魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター   作:MTHR

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 お久し振りです。
 就活で希望した会社への就職が決まり、研修のためのあれこれや、ありふれた職業で世界最強の二次創作の小説の執筆に夢中になり過ぎてました。

 今回のサブタイトルの元ネタは仮面ライダーキバをイメージしております。


イルマ「前回の投稿が元旦で、次話投稿が一月末って……」

リコ「え、MTHRさんも、就活とかで忙しかったらしいから!気にしないで!」

イルマ「……そうだね。『ポケポケ』や『ありリベ』を何時間もプレイしてたみたいだけど……」

MTHR「それ言わないで!!(汗)」


66話 交響・この世は全て芸術

 テラスタル研修を受けることになったイルマ、リコ、ロイ、ドットが、セルクルタウンの次に目指すのは、かつてレックウザの情報を集めるために立ち寄ったボウルタウン。そこでジムリーダーとバトルをするのは、ボウルタウンのジムリーダー・コルサと一度バトルをしたロイだ。

 

「アチゲータ、連続で“かえんほうしゃ”!」

「アゲーーッ!」

 

「スゴい気合い……」

「ボウルタウンまで後一時間たらずだしね。張り切ってるんじゃない?」

「うん、きっとそうだね」

 

 ボウルタウンに続く道にある岩場で休憩をすることにしたリコ達。ロイとアチゲータは、手頃な岩に腰掛けるイルマ、リコ、ドットに見守られながら特訓をしていた。

 

「テラスタル研修、絶対に勝って合格しよう、アチゲータ!」

「アッ!」

「それで…次こそ黒いレックウザに勝つ!!」

「アチゲー!!」

「……まぁ、そのレックウザが何処にいて、いつ会えるかが、分かんないんだけど……」

 

 テラスタルオーブを手に宣言するロイを見ながら、イルマは黒いレックウザに挑戦するための根本的な問題をボソリと呟いた。聞こえるようには呟かない。ロイとアチゲータは燃えてるようだし、冷めるような事をいうのも悪い。

 

「よ~し!連続で“じだんだ”!!」

「アゲ!アゲ!アゲ!アゲ!」

「1!2!3!」

 

 今度は“かえんほうしゃ”の練習から“じだんだ”の練習に切り替え、ドスンドスンと地面を踏み鳴らし、地面の岩を隆起させていくアチゲータ。

 

「4!5!うっ…うわぁっ!?」

 

 何度も地面を隆起させていくと、その亀裂が広がって行き、遂にロイの足元の地面が隆起したことで、ロイとアチゲータは盛大にスッ転んだ。

 

「張り切りすぎ……」

「急いては事を仕損じる、だね」

 

 そんなロイとアチゲータの姿に、イルマ達は呆れたような表情を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、休憩を終えてボウルタウンへと足を進めると、空一面が暗雲に包まれてきた頃に、イルマ達は懐かしのボウルタウンへと辿り着いた。

 

 しかし、以前やってきた時とは雰囲気が違う。空が曇っているからではなく、以前よりも多くの人が外に出で、あちこちできらびやかな飾りつけをしていたからだ。人々は梯子に乗って木々や建物に飾りつけをしたり、ダギングルが両手で何かを描いたり、ハッサムが両手のハサミで布を切ったりと、人もポケモンも忙しそうにしていた。

 

「何かやってるね。お祭りかな?」

 

 忙しそうにしている町の風景を眺めながら町中を歩いていたイルマ達は、広場に繋がる道に看板をたてるように指示を出しているフカマルを連れた金髪の男の背中を発見した。

 

「ハッサク先生!」

「ん?やぁ、あなた達でしたか」

 

 その男は、オレンジアカデミーで美術の顧問をしているハッサクだった。

 ドットは、ハッサクの指示で立てられた看板の字を読み上げる。

 

「『ようこそ、芸術祭へ』?」

「えぇ。ここボウルタウンでは、毎年この時期に素晴らしい芸術の祭典が開かれるのですよ。小生も美術教師として、お手伝いに伺ったわけですよ」

「あっ!黒いレックウザ!」

 

 ハッサクの説明を受けて町を見渡していたロイは、町の中で設置された黒いレックウザの彫刻と、その彫刻と向かい合うように設置されたキマワリの彫刻を見て、その彫刻に駆け寄った。

 それは、かつてコルサが製作をするなかで本物の黒いレックウザを見てしまったコルサがスランプに陥ってしまったことで製作途中となっていた『黒龍に睨まれたキマワリ』だったのだ。ハッサクの説明によると、どうやら今年の芸術祭のシンボルになっているらしい。

 

「彼はこの祭典の芸術監督ですからね」

(……タイミング悪かったかな?)

 

 ハッサクの話からすると、この時期のコルサはより忙しくなるということだ。なので、早く強くなりたくてウズウズしているロイとバトルする時間を作ってもらえるのかと不安になったが、それは直ぐに杞憂に終わることになった。

 

「僕、早く挑戦したい!コルサさん、ジムにいるのかな!?」

「挑戦…?おぉ、テラスタル研修ですね。では、案内しましょう」

 

 どうやら、忙しいから後回しにはならないらしい。

 そうしてハッサクの案内のもと、イルマ達がやってきたのは、ボウルタウンの中央にあるバトルコートだった。階段を昇った先には、粘土と向かい合うコルサの背中が見えた。

 

「コルさん」

「おおっ、ハッさん」

(コルさん?ハッさん?)

 

 まさかの愛称で呼び会う仲であった事にリコが驚きを露にする中、ハッサクはコルサが今手掛けている作品の進捗具合を訪ねている。

 すると、コルサはハッサクのすぐそばにいたリコ達に気付いた。

 

「ん?貴様達は……」

「こんにちは、コルサさん。あの……コルサさんとハッサク先生って、お友達なんですか?」

「えぇ、まぁ…よ~く存じておりますよ」

「ハッさんは、私が作品の方向性に迷いを感じている時、親身になって導いてくれた人生の師。おかげで私は、今の作風を確立できたのだ」

「へぇ…!」

 

 明かされたコルサとハッサクの関係性にリコが感嘆の声をあげると、横から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「リコじゃないか!」

「お父さん!?えっ、どうして!?」

 

 それは、リコの実父であるアレックスだったのだ。絵本作家である彼がなぜここにいるのかとリコ達が驚きを露にしていると、コルサが説明をいれる。

 

「アレックスさんの絵本から溢れでる芸術センス!その片鱗をお借りしたくてお呼びしたのだ」

「そういえばお知り合いでしたっけ」

 

 どうやら、アレックスを呼び出したのはコルサだったらしい。

 アレックスと面識のあるイルマやロイ、そして今回が初対面となるドットとクワッスが挨拶をし、ロイはコルサに向き直る。

 

「コルサさん!僕、バトルしに来たんです!」

「ふむ……テラスタル研修の件は聞いている。そしてそのアチゲータ……貴様があれからどれだけ成長したのか、興味もある」

「だったら!」

 

 バトルをしようと意気込むロイに、コルサは待ったを掛けるように手を出した。

 

「だが、残念ながら今は時間がない。今夜のセレモニーまでに、この新作を完成させねばならないのだ」

 

 コルサが視線を向けた先には、彼のポケモンであるオリーニョと、茨のような茎とキマワリを象った粘土像が立てられていた。

 

「題して……『(あかつき)のキマワリ』。希望を求めて立ち上がる心を表現した。なので、研修はセレモニー終了後としよう」

 

 そう言って、コルサはキマワリの像の前で膝を付き、キマワリの形を整えていく。

 

「それまで、貴様等もこの町でアートな風に存分に触れるがいい」

「そんなの待てないよ!」

「ん?」

 

 ロイの声を聞き、コルサはキマワリ像の前で膝をついたまま振り替える。そこには、何処か必死な様子のロイがいた…が、視線を戻してキマワリ像に触れる手を動かし始め、そんなコルサにロイは力説する。

 

「僕達、早く強くなって黒いレックウザに挑戦したいんです!」

「いや、ロイ君。コルサさんはこの町から逃げないし、バトルはいつでも出来るんだk」

「だったら私と勝負しよう!」

 

 今すぐバトルがしたいと主張するロイに、コルサの都合も考えてやれとイルマが口を挟もうとした時、この場にいる誰のものでもない女の声が聞こえてきた。

 一同がその声がした方向に視線を向けると、そこにはネモとパーモットが此方に歩いてくる姿があった。

 

「ネモ!」

「通り掛かったら声が聞こえたんだ。この間はお預けになったけど、今日こそは!」

「うん!やる!やりたい!」

「やった!実りのある勝負にしようね!」

 

 チャンピオンランクのネモという不足のない相手に、ロイは喜色を浮かべてやる気をだし、ポケモンバトルが何よりも好きなネモは心底嬉しそうに言うと、二人は各々の相棒をバトルコートに出してバトルフィールドの上に立った。

 

「研修以外ではテラスタル禁止なんだよね?なら、私もテラスタルは使わない」

「いいよ、使っても」

「すっごい強気だね」

 

 短い会話を交わすロイとネモ。バトルコートの外側では、イルマ達が二人のバトルの様子を見守っているなか、コルサは暁のキマワリの製作を続けている。作品作りに集中しながらも、意識の一部はロイとネモのバトルを向けており、それでも手を止めないのはコルサの芸術家としての腕前がそれだけ卓越している証だろう。

 

「それじゃあ……バトルスタート!」

 

 審判を勤めるリコが声を上げると、先手を打ったのはロイだ。

 

「アチゲータ、“じだんだ”!!」

「かわして“でんこうせっか”!」

 

 アチゲータが地面を踏み鳴らして地面を隆起させて飛ばす石の破片を、パーモットは高速で動いて回避し、そのままアチゲータの額に頭突きをお見舞いする。スピードには長けていないアチゲータはその突進に反応できずに数メートル後退する。

 

「“チャームボイス”!」

「アゲーーッ!」

「パ、モ…!!」

「パーモット、距離をとって!」

 

 体勢を立て直したアチゲータは可愛らしい光を携えた音波を発生させる。

 格闘タイプを持つパーモットに、フェアリータイプの“チャームボイス”は効果抜群。パーモットは襲い来る音波に、耳を抑えて苦しむ様子を見せると、ネモは距離をとる指示を出した。

 

「技が増えてる!すくすくぐんぐん実ってるね!」

 

 頭を振って気を取り直したパーモットと共に、ネモは大きく成長を見せているロイとアチゲータに笑みを溢す。

 

「“かえんほうしゃ”!」

「パモ…ッ!」

「耐えて、パーモット!」

 

 炎を吐き出すアチゲータ。“チャームボイス”の痛みがまだ残っていたパーモットはそれを避けるタイミングが一歩遅れ、炎が直撃する。

 アチゲータの優勢にリコ達が笑みを浮かべた時、ポツポツと、彼らの頬に雨が落ちる。コルサは傘を広げて暁のキマワリを保護し、製作を再開させる。

 

「追い詰めるよ!“じだんだ”!」

「パーモット、“あなをほる”!」

 

 アチゲータが地面を踏み鳴らして瓦礫を飛ばそうとすると、パーモットはジャンプと同時に体をドリルのように高速回転させ、バトルコートの地面に穴を空け、そのまま猛烈な勢いで体を地面に沈み混ませてしまった。

 パーモットが穴を掘り進めると、フィールドに不自然に隆起していきながらアチゲータに迫る。

 

「よく見てアチゲータ!出てきたところで攻撃だ!」

「アチッ!」

 

 ロイとアチゲータは、ボコボコと盛り上がらせて迫ってくる地面をじっと見てパーモットから目を離さない。

 すると、アチゲータの数メートル手前で地面の隆起が止まり、そこからパーモットが勢いよく飛び出した。

 

「今だ!アチゲータ、“かえんほうしゃ”!」

「アゲーーッ!!」

 

 再び、アチゲータは強力な炎を吐き出す。

 雨が本格的に降り始めたことで、その炎はアチゲータ本来の威力より若干衰えているが、それでも消えることなくパーモットに迫る。

 その時、ネモの目がキラリと光った。

 

「パーモット、“マッハパンチ”!」

「モッパァッ!」

「アチゲッ!!?」

「アチゲータ!?」

 

 目にも止まらぬ速さで走り出したパーモットが身軽な動きで炎を回避し、超速のパンチをアチゲータに炸裂させる。炎を放っていたアチゲータはそれを回避できず、地面をゴロゴロと転がった。

 

「決めるよ!“でんこうそうげき”!」

「モーーット!!」

 

 その瞬間、パーモットは両手を構えてその体に蒼電を溜め込み、そのまま立ち上がろうとしたアチゲータに突撃し、避ける暇も与えずに抱き付いた。

 その瞬間、パーモットの体から凄まじい電気が放電し、アチゲータを襲う。爆発と共に、爆煙から飛び出したパーモット。煙が晴れると、そこには目を回して倒れているアチゲータの姿があった。

 

 ロイがアチゲータのもとに駆け寄って抱き起こし、ネモとパーモットはそんなロイとアチゲータのもとに歩み寄る。

 

「楽しかった!実りのある良い勝負だったね!また今度……」

「もう一回やろう!」

「え?」

 

 再び再戦の約束をしようとしたネモだが、ロイが今すぐの再戦を申し込んだことに目を丸くする。

 

「“マッハパンチ”が来るのが分かってたら負けなかった!だから……」

「無駄だ!」

 

 そこへ、暁のキマワリ製作の手を止めたコルサが割り込んできた。

 

「何度やっても、今の貴様では勝てん」

「えっ……」

「その理由が分からないようでは、テラスタルの習得も不可能。私とのバトルもお預けだ」

「そんな……」

 

 容赦のない言葉に眉を下げて落ち込むロイに、リコとドット、イルマは彼に心配そうな視線を向けると、重苦しい空気を察したのか、ハッサクが声を上げた。

 

「どうでしょう?ここは、気分を変えて貴方達も芸術に挑戦してみては?」

 

 ハッサクの言葉に、リコ達は揃って目を丸くする。

 

「そりゃいい!お父さんもリコ達の作品を見てみたいな」

「この芸術祭では、誰でも自由に作品を出品できるのです。ネモくんも出品予定ですよね?」

「はい!」

 

 ネモが答えるのと同時に目を覚ましたアチゲータは、ゆっくりと歩きだし、コルサが製作を再開させた暁のキマワリの前まで歩み寄る。

 

「今年のテーマは、『ポケモンと一緒』。ポケモンと協力して作品を作るというのがテーマなのですよ」

「ポケモンと一緒に……面白そう!」

「まぁ、雨宿りのついでだし……」

「それより、僕バトルがしたいんだ!」

「雨の中バトルしてたら風邪引くよ。それに、ロイ君はちょっとバトルから離れてみた方がいいし……それに、あれ見てみて」

 

 イルマに促されてロイが指差された方を向くと、そこには暁のキマワリをジーッと見つめるアチゲータの姿があった。

 

「アチゲータ、興味あるのか?」

「アゲ!」

「分かったよ…アチゲータがやりたいって言うなら……」

 

 バトル出来ないことに少し残念そうにしながらも、相棒がやりたいという事もあり、ロイも芸術祭の出品を了解する。

 

「では、ネモくん……ロイくん達を案内してくださいませですよ」

 

 ハッサクの言葉に頷いたネモは、イルマ達を促してその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネモの案内で、芸術祭の間は作業場として利用されているポケモンジムにやって来たイルマ達。

 木材、紙、ペン、金属、粘土があちこちに区分されている室内を見渡した。ネモが自分達の芸術品の製作に戻り、四人はポケモン達を連れて、材料が沢山置かれた部屋を歩きだし、製作するものを考える。

 

「お父さんみたいな絵、描けるかな……」

「ニャロ!」

「やってみよう!」

 

 絵本作家の娘が、画用紙を手に相棒と一緒に意気込み……

 

「芸術とか自信ないけど……」

「カーーッ!」

「カヌチャンは大喜びだな」

 

 機械に強い娘は金属類を見渡し……

 

「これ、リザードンの絵だ……」

「アゲッ!アーッ!」

「これだ!アチゲータ、作ろう!」

 

 冒険家チームのリーダーが連れているリザードンに憧れを抱いているパートナーと共に、少年は威風堂々としたリザードンの絵画を見て何かを思い付いたらしい。

 

 イルマもまた、フクスローとイーブイ、そしてモンスターボールから出したオーガポンとキルリアと共に、室内のあちこちに置かれた材料を眺めていた。一応、サザンドラもボールから出したのだが、彼は興味がないのか部屋のはしでお昼寝中だ。

 

「うーん……何を作ろうか……」

『まっ、イル坊の芸術センスは壊滅的だからァな』

「それ言わないでよ!」

 

 フクスローの言葉にムスッとしながら返すイルマ。

 因みに、絵本作家の娘と幼馴染みのイルマには、芸術センスはない。少し前に絵を描こうとしたら、何故だか画風が柔らかくなってしまい、幼馴染みからは「イルマらしくて可愛いね」と言われた記憶がある。

 

「ぽにっ、ぽにぽにっ!」

 

 その時、芸術品を見渡していたオーガポンが声を上げた。

 イルマ、フクスロー、キルリア、イーブイは彼女のもとに集まり、オーガポンが指差しているものに目を向けた。

 

「これ、木彫り…?」

「ぽにっ!」

 

 そこにあったのは、リングマを象った木彫りの彫刻だった。

 オーガポンはそれに何か惹かれるものがあったのか、キラッキラッと目を光らせながらその木彫りをペシペシと叩いており、これがいいと主張していた。

 

「……うん。これにしてみようか」

『いいのか~?これ、メチャクチャ技術いるだろ』

「ぽにっ!」

「ぶいぶーい!」

「キルルッ!」

 

 イルマの言葉に、フクスロー、オーガポン、イーブイ、キルリアの声を聞きながら、イルマが出す作品が決定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リコ達の芸術品製作は、実に順調だった。

 

 リコの場合はニャローテが肉球に絵の具を着けて画用紙にペタペタと色を着けていくのをみてインスピレーションを得たリコがニャローテに蕾を使うように指示すると、ニャローテに続くようにミブリムが耳に似た器官に、テラパゴス足に絵の具を着け、それを使って大きな画用紙の上にペタペタと

 

 ドットの場合は、カヌチャンが鉄をハンマーで変形させ、それをドットが鉄輪を見て何かを思い付いたようで、粘土でリザードンを造っていたロイにカイデンを貸してもらえないかと頼み、快諾したロイに貸してもらったカイデンと共に製作を続けていた。

 

「う~ん。彫刻に決めたはいいけど、どうしたものか……」

 

 彫刻刀とトンカチを手に、イルマは木材の前で頭を捻る。

 イルマが掘ろうとしているのは、キルリアの進化系であるサーナイトに決定したのだが、どう掘ればいいのかを悩んでいた。

 

 本来、とてつもなく時間がかかるもの。一般的な製作期間は一ヶ月もかかる。美術に触れたこともなく、彫像に掛けなければならない製作時間も知らないイルマにはハード過ぎる事だった。

 

 その時、不思議なことが起こった。

 

「ぽにっ!」

「オーガポン?」

 

 イルマの隣で木材を眺めていたオーガポンが、蔦を巻いたような棍棒を手にして前に出てきたのだ。

 何をする気かとイルマ達が首をかしげるなか、オーガポンはイルマと同じくらいの高さはある木材の前に立つと、ブンッと棍棒を振りながら、イルマ達に話し掛ける。

 

ぽにぽに(こういうのはな)ぽーにぽにぽにぽにおーんっ(掘るって考えるから難しいんだ)がおっ(邪魔な所を)……ぽにお(破壊する)っ!!」

 

 そう言いながら、オーガポンは目の前にある木材を、手に持っていた棍棒の柄の先端の部分で、その木材を小突いた。

 ゴッ!という軽い音が立てられたかと思うと、木材が突如ピシピシッと音を立てながら、小突いた箇所にヒビが入り、みるみるそのヒビが広がっていく。

 

バガァンッ!!

 

 すると、あら不思議。そのヒビが木材全体に広がっていき、木材が音を立てて崩れたかと思うと、崩れた木材の中から、天使のような翼を生やしたサーナイトの彫像が現れたのだ!!

 

「ぽにっ!」

「いやなんでェェェエエッ!!」

 

 「良い仕事した!」というように笑みを浮かべて声を上げるオーガポンに、イルマは思いっきりシャウトした。

 無理もないだろう。オーガポンはただ木材を小突いただけなのに、一瞬でサーナイト像が出来上がったのだ。神業とかいうレベルではない。

 

「なんで今のでサーナイトができたの!?オーガポンって○重の極み使いだったの!!?」

「ぽにっ!ぽにお~ん」

『……そんなこと無い。邪魔な翼が出来てるって言ってるぞ』

ぶーいぶい(オーガポンさんって)いぶぶぶぶい(工作得意なんですね)

キルキル(スゴいです)キルキル(この彫像)キルキルルー(お母さんそっくりです)!」

『…それもそーだな。良いじゃねえか、イル坊。これで簡単に終わったぞ?』

「いやそれ以前の疑問でしょ!!」

 

 イルマのツッコミが、マイペースすぎる仲間達に炸裂した。

 部屋の隅で丸まっていたサザンドラは、イルマ達の声に煩そうに顔をしかめ、大きく欠伸をすると、再び昼寝を再開させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、夕方。

 雨も上がった為、芸術祭は無事開催された。

 飾りつけが施されたボウルタウンには、ボウルタウンの住人以外にも他の町からやって来た人々で賑わっており、先程までコルサが作っていた暁のキマワリも無事に完成したらしく、多くの人々がキマワリの回りに集まっていた。

 

 そんな中、無事時間内に芸術品の製作を終えたリコ達も、広場に集まって自分達の作品を見せあっていた。

 

「パーモットの戦う姿を彫ってみたの」

「かっこいい!」

 

 ネモの作品は、パーモットの姿が彫られた彫刻版だった。

 

「うわぁ…すっごいカラフル!」

「ニャローテ達と一緒にかいたの!タイトルは、『満開のオリーヴァ』」

「流石アレックスさん(絵本作家)の娘だね」

「この大胆な色使い……実にアヴァンギャルド!」

 

 リコの作品は、様々な色の模様を背景に両腕を広げるオリーヴァの姿であった。

 

「ハンマー観覧車だ……。クワッス、“みずでっぽう”!カイデンは“スパーク”!」

「クワーー!」

「カッ、カッ、カッ!」

「ライトアップされた!」

「これはおみごとですね!」

 

 ドットの作品は、カヌチャンが形を整えて作った観覧車で、クワッスが水流で観覧車を回し、カイデンの電気で色とりどりの電灯が光っている。

 

「僕はこれです。タイトルは……『聖女の祈り』です」

「うわぁ、綺麗!」

「キルキ~ル!」

「この短時間でこれだけのものを…アヴァンギャルド!!」

 

 イルマは、オーガポンが作り出したサーナイトの彫像に、絵の具で色違いのサーナイトと同じ水色を塗った彫刻像だった。

 すると、今度はロイとアチゲータが作品を掲示する番となった。

 

「僕たちの作品はこれ!」

「凄い迫力…!」

 

 ロイよりも大きな体躯で天に向かって雄叫びを上げるようなポーズのリザードンの粘土で出来た像をみて、コルサやリコは目を見張る。

 

「この作品のタイトルは?」

「『強くなりたい』。リザードンみたいになりたいっていうアチゲータの憧れと今の僕の気持ちを込めたんだ!よし、アチゲータ!仕上げの“かえんほうしゃ”!」

 

 ロイの指示でアチゲータは炎を吐き出すと、リザードンの粘土像の尾、両手、口、目に火が灯り、まるでリザードンの全身が燃えているような像が完成する。

 

「なんと素晴らしい!」

「力強さが伝わってくるね!」

 

 ハッサクやネモがその像を絶賛し、ロイはアチゲータと共に完成を喜びあっていると、コルサは静かにロイに話し掛ける。

 

「これでわかっただろう?全てがヒントになるのは、何も芸術だけではない。バトルでも同じことがいえる。テラスタルとは、バトルの総合芸術。ポケモンとトレーナー、空と大地、理性と感情……全てを使って組み上げた時、最高の輝きを放つ作品となるのだ」

「はい!」

 

 ロイの返事を聞くと、コルサは踵を返して歩きだし、背中越しにロイに一言だけ伝えた。

 

「バトルコートで待っているぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、ロイ達は再びバトルコートにやって来る。

 バトルフィールドに立つロイを、風車から飛び降りて待ち構えているのは、言わずもがなコルサだ。

 

「とうっ!芸術の扉を開く準備は出来ているな?」

(あの風車から飛び降りるのって毎回やる決まりなのかな……?)

 

 そんなことを考えるイルマを他所に、コルサは自身のポケモンを繰り出した。

 以前、レックウザの情報を探していた頃に繰り出したものと同じウソッキーだ。基本はほのおタイプに強いいわタイプだが、テラスタルするとほのおに弱くなるくさテラスタイプに変化するウソッキー攻略には、テラスタルのタイミングが重要だ。

 

「これより、テラスタル研修の基礎テストを始める。バトル、スタート!」

 

 コルサが開始の合図を出すと、先手を打ったのはロイだ。

 

「アチゲータ、“じだんだ”!」

「やはり、そうくるか…。ウソッキー、“みがわり”!」

 

 効果抜群のじめんタイプを技を繰り出そうとするが、それくらいは読めていたコルサはウソッキーに分身を作り出すように指示。

 ウソッキーの姿が二つに増え、アチゲータが放った瓦礫が左のウソッキーに直撃するが、それは偽物であり、ウソッキーの分身は煙と共に消失する。

 

「“ストーンエッジ”!!」

 

 そこへ、ウソッキーは地面を隆起させ、地面から飛び出した岩がアチゲータを吹き飛ばす。

 

「くっ!“チャームボイス”!」

「その技もさっき見たぞ。“ストーンエッジ”!」

 

 アチゲータは歌声を響かせようとするが、再びウソッキーは地面を隆起させ、飛び出した岩を盾の代わりにして、チャームボイスの直撃を防いだ。

 

 先ほど、ネモとのバトルで暁のキマワリの製作に集中している傍らで、アチゲータが繰り出している技をしっかりと目に焼き付けていたのだろう。

 

「どうした?もう手詰まりか」

「まだまだ、ここからだ!連続で“かえんほうしゃ”!」

「ムダだ……“みがわり”!」

 

 アチゲータが炎を吐き出すが、その瞬間にウソッキーは分身を作り出し、アチゲータの炎が直撃した分身は岩となって消える。アチゲータは再び炎を吐くが、その直前に再び分身を作り、その分身に直撃するを何度も繰り返す。

 いかに炎が強力でも、当たらなければ意味がないを表現したかのような戦況に、イルマ達は戦略を変えるべきではと考えるが…

 

「もっともっと“かえんほうしゃ”!!」

 

 なんと、ロイの選択肢は変わらなかった。

 アチゲータは何度も強力な炎を吐き続け、その度にウソッキーは“みがわり”を発動していくことで直撃を避け、炎が当たったウソッキーは岩となって消えていくという過程を何度も繰り返していく。何度も炎が燃え上がり、バトルフィールドに凄まじい熱気が発せられていく。

 

 そして、ウソッキーが何度目かの分身を生み出した時、彼の額にタラリと一粒の汗が流れ、それを見たロイの目が光った。

 

「アチゲータ!左のウソッキーに“じだんだ”!」

「アゲッ!」

「ウソッ!!?」

 

 アチゲータが踏み鳴らした地面から飛び出した瓦礫が左のウソッキーに突きささると、今度は消えることなく爆発を起こした。

 後退したウソッキーは再び分身を発動させるが、ロイは立て続けに“じだんだ”を指示すると、今度は一発も外すことなく、全てが本物のウソッキーに命中していく。

 

「はっ!“ストーンエッジ”!!」

「“じだんだ”!」

 

 ウソッキーが隆起させた岩を、地面を踏み鳴らして打ち砕き、再び瓦礫がウソッキーに突き刺さる。

 

「ウソッキーが“じだんだ”を嫌がってる!ってことはそろそろ……」

「期待に応えよう!嘘から出た誠part2!」

 

 ネモの言葉に答えるように、コルサはテラスタルオーブを取り出し、オーブに光を集めていくと、それを投げる。

 テラスタルオーブの光を浴びたウソッキーは、緑の光沢を放つ体に宝石の花束の冠を被った姿に変化した。以前、ホゲータを圧倒したくさタイプのテラスタルだ。

 

「ここだ!アチゲータ!」

「アゲッ!」

 

 それを見たロイも、自身のテラスタルオーブを取り出し、前に突き出した。

 

「輝け!夢の結晶!!」

 

 テラスタルオーブに光が蓄積し、目映い光を放つボール状のアイテムを、アチゲータの頭上に向けて投げる。

 

 頭上まで飛んでテラスタルオーブの光を浴びたアチゲータは、体を包んだ鉱石が弾けると同時に、頭の上にシャンデリアを模したような姿に変身した。ほのおタイプのテラスタルだ。

 

「スピードを上げ一気に倒す!“くさわけ”!!」

「ウソッキー!!」

 

 先に指示を出したのはコルサだった。

 ウソッキーは、くさのテラスタルで強化された高速移動技を発動させ素早くアチゲータに迫る。

 

「こっちもスピードアップだ!アチゲータ、“ニトロチャージ”!!」

「何だと!?」

 

 対するロイも、“くさわけ”と同じ効果を持つ技を指示し、アチゲータは全身に炎を纏わせ走りだす。

 フィールドの中央で、ウソッキーとアチゲータが額をぶつけ合った瞬間、凄まじい爆発が発生した。

 

 その爆風に、ロイとコルサや、リコ達も怯んでいると、爆煙からウソッキーとアチゲータが弾かれるように飛び出した。互いに距離をとり、睨み会うかと思われたが、突如、ウソッキーのテラスタルが解除され、ウソッキーは倒れた。

 目を回したウソッキーを見て、コルサはニヤリと口角を吊り上げる。

 

「貴様の勝ちだ」

「やったーーー!!」

「アゲーーッ!」

 

 喜びを露にするロイとアチゲータに、コルサはウソッキーをモンスターボールに戻しながら、ロイに問いかける。

 

「どうやって本物を見破った?」

「汗をかいてたのが見えたから。コルサさんが、全てがヒントになるって、教えてかれたおかげです」

「全てを見て、感じて、創造する。そんな芸術家にこそ、テラスタルは相応しい。貴様に、基礎テストの合格を授けよう!」

 

 そう言うと、コルサはスマホロトムを操作すると、ロイのスマホロトムに、くさタイプのマークのスタンプが表示された。

 

「ありがとうございます!ほら、合格だよ、アチゲータ!」

「アーッ!」

「ロイ、おめでとう!!」

 

 再び喜びを露にするロイとアチゲータのもとに、リコ達がかけよって絶賛する。

 

「次は僕の番……合格するよな……うん。絶対する……」

「……ドットさん、頑張ってください」

 

 そんな中、イルマはドットが小さく呟いている事に気付き、小さく激励を送ると、突如としてロイとアチゲータの腹から大きな音が鳴る。

 

「バトルしたら、お腹減っちゃった……」

「向こうに出店が沢山出てるよ」

「皆で行こう!!」

「っ!大賛成!!」

「芸術祭は幕を開けたばかり。存分に楽しめ、思春期ども!!」

「「「「はい!!」」」」

 

 コルサの言葉に、イルマ達は即答で答える。

 そして、イルマ達は思う存分、芸術祭を楽しむのだった。




・今回の見所

~ロイのバトル~
 アチゲータに早期進化しているため、少しだけ変更しました。正直、作者の頭じゃあこれが限界でした。

~オーガポンの彫刻~
 元ネタは銀魂の第四百六十一訓『顔隠して心隠さず』から、お妙さんが立体白竜を拳で砕いて白竜を完成させたシーンから。



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