魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター 作:MTHR
サボってはいないのですが、就活やら抗議やらpixivのリクエスト作品やらと忙しい日々が続いており、時間が非常に掛かってしまいました。
最近のアニポケを見て、作者はいつも「どうしよう」と思っています。色々とこの作品と相違点が多いと言う……。
今回はイルマVSスピネル戦の半オリジナル回です。サブタイトルは、現在放送中の仮面ライダーガヴ第6話『変身はビターチョコ』のオマージュです。
11月8日から期間限定上映の『風都探偵 仮面ライダースカルの肖像』を楽しみにしている日々を送っています。因みに風都探偵でダブルに変身する左翔太郎の幼少期の声を担当しているのは、入間くんの声でもお馴染みの村瀬歩さんです。
イルマ「天高くひろがる勇気!○ュアウィング!」
リコ「いきなりどうしたの!?」
イルマ「あっ、ごめん……。ほら、僕の中の人って、去年はプ○キュアで、その前はドン○ラザーズに出てたからつい……」
リコ「……そこは『お前の罪を数えろ!』の方が良かったんじゃないの?」
「キャップ、“かみなりパンチ”!」
「ピッカァ!!」
「ヌゥッ!!」
フリードの指示を聞き、キャップは稲妻を纏った拳をイイネイヌに叩き付ける。
対するイイネイヌは、丸太のように逞しい腕をクロスさせてその拳を受けると、ズザザザザッ!と足元から摩擦によって煙を上げながら後退する。
「ヌンダァアァアアアアアッ!!」
「ピッ!」
すると、イイネイヌは交差した腕を開いてキャップを弾き、宙に浮いたキャップに向けて“どくづき”を発動して、空中で逃げ場のないキャップを殴ろうとしたが、キャップは尻尾を振るうことで発生した風に乗り上昇することでその拳の直撃を回避する。
「キチチチチィィッ!!」
「!」
その時、キチキギスが上空にいたキャップに急接近し、“クロスポイズン”を繰り出そうとする。
「ヌオーよ、“ハイドロポンプ”じゃ!」
「ヌッ、オーー!」
そこへ、ランドウのヌオーの放った莫大な水流が斜め下から襲い、キチキギスは突然の不意打ちに対応できずにその水流の直撃を受けた。
「じっちゃん!」
「ホッホッホ、余計なお世話じゃったか?」
「いいや、助かった!」
互いに短く言葉を交わした瞬間、ヌオーが相手にしていたマシマシラが飛び出してきた。
「マシャッキーー!」
マシマシラが“シャドーボール”を放ち、禍々しい光球が高速で迫る。だが、キャップもフリードも、ランドウもヌオーも、その程度の事で動じるほど柔ではない。
「キャップ、弾き返してやれ!」
「ピカッ!」
なんとキャップは、体を回転させて尻尾を振るい、マシマシラの“シャドーボール”を弾き返してしたのだ。自分の方に向かって飛んで来る“シャドーボール”が打ち返されたことに驚きを露にするマシマシラだが、直ぐにその場でジャンプして回避をすると、着地したマシマシラのもとにイイネイヌとキチキギスが並び立った。
「2対3か……やっぱり厄介だな」
キタカミの里の一件から、ともっこの強さは身に染みて分かっているので、気を抜いて戦ってはいないが、以前と違うのは、相手の方が一人数が多いため、キャップかヌオーが一度にともっこを二体相手にしなければならなくなる事だ。
打開策があるとすれば、リザードンをテラスタルさせて“テラバースト”で一気に倒すことだが、マシマシラの予知能力がある限り、そう簡単に策が実行出来ると思えない。
そしてフリードは、チラリと自身の背後に建てられた塔のような建物にチラリと目を向ける。
「こっちも早くなんとかしたいとこだが……」
先程、イルマが建物の中に入って行ってからかなり時間が経っているが、“テレポート”を使えるキルリアを所持するイルマがでてくる様子が全くない。
ハッコウシティのあの男がいる以上、イルマが建物のなかで閉じ込められて罠にはめられたと考えられる。オーベムの“テレポート”で何処かへと飛ばされたリコとロイのことも気掛かりだ。
その時、フリードの背後の建物の中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「フリードさん、聞こえてますか!?」
「ッ!イルマか!?」
聞こえてきたのは、閉じ込められているイルマの声だった。フリードはともっこ達への警戒を解かないまま、建物内にいるイルマの声に耳を傾ける。
「イルマ、お前は無事か!?」
「はい、今のところは無事です……それより!リコとロイくんは無事ですか!?」
「……いいや、突然現れたオーベムに連れていかれた!」
「嘘っ!?」
扉の向こうからイルマの驚愕の声が聞こえてくる。
だが、再確認してみても状況はかなり悪い。主戦力の一人であるイルマは隔離され、リコとロイがフリード達から切り離されたのだ。あの二人も、この旅の中で確実に実力をつけており、並大抵の相手であれば負けないとフリードは思っているが、それは相手がアメジオのような真正面から戦いを挑むタイプだから通用するのであって、今回フリード達を罠に嵌めた相手のように策を弄し手段を選ばない性格をした相手であれば話が変わる。エクスプローラーズの目的はリコとロイを倒すことではなく、テラパゴスか古のモンスターボールを手に入れることなのだから、バトルすることなくそれらを手に入れようとする可能性もある。
「僕の事は良いです!後で追い付きます!フリードさんは、リコとロイくんのところに行ってください!!」
「ッ!?だが、それじゃあお前がここに置き去りになるだろ!」
フリードがそこまで考えたところで、建物からイルマの声が聞こえてくる。
確かに、今は何処に飛ばされたかも分からぬリコとロイを探さなければならないのも事実だが、だからと言って今建物内に閉じ込められているイルマを放っておくわけにもいかず、リザードンやキャップの攻撃で建物を破壊すれば良いのではと言おうとしたところで、再びイルマの声が聞こえてきた。
「いいから!ここにはエクスプローラーズの幹部もいるんです!僕がここで足止めするから、フリードさんとランドウさんなリコとロイくんを助けに行ってください!」
「……分かった!だが、無茶をするなよ!!」
「勿論!!」
そう答えた次の瞬間、建物の内部から戦闘の音が聞こえてくる。どうやら、中にいるエクスプローラーズとバトルを開始したらしい。
「ヌンダフルゥッ!!!!」
「キャップ、“かみなりパンチ”!!」
「ピッカッ!!」
その時、“どくづき”を発動させたイイネイヌの拳を、フリードの指示を聞いたキャップが稲妻を纏わせた拳で迎え撃つ。毒と稲妻が辺りに飛び散り、その拳と拳が拮抗していると、キャップとイイネイヌは弾かれるように距離をとる。その隙に、マシマシラが“シャドーボール”を、キチキギスが“エアスラッシュ”を放ってキャップを狙おうとするが、その瞬間ヌオーが“なみのり”を使い、大波で二つの技を打ち消した。
さて、この手勢を相手にどうするか……と考えを巡らせた瞬間、フリードの上空から声が聞こえてきた。
「ジュナイパー、“かげぬい”!」
「ジュナッ!」
上空から降り注いだ矢が、意思を持つようにイイネイヌ、キチキギス、マシマシラの元に向かって行き、ともっこ三体の影が映る地面を貫いた。
「今だ!派手に決めてやれ!」
「ッ!キャップ、“ボルテッカー”!」
「ヌオー、“ハイドロポンプ”じゃ!」
その瞬間、ヌオーが吐き出した莫大な水流に、全身に電気を纏わせたキャップが乗り、“ハイドロポンプ”が電気を帯び、水流の勢いに乗ったキャップは、“かげぬい”で動けなくなったイイネイヌ、キチキギス、マシマシラに突撃した。
「ピカピッカーーーッ!!!」
「ヌンダァッ!!?」
「マシッキャー!?」
「キチチィッ!!?」
キャップの必殺技を受けた三体は、悲鳴を上げながら吹き飛ばされる。
そのまま三体は、ギャグ漫画のように一つにかたまってゴロゴロと転がりながら吹き飛ばされると、フリード達のもとに狩人のような鳥のポケモンたと、その足に捕まっている小柄な少女が降り立った。
「バチコ!お前なんでここに!?」
「よっ!」
それは、ライジングボルテッカーズのメンバーであるバチコと、彼女のパートナーのジュナイパーであった。
意外すぎる人物の登場に、助かったとは言えどうしてここにいるのかと尋ねると、バチコはあっけらかんと答えた。
「んー…暇だったから」
「っておい!適当すぎるだろ!」
「行き当たりばったりで生きてるお前に言われたくねーよ」
軽く言い合うフリードとバチコ。
そんな中、フリードのスマホロトムから着信音が鳴った。
「もしもし?」
『フリード!?』
「リコか!?」
フリードがその電話に出ると、画面にリコの顔が映し出された。リコに続くように、ロイもひょっこりと顔を出してくる。
「二人とも、無事だったか!?」
『う、うん。私達は怪我はしてないよ。ニャローテとアチゲータが頑張ってくれたから……』
「ニャローテにアチゲータ……成る程、大活躍みたいだな」
相棒の名前が進化系の名前になっていることに、フリードはバトルの最中にニャオハとホゲータが進化したのだろうと見抜くが、続いてロイから告げられた情報に目を見開いた。
『それより、大変なんだよフリード!エクスプローラーズと戦ってたら、アトリとワナイダーが現れて、レックウザの古のモンスターボールが盗られたんだ!!』
「何だと!!?」
進化の吉報が一瞬で悲報になったことに驚愕するフリード。
黒いレックウザを捕まえるのにはレックウザの古のモンスターボールが必要だが、モモワロウが相手にいる為、ボールを使わずにゲットする気なのかもしれないと考えていたフリードだが、予想に反してエクスプローラーズはテラパゴスよりも古のモンスターボールを狙ったのだ。
つまりこれで、黒いレックウザをゲット出来る手段は全てエクスプローラーズの物になったということになる。もしもモモワロウの毒餅で操られたレックウザが古のモンスターボールに入れられてしまえば、ライジングボルテッカーズは完全にゲームオーバーだ。
「お前ら、今何処にいる!?」
『ディグダ饅を買った町の近く、カビゴンみたいな形の岩が目印だよ!』
「わかった!」
『そういえば、イルマは!?』
そこで、リコは閉じ込められてしまったイルマを思い出して問いかけると、フリードは少し考えた後に、その質問に答える。
「まだだ出てこない。恐らく、エクスプローラーズの幹部レベルの相手をしているんだろう。ソイツがレックウザ捕獲に加わらないように、イルマはソイツの相手をしている」
「あのバカ…ッ!」
『そんな…!?』
まさか、イルマがそんなことになっているとは知らなかったバチコは弟子が置かれた状況に頭を抱える。
「イルマは、自分が幹部を相手にしているから先に行ってくれとの事だ……バチコ、ジュナイパーにイルマの様子を見させて、レックウザが呼び出される前にエクスプローラーズの所へ向かえるか?」
「……チッ、仕方ねぇな。リコ、イルマになにかあればジュナイパーが援護するから、あッチらはレックウザを捕獲しようとしてる連中を追うぞ」
『……うん』
バチコの言う通り、今はレックウザがエクスプローラーズの手に捕獲されてしまうのを防ぐことが先決だ。
リコもロイもバチコもフリードもランドウも、出来ることなら今すぐイルマを助けに行きたいが、そちらに時間を掛けすぎれば手遅れになってしまう。それに、イルマ自身が先に行けと言ったのだ。
『私…信じるよ。イルマは絶対に負けないって……』
「あぁ、そうだな」
彼の強さを誰よりも近くで見てきたリコの言葉に笑みを浮かべて応えつつ、ボールから出したリザードンとチルタリスの背中に飛び乗ったフリード達は、リコ達が飛ばされたという草原に向かっていった。
電灯のない室内で、漆黒のポケモンが三体のポケモン達とぶつかり合っていた。
「ブラッキー、“バークアウト”」
「ブラッキ!」
「皆、避けて!」
「くふぅ!」
「ぽにっ!」
「ぶ、ぶいっ!」
ブラッキーが放った赤黒い音波を、フクスロー達は散会しながら回避する。
「フクスロー、“エアカッター”!オーガポンは“ツタこんぼう”!イーブイは“スピードスター”!」
「くふぅ!!」
「ぼにっ!」
「いっぶい!!」
フクスローは風の刃を、オーガポンが棍棒を、イーブイが必中の星の弾幕を発射し、三つの技が一斉にブラッキーを狙う。
「ブラッキー、“でんこうせっか”」
「ブラッキ!!」
その瞬間、スピネルの指示を聞いたブラッキーは目にも止まらぬスピードで走りだし、その技名のとおり電光石火の早業で、接近するオーガポンを攻撃した。
「ぽっ!?」
そのスピードに追い付けずに直撃を受けたオーガポンは地面を滑りながら後退し、数メートルほど後退したところで立ち止まる。
「“シャドークロー”!!」
「くふぅ!」
「“リフレクター”!」
「ラキッ!」
フクスローが暗黒の爪を振り下ろそうとするが、光の障壁を発動させたブラッキーにその爪は届かせることが出来ず、フクスローはブラッキーから弾かれるように距離を取った。
「それなら今度は“かげぶんしん”!」
「くふぅ!」
『くふぅ!』『くふぅ!』『くふぅ!』『くふぅ!』『くふぅ!』『くふぅ!』『くふぅ!』『くふぅ!』
フクスローはブラッキーの周囲に無数の分身を出現させ、本物を含めた数十体のフクスローはブラッキーを取り囲むように円形に並ぶ。
「そのまま“エアカッター”!!」
「『『『『『『『『くふぅ!』』』』』』』』」
本体を含めた数十体のフクスローは、イルマの指示によって翼を広げ、×字の風の刃を放つ。本物を隠した無数の風の刃は、中心に立っているブラッキーに狙いを定め、一斉に襲ったかと思うと…
「蹴散らせ、“でんこうせっか”!」
「ラッキィッ!!」
ブラッキーは目にも止まらぬ速度で走りだして風の刃を回避すると、そのままフクスローの分身に突撃し、次々と分身達に突撃して、分身を消失させていく。
「……今だよ!オーガポンは“ツタこんぼう”!イーブイは“スピードスター”!」
「ぽにぃっ!」
「ぶいっ!!」
その時、フクスローの分身の影に隠れていたオーガポンが飛び出して緑のオーラを纏わせた棍棒を振りかぶり、ブラッキーの後方で、距離を取ったイーブイはブラッキーの背中に向けて必中の星の弾幕を放つ。
これがイルマの本当の狙いであり、フクスローが“かげぶんしん”でブラッキーを翻弄すると同時にスピネルとブラッキーの注意をフクスローに集中させ、“エアカッター”を“でんこうせっか”のスピードで分身を消させることでブラッキーの軌道を絞り、分身を消している瞬間を狙って、オーガポンの物理攻撃とイーブイの必中の弾幕で一網打尽にする策だ。
数の利をいかした策せんで少しアンフェアな気もしなくはなかったが、そもそも相手は悪党であるし、これまでも今でも卑劣な手段を使ってイルマ達ライジングボルテッカーズを嵌めてきた相手なのだから、先程の同じエクスプローラーズの仲間を道具のように思っている発言から、既に好感度がゼロを越してマイナスになっているイルマは、既にスピネルを相手に正々堂々とするという考えは捨てていた。
そして、ブラッキーを挟み撃ちするように迫るオーガポンの棍棒とイーブイの星の弾幕が直撃しようとする、その時だった。
「ブラッキー、オーガポンに“イカサマ”!」
「ブラッ!」
「ぼにぃっ!?」
「なっ!?」
「いぶっ!?」
オーガポンの棍棒が振り下ろされようとした瞬間、背後に回り込んだブラッキーの攻撃が炸裂する。更に、その攻撃でオーガポンが吹き飛ばされた先にはイーブイの放った“スピードスター”が迫っており、擬似的な盾にされたオーガポンに星の弾幕が被弾する。
「ブラッキッ!」
「ぽにぃーーっ!?」
「いぶぶっ!?」
更にブラッキーがオーガポンを蹴飛ばすと、オーガポンはその先にいたイーブイと衝突し、二人は揉み合うように地面を転がり、イルマの前で倒れる。
「オーガポン!イーブイ!…くっ、フクスロー、“リーフストーム”!」
「くふぅ!」
「避けなさい」
「ブラッ」
それを見たイルマが指示を出し、フクスローは莫大な量の葉の嵐を放つ。流石のブラッキーも、部屋を埋め尽くさんばかりの葉の攻撃は対応が難しく、ブラッキーは大きく後退して“リーフストーム”を回避する。
(やっぱり、生半可な不意打ちは簡単に対処される……ただでさえ真っ暗で見えづらいのに……)
ブラッキーの俊敏さを見て、イルマは相手の厄介さを痛感して顔をしかめる。
イーブイの進化系の一つであるブラッキーは、暗視能力を持つポケモンであり、伝統のない真っ暗闇の中であるこの空間でも目が効くため、ブラッキーの模様が放つ光でしかイルマは状況を把握できない。更にはトレーナーであるスピネルが頭の切れる男であるため、付け焼き刃のような策は看破されてしまう。
「(いや、視界…?それだ!)オーガポン、一旦下がって」
「ぽにっ!?」
そこで、イルマはもう一つ策を思い付き、オーガポンに下がるように指示を出す。オーガポンはその指示に驚きを露にし、「まだ自分はできる」というように訴える。
「オーガポン、君の出番は後で必ずある。今は控えてて……」
「ぽにぃ……」
イルマの言葉を聞いてオーガポンは渋々と言った様子で後ろに下がる。
「フクスロー、イーブイ。オーガポンが決めるまで、持ちこたえてね!」
「くふぅ!」
「いぶっ!」
フクスローとイーブイは、イルマの言葉に頷いて前に踏み出し、ブラッキーと対峙する。
「浅はかですね。オーガポンで仕留めに来ようとするなら、先にオーガポンを狙えば良い……ブラッキー、“バークアウト”」
「ブラァッ!」
一番強いポケモンで確実に倒すために他のポケモンで注意を引いかせるという作戦は単調だが、オーガポンはその気になれば一撃でブラッキーを仕留めるだけの力があるため、スピネルは先にオーガポンを沈めるように指示を出し、ブラッキーは赤黒い音波を放つ。
「させないよ!フクスローは“リーフストーム”!イーブイは“スピードスター”!!」
「くふぅーーっ!!」
「ぶいぃいいいっ!!」
しかし、そうはさせるものかとフクスローが再び莫大な量の葉の嵐を放って“バークアウト”を辛くも相殺してから、尚も大量の葉を放ち、イーブイはその葉の嵐に混ぜ込むように星の弾幕を放ち続ける。
「まだまだ!フクスローとイーブイは技を放ち続けて!!」
「くふぅ!」
「ぶいぃっ!」
イルマの指示で、立ち並ぶフクスローとイーブイは技に込める力を強くする。
葉の嵐に混ぜ合わせられた星の弾幕がフクスローの葉の嵐を乗せて速度を高め、特殊技の為に“リフレクター”の対象外である特殊技のの風圧にブラッキーは吹き飛ばされないようにその場に踏みとどまるが、葉や星が少しずつ被弾していくことで、ブラッキーは少しずつダメージが蓄積していく。
(…“スピードスター”の勢いに葉を乗せる事で“リーフストーム”の落ちた威力を補い、かつ精密にブラッキーにダメージを与えられる。成る程、一見がむしゃらに技を打つように見えて、それなりに考えられてますね。素人ならばオーガポンの事まで考える余裕がないでしょうね)
その様子を見たスピネルは、即興の合体技の危険性とイルマの狙いを見抜く。
フクスローが放つ“リーフストーム”は出せば出すほど威力が下がるデメリットがある筈だが、それをイーブイの放つ“スピードスター”が引っ張りあげることで、減った威力を補い、その上相手に必中するという“スピードスター”の特性を活かして上手く“リーフストーム”をブラッキーに誘導している。それは、スピネルの手持ちであるレアコイルの“でんじほう”をオーベムの“サイコキネシス”で操る連携技でもあり、技の威力が高い分だとこうも厄介になるのだと実感する。
(ですが、誘導されるのが厄介ならば先にイーブイを始末すれば良いだけの事。オーガポンは動いていないようですしね)
葉の嵐の隙間から僅かに見えるイルマの後ろには、相変わらずオーガポンの姿がある。
「ブラッキー、フクスローとイーブイの足元に“バークアウト”」
「ブラッ!」
「くふっ!?」
「ぶいっ!?」
指示を聞き入れたブラッキーは、口から赤黒い音波を放ち、その音波が星に導かれる葉の嵐を突き抜けて、イーブイとフクスローの足元で爆発を起こす。
「“でんこうせっか”でイーブイを仕留めなさい!」
その瞬間、ブラッキーは二体が怯んだ隙をついて飛び出したブラッキーが、目にも止まらぬ速さで接近し、イーブイに食らいつこうとする。
「イーブイ、“つぶらなひとみ”!!」
「いぶ──ぶいっ♡」
それを見たイルマの指示を聞き、フクスローの前に立って目を閉じたイーブイが、カッと目を開けると同時に、大きな瞳をウルウルと潤ませ、ジッと接近してくるブラッキーを見つめたのだ。
そして、その目を向けられたブラッキーは……
「ブ、ブラ…」
「いぶっ」
あら不思議。イーブイに見つめられた瞬間、ブラッキーは慌てて突進を止め、遠慮がちにイーブイの頭をペシッと叩いたのだ。
“つぶらなひとみ”は、ウルウルと潤ませた目の愛らしさを使って相手に手加減させ、攻撃力を下げるという技だ。これはイーブイがエンジンシティで孵化した時から覚えていた技だが、イマイチ使う機会に巡り合わなかった為、孵化したての時にせいぜいブレイブアサギ号で“スピードスター”の練習のついでくらいだったので、スピネルがこの技を知らないもの無理はなかった。
その時、イルマの裂帛の声が轟いた。
「今だよ、オーガポン!!」
「ぽっ!!」
「ッ!ブラッキー、避けなさい!」
オーガポンの声を聞き、スピネルは動きを止めたブラッキーに回避を指示する。
その時、不思議なことが起こった。
「ブラッ!?」
突如、ブラッキーの四肢に何かが巻き付き、そのまま中に持ち上げて逆さ釣りにしてしまったのだ。更にもう一本、飛んで来た紐状の何かが、ブラッキーの口に巻き付いて強制的に口を閉じさせる。
「これは……“つるのムチ”!?」
予想外の事態にスピネルが目を凝らしてよく見てみると、それは蔓で出来た紐であり、それはオーガポンから射出されていた。
そこで、イルマはネタバラシをするために口を開く。
「床を這うようにオーガポンの蔓が伸びていたんですよ。フクスローとイーブイの連携技で足元から気をそらしつつ、ブラッキーのその
そう、イルマが優先していたのは、オーガポンが仕留められるようにする為に、ブラッキーの動きを止めること。
そこで思い付いたのが、“つるのムチ”による逆さ釣り作戦であり、オーガポンをイルマの背後に移動させて切り札だということを敢えて敵に知らせ、フクスローとイーブイに大技を連発させて意識を向けさせる。スピネルのような切れ者ならば、例え相手が大技を打ってくる時であってもオーガポンへの警戒を忘れないだろうという推測から、オーガポンを後ろに固定させておいたのだ事で、足元に目がいかないようにした。
勿論、これが真っ昼間ならすぐに気付かれるだろうが、ここは電灯一つない暗闇。更に言えばスピネルには地面を進む蔓を察する事が出来ず、フクスローとイーブイの合体技に集中していたブラッキーはこれに気付く余裕がなかったため、スピネルとブラッキーはまんまと入間の罠に嵌まってしまったのだ。
「……チッ!」
スピネルは舌打ちしつつどうするかと頭を回転させていると、イルマはキッと目付きを鋭くしてブラッキーを見据えて指示を出す。
「リコの記憶を消したこと、リコのペンダントを盗んだこと、そして今回僕たちを嵌めた事、全部ひっくるめて倍返しさせてもらいます!オーガポン、トドメの“ツタこんぼう”!!」
「ぽにーーーっ!!」
「ブラッキー、“リフレクター”!」
「ブラッ……」
「くふぅ!」
「ぶいっ!」
「ラキッ!?」
竈の面を被って爆炎を纏わせた棍棒を振りかぶり、突撃するオーガポンを見たスピネルは物理攻撃から身を守る障壁を発生させようとするが、その瞬間にフクスローの“エアカッター”とイーブイの“スピードスター”が炸裂し、ブラッキーは技を放つのを強制的に中断させられる。
そんな中、目前まで迫ったオーガポンが、全力で棍棒を振り抜いた。
「がお゛ぼう゛っ!!」
「ブラァアアッ!!?」
あらゆる物を焼き尽くさんばかりの炎を纏わせたオーガポンの棍棒がぶち当たり、ブラッキーは勢いよく吹き飛ばされて地面を転がる。
「ブラッキー!?」
「ブ、ブラァ……」
スピネルが声をあげると、ブラッキーは何とか立ち上がろうとするが、ブラッキーはフラフラとおぼつかない足取りで立ち上がろうとした瞬間に倒れる。
「形勢逆転、ですね」
「そのようですね。君への対策は完璧だと思っていたのですが……どうやら勝負強さにおいては君の方が一枚上手だったようですね」
まだ倒れたわけではないが、オーガポン、フクスロー、イーブイを相手に負傷したブラッキーで相手をするには流石に部が悪いと、意外にもスピネルはアッサリと自分の不利を認めるが、余裕綽々といった笑みを崩さずに後ろに視線を向けた。
「オベ……」
「……ですが、タスクは果たされたようです。私はお先に失礼させてもらいましょう」
「タスク…?」
そこにいたのは、スピネルの手持ちである原色のオーベム。
自分のポケモンを見て口にした言葉にイルマは反応する。
タスクとら、ビジネスにおいて仕事でやるべき作業や課題を指す言葉であり、仕事を達成するために必要な細かい単位の作業を意味する。
エクスプローラーズの目的は黒いレックウザの捕獲。その為に邪魔物であるイルマを引き離し、他のメンバーは何処かでレックウザをおびき寄せようとしている筈だが、それ意外にもタスクがあるとしたら…?
「ッ!まさか…!?」
「残念ですが、答え合わせをするつもりはありません。突貫工事とは言え費用もバカにならなかったので、この手はあまり使いたくなかったのですが……」
そう言いながら、スピネルはブラッキーをボールに戻してからスマホロトムを操作すると……
「ッ!?」
「ぽにっ!?」
「くふっ!?」
「ぶ、ぶいっ!?」
建物全体に轟くような爆音が響くと同時に、凄まじい揺れがイルマ達を襲う。
イーブイが怯えてイルマに飛び付き、イルマが倒れそうになって膝をつくと、再びスピネルを睨み付ける。
「今度は、何をしたんですか!?」
「簡単ですよ。この建物には予め、爆弾を仕掛けていたんです」
「なっ!?」
爆弾というとんでもないワードにイルマが目を見開き、スピネルはスマホロトムをしまいながら、「ゴゴゴゴッ」と言う音を立てる部屋の中で説明を続ける。
「この建物にフリード博士ではなく君が入っくるかもしれないと言う可能性くらいは想定していました。もしもオーガポンのテラスタルを使われると厄介でもあるのでね。なので、この建物を倒壊させるための爆弾を仕掛けておいたんですよ……っと、そうしてる間にも崩れかけてきたので失礼しますよ。オーベム」
「オベッ!」
「あっ!逃げた!!」
スピネルのオーベムが“テレポート”を発動し、光と共にその場から消え去ってしまった。
「って、気にしてる場合じゃない!どうにかしてここから出ないと…!」
『って、言ってる間にも部屋が崩れてきてんぞ!?』
イルマは必死に思考を回転させるが、今だかつてない危機に妙案が思い付かない。それに、キルリアはまだ気絶していたモンスターボールの中にいるためにスピネルのような逃亡は出来ない。
そう考えている間にも揺れと部屋の壁に走る亀裂は広がっていき……
次の瞬間、完全に支えを失った建物の瓦礫が、イルマ達に向かって崩落した。
ハッコウシティ付近にある灯台を目指し、ランドウ、ロイ、フリード、キャップを乗せたリザードンと、リコとバチコを乗せたチルタリスは全速力で飛行していた。
目指す先には、空一面を覆い尽くしていた分厚い雲が、不自然な様子で円形の大穴が開いており、そこから見える青空から、煌めきを放つ漆黒の龍──黒いレックウザが降りてきていたのだ。
「──ッ!?」
黒いレックウザを見て顔を強張らせていたリコは、突如として背中に走る悪寒に身を震わせ、バッと後ろを振り返る。当然ながら、上空には何もない。
「おいリコ?どうしたんだよ」
「う、うん……気のせい、かも」
その様子に、前に座っていたバチコが問いかけ、リコは困惑したような表情ではぐらかす。
「…ん?お前、ヘアピンはどうしたんだ?」
「え?ヘアピンって……あれ!?ないっ!?」
更にバチコに指摘され、リコは前髪に触れてみると、リコがいつも付けているL字型の緑のヘアピン──セキエイ学園の入学が決まった時に、イルマから贈られてかは肌身離さずに身に付けている大切なヘアピンがなくなっていたのだ。
チルタリスに乗るまで付けていた筈なので、飛行中に落としてしまったのかもしれないが、今まで全く気付かなかった事に、リコは何故か強い不安を覚えていた。
(……イルマ)
大切な幼馴染みの無事を祈るように胸の前で両手を組みながら、リコは神々しく天から降り立つレックウザを見上げた。
・今回の見所
~イルマの作戦~
参考文献は『ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース』の
「ひきちぎると、狂い悶えるのだ、喜びでな!」は流石にイルマくんには似合わなすぎるので使いませんでしたが、作者はジョジョの中ではこの台詞が一番好きでした。
~イルマくん、生き埋めに~
『仮面ライダーW』を見ていて思い付いた展開なのですが、読み返して「やりすぎた」と思っていましたが、他に思い付かなかったのでそのまま採用することにしました。
果たして、イルマの運命は……?
次回、エクスプローラーズVS黒いレックウザ編です。
感想、評価お待ちしております。