魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター   作:MTHR

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 お待たせして申し訳ございません。
 pixivで次から次へとリクエストが来て、そちらの対応や執筆に時間を取ったり、就活の面接があり、更にはウイルス性急性結膜炎を患って専門学校が休みになってしまったりと、色々な事が重なり執筆が大幅に送れてしまいました。
 これからもまた遅くなるかもしれませんが、頑張ります。今回のサブタイトルは、仮面ライダーフォーゼを意識しております。

 そして、アニポケではゼイユ達だけでなくシンクロマシン登場……キタカミ編で出ることないだろうとこの作品で出したのに、ロイがアチゲータと入れ替わる事になるとは思いませんでした。
 この先、どうしようかと本気で悩んでいます。


リコ「え、MTHRさん!悩むのは分かるけど、くれぐれも体には気を付けてね!」

イルマ「それでは、久々の魔入りました!入間くんifアニポケ第60話をどうぞ!」


60話 激・闘・開・幕

「共鳴発生装置?」

 

 電灯の一つもない真っ暗な部屋のなかで、イルマの呟きが響き渡る。

 

「えぇ、これまでのデータを解析し、テラパゴスがレックウザを呼ぶ際に発するエネルギーを再現しました。後は、古のモンスターボールを手に入れれば作戦は開始できる……」

 

 その言葉を聞き、余裕綽々といった態度を崩さずにイルマが復唱した単語の内容を語るのは、イルマをこの部屋に閉じ込めた張本人であるエクスプローラーズ幹部のスピネル。彼のパートナーであるブラッキーの模様の光だけが、この真っ暗な部屋の中での唯一の光源だった。

 

「レックウザを相手にその余裕……やっぱりいるんですね?レックウザを操る唯一の術…モモワロウが」

「えぇ、キリヲ君がつれているモモワロウなら、レックウザを洗脳できる事は実証済みですからね」

「同じ手がレックウザに通用するとでも?」

「だからこそですよ。その点を考慮したからこそ、今回はエクスプローラーズの腕利きが四人も揃えたんです。確実にレックウザを仕留められます」

「……意外ですね。貴方は他人に信頼を寄せるタイプだなんて」

 

 合理主義者だという印象を抱いていたスピネルから仲間を評価するような言葉が出てきたことに意外そうな顔をするイルマだが、その言葉にスピネルは嘲笑を返した。

 

「バカなことを……全て私が利用しているんです。私は…黒いレックウザを戦わずして手に入れます…!」

「……前言撤回。僕は貴方みたいな人…大っ嫌いですよ」

 

 同じ組織の仲間を堂々と利用すると吐き捨て、目的のためなら卑劣な手段を取ることも厭わないスピネルに、最早イルマの彼に対する好感度はゼロを通り越してマイナスへと降りきっていた。

 

「おやおや、手厳しいお言葉ですね……ブラッキー!」

「ブラァ…!」

「いぶ…!」

 

 スピネルの呼び掛けに、彼の相棒であるブラッキー構えに出て唸り声を上げ、自分の進化系の一つでもあるポケモンの登場に、イルマの鞄の中には入っていたイーブイはジッとブラッキーの姿を見つめる。

 イルマ達も、世間では人気の高いブラッキーから発せられる威圧感に、このポケモンは相当な手練れだと察して冷や汗を流す。六英雄など、桁違いに強いポケモンとバトルを繰り返していたからこそ分かる。このブラッキーは間違いなくキャップにも匹敵しうる強敵だと。

 

「やるしかない……」

「フフフ……勝てますかね?今の君に。キルリアは気絶し、この狭い空間ではフクスローの機動力は役に立たず、テラスタルオーブのエネルギーが尽きてオーガポンの真価は発揮できない。未進化のイーブイに言うことを聞かないサザンドラ……君の才能は認めますが、私のブラッキーが君達に負けるはずがありません」

 

 いつの間にかそこまで調べられていたらしい。

 確かにスピネルの言う通り、ここから脱出する手段であったキルリアがノックダウンしてしまった以上、イルマは力ずくでここを出なければならないのだが、今はのイルマの状況は圧倒的に不利だ。

 

「それでも、負けるわけにはいかない……!」

「くふぅ!」

「ぽに!」

「ぶい…!」

 

 自分が置かれた状況に冷や汗をかきつつも、イルマは仲間達と共に、鋭い目でスピネルとブラッキーを睨み付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カビゴンを模した岩が一目を引く草原で、赤と緑の小さな獣型のポケモン達と、人型のポケモンがぶつかり合っていた。

 

「ニャオハ、“マジカルリーフ”!」

「ホゲータ、“かえんほうしゃ”!」

「ニャーーッ!」

「ホゲーーッ!」

 

 ニャオハの放った莫大な葉の嵐と、ホゲータの放った炎が、同時に目の前にたつ赤い鳥人のようかポケモン──バシャーモに向かっていく。

 二つの技が今まさに直撃しようとした時、バシャーモのパートナーである銀髪の女性が、ボソリと呟いた。

 

「バシャーモ……“ブレイズ…キック”……」

「バシャ!」

 

 その女性の指示を聞いた瞬間、バシャーモは跳び上がり二つのを回避する。ホゲータの炎は避けることが出来たが、ニャオハの放った必中の葉がバシャーモを追って来るが、バシャーモは炎を纏った脚で蹴りを繰り出す“ブレイズキック”を回し蹴りの要領で行うことで“マジカルリーフ”を燃やし尽くすと、バシャーモは身体を支えている脚で跳び上がり、ニャオハとホゲータに向けて未だに燃え盛る脚を振り下ろした。

 

「ッ!ニャオハ、“でんこうせっか”で避けて!」

「ニャアッ!!」

「ホゲッ!?」

 

 直前でそれを察知したリコの指示で、ニャオハは高速移動を発動しながらホゲータを体当たりで突き飛ばし、自信もその場から離れる。

 次の瞬間、バシャーモの脚が振り下ろされ、その場で爆弾が爆発したような衝撃波が巻き起こる。

 

(速い上に技の威力が高い……この人、コニアやジルとはレベルが違う……!)

 

 バシャーモの足元の草が無惨にも焼き焦げて小規模のクレーターを作っているのを見て、リコは相手の並々ならぬ実力を看破して表情を引き締める。軽く見積もっても、何度か自分の前に現れているアトリという男と同レベルの実力と見て間違いないだろう。ニャオハとホゲータでは厳しい相手だ。

 その時、立ち上がったバシャーモの体から、赤いオーラが沸き上がる。

 

「な、何だあれっ!?」

「バシャー…モの…特性…“かそく”…」

「それって確か、時間が経てば経つほどスピードが上がる特性!?」

 

 銀髪の女性の言葉から、リコは前に習ったその特性の効果を思いだし、冷や汗を流す。

 “かそく”はバシャーモの隠れ特性で、時間が経つほどスピードが上昇する特性だ。シンプルだが強力な特性であり、アメジオのソウブレイズの“くだけるよろい”のように防御力が下がるデメリットもない。つまり、時間が経てばバシャーモの素早さが増し、こちらが向こうのスピードについていく事が出来なくなるということだ。

 相手の特性の厄介さを知り表情を強張らせるリコとロイに、銀髪の女性は無表情のまま話し掛ける。

 

「……このまま…テラパゴ…スと…古のモンスターボールを渡すなら…怪我はさせない…」

 

 これは、女性なりの優しさだった。

 このまま大人しくテラパゴスと古のモンスターボールを渡せば見逃す、決して手荒な事はしないと伝える。

 無表情ながらも、彼女はその言葉を声に出さなくともリコとロイに切実に伝えており、リコとロイは今まで対峙してきたエクスプローラーズとはまるで違う印象を抱かせるその視線に僅かに戸惑いのようなものを見せるが、直ぐに意を決して銀髪の女の言葉に答えた。

 

「そんなこと、絶対に出来ません!私は、テラパゴスの願いを叶えてあげたいから!」

「パーゴ……」

「黒いレックウザは僕の夢なんだ……この古のモンスターボールもレックウザも、お前達エクスプローラーズには渡さない!!」

 

 リコはリュックの中のテラパゴスを隠すように、ロイは古のモンスターボールを握りしめながら答える。

 銀髪の女はしばらくの間その顔をジッと見つめているなかで、これ以上彼女達にテラパゴスと古のモンスターボールを渡すように声をかけても、二人は一歩も譲ることはないと悟ると、無表情だった表情を変えて、残念そうにため息を吐いた。

 

「そう……。なら…力…ずくで…貰う……“かわらわり”」

「バシャッ!!」

「ホゲータ、“チャームボイス”!」

「ッ!ニャオハ、“アクロバット”!」

「ニャーーンッ!」

「ホゲ~~ッ!」

 

 銀髪の女の指示が聞こえたと同時に、バシャーモは“でんこうせっか”にも匹敵する速度で飛び出し、ニャオハとホゲータに向けて空手チョップを繰り出そうと右手を構え、それを見たリコとロイは迅速に指示を出し、ニャオハは軽やかな動きで飛び出し、ホゲータは美しい歌声を響かせる。

 フェアリータイプの“チャームボイス”はほのおタイプのバシャーモには半減されるが、かくとうタイプも持つ事でプラマイゼロとなった“チャームボイス”が直撃したことでバシャーモが足を止め、その隙を狙ったニャオハが素早く身軽な動きで相手に連続攻撃を食らわせるひこうタイプの技で攻撃しようとするが……

 

「バッ!」

「ニャッ!?」

 

 バシャーモは僅かに体をそらす程度の動きでニャオハの攻撃を回避すると、そのまま体を回転させて、ニャオハに鋭いチョップを食らわせた。

 飛び掛かろうとしていたニャオハはスーパーボールのように跳ね返さるが、ニャオハは何とか空中で体勢を立て直し、着地する。しかし、その表情は苦痛で歪んでいた。

 

「ニャオハ、大丈夫!?」

「ニャオ……ニャッ!」

 

 リコの呼び掛けに、ニャオハは直ぐに頷くようにして答える。

 

「(動きが早い……単に“かそく”で速くなってるだけじゃなくて、あのバシャーモが完全にこっちの動きを見切ってるんだ……!)ニャオハ、走りながら“マジカルリーフ”!」

「ホゲータ、“じだんだ”!」

 

 距離を取っな戦いを選択したリコは、ニャオハのスピードを活かしてからの必中の葉の嵐を飛ばす戦法を選び、ロイも同じ事を考えたのかホゲータに遠距離攻撃を仕掛けさせる。

 

「バシャッ!」

 

 しかし、バシャーモは二つの技が同時に直撃しようとした絶妙なタイミングで後ろに飛び、互いの技の勢いが止まらずにぶつかり合ったことで爆発が起こり、ニャオハの追尾機能を持つ“マジカルリーフ”も打ち消されてしまった。

 

(今のを簡単に避けるなんて……ッ!)

(ロイ、バラバラに攻撃してたんじゃあさっきの二の舞だよ。連携して戦おう!)

(う、うん!)

 

 バシャーモが“かそく”の効果でさらに速度な上昇する様子を見て、リコは銀髪の女性に悟られないように小声でロイに声をかけると、ロイが頷く。

 同時に、ロイがホゲータに指示を出した。

 

「ホゲータ、もう一度“じだんだ”!」

「ホゲゲーーッ!」

「そんな……攻撃……当たらない……」

 

 再び地面を踏み鳴らし、石の欠片を飛ばすホゲータ。

 それを見た銀髪の女性は、芸の無い力押しをする気かとつまらなそうにホゲータを見たあと、相棒のバシャーモと眼を見合わせる。

 

「バシャ……」

 

 その視線だけで彼女の意図を理解したバシャーモは、俊敏な動きでホゲータの飛ばした石の破片を回避しながらホゲータに接近し蹴りを浴びせようとするが……

 

「ニャオハ、“アクロバット”!」

「ニャーー!」

「バッ!?」

 

 岩影に身を潜めていたニャオハが軽やかな動きでバシャーモに飛びかかり、それを直前で察知したバシャーモは体を回転させて、ニャオハの不意打ちを回避した。

 

「まだまだだホゲータ、“チャームボイス”!」

「ホゲーーッ!」

「バシャ!」

 

 ロイの指示を受けたホゲータが美しい歌声による音波を放ち、それをバシャーモが素早い動きで走り出してその音波の直撃を避けると、そこに別の声が入り込んできた。

 

「ニャオハ、“マジカルリーフ”!」

「ニャーーッ!」

「バシャッ!?」

 

 リコの指示と共に、バシャーモが着地した先に葉の嵐が飛んできて、高速で追尾する葉に驚いたバシャーモは対応が一瞬だけ遅れてその攻撃がヒットする。

 その様子を見て、銀髪の女性は表情を変えないまま、感心するような目でリコとロイの二人を見る。

 

(片方の攻撃をバシャーモが回避した一瞬だけ動きが止まる瞬間を狙った……数の利を生かした戦法……)

 

 最初のように考えなしに突撃するならバシャーモの相手ではなかっただろうが、どうやら向こうは自分が思っていたよりも実力を上げているらしい。

 更に、苦ではないがニャオハとホゲータの技を避けるのが少し難しくなってきているバシャーモを見て、銀髪の女性は目を見張る。

 

(技を撃つ速度が早くなってる……悪くない……)

 

 幹部の地位には就いていないが、エクスプローラーズの中ではコニアやジルよりも遥かに高い実力を持つ銀髪の女性にの目から見ても、この短時間の間にも連携の精度を上げつつある二人と、そのパートナーであるニャオハとホゲータは評価するに値するものだ。イルマの注目度が高すぎていたが、この二人もこれからの育成次第ではかなりの大物になれるだろう。

 だが、彼女達の才能はまだ開花しきっていないのが問題だった。

 

「…バシャーモ……蹴るよ」

「バシャッ!」

「ホゲッ!?」

 

 呟くような銀髪の女性の言葉を聞いたバシャーモは、まるでブツ切りにしたフィルムのようにホゲータと距離を積めたのだ。

 目で追うどころか、動き出す瞬間を見切ることも出来ないバシャーモの規格外の速度に度肝を抜かれたホゲータは、目の前に立つバシャーモの姿と威圧感に気圧されてしまう。

 

「バシャッ!!」

「ホゲェエエエエエエッ!?」

「ホゲータ!?」

 

 同時に、バシャーモの“ブレイズキック”が炸裂し、ホゲータはゴロゴロと地面を転がる。

 ロイが悲鳴を上げたその瞬間には、バシャーモがその場から姿を消しており、辺りから草原を蹴り上げる音と共に、特性“かそく”の影響でスピードを上げたバシャーモが、赤い閃光となって駆け回っている事に気づいたリコは、蹴り飛ばされたホゲータの無事を願いつつ、ニャオハに指示を出す。

 

「ニャオハ、“でんこうせっか”で撹乱して!」

「ニャーー!」

 

 指示を受けたニャオハは高速で走り出し、右へ左へと縦横無尽に走り回ることで、今も姿が捉えられないバシャーモの狙いを定められなくさせようとする。

 

「バシャーモ……地面を…蹴って」

「バシャッ!」

 

 その瞬間、赤い閃光となって草原を走り回っていたバシャーモが動きを止めて草原の真ん中に姿を現すと、振り上げた炎を纏わせ、それを勢いよく振り下ろした!

 

ドォオオオオオオオオオンッ!!!

 

「ニャアァアアアアアアアッ!!?」

「ニャオハ!!」

 

 振り下ろされた炎の足が地面に突き刺さり、地面にクモの巣状の亀裂が入れられ、炎が吹き出す。イルマとオーガポンも時たま使う足場を奪う戦法により足場を失ったニャオハは隆起した地面により空中に投げ出される。

 

「“ブレイ…ズ…キック”……」

「バシャッ!」

 

 空中のニャオハに向けて、バシャーモは再び足に炎を纏わせた蹴りを繰り出そうとする。

 

「ニャオハ、バシャーモの顔に“マジカルリーフ”!!」

「ニャーーーンッ!!」

「バッ!?」

 

 空中で、ニャオハが放った小規模の“マジカルリーフ”がバシャーモの顔に直撃し、くさタイプの技ゆえにダメージは半減されているとはいえ、突然の不意打ちに怯んだバシャーモは一瞬だけ足を止めてしまい、その隙にニャオハは地面に降り立ってバシャーモから距離を取る。

 同時に、バシャーモに蹴飛ばされたホゲータが戻ってきて、ニャオハの隣に並び立つ。

 

「……お見事」

「バシャ」

(何とか距離を取ったけど、あの余裕……完全に遊ばれてる……)

 

 パチパチと手を叩く銀髪の女を見て、リコは自分と相手の実力差を悟り、表情を険しくする。

 何とかノックアウトは避けられたが、バシャーモと銀髪の女の余裕な表情を見る限り、まだ相手は半分も本気を出していない事が伺える。実力の差は歴善だった。

 

「でも……それもここまで……いつ…までも…時間…を…かけられない」

「「ッ!」」

 

 銀髪の女性の目が鋭くなったのを見て、リコとロイの表情が強張る。

 

「バシャーモ……“かえんほうしゃ”…」

「ッ、ホゲータ!“かえんほうしゃ”!」

「バシャーッ!」

「ホゲーーッ!!」

 

 同時に、バシャーモとホゲータは口から強力な炎を吹き、互いの中間地点でぶつかり合った炎が拮抗する。

 

「ニャオハ、“でんこうせっか”!」

「ニャーー!」

 

 “かえんほうしゃ”でバシャーモが動けなくなった隙をつき、ニャオハは高速で走り出す。

 

「バシャッ!」

「ニャア!?」

 

 しかし、ニャオハがバシャーモに突撃を食らわせようとした瞬間、バシャーモは“かえんほうしゃ”を中断させて飛び上がり、ニャオハの“でんこうせっか”を空振りで終わらせる。

 

「バシャッ!!」

「ニャーーーッ!!?」

「ニャオハッ!!」

 

 空中で体を回転させバシャーモの“ブレイズキック”が炸裂し、蹴り飛ばされたニャオハは地面を滑りながら倒れ、リコが悲鳴を上げる。

 

「この……ホゲータ、“じだんd…」

「バッ!!!」

「ホンゲェッ!?」

 

 ロイの指示が終わるよりも速く、バシャーモは瞬きをする間にホゲータの前にやって来て、その脳天に“かわらわり”を炸裂させる。

 頭に強力な手刀を叩き付けられたホゲータは、グラリと体を傾けさせると、ドサッと言う音を響かせながら仰向けに倒れる。

 

「ニャオハ!!」

「ホゲータ!!」

「ニャ……ニャオハ…!」

「ホゲ……!」

 

 リコとロイが慌ててニャオハとホゲータのもとへ駆けつけ、二人の声を聞いたニャオハとホゲータは、全身の痛みに耐えながら、何とか立ち上がる。

 しかし、二体の前で威風堂々とした雰囲気を纏いながら立つバシャーモを相手に、この二体ではどうしても無理があった。

 

「勝負は…ついた……テラパゴスと…ボール……渡して……」

 

 まだニャオハとホゲータは気絶していないが、確かにここまでの実力差なら既に勝敗は決まったようなものだ。

 

「…絶対に、渡さないっ!!」

「…意思…は強固でも……今の君達じゃ…僕はおろか…レックウザ…にも勝てない……レックウザを…エクスプローラーズが…手に入れる……君達の力…で…望みは叶えられない……」

 

 銀髪の女の冷酷な…しかし反論の余地がない言葉に、リコとロイは歯を食い縛る。

 確かに、リコとニャオハ、ロイとホゲータはこの銀髪の女とバシャーモを相手に手も足も出せずに追い詰められている。それなのに、更に格上である黒いレックウザを倒すことなんて出来る筈がない。そんな2人に、テラパゴスの願いを叶えることも、黒いレックウザをゲットすることも出来ないと言われ、リコとロイは、決然とした表情で銀髪の女性の言葉に答えた。

 

「私は……まだ弱いかもしれないけど…諦めない……!テラパゴス(この子)の願いを叶えたい……どんなに険しくても、貴方達みたいな悪い人達が立ちはだかっても、絶対に諦めません!!」

「そうだ……レックウザは、僕とホゲータの冒険の切っ掛けで…僕達の夢なんだ!レックウザの力を悪いことに使おうとしているお前達に、レックウザは渡さないし……僕もホゲータも、レックウザをゲットするまで諦めてたまるもんか!!」

 

 二人の決意に満ちた声を聞き、ダメージが大きすぎて立っているだけでも困難だったニャオハとホゲータは体を振るわせながら体勢を立て直し、臨戦態勢を取ると、体から各々緑と赤のオーラが立ち上ってきたのだ。

 同時に、ニャオハとホゲータはリコとロイの決意に答えるように、大きく息を吸い込んで声を張り上げた。

 

「ニァア………ニャアァアアアアアアアアアアアアアッ!!」

「ホゲー………ホォォゲェエエエエエエエエエエエッ!!」

 

 二体の雄叫びが、草原に響き渡る。

 その時、不思議なことが起こった。傷だらけだったニャオハとホゲータの体が青い光に放ち、みるみるとそのシルエットを変えていくではないか。

 

 やがて、二体のシルエットが大きく変わり、青い光が弾けると、そこから新たなポケモンの姿が現れた。

 

「ニャアッ!!」

 

 ニャオハは、四足歩行から二足歩行で立ち上がるようになり、首元の体毛は長く伸びてスカーフ状に変化している。

 目は吊り上がって凛々しい顔立ちになり、スタイリッシュさと可愛さを兼ね備えており、手首からは先端にピンク色の蕾が付いた長い蔦が生えており、普段は体毛の中に忍ばせて収納している。そうして首元にマウントした蕾は、大きなバッジのようなチャームポイントのポケモンに……

 

「アチィッ!!」

 

 ホゲータは、体型はほとんど変わっていないがやや太くなり、炎エネルギーを生み出す黄色い鱗も背中を覆うほどに増加。頭から漏れ出る炎エネルギーも爆発的に拡張し、タマゴ状の火玉を中心にしたソンブレロ状になって、なんともメキシカン漂う姿に変化した。

 

「ニャオハ……進化したんだ!」

「ホゲータ…!凄いよ!!」

 

『ニャローテ。くさねこポケモン。くさタイプ。長い体毛の下に隠したツタを器用に操り硬いつぼみを敵に叩きつける。体毛の硬さは気分で 変わり、臨戦態勢になると針のように鋭利に尖る』

 

『アチゲータ。ほのおワニポケモン。ほのおタイプ。炎エネルギーと有り余る生命力が交じり頭上にタマゴ型の火玉が現れた。声帯と炎袋の弁は 密接な関係で、だみ声を上げながら炎を 吐き散らす』

 

 進化した相棒の姿に、リコとロイはスマホロトムで情報を調べながら潤んだ瞳を向けるも、直ぐに気を取り戻し、目の前に立つバシャーモを見据えた。

 

「いくよニャローテ…!“マジカルリーフ”!!」

「ニャーーッ!!」

 

 ニャローテが蕾がついた蔓を伸ばすと、そこから莫大な葉の嵐が吹き荒れる。ニャオハの時よりも遥かに規模が大きい。

 

「バシャ…ッ!?」

 

 迫り来る嵐に驚いたせいで一瞬だけ出遅れたバシャーモは咄嗟に腕を交差させてその嵐に耐える。

 くさタイプの技ゆえに、ほのおタイプのバシャーモはさほどダメージにはなっていないが、それでも圧倒的な葉の勢いに押され一歩二歩と後退る。

 

「アチッ!アチッ!アッゲェエーーーッ!!」

「アチゲータ…!?お前、“ニトロチャージ”を覚えたのか……!」

 

 バシャーモの動きが止まった瞬間、アチゲータの身体から炎が噴き出し、瞬く間にアチゲータの身体は灼熱の炎に包まれる。

 

「よーし…!アチゲータ、“ニトロチャージ”!!」

「アチィーーーッ!」

 

 ロイの指示と共に、炎の塊と化したアチゲータは勢いよく地を蹴って走り出し、“マジカルリーフ”の嵐に呑み込まれて未だに思うように動くことが出来ないバシャーモに突撃した!

 

「バシャ…ッ!?」

 

 葉の嵐に怯んでいた中で、接近していたアチゲータに気付かなかったバシャーモは、地面を摩擦で地面から煙を出しながら後退する。

 

「やった!」

「アチゲータ、本当に凄いよ!!」

「なかなか……やる……」

「バシャ……」

 

 自身の前まで後退させられたバシャーモを見て、リコとロイは拳を握り締め、銀髪の女性は進化1つで最終進化系であるバシャーモにここまでのダメージを入れられた事に感心し、再び拍手をする。

 だが、確かなダメージを入れられたとは言えバシャーモはまだ健在であり、再びバトルが始まるとリコとロイは気を引き締めた時、草原に間延びした声が響いた。

 

「はぁ~~い、そこまで!」

「「ッ!!!??」」

 

 その声に聞き覚えがあったリコとロイが辺りを見渡すと、同時に遥か上空からか舞い降りてフライゴンの背中に股がっていた人物とポケモンが地に降り立った。

 

「アトリ…!ワナイダーも!!」

 

 それは、ダイアナの古城やラプラス海賊団のアジトで対峙した黒髪の男とクモの姿をしたポケモン…アトリとワナイダーであった。

 

「…どう…して……ここに…?」

「シーちゃん遅いからさぁ~。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()訳だし、俺達は持ち場に戻ろうってね」

 

 【シーちゃん】と呼ばれた銀髪の女性は、表情を変えないままアトリに親しげに話し、アトリは相も変わらず間延びした口調でサラッととんでもないことを喋り、リコとロイは驚愕する。

 

「…ない!ないないない!?古のモンスターボールがないっ!?」

「えぇっ!!??」

 

 ロイが背中に背負っているバッグを広げると、そこには常にしまっていたレックウザの古のモンスターボールが何処にもなく、その悲鳴を聞いたリコも顔が青ざめる。

 

「探し物って~、これ?」

 

 アトリがポケットから取り出したのは、リコとロイにとっては見覚えがあるではすまないスチームパンクチックな形状のモンスターボールだった。

 

「ッ!古のモンスターボール!!」

「そんな…なんで…!?リュックは一度も取られてないのにっ!?」

「コイツだよ♪」

「オベ……」

 

 アトリの言葉と共に現れたのは、埴輪のような姿をしたポケモン──オーベムだ。 

 しかし、以前リコとロイが貨物船で見た物とはやや違い、緑色の目は水色の不気味な光を放っている。

 

「ウー兄の……オーベム…!」

「そっ♪んコイツの技、“トリック”だよ~。相手の持ち物を自由に入れ換えるこの技なら、モンスターボールなんてお茶の子さいさいってさ~」

 

 アトリがそのカラクリを解説する。

 “トリック”とは、オーベムの所有する技の一つであり、この技は相手と自分の持ち物を入れ換える、または道具を持たない相手に自分の道具を押し付けたり、逆に持っているものを強奪することも出来る。

 ニャローテとアチゲータの進化と活躍に気を取られていたロイは、背後に潜んで“トリック”を発動させていたオーベムに気づくことが出来なかったのだ。

 

「ボールを返せ!!」

「んな事言われても~。これは俺達の作戦に必要だしぃ、貰っていくよ~~」

「オベッ!」

 

 ロイが宝物を返すように声を飛ばすが、アトリは返す筈がないと返した瞬間、オーベムは両手の指を光らせ、その光が勢いよく放たれる。

 そしてその光がアトリとワナイダーとフライゴン、シーダとバシャーモを包み込むまでに強くなると、リコとロイはあまりの眩しさに目を腕で隠す。

 

 やがて光が収まり、二人が恐る恐る腕を下げると…そこに、アトリ達の姿は見られなかった。

 

「そ、そんな……古のモンスターボールが……!!」

「奪われるなんて……」

「ニャー…!」

「アチ……」

 

 穏やかな風が吹き抜ける草原の上で、青ざめたリコ達の呟きが、虚しく木霊した。




・今回の見所

~ニャオハ&ホゲータ進化~
 他の二次創作を呼んでいて、早期進化がかなりあったので、此方も便乗してみました。

~奪われた古のモンスターボール~
 勢いのままに書いていたら、ニャオハ達の進化が霞むようなヤバイ展開になっていました。どうなるのから……お楽しみに。


 次回、イルマVSスヒネル戦です。 

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