魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター 作:MTHR
アニポケの今後の展開が気になっている今日この頃。
その日の夜、ライジングボルテッカーズはビーチでバーベキューを楽しんでおり、普段はあまり外に出ないドットも出てきてバーベキューを楽しんでいたのだが、その中で一人、その場にいないメンバーがいた。
「リコ……何処行っちゃったんだろう?」
「僕がじっちゃんの所に戻ってきた時にはもういなかったよね?」
肉を頬張りながら辺りを見渡したイルマの呟きに、ロイもキョロキョロとリコを探しながら呟く。
イルマは気恥ずかしい雰囲気のままアメリと別れ、最初にパラソルを立てた場所に戻ると、そこには買い出しから帰ってきたフリードに、ロイがスナップ小僧から貰ったイルカマンの写真を見せている中で、ランドウが写真の中から怪しげな建物を見つけ出しているところであり、その時からリコの姿が見当たらなかったのだ。
「リコなら、さっき凄い勢いで船に戻っていったよ」
「行かないのかって聞いても行かないって言っててね……」
「体調悪いのかな……?」
そこで、オリオとモリーが、ブレイブアサギ号を停めてある方角を見ながら心配そうに声を出すと、それを聞いたイルマも心配そうに呟く。
「……イルマ、お前まさかリコに何かしたんじゃねーだろうな?」
「えっ?僕がですか……?………いや、なにもしてないと思うんですが……」
バチコにジト目を向けられたイルマは、視線を右往左往させながら自分はなにもしてないと言う。実際、イルマは途中からはぐれていた為、リコとそれほど長く会話した訳ではないし、何か機嫌を損ねるような事をした覚えもないのだから。
…そこで、数分前の恥ずかしい記憶と共に唇の感触が思い起こされ、イルマは必死に頭を振ってその記憶を抹消した。
『いや~……あるにはあるんだけどな……これは、イル坊が悪いと言うべきなのか……』
そして、その理由を明確に察したフクスローは、どうするべきかと悩むように空を見上げたる。
一方、ブレイブアサギ号の自室の中で、リコはベッドの上で枕を抱き締めながら座り込んでいた。その表情は暗く、健康とはとても呼べるものではなかった。
「ニャー……?」
「ニャオハ……大丈夫だよ。少し、気分が優れてないだけだから……」
ベッドの上に乗るニャオハが心配そうにリコに歩み寄り、そんなニャオハの気遣いに気が付いたリコはニャオハを心配させまいと笑みを浮かべる。しかし、それは何処か無理をしているような笑みだった。
「……っ!」
口を閉じたリコはしばらく黙り込んでいたが、すぐにリコの脳裏にある光景──砂浜でイルマとアメリが唇を重ね合わせている光景が浮かび上がり、リコは枕を抱き締める腕の力を強くする。
(イルマが……アメリとキスするなんて……!私が知らない間に、あの二人ってそんな関係になってたの……!?)
あの二人の姿を思い浮かべて、イルマとアメリの関係性を推察してそのような結論にたどり着くと、目尻に涙を浮かべた。
(何で、なんだろう……あの二人が付き合ったとしても、それは二人の問題のはずなのに……私、それを喜べないでいる……)
友人に恋人が出来たのなら、幼馴染みとして、友達として、祝福して上げるのが普通だ。しかし、リコは何故か、それを喜ぶことも、祝福して上げる気持ちにもならなかった。それどころか、ズキズキと胸が槍で刺されたように痛み、ベッドの上に横になる。
「何なの……この気持ち……」
そう呟きながら、リコは目を閉じる。
目から溢れた一筋の涙が、ベッドの上に落ちた。
翌日の昼。
イルマ達ライジングボルテッカーズは、海の近くにある町に足を運び、買い出しに行くことになり、リコ・ロイ・イルマ・フリード・バチコ・オリオ・モリーの面々が町にやって来ていた。
「よし、それじゃあ今日は大荷物になるから分担して買い物に行くとして……」
フリードが仲間達に声をかけると、ある二人組に視線を向ける。
「……」
「……?」
顔を俯かせるリコと、そんなリコの様子を心配そうに見つめるイルマを見て、フリードは何かあったのかもなと考えた、役割分担のメンバーを決めた。
「…よし、メンバーはイルマとリコ、オリオとモリー、そして俺とロイとバチコだ」
「そう。それじゃあ、これから買うもののリストを送ったから、宜しく頼むよ」
そう言って、7人は三チームに分かれ、買い物に向かった。
「「……」」
イルマとリコは、スマホロトムに送信されたメモに書かれている品々を購入し、待ち合わせ場所に向かっていた。
しかし、二人の間に漂う空気は重い。というより、リコの雰囲気がいつもと違う事に、イルマはどうすれば良いのか分からないというように戸惑っている様子だった。
「…え~っと、その……リコ……さん?」
「………何?」
「その……そろそろ、オリオさん達との待ち合わせ場所につくね……」
「……分かってるよ」
イルマがリコに対しては珍しく、さん付けで下手になって話し掛けるが、リコは素っ気なく返した。それだけでも普段と違うというのに、リコはイルマと目を合わせようともしておらず、イルマはリコに何があったのかと戸惑うばかりだ。
「…ニャ、ニャ~~?(…それで、今回はイルマとアメリに何があったの?)」
『いや~~~……今回は俺ちんも、一概にイル坊の行動を責められないというかね~……』
「ニャー、ニャオハ?(よく分かんないけど、リコがヤンデレにならずにこうなってるんだから、相当なことがあったんじゃないの?)」
フクスローは、リコがここまで沈んでいる原因が、イルマがマリルを助けようとして海に落ちてしまい、人命救助のためにあめりに人工呼吸…キスをしてしまったことだろうと看破していた。
しかし、あれは立派な人命救助であり、イルマの行いは別に悪いことではないので、イルマを責めることが出来ない。
そんな間にも、イルマとリコは気まずい雰囲気のまま場所にたどり着くと、そこには買い物を終えたモリーとオリオの姿があった。
「二人とも、買い物ご苦労様!あとはメタグロスが運んできてくれるから!」
「……うん」
「そ、そうですね!メタグロス、重たいけどよろしくね!」
「メタ!」
イルマが段ボールに詰め込まれた食材をメタグロスの頭の上にのせる。
(二人の仲は…まだ元に戻れてないみたいだね)
(二人きりにさせれば話しやすくなると思ったけど……イルマの様子を見ると、まだ理由も分かってないみたいだね)
オリオとモリーは、二人の様子を見て、今朝から感じていた二人の微妙な空気がまだ戻れていないことに気付く。話す機会を儲けようとフリードはイルマとリコを二人にしたのかもしれないが、どうやら失敗に終わったらしい。
「ぽ!」
そのとき、オーガポンがある場所を指差し、一同がその場所に目を向けてみると、そこにはディグダとウミディグダが描かれた看板を掲げ、シャッターが閉じられた店の前で、大勢の人が一列になって並んでおり、その最後尾には、見慣れたフライトジャケットの男とピンクのゴスロリ風の女性、そして帽子を被った少年の背中があった。
すると、帽子を被った少年、ロイがイルマ達に気付いたようにこちらを振り返った。
「リコ!皆!」
「ロイくん、これは何の行列?」
「伝説の銘菓…ディグダ饅だって!」
「ディグダのお饅頭?それって観光地によるあるんだし、ここまで並ぶほどのものかな?」
「ただのディグダ饅じゃないぞ……その名も海のディグダ饅だ!」
「ここでしか買えない、1日30個限定の特別なディグダ饅なんだって!」
フリードが何処か得意気な表情で言い、続いてロイが言うが、イルマ達は首をかしげる。
「それって……普通のディグダ饅と何が違うの?」
「え、えーっと……」
「分かんないのに並んでんの?」
バチコ、フリード、ロイは視線を右往左往させる。それを見て、モリーとオリオは呆れたような表情になる。
「分かんないけど、きっとメチャクチャ美味しいんだよ!」
「でも、オープンまでまだあるよ?」
スマホロトムで店の営業時間を調べたオリオがそう言うと、フリードは再び何処か得意気な表情で語り出す。
「待つ時間も、美味しさのスパイスだからな…!」
「買い出しが終わってるなら好きにして良いけどさ……終わってるよね?」
買い物袋も何も持っていない3人にモリーがジト目で問い掛けると、バチコがフフンと鼻を鳴らして答える。
「そっちの事は心配いらねーよ。もうそろそろ終わる頃だ」
「終わるって、それどういう意味……?」
モリーがそう訪ね、バチコが道の方を指差すと、そこにはフワフワの羽毛に大荷物を抱えたチルタリスと、買い物袋を手に持っている色違いのジュナイパーの姿があった。
「アンタ……ジュナイパーとチルタリスに買い物させてたの!?」
「いや、コイツらならフリードとロイみてーに無駄遣いしねーし、ジュナイパーら頭良いから買い物とか楽勝だからな」
「そう言う問題じゃない!!」
「あはは……ジュナイパー、チルタリス、お疲れ様」
「ジュナイ……」
「チルチール」
何処か得意気な表情なバチコにモリーとオリオがツッコミをいれ、イルマは買い物を終えてきたジュナイパーとチルタリスに労りの声をかけ、ジュナイパーとチルタリスは苦笑いを浮かべた。
やがて、バチコとの言い合いを終えたモリーが、頭に手を当てながら口を開いた。
「まぁ、買い物が終わったなら良いよ。私達は先に船に戻ってるから、リコとイルマも好きに過ごしてな」
「そうですか。それならどうするか……?」
その時、イルマは右手を掴まれた感触がして、頭の上に疑問符を浮かべながら右手を見てみると、そこには顔を俯かせたことで前髪で顔がよく見えなくなったリコが、イルマの右手を掴んでいた。
「……イルマ、暇ならこれから、私と付き合ってくれない?」
「えっ?まぁ、別に良いよ……」
「…ありがとう、それじゃあ行こう」
そう言われて、イルマはリコに連れられて町の奥へと走り出していった。
「……リコ、何だか朝から様子が変だよね?」
「これは……確実に何かあったな」
「早く仲直りしてほしいね。あの2人は何時でも仲良しなのが良いところなんだから」
「どーだろうなぁ。あのバカ弟子、」
普段は度々嫉妬したリコがお説教をしたり、無意識に桃色空間を作ることはあれどとても仲の良い二人が、いつもと違いすぎる空気感が漂っていることを心配し、フリード達はしばらくの間2人の背中を見送っていた。
リコに手を引かれて町の中を走り続けていたイルマは、人気が少なくなってきたところで、リコが足を停めたことで前に進むことを止め、立ち止まる。
「…リコ?」
イルマの手を離さず、こちらを振り替えず顔を俯かせているため表情を見ることが出来ないリコに、イルマが心配そうに声をかける。
しかし、リコはしばらくそのといに答えることはなく、しばらくの間顔を俯かせたままだったが、突如口を開いた。
「……ねぇ、イルマ」
「は、はい……」
「イルマって、アメリと……」
「ぽにおーーーっ!!」
「「ッ!?」」
その時、イルマ達についてきていたオーガポンが大きな声を上げて走り出し、それに驚いた2人はバッと勢いよくオーガポンの方を振り向くと、オーガポンが走る先には、2つの人影があった。
「どうしました?何があっt……」
「ぽにおっ!!」
「うぉっ!?…お前、オーガポンか!?」
そこにいたのは、赤い髪をした長身巨乳美女──アメリが、近くに相棒と思われるウミディグダを連れた、体をプルプルと小刻みに震わせている老人に駆け寄っている場面であり、アメリが老人に話しかけようとしたところで、オーガポンがアメリに飛び付いたのだ。
「何故お前がここに……いや、まさか……」
「あの……アメリ……」
何故、現在パルデアで一人しか連れていないポケモンであるオーガポンがここにいるのかと考えたアメリは直ぐにある結論にたどり着いた時オーガポンを追いかけたイルマが、遠慮がちにアメリに声をかけた。
「い、イルマ……」
「えっと……どうしたの?そんなところで」
イルマとアメリは互いに顔を赤くしながら、モジモジといった態度で言葉を交わし、それを見たリコが胸の中に渦巻くどす黒い感情にギュッと胸の辺りの服を握りしめていると、プルプルと震えているおじいさんが、震えた声で口を開いた。
「き…君達……荷物を…頼む……」
「「「あっ」」」
その声を聞き、3人は思い出したようにおじいさんの方に視線を集めた。
その後、イルマとアメリが協力して、おじいさんの荷物を乗せた台車を引き、荷台の上ではリコとニャオハがおじいさんの背中を押してマッサージをしており、おじいさんは気持ち良さそうにしていると、イルマ達の前に一人の青年が駆け寄って来ると、荷台に乗るおじいさんに話しかけた。
「遅いと思ったら……また腰やったンすか?だから俺が行くって言ったのに……」
「ディー……」
「仕入をワシがやらんでどうする!」
「まったく……」
青年は呆れたようにため息をはくと、荷台を引くイルマとアメリ、そして荷台に乗っておじいさんのマッサージをするリコ達に視線を移した。
「すみません、うちの店長が……でも、あざっす!おかげで店が開けられすます!」
「良かったね」
「あぁ、良いことしたな」
「礼といやぁ何だが……うちの品、貰ってくれるかい?」
そう言って店長が荷台から出したのは、ウミディグダの写真が載せられた箱であり、その箱に書かれた文字を読んで、イルマ達は目を見開いた。
「海のディグダ饅!」
「え?それって、ロイとフリードとバチコが買おうとしてた奴……」
「あの店の方だったんですか…」
「おっ、知ってくれてるのかい?」
自分達の店のことを知ってくれて嬉しいのか、店長とウミディグダ、店員の青年が嬉々として海のディグダ饅の説明をし、イルマとアメリは一箱ずつ渡された海のディグダ饅に戸惑ったような表情をする。
「良いんですか?これ、限定商品なんじゃ…」
「それに、2箱も……」
「もしもの時の予備なんで、大丈夫ッス」
「「「ありがとうございます!」」」
「こちらこそ世話になった、三人ともありがとう!」
「ディー!」
店長とウミディグダが礼を言い、青年が台車を引きながら店へと戻っていくのを見送ったイルマとアメリは、店長から渡された海のディグダ饅をまじまじと眺める。
「こんな事ってあるだね~」
「確かにな……。まぁ、良いことをすると良いことが返ってくると言うことだな。お父様のお土産に良いかもしれんな」
店に並ばずに1日30箱の限定商品を二つも買えたのはホエルホー級のラッキーとしか言いようがないため、二人ともその顔には笑みが浮かんでいた。
……その時、イルマとアメリの脳裏に昨日の記憶が再び蘇り、二人は弾かれるようにそっぽを向き、口元を手で抑えた。
「イ、イルマ…その、昨日の件は……その……」
「いやいや!勿論、公言したりはしませんよ!チャンピオンランクのアメリさんがその……キス……したとか知られたらとんでもないことになりますし!」
「う、うむ…助かる。私としては嫌ではないのだが……」
イルマとアメリが互いに顔を赤くして気まずそうにゴニョゴニョと話しているのを、リコは後ろから複雑そうに、悲しそうに眺めていた。
(……やっぱり、前となんか違う空気を感じる……)
長い時間を共にしてきたリコでさえ、あんな表情をするイルマを見たことがない。そんなイルマの姿を見て、リコの胸の中に、そんな表情をアメリに向けてほしくないという黒い感情が渦巻いていく。
「…ッ!」
「ニャオハーッ!?」
「ミッ!?」
「あっ、リコ!?」
「お、おい!?」
やがてリコは胸の苦しみに耐えきれず、踵を返して走り出してしまう。突然の事にフードの中のミブリムはリコの感情をキャッチして驚き、ニャオハは慌ててリコの背中を追いかける。
アメリと話し合っていたイルマは、ニャオハ達に遅れてリコが走り去っていく事に気付き、直ぐにその背中を追いかけた。アメリは、その事に少しだけビックリしつつも、リコを追いかけるイルマの背中を見送っていった。
そうやって、しばらくの間イルマはリコの背中を追いかけていくと、少しずつその背中に追い付いて行き、イルマはリコの腕を掴んだ。
「リコ!」
腕を掴まれ、声をかけられたことでリコは立ち止まるが、リコはイルマの宝を振り返らず、背を向けたまま口を開いた。
「は…離して……」
「リコ、今日なんか変だよ?僕…何かしちゃったなら言ってくれないかな…?」
「…ッ」
イルマの言葉に、リコは唇を噛み締める。
リコも頭では分かってる。イルマは何も悪くないし、イルマの交遊関係にあくまでも幼馴染みである自分が咎めたりする権利などない事を。だからこそ、リコはこの感情を制御できなくなってくる。
「…別に、普段通りだよ」
「いや、流石に嘘だよね。なんかおかしいよ…」
「イルマには関係ないでしょ!!」
「ッ!?」
リコの聞いたことのないような声を聞いて、イルマは体を強張らせて、思わず手を離してしまう。
その時、リコは自分を心配してくれていたイルマに対して自分が口にしてしまった事を思い出し、口を手で抑える。
「…っ、ごめん!!」
「あっ、リコ!?」
リコは再び走り出す。イルマは驚きのあまり暫くの間リコの背中を呆然と見つめていたが、直ぐにハッと気を取り戻すと、直ぐに再びその背中を追いかけ始めた。
一方、海のディグダ饅が1日30箱限定で販売される店の前で、フリードとロイを含めて(バチコはポケモンに無茶ぶりして労働をさせた罰として船に連行された)沢山の客が海のディグダ饅を求めて並んでいると、店を閉じていたシャッターが開き、中から出てきた店員が大きく声を上げた。
「お待たせしました~!」
「いらっしゃいませ!」
「やった、開店だ!」
「あぁ、これで海のディグダ饅が買えるな!」
店員の言葉と共に、店の前で列に並んでいた客達が店内で注文をして海のディグダ饅を購入していくなか、アブリーの後ろ、行列の最後尾に、テラスタルのマークが描かれた帽子を被りサングラスをかけたピンクの髪の少女が、列に並ぶ人数を数えていた。
「お一人様一点限り、限定30箱です!なくなり次第終了となりまーす!」
「限定30……丁度サンゴで30人目!これで買えなきゃ嘘だよね!」
そう、彼女はエクスプローラーズの幹部──サンゴである。今回、彼女はテラパゴスではなく別の目的でここに来たのだが、サンゴはその前に限定のスイーツを買いに、こうして目立たない格好をして来たのだ。
「ありがとうございました!」
「やった~!海のディグダ饅ゲット!」
「あぁ、あとで皆で食べようぜ」
「ッ!(アイツ等……)」
その時、サンゴは店から離れる二人組の声が聞き覚えのあるものに感じて目を向けてみると、そこにはサンゴの10人程前に並んでいたフリードとロイが海のディグダ饅を購入し、船へと戻ろうとしているところであった。
「アイツ等も海ディグダ饅買いに来てたのかよ……まっ、いいや。サンゴもこれからゲットするんだし~♪」
エクスプローラーズのターゲットのテラパゴスを保護しているライジングボルテッカーズのメンバーであることから、サンゴも二人の顔は記憶にあったが、サンゴは直ぐに彼らを意識の外に追いやり前に顔を向けると、目の前にいるアブリーからそれなりに間が空いていた為、サンゴはルンルン気分で間を積めると、カウンターは既に目前にあり、アブリーの前にいた男性が海ディグダ饅を購入していたのを見て、サンゴが自分も海ディグダ饅を購入しようとすると……
「いつもお使い偉いわね」
「アブリー!」
サンゴの前で飛んでいたアブリーが、海ディグダ饅をもって飛び去っていく光景だった。店員の口振りから察するに、既に何度もトレーナーの代わりに買い物をしているのだろう。
まさかポケモンが一匹で買い物するとは思わずアブリーを数にいれていなかったサンゴはギギギ……と壊れたロボットのようにアブリーに顔を向けていると、店員が申し訳なさそうに頭を下げた。
「申し訳ありません。今のが最後で、本日分は……」
「はぁっ!?なんだよそれ!聞いてないんですけど!」
その謝罪を聞いた瞬間、サンゴはズズイッと険しい形相で店員に積めよった。
「ねぇねぇこういうの、もう一個くらい奥にあるんだろ!?出せ出せ~!!」
「あっ、あああありません!!」
カウンターを噛みつき始めたサンゴを見て、「面倒な客が来たな」というような表情をした男性店員がサンゴを放り出し、直ぐ様店のシャッターを閉めた。
「…う、みの…ディグダ、饅……」
サンゴがガックリと肩を落としていると、彼女の前に青い髪をした白いスーツの少年──イルマが、フクスロー達とも共に走ってきた。
(アイツは……ッ!?)
サンゴはイルマの姿を見て、彼が少し前にバールのレックウザ捕獲作戦が失敗に終わった原因である為、エクスプローラーズ内で要注意人物とされていた少年であると気付くと同時に、彼の手の中にある海のディグダ饅に気付き、目を見開く。
そんな彼女の事など露知らず、走り去っていってしまったリコを追いかけていたイルマは、途中でリコを見失ってしまい、キョロキョロと辺りを見渡した後、溜め息を吐きながら呟いた。
「……リコ、何処に行っちゃったんだろう……?はぁ、折角海のディグダ饅を並ばずに貰えたのに……」
『イル坊、女心っていうのは複雑なもんなのっさ。イル坊もそこんところちゃんと勉強しねーと、後々大変だぞ』
「そうかなぁ……一度、本気で学んだ方がいいかも……」
フクスローの言葉に、イルマは本気で女心というものを勉強した方が(誰に学べばいいのか全く分からない)良いかもしれないと考えながら、イルマは海ディグダ饅を手にしながら、重い足取りでブレイブアサギ号へと戻っていった。
一方、そんなイルマの独り言(実際にはフクスローと会話をしていたのだが、他人にはフクスローの声が聞こえていない)を聞いていたサンゴはプルプルと体を震わせて立ち上がると、船へと戻っていくイルマの背中を睨みながら怒声を上げた。
「並んでないのに……貰ったぁあ~!?ムカチーーン!オニ許せないっつーのぉっ!!」
全くもって筋違いの八つ当たりが、イルマに向けられた。
それから数十分後。
リコを見つけることが出来なかったイルマがトボトボとブレイブアサギ号へ戻っていき、町を抜ける道へ出ようとしたところで、イルマは店の前でキラキラした目で店内に並べられた商品を眺めているオーガポンの背中に、何かが貼り付けられている事に気付いた。
「オーガポン、どうしたのこの紙?」
「ぽに?」
イルマがその張り紙を剥がしてみると、その紙にはお世辞にも上手いとは言えない文字でデカデカと書かれていた。
「えーっと……『大…事なもの……奪っ……た』?えぇ…なんのこと?」
『何も取ってないよな?』
「そう思うんだけど……えっと他には…『カビゴン岩にて待つ』?」
『おぉ、あの岩だな』
そういってフクスローが指差した先には、カビゴンの形をした岩がある。
「大事なものを奪ったって…本当になんのこと?」
『イル坊、何も奪ってねーよな?せいぜい副会長ちゃんの唇くらい』
「その話はやめて!でも……何かしちゃったなら、行かないとダメだよね……はぁ、最近は災難続きだ」
頭を抱えながら、イルマは重い足取りでカビゴン岩と呼ばれた場所に向かって歩きだし、オーガポン、イーブイ、ラルトスもその後ろに続いて歩き出した。
そうしてカビゴン岩にたどり着くと、そこにはテラスタルキャップを被ったピンクの髪を持つサングラスの少女が仁王立ちで待ち構えていた。
「遅い!!オニ待ったんですけどぉッ!?」
「ラルゥ!?」
「ラルトス、大丈夫?(オニ…?何か聞いたことあるような……)」
その少女がこちらを睨んでくると、ラルトスが怯えたようにイルマの足にしがみつく。イルマがラルトスを安心させるように抱き上げるなか、その少女の口調に何処かで聞いたことあるような違和感を感じつつ、オーガポンに貼られていた手紙を少女に見せた。
「これ、貴女が書いたんですか?」
「そうに決まってるじゃん……はい」
「?」
こちらの前まで歩み寄ってきて、手を差し出してくる少女。その行為に意味が分からずに首をかしげるイルマに、その少女は笑顔で話しかけた。
「持ってんだろ?オニレア限定・海のディグダ饅!」
「……これですか?」
「それそれ!アンタ達に奪われてムカチンだったけど、渡してくれたら許してあげる」
少女の口からでてきた言葉に、イルマは行っている意味が分からないと言うような表情になる。
「いや、奪ったって言われても、これは貰い物ですよ?」
「じゃあ此方の気持ちはどうなるんだよ?どれだけ待ったと~?」
「そ、そんなに欲しいなら…一つだけどうぞ」
そう言って、イルマは海のディグダ饅の箱を開け、何故か固まっている少女にディグダ饅を差し出したが…
「何で開けるんだよ!!!」
「えぇっ!?」
「限定品なのにオニムカ越えて……オニギレだっつーーのっ!!」
(なんなのこの人~!?)
突然訳の分からない因縁を吹っ掛けてきたと思ったら、今度は人が親切に分けてあげようとしたのにキレる情緒不安定と思われても仕方がない様子の少女に、イルマは戸惑うしかない。
すると、少女は懐からモンスターボールを取りだし、それを上空に投げたことにより中にいたポケモンが姿を現した。
「オニゴーリ!!」
「オニ!」
「そのポケモンは…もしかして!?」
「アハハッ!気付くの遅すぎ!!」
現れたのは、氷で出来たオニの顔面のような姿をしたポケモン──オニゴーリ。
そのポケモンに見覚えがあるイルマは眼を見開くと、オニゴーリの頭の上に飛び乗った少女は高笑いしながら左手首に巻き付けられたブレスレットに右手で触れるとあら不思議、少女の体が紫色の光に包まれ、彼女の姿が黒と黄色を基調とした服装に加え、両袖、腰、左膝に絆創膏の装飾、頭に十字形絆創膏、足首とツインテールの結び目に包帯が巻かれている服装に変化した。
その姿を見て、イルマは以前ダイアナの古城で襲撃をしてきた少女──サンゴであると気付いた。
「エクスプローラーズの……サンバ!」
「って、サンゴだっつーの!こんな美少女の名前を間違えるとかオニ許せないんですけど!!」
「あっ、すみません……」
微妙に名前を間違えたイルマに、オニゴーリの頭の上に乗るサンゴは額に青筋を浮かばせなが怒声を上げ、名前を間違えたのは事実なため謝るが、当然ながら相手の怒りは収まらない。
「ディグダ饅滅亡された上に、侮辱されて、許す分けないっつーの!!」
「名前は確かに間違えましたけど、あのディグダ饅は腰を痛めた店長を助けた時に頂いた予備の奴です!お店で買えなかったのは単純に並ぶのが遅れたからじゃないんですか!?」
「知るかよ!それが予備のディグダ饅っつーなら、お前がそれ貰わなきゃサンゴがディグダ饅ゲット出来たんだっつーの!」
「いや、あれ1日30箱限定でしょ!?さっきから聞いていれば、ただの八つ当たりじゃないですか!」
サンゴの言葉に、イルマは鋭くツッコミを入れる。イルマの言っていることは至極正論なのだが、サンゴは聞く耳も持たない。
「ま~、元々アンタとはバトルしてやりたいって思ってたし、丁度良いから泣くまでボコボコにしてやるよ」
「元々って、なんで僕に?貴方とは特に接点ないと思うんですが?」
サンゴの口ぶりから、イルマはサンゴが前々からイルマに興味を抱いている理由が分からずに問い掛ける。
「バールの奴がしてきた報告で、アンタの事を知ったんだ~♪その時からアンタみたいな強い奴をボコボコにして泣かせたいと思ったるし、ディグダ饅の恨みも兼ねてコテンパンにしてやるよ~」
「あ、悪趣味……」
笑顔で明かされた理由と動機に、流石のイルマもドン引きしたような表情で嫌悪感を露にする。今までイルマの周りにいたなかったタイプの上に、とてもではないが仲良くしたいと思えない。
「さぁオニゴーリ、遊んでやろう!」
「オニ!」
「やるしかないね……オーガポン!」
「ぽにっ!」
ヤル気満々のサンゴとオニゴーリに、相手をするしかないと判断したイルマはオーガポンを繰り出す。
激闘が始まるかと思われたその時──二人の間に、巨大はポケモンが降り立った。
「キョー!!」
「……チッ」
「このポケモンは……!?」
『キョジオーン。がんえんポケモン。いわタイプ。ミネラル豊富な塩を舐めたくて、キョジオーンの周りにたくさんのポケモンが集まってくる』
現れたのは、ピラミッドをもした巨人のようなポケモン──キョジオーン。そのポケモンにも見覚えがあるイルマがその情報を調べ、サンゴが舌打ちしたかと思うと、その場に一人の大柄な男が歩いてきた。
「何処で油を売っているのかと思えば……」
「チッ、真面目君が来ちゃったじゃん」
大柄な男──【オニキス】の登場に、サンゴはオニゴーリの頭に乗ったまま面白くなさそうにぼやくが、イルマにはそれどころではない。
「エクスプローラーズが、一度に二人…!」
「………成る程、ライジングボルテッカーズの要注意人物か。これは捨て置けんな」
「手ぇ出すなよ!ディグダ饅を奪ったコイツはサンゴがボッコボコにすんだからな!」
「……よかろう」
サンゴがずいっとオニキスの前にでる。どうやら二人がかりではなく一対一で戦うつもりのようだが、明らかに強者と思われる二人を同時に相手するのは厳しすぎる。
(どうすれば……)
──それなら、俺がやってやるよ、代われ。
「ッ!?」
その時、イルマの脳裏に男の声が聞こえてきて、イルマの意識が途切れ、ガックリと肩と頭を落とす。そして、イルマはゆっくりと顔を上げ、愉しげに口を開いた。
「……久し振りの、シャバの空気は上手いねぇ…」
「はぁ?何言ってんの?」
「何だ……雰囲気が変わった?」
『出た!悪イル坊!』
「ぽにぽにっ!(またイルマが悪くなったべ!)」
内側にカールした髪に鋭い目付きになった姿──悪イルマの口振りに、サンゴは変な奴を見るような眼を向け、オニキスは突如纏う雰囲気が変わったイルマの様子に疑問を持つ。
そんな中、イルマの中にいる別人格──悪イルマは、オニゴーリの上に乗るサンゴを見て、好戦的な笑みを浮かべながら、ラルトスに眼を向ける。
「…ラルトス。お前、やれるか?」
「……ラル!?(……私ですかァッ!?)」
『お、おい悪い方のイル坊!何考えてんだよyou!?』
まさかの選択に、ラルトスだけでなくフクスロー達まで驚く。まだまだレベルが低いラルトスには、とてもではないがサンゴのオニゴーリを倒せるだけの力はない。“ゆびをふる”で高威力な技を出せたとしても、それがオニゴーリを倒す決定打になるとは限らないのだ。
「ちょっとした冒険だよ……だが、無理強いはしない。行けるか、ラルトス?」
「……ラル!」
ラルトスは悪イルマの心を感じとり、その言葉が本心であり、ある考えをもって自分を繰り出そうとしているが、自分がやりたくないなら出しはしないと考えている事を察し、ラルトスは前線に出る決意を固め、前に出る。
「ハッ!サンゴ相手にあの緑のじゃなくてラルトスなんかでやろうっての?オニムカつくんですけど!!」
「ハッ、嘗めるなよ?お前は俺とバトルがしたいみたいだったし相手してやるよ。泣くほどな!」
「上等だよ!!」
その言葉と共に、サンゴとイルマのバトルが開始された。
~リコとイルマ~
前回の人工呼吸から勘違いをしてしまい、そのまま誤解が解けない展開になってしまった。イルマはマジでなんで突然こうなったのか分かっていない。
~サンゴ~
元々イルマを標的にしていた。海ディグダ饅をイルマが持っていた為、彼とバトルすることになる。
アニポケでは人気なキャラですが、作者としてはあまり好きになれないキャラ。現実にこんな性格の人がいたら、少なくとも友達にはなりたいと思えない……。
~悪イルマ~
久々の登場。この小説では主人公の別人格という設定なので、暴太郎戦隊ドンブラザーズの闇ジロウくらいの頻度で登場する予定。
次回、イルマVSエクスプローラーズ戦(途中で元のイルマに戻す予定)になります。
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