目、口で説明できるか?」

『え?だ、誰ですか!?』

「良いから早く教えろ!髪は?服装は?どんなポケモンをつれていた!?」

『は、はい!!えっと…白黒の髪をしてて、スーツを着た男の人です!ポケモンは見ませんでした!』

 

 リコもバチコと面識があるのだが、イルマと同様に長い事顔を会わせなかった事と、向こうは思い出している余裕がない程に焦っている事から、リコは突然電話に割って入った女性の招待に気付かない。そして、バチコの有無を言わせぬ迫力に、反射的に質問に答えた。

 リコからその怪しい奴の性別と特徴を聞き、バチコは一瞬だけ思案顔になるも、直ぐに画面のリコに向き直った。

 

「リコ、お前今何処にいる!?」

『…!そ、その喋り方って……もしかして貴方は…!』

「あッチがここにいる理由は後で話してやる!取り敢えず今は場所を教えろ、イルマと一緒にそっちに行く!」

『じょ、女子寮の屋根の上です…』

 

 ようやく通話相手の正体を察したリコにそう言うと、バチコは通話を切り、イルマにスマホロトムを返すと、右手を銃のような形にしてビシッとイルマを指差した。

 

「イルマ、あッチはこれからリコの所に向かう。お前も来るか?」

「え?あの……は、はい!」

 

 展開が急すぎて状況が全く把握できないが、取り敢えず今はリコが危ないと分かっているのなら、イルマに選択の余地はない。…行った所で自分に何が出きるなかは分からないが

 その返事を聞いたバチコは懐からモンスターボールを取り出し、それを投げた。

 

ポンッ!

 

「ジュナァ!」

 

 ボールから飛び出した青い光と共に出てきたのは、ビリジアンの外套を被ったロビンフッドを思わせる、狩人のような姿をした黒い翼を持つ鳥型のポケモンだった。

 彼こそバチコの相棒(パートナー)であり、ごく稀に発生する本来と異なる体色をした、色違いの【ジュナイパー】だ!

 

 イルマはモクローを、バチコはジュナイパーを引き連れ、女子寮にいるリコの元へと走り出した。

 

 これから向かう先に、イルマとリコの冒険が始まろうてしている事を、イルマはまだ知らない。

 

 

 

 

 




今回でアリスの出番は大幅になくなります。彼の本作でのポジションとしてはアニポケでアンの立ち位置となっています。
それから、魔入間でお馴染みの『彼女』の登場は少し先になります。


感想、評価お待ちしております。

イルマくんの二体目の手持ちポケモンは誰がいいですか?

  • ラルトス
  • イーブイ
  • リオル
  • ヌメラ
  • オーガポン
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