魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター 作:MTHR
pixivに投稿しているリクエスト作の執筆する事に時間がかかりすぎて此方の執筆が送れてしまいました。
今回は悪イルマによるサンゴ戦になりますが、見方によってはサンゴアンチに思える描写があると思いますので、ご了承ください。
「………」
「ニャー……」
「ミッ……」
「パーゴ…?」
ブレイブアサギ号の展望室前で、リコは階段に体育座りの姿勢で座りながら俯いていた。そんな彼女の表情は、健全と言うものからほど遠いものであり、彼女のポケモンであるニャオハとミブリム、そしてリコに懐いているテラパゴスは心配そうにリコに寄り添う。
相棒達の気遣いに感謝しつつも、リコは浮かないか顔のままだった。
(何であんな態度取っちゃったんだろう……)
つい先程の出来事を思いだし、リコはますます表情を暗くする。
昨日、ロイ・イルマ・ランドウと共に海に遊びにいっていたリコは姿が見えなくなったイルマを探しているなかで、リコは偶然、同じ日に海に遊びに来ていたらしいイルマの幼馴染み・アメリに、イルマがキスをしている光景を目の当たりにしてしまったのだ。
その時から、リコの心の中にはモヤモヤした黒い感情が現れ、いてもたってもいられずにその場から逃げ出し、その後ライジングボルテッカーズ全員参加のバーベキューすら参加拒否して部屋に引きこもってしまったのだ。
そして今日の買い出しでは、何とか気持ちを落ち着けて、アメリと付き合いだしたのかと聞こうとしたが、何の因果かアメリとまた再開してしまい、その際に腰を痛めた海のディグダ饅の店の店長の介抱をしていた際に、仲良さげに話す二人を見て、リコは堪らず、再びその場から逃げ出してしまった。そんな自分を心配して、イルマは自分を追いかけてきて優しく声をかけてきてくれたのだが、何故かリコにはその優しさが辛く感じてしまい、拒絶の言葉を飛ばしてしまった。
(私……幼馴染みの親友にあんな態度取っちゃって……イルマはただ、私の事を心配してくれてただけだったのに……私って…最低だ……)
自己嫌悪に陥るリコの眼に、やがて涙が滲んでくる。
その時、リコの首筋に冷たいものが触れた。
「ひゃあっ!?」
「おっ、予想より声出たな」
「バ、バチコ!?」
思わず変な声を出してしまったリコが振り替えると、そこには両手に缶ジュースを一本ずつ手にし、ココアシガレットを咥えているバチコが立っていた。どうやら、冷たい感触の正体はこの缶ジュースだったようだ。
「な、何でここに……?」
「何でって……ここあっチ等ライジングボルテッカーズの家だし、そしたらお前がそんなところでラブストーリーのヒロインみたいな感じで落ち込んでたからよ……」
「ラ、ラブストーリーのヒロインって!?」
バチコの言葉にリコは顔を真っ赤にして慌て始め、バチコは「冗談だよ」と言いながら宥め、手にしていた缶ジュースの内の一つをリコに差し出す。
リコはおずおずとそれを受けとると、その缶ジュースを開け、中に入っているオレンジジュースを飲んでいると、ココアシガレットを食べたバチコももう片方の手に持つジュースを開けてそれを飲み始め、バチコはリコに話し掛ける。
「それで、どうしたんだよ?昨日から変だぞ?」
「そ、それは……」
「何か悩みがあるなら話してみろよ。あッチ以外の奴らも心配で仕方ねーって顔してたしよ」
バチコは面倒だというような雰囲気を纏わせながらも、展望室前の欄干に寄りかかりながらそう声かける。
(まぁ大方あのバカ弟子と何かあったんだろうし、この辺りでなんか進展でもしくれねーと見てるこっちももどかしくなるからなぁ……)
バチコとしては、悩み相談なんて面倒なだけだが、リコが思い悩んでいる原因が弟子のイルマにあるのなら師である自分もある程度フォローしてやった方がいいし、さっさと付き合えってくれないと見ているこっちがもどかしく思えてくるので、話を聞いてリコが少しでも積極的になれればなと思い、話を聞くことにしたのだ。
そんなバチコの気遣いに、リコは言いにくそうにしながら口を開く。
「えっと……これは友達の話なんだけどね……」
(ベタな誤魔化ししてんじゃねーよ……)
それは大体、本人の経験談を隠す時の常套句だ。しかし敢えてバチコはそれを指摘せず、「それでー?」と続きを促した。
「その友達には、小さい頃から一緒にいた男の子の幼馴染みがいるんだけどね……わた…自分以外にも、女の子の幼馴染みがいたんだ」
「んー……」
「でも…その幼馴染みの男の子が、その別の女の子と付き合い始めたらしくて……」
「……んっ!?」
「そっ、それでね……その友達が…偶然二人が……キス…してるのを見ちゃったらしくて……それから、ずっと心の中がモヤモヤしてて……幼馴染みに彼女ができたのを喜ぶべきなのに……そうなるのがスッゴく嫌だって感じてて…そしてら、自然と酷い態度とるようになっちゃって……」
(予想外に面倒臭い内容がきやがった……ってか、イルマに彼女が出来てキスってどういうことだよ!?)
何かハレンチなことが起きて気まずくなったのかと思えば、予想外に恋愛物語の定番的な面倒臭い展開が知らぬ間に起こっていたことに内心頭を抱える。話くらいなら聞くとは言ったが、特に恋愛とかの経験がないバチコにこういうハードなのは荷が重かった。
「バチコ……どうすればいいと思う?」
「いやー……どうって言われてもよ……って、何をどうするんだよ?」
「どっちを殺るか」
「ブフッ!?」
「ニャッ!?」
「ミッ!?」
リコの口から出てきたとんでもない言葉にバチコは飲んでいたジュースを吹き出してしまう。まさか、イルマに負けず劣らずのお人好しで平和主義者のリコの口から出てくる筈のない単語が出てきたのだ。リコをよく知るものが聞けば尚更だ。現に、ニャオハとミブリムは信じられないと言った様子でリコを見ていた。
「もし二人が付き合ってたらって考えただけで……耐えきれなくなって……いっそのこと、その人を殺して私も死ねば良いのかなって……って!友達が言ってたから!!」
「そ、そうかよ……(…やべぇな。このままにしてっとマジで殺りかねないな……)」
「……ニャオハ~~(……いい加減イルマもリコも素直になってくれないと取り返しの着かないことになるんだけど~~)」
あくまでも『友達の話』といいはるリコだが、それが自分もの話だと既に分かっているバチコは冷や汗をかきながら、ニャオハは唸りながら同じことを考える。即ち、このままじゃ本当にリコがイルマを殺して自殺しかねない。
バチコにとっては弟子の色恋になぜ自分がこんな事をしなければならないのかと思うが、このままでは色んな意味で不味いことになりそうなので何とか止めるように指示してやることにする。
(……ん?まてよ、あのバカ弟子に彼女なんて出来るのか?アイツもアイツなりにリコの事意識してるっぽかったし……)
イルマもリコ程でないが、リコに対して好意を持っているのはバチコも感じていた。
「……リコ、お前…の友達、その女と付き合ってるって本人の口から聞いたのか?」
「えっ?いや、それは…してないけど……」
「じゃあ、勘違いってことかもしんねーだろ?キスしてたのだって、人工呼吸とかじゃねーのか?」
バチコ、正解。
「勝手に決めつけるより、本人に直接話してみると良いんじゃねーの?知らんけど」
「最後なげやり……でも…そうだね。もう一度ちゃんと話してみる!…って、友達に言っておくね!」
正気に戻ったらしいリコに、バチコは安堵のため息を吐く。ニャオハ達も安堵している様子であり、バチコは町の方に視線を向け、海のディグダ饅を手にして船に戻ってくるフリードとロイの姿を捉えた。
(イルマの奴……何処で油売ってんだよ?)
リコがこんなめんどくさい事になってしまった原因たる人物に愚痴るように、バチコは心の中で呟いた。
一方で、イルマは現在、心の中に潜む別の人格・悪イルマとして、カビゴンを模した岩の前である人物と対峙していた。
「食べ物の恨みは怖いかんな?」
「オニ!」
「恨み?笑わせんな、ただの八つ当たりだろ」
「ラルゥ…!」
ピンクの髪をした少女──サンゴの上から目線な言葉に彼女のパートナー・オニゴーリが気合いを入れるようにその場でジャンプし、悪イルマが繰り出したポケモン・ラルトスはオニゴーリの気迫に気圧されながらも、気合いを入れるように声を上げる。
「……お手並み拝見と行くか」
その光景を、寡黙な雰囲気の大柄な男──オニキスが、相棒のポケモン・キョジオーンと共にその様子を見守っていた。
ラルトスVSオニゴーリ。一見するとラルトスの方が不利に思えるが、オニキスはオニゴーリがそう簡単にラルトスを圧倒できるとは思っていない。
何せ、イルマは手持ちのうちの一体が伝説のポケモン・オーガポンであり、オニゴーリと戦うのならお面チェンジで苦手な氷タイプの弱点を消せるオーガポンを使わずに未進化ポケモンのラルトスを繰り出したのだ。バールのレックウザ捕獲計画の際のイルマの映像を見せてもらっていたこともあり、イルマはサンゴを嘗めているからラルトスを繰り出したのではなく、何か考えがあるのだと見抜いていた。
「オニゴーリ、“ふぶき”!」
「ラルトス、“テレポート”!」
オニゴーリが極寒の冷気を放つと、ラルトスは瞬間移動を発動させてその場から姿を消す。空振りになった吹雪が地面を凍てつかせ、地面をスケート場のように凍らせる。
(やっぱ威力は高ぇな…性格はアレだが、伊達に幹部やってねーってことか……)
凍らされた地面を見て、悪イルマはそう考える。
たとえラルトスが全力で“れいとうパンチ”を行ったとしても、タイプ不一致ということも合わさってここまでの芸当はできない。それだけ、オニゴーリの技が強力だということだ。
だが、負けるつもりはない。表側の自分が敵対しているエクスプローラーズに屈するつもりはないし、そもそも訳の分からない因縁つけてきたのはサンゴの方なので、悪イルマとしては一回痛い目に合わせてやろうと考えている。
また、オニキスの存在も気になっていた。いかにも自由奔放そうはサンゴはまだ理解できるが、エクスプローラーズの幹部が一度に二人も現れるなんて、どう考えてもおかしい。以前のレックウザを操った事件のように、何か大掛かりな事を企んでいる可能性が高い。
(素直に話すかどうかは分かんねぇけど、少しでも情報を聞き出すためにも……さっさとコイツらをブッ飛ばさねーとな)
そう考えを纏めた悪イルマは、直ぐ様ラルトスに指示を出す。
「ラルトス、“ゆびをふる”!」
「ラッ!」
指示を受けたラルトスは脳を刺激させると、引き当ててそれを発動させ、周囲に発生させた炎をオニゴーリに向けて放つ。しかし、被弾したオニゴーリには全く効いている様子はない。
「ハズレか…!?」
「はっ、何かと思えば“ひのこ”かよ!そんなの効くはずないっつーの!オニゴーリ、もう一回“ふぶき”!」
ダメージが入っていないことから、悪イルマが表情を歪め、その様子からサンゴはラルトスが引き当てた技が“ひのこ”かなにかだろうと辺りをつけ、嘲笑いながら指示を出す。
「オニーー!」
「ラルトス、“テレポート”!」
「ラッ!」
オニゴーリが再び放ってくる吹雪を前に、ラルトスは再び瞬間移動でそれを避け、空振りになった地面が凍りつく。
その瞬間、オニゴーリに異変が起きる。
「オニ…!?」
「オニゴーリ!?」
オニゴーリの体が炎に包まれ、苦痛の表情を浮かべたのだ。状態以上の一つ、火傷状態だ。オニゴーリが喰らった炎技といえば“ひのこ”一発だけだったが、あんな低確率の技でオニゴーリが状態異常になるものかとサンゴが混乱していると、悪イルマはオニゴーリが状態異常になった理由に気付き、ニヤリと笑みを浮かべる。
「…成る程、さっきラルトスが“ゆびをふる”で出したのは、“ひのこ”じゃなくて“おにび”だったってことか。見事に化かされたな」
「…ッ!」
ラルトスが“ゆびをふる”で引き当てたのは“ひのこ”ではなく、ダメージがない代わりに相手に確実に火傷状態を起こさせる“おにび”だったのだ。これでオニゴーリは、時間が経つにつれて体力が消費していくようになってしまった。
「だったら、倒れる前にソイツをボコボコにすればいいだけだろ!オニゴーリ、“アイススピナー”!」
ラルトスにまんまと嵌められた事に歯を食い縛りながら、サンゴは攻撃を指示。オニゴーリは体を蝕む熱を我慢しながらも、“ふぶき”で造られた氷面の上で体を独楽のように回転させ、そのままラルトスに突撃した。
「ラッ!?」
「ラルトス!」
オニゴーリの回転攻撃が直撃し、ラルトスは溜まらず吹っ飛ばされ、氷の上を転がる。ラルトスは立ち上がろうとするが、足元の氷に手足を滑られ、再び倒れてしまう。
その隙に、オニゴーリは回転を止めず、そのままラルトスに突撃してくるのを見て、イルマは指示を出す。
「ラルトス、“ねんりき”!」
「ラルゥ~!」
「オニ…?」
指示を出されたラルトスはサイコパワーを操りオニゴーリの動きを封じる。回転が止まったオニゴーリは、その場に縫い付けられるように固定される。
「動きを止めたくらいじゃ無駄だっつーの!オニゴーリ、“ふぶき”!」
「オニーーーッ!!」
「ラルゥッ!!?」
「ラルトス!!」
オニゴーリが極寒の息を吐くと、ラルトスは“ねんりき”を解いてしまい、更にその吹雪の勢いに飛ばされ、表面の上を滑りながら後ろに下がっていく。ラルトスは近くの氷の破片を使って“アイスブレイド”を生成し、それを突き刺して踏み留まるが、オニゴーリの“ふぶき”は継続しており、やがてラルトスの体が凍り付き始めるのを見て、悪イルマは舌打ちをした。
(このままじゃ不味いな……仕方ない。作戦は中止にして、素直にオーガポンを…)
このままではラルトスの体力が限界に来てしまうと、悪イルマはたてていた作戦を中止して、素直にオーガポンによるごり押しに切り替えようとオーガポンにチラリと視線を向ける。
その時──ラルトスの体が青い光を放った。
「ッ!?」
「オニッ!?」
「なっ!?」
「これは……」
「キョ……」
その光景に、悪イルマとサンゴは目を見開き、オニゴーリは思わず“ふぶき”を止め、オニキスとキョジオーンは静かに光を放つラルトスを見つめる。
そんな中で、青い光を放つラルトスはみるみるとそのシルエットを大きくしていくと、光が弾けた。
「……キルキーールッ!」
現れたのは、裾に隠れていた水色の細く長い足が見え、スカートを模したようなものに変化し、頭部の水色の部分はツインテールのような形状に変わったことでオレンジ色の瞳が露になり、オレンジ色の角がハートマークを模したように、横に並んだ物となった。
「進化したか…!」
『キルリア。かんじょうポケモン。エスパー・フェアリータイプ。サイコパワーを操り、周りの空間をねじ曲げる事で未来を見通すことが出来る。トレーナーの明るい気持ちがサイコパワーの源で、楽しい気分になるとクルクル踊る』
悪イルマはスマホロトムで姿を変えたラルトス───【キルリア】の情報を検索すると、キルリアは悪イルマの方に視線を向ける。
「……キル!」
「……フッ、気合い十分ってことか…なら、このまま続行してやるか」
キルリアがまだバトルをする気だと察した悪イルマは不適な笑みを浮かべ、
「オニ…!」
「ハッ、ちっこいのが進化してオニゴーリが火傷でも、サンゴが負けるわけないっつーの!オニゴーリ、“ふぶき”!」
ラルトスの進化に僅かに驚いていたオニゴーリとサンゴだったが、すぐに気を取り直したサンゴが指示を出すと、オニゴーリは再び極寒の吐息を吐く。
「かわせ!」
「…キルッ!」
対するキルリアは、氷面に突き刺して自身を固定していた氷の剣を砕いて氷の上に置くと、そこに足を乗せ、猛スピードで氷の上を滑っていく。その姿は、さながらフィギュアスケーターのようだ。
氷面を滑るキルリアを追って吹雪を吐き続けるオニゴーリだったが、遂に変化が現れ始めた。
「オニ……ッ!!」
「オニゴーリ!!」
体を蝕む熱が、技を放っていたオニゴーリの動きを止めた。火傷状態のストリップダメージが、遂にオニゴーリも無視できない程に溜まってきていたのだ。
「ハッ、オニゴーリもそろそろ限界みたいだな。後は倒れるまで踊るだけだ」
「なめんなっつーの!オニゴーリ、“アイススピナー”!」
悪イルマが、このまま火傷のストリップダメージでオニゴーリの体力を削りきるつもりだと察したサンゴはオニゴーリに突撃を指示。
オニゴーリは駒のように回転し、突撃する。火傷状態の効果で物理技の威力が低下しているとは言え、キルリアもラルトスの時に受けていたダメージで消耗しており、確かにこの一撃を受ければキルリアもダウンは逃れられず、氷の上を回転して迫るオニゴーリは瞬く間にキルリアとの距離を積め、後数センチでキルリアに激突しようとした時……
「今だ!キルリア、“テレポート”でオーガポンと交代だ!」
「キルルゥ!」
「ぽにぃっ!!」
「なっ!?」
キルリアの姿がその場から消え、入れ替わるようにオーガポンが現れたのだ。
竈の面に変身したオーガポンは迫り来るオニゴーリに向け、瞬時に取り出した棍棒を振り抜いた。
「オーガポン、“ツタこんぼう”!!」
「ぽにーーーっ!!」
「オニーーーッ!!?」
オーガポンの炎の棍棒が、突撃していたオニゴーリの顔面にぶち当たり、オニゴーリはまるで壁にぶつかったスーパーボールのように吹き飛び、地面の氷を砕きながら地面を滑り、サンゴの前で勢いを止めた。
「オニゴーリ!?」
「オ、オニ…!」
「…チッ、押しきれなかったか」
サンゴが呼び掛けると、オニゴーリはふらふらと浮遊しながら起き上がった。効果抜群の炎技を受けたらしいが、どうやら耐えたらしい。並大抵のポケモンならこれでノックアウトは免れられない筈だが、伊達にエクスプローラーズ幹部は名乗っていないのだろう。
「テメェ!いきなり交代とか反則じゃねーか!」
「反則じゃねーよ。“テレポート”の能力で、オーガポンと入れ変わったんだよ。まぁ、ここで進化するなんてのは俺も予想外だったけどな……」
サンゴの言葉に、悪イルマはフフンと鼻を鳴らす。
打倒サンゴの為に仕掛けた悪イルマの策、それは『ラルトスという弱い印象を与えるポケモンで相手を油断させてから、有利なポケモンを交代させて一気に倒す』と言うものだ。
“テレポート”は、瞬間移動の他に、自分の手持ちポケモンと入れ替わるという能力がある。ボール経由だと一度戻しておかなければならないという隙を相手に与えるデメリットがあるため、一瞬で入れ替われる“テレポート”を使い、オニゴーリとサンゴの隙をついたのだ。
勿論、その為には自分以外の者をテレポートさせるにはその対象者に触れてなければならないという条件があるラルトスが、本来の“テレポート”を発動させるのは一種の賭けであり、悪イルマの言っていた『冒険』である。しかし、悪イルマも予想だにしていないラルトスからキルリアの進化のより、サイコパワーを扱いが上手くなったキルリアは“テレポート”を完全に使いこなせるようになったのだ。
「まぁ、かなり危うい賭けだったが…今回は勝てたって事だな。さぁ、ここらでトドm」
「いいや、ここまでにしてもらおう」
「キョー……!」
そこで、悪イルマが懐に手を入れたとき、サンゴの隣にオニキスが立ち、キョジオーンがオニゴーリの前に立つ。
「増援か……オーガポン、下がれ」
それを見た悪イルマは、
「お前は予想以上に危険だ……まさかサンゴを倒すとはな。ここからは俺が相手をしよう」
「邪魔すんなよ!コイツはサンゴが倒すって言ってんだろ!」
「無理だな。今のオニゴーリの状態を見れば明らかだ」
オニキスの言う通り、オニゴーリはオーガポンの強力な攻撃を受けてもはや体力はギリギリ。しかもまだ火傷状態が継続しているため、このまま戦ってもオニゴーリが倒れるのは必然だった。
それを見た悪イルマは、面白いことを考えたと言うような表情で、オニキスに話し掛けた。
「フッ、成る程な。お前はそこの
オニキスを評価しているなかで、然り気無くサンゴをディスる悪イルマの言葉に、サンゴの中で「ブチッ!」という音がした。
「はあぁぁぁぁっ!?オニギレなんですけどぉぉッ!!?」
「ッ!落ち着け、サンゴ!!」
「オニゴーリ、“じばく”ぅーーーっ!!!」
その瞬間、体力が残り少なかったオニゴーリが、大爆発を起こした!!
アクション映画顔負けの凄まじい爆発音と衝撃波が辺りに轟き、辺り煙が包み込む。
「キルリア、“テレポ…!」
「くふぅ!?」
「キルッ!?」
「ぽっ!?」
「ぶ、ぶい!」
巻き込まれそうになった悪イルマがキルリアの“テレポート”を指示し、瞬間移動で安全圏に逃げようとした時、彼の懐から飛び出した影が、悪イルマと彼のポケモン達を抱え、その場から離脱した。
「……サザンドラ、か……」
「サザ…」
爆煙が届かない空で、悪イルマが自身を助けてくれた人物に目を向けてみると、それはモンスターボールに入っていたサザンドラであった。サザンドラはイーブイを抱える悪イルマをお姫様抱っこのように抱え、その背中にはオーガポンとキルリアの姿がある。その隣では、自身の翼で飛んでいるフクスローの姿があった。
「ありがとよ、サザンドラ……それじゃあ、仕上げといくか」
悪イルマは目下に目を向けてみると、そこにはオニゴーリの自爆によって発生した黒煙が漂っており、悪イルマは直ぐ様サザンドラの背中にいるキルリアとオーガポンに目を向けた。
「キルリア、煙の中からキョジオーンの位置を特定してくれ!」
「キルッ!」
「オーガポン、お前はキルリアが示した方向に向かっていけ!」
「キルッ!キルキル!」
「ぽにおーーっ!」
その言葉と共に、キルリアはキョジオーンの感情をキャッチして特定した位置を、碧の面に変えたオーガポンに伝え、サザンドラの背中から飛び降りたオーガポンを見て、悪イルマはテラスタルオーブを取り出した。
「オーガポン、アブノーマルで行くぜ!」
その言葉と共に悪イルマがテラスタルオーブをオーガポンめがけて投げると、テラスタルオーブから溢れだした光が鉱石となってオーガポンを包み込み、オーガポンは目前に巨大な碧の面を浮かばせた姿に変化した。
「“ツタこんぼう”!!」
「ぽにーーーっ!!」
オーガポンは棍棒に巨大な碧のオーラを纏わせ、一気にそれを振り下ろした。
効果抜群の草タイプの技がキョジオーンに迫るのを見て、悪イルマが決まったと思った時…
「キョジオーン、“ワイドガード”!」
「キョッ!!」
「なっ!?」
「ぽにおっ!?」
オーガポンが振り下ろした棍棒を、キョジオーンは光の障壁を発生させて防ぐ。しかし、上からの急降下の勢いが加算されて掛かってきた棍棒の威力は凄まじく、キョジオーンはバリアを発生させていてもその威力と衝撃を抑えられず、キョジオーンの足元の地面が没落し、クレーターが出来上がる。
「まさか、この不意打ちに対抗できるとはな……伊達に幹部は名乗ってねーわけか」
「…こちらとしても、サンゴの短気を利用して“じばく”を誘導して隙を狙うとはな。単にバトルが強いだけでなく、狡猾な面も持ち合わせているようだな」
「使えるものは何でも使う…それが
サザンドラの抱き上げられながら、悪イルマは得意気に笑う。
「…けど、そろそろ疲れてきた。後は『僕』に任せるとするぜ……」
その言葉と共に、悪イルマは目を閉じると、再び目を覚ました。
「…あれ?僕、さっきまで何してたんだっけ……あっ、そうだ。エクスプローラーズ!」
『イル坊!やーっと元に戻ったんだな~!』
「ぶいぶい~!」
「キルキル~!」
「えっ?フクスロー!?サザンドラ!?って、何でキルリアがここに!?何これ、本当にどういう状況!?」
悪イルマから元の人格に戻ったらしいイルマに、フクスローが喜び、イーブイとキルリアが嬉しそうにイルマに飛びつくが、イルマは記憶が飛んでいる間に普段ボールから出ようとしないサザンドラに抱えられて空を飛んでいて、見知らぬ色違いのキルリアというその状況がよく分からずに目を白黒させると、ようやく眼下にいるオーガポンと対峙するエクスプローラーズの存在に気付いた。
「あんなところにエクスプローラーズ…!サザンドラ、一回下ろしてぇええっ!?」
イルマが言おうとしたところで、サザンドラは猛スピードで急降下し、地面スレスレの所でイルマから手を離した。
「ぶへっ!?」
地面に顔を打ち付けたイルマは顔を抑えながら立ち上がると、そこにはテラスタルが解除されたオーガポンの背中と、こちらを向いているオニキスとサンゴ、キョジオーンの姿があった。
「オーガポン、まだやれる?」
「ぽに……ぽにぽにッ!」
オーガポンはイルマが元に戻ったことに一瞬嬉しそうな顔をするが、すぐに気を取り直してエクスプローラーズに向き直った。
その時、オニキスの右足にあるレッグポーチから、警報のような音が鳴り出した。それに目を向けたオニキスは、取り出したモンスターボールをキョジオーンに向ける。
「戻れ、キョジオーン」
「ッ!?」
突如キョジオーンをボールに戻したオニキスにイルマが目を見開くなか、オニキスはサンゴに声をかける。
「戻るぞ、サンゴ」
「はぁっ!?ここまでされて引き下がれるわけねーじゃん!」
「オニゴーリが“じばく”で倒れているだろう。それに、これは最優先任務だ」
「あの島何もねーし、ホント嫌なんだけど!」
「最優先だ。オニゴーリも回復させておかなければならない」
「
「レックウザを呼び出す!?」
サンゴが口にした言葉に、流石に無視することが出来ずにイルマが声を上げると、サンゴは得意気な表情でイルマに顔を向けた。
「黒いレックウザを呼び出すことだよ!そんなことよr──」
「連れていけ」
「ん?ってコラっ!何すんだよ!放せ!!」
その時、オニキスが新たに【プテラ】をボールから出して、プテラにサンゴを子猫を運ぶ猫のように咥えさせると、そのままプテラは何処かへと飛び去っていく。
サンゴはモンスターボールに気絶したオニゴーリを戻しつつ、プテラの背中に乗るオニキスに「もっと丁寧に扱え!!」と騒ぎ、そのままプテラは何処かへと飛び去っていき、イルマ達は呆然とその後ろ姿を見つめていた。
「黒いレックウザを呼び出すって……一体……!?」
自分の中に眠るもう一人の自分──悪イルマのお陰で窮地を脱することが出来たが、サンゴが口にした「レックウザを呼び出す」という不吉な言葉に、イルマは言い知れぬ不安を感じて、仲間達に連絡を取るためにスマホロトムを取り出した。
~ラルトス、進化~
本当はもう少ししてから進化させようかと思いましたが、少し予定を早めて今回進化させました。一応、新技を覚えさせていますが、その技の披露は別の機会になります。
~オニゴーリ自爆~
原作アニポケを見てみて、キレたりすると自爆させるのではないかと思って、このように書きました。
感想、評価お待ちしております。