魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター 作:MTHR
ありふれの小説に夢中になってて、ペースダウンしていました。
サブタイトルの元ネタは魔法少女リリカルなのはをオマージュしております。
イルマ「久々の投稿、今回はドットさんが活躍する回をどうか楽しんでいってください!」
リコ「推しへの愛がある限り、拙者の想像力は溢れ続けます……///」
イルマ「……その台詞、中の人ネタなのにリコがやると違和感ないのが不思議だよ」
見事にロイがテラスタル研修の合格を納め、リコ達が次に目指すのは、ドットの担当ジムリーダーがいるハッコウシティだ。
道中、ロイは先頭を歩き、アチゲータと共にスキップしそうな勢いで歩い鼻歌を歌っている。
「ロイ、ご機嫌だね」
「基礎テストに受かって、肩の荷が降りたんだね」
「お気楽だな……」
「だっ、大丈夫だよ!私だって合格できたし、ドットとイルマなら簡単に合格できるって!」
「あはは……ありがとう」
「気遣いすぎ」
ドットが呆れたように呟いたかと思うと、突如リコのスマホロトムが飛び出し、ある通知が表示された。
「ぐるみんの新着動画!」
「予約配信してるんだ。テラスタル研修の前に撮り溜めしておいたから」
「えっと…例えば、外でロケする配信とかはないのかな…なんて……」
「ぐるみんはロケしないから。まぁ、いつかはしてみても良いけど……」
「ホント!?」
「あっ、食い付いた」
ぐるみんのガチファンであるリコが食い付き、イルマは苦笑いしていると、かなり先に進んでいたロイが、数キロ先にあるハッコウシティを見つけ、イルマ達に声をかけていた。
ハッコウシティに到着したリコ達は、ハッコウシティのドッグで大破したブレイブアサギ号の修理をしているオリオ達に連絡をしていた。ライジングボルテッカーズの面々はそこで寝泊まりをしているらしく、リコ達もハッコウシティの滞在中はそこで寝泊まりをすれば良いという提案を受け、リコ達もそれを快諾し、先にフリード達のところへ行こうと言う事になった。
『おはこんハロチャロ~♪』
『ハリー!』
すると、ハッコウシティのビルのスクリーンに、この町のジムリーダーであり、ドットのテラスタル研修の担当でもあるインフルエンサー、ナンジャモの姿が映り込んだ。
「ナンジャモさん、大人気だね。基礎テストまでに合えるかな?」
「……いや。忙しいから、おいそれと会える人じゃない」
そう言いながら、ドット達はフリード達のもとへ向かうと……
「ドモドモー!生ぐるみん氏、おひさしブリリアント物語!」
たった今、ドットがおいそれと会える人じゃないと断言していたナンジャモが、相棒のハラバリーと共に、フリード達が寝泊まりしている施設のソファーに座って手を振っていた。
「簡単に……」
「会えたね」
「お久しブリリアント物語って、何?」
「ナンジャモ姉さん!ここで何してるんだよ!?」
思わずドットがナンジャモに尋ねるが、キョトンとした表情で答える。
「何してるも何も、ドックを紹介したのはこの僕、ナンジャモなんだけどな~」
「まっ、そういうことだ」
「だからって、実家じゃないんだから……」
「固いことは言いっこナシナシ!顔出し配信者にとって、のんびり寛げる場所は貴重なんだぞ~」
タマンチュ・ラ・トルテを食べながらそう言うナンジャモ。すると、マードッグがリコ達の分のタマンチュ・ラ・トルテを持ってきてくれたことで、入間達もおやつタイムとなった。
「研修の方は順調か?」
「うん、なんとな」
「バッチリだよ!」
「そりゃよかった。で、次はドットがナンジャモに挑むって訳だ」
フリードの言葉を聞いたナンジャモは、何かを思い出したようにドットに声をかけた。
「あっ、生ぐるみん氏!基礎テストの前に、僕のお願い、聞いて聞いて~」
手をスリスリさせて頼み込んでくるナンジャモに、何故かドットは果てしなく嫌な予感がしていた。
そして、ドット達は港の前までやって来ると、ナンジャモの相棒ハラバリーの進化前であるおたまじゃくしと電球が合体したようなポケモン【ズピカ】が円を描くように並び、そこへハラバリーが現れて電気を放出する。
何事かとドットやライジングボルテッカーズが目を白黒させていると、電気が収まり、ハラバリーが立っていた場所には、いつの間にかナンジャモが立っていた。
「生ぐるみん氏!僕の基礎テストは『ドンナモンジャTV』のスペシャル生配信中に行うぞ!んでんで、今日はそのリハーサルなんだよね!」
「えっ!?配信するの!?」
ドットの言葉に、ナンジャモは笑みを浮かべながら両腕を広げると、そこから何台ものスマホロトムが飛び出した。そのスマホロトムのうちの数台が、ドットの周囲を飛び回る。
「うっ……カメラ」
「クワ?」
何故か顔を隠そうとするドットに、クワッスは首をかしげていると、ナンジャモは得意気に説明する。
「リハといっても、本番と同じ様にバトりしてもらうぞ!でもでも、今日僕が戦うわけにはいかないから、対戦相手は生ぐるみん氏のリア友にお任せしよう!」
「任せて!リア友代表!イエーイ!!」
ナンジャモの言葉に手を上げて名乗り出たのは、ロイとアチゲータであった。ナンジャモとロイのテンションが似ているのか、ロイはノリノリである。
お調子者のロイにモリーやオリオが苦笑している傍らで、フリードはロイとアチゲータの成長ぶりを見るのが楽しみだと口にする中、ロイとドットはそれぞれバトルの体制を取り、前に出てきたアチゲータとクワッスは互いに睨み合う。
「んじゃも~。早速バトりいくぞ!今日は配信なしだけど、本番は全世界の目玉が生ぐるみん氏に注がれるからね!」
「うっ……」
その言葉に、ドットは身を強張らせ、自身の周囲を飛び回るカメラにチラチラと視線を向ける。
それに気付いたのは、イルマとリコだ。
「ドット、なんだか様子が変……」
「……………あっ。もしかして、そういうこと?」
「イルマ、何か分かったの?」
何かを察した様子のイルマにリコが問いかけようとした時、ナンジャモの明るい声が響き渡った。
「ではでは、バトりスタート!!」
「いけ、アチゲータ!」
「クワッス、いくぞ!」
ナンジャモの合図に反応し、二体はほぼ同時に飛び出す。
そして、先に指示を出したのはロイだった。
「アチゲータ、“ニトロチャージ”!」
指示と共に、アチゲータの炎の突進が炸裂し、クワッスは吹っ飛ばされる。
「クワッス!じゃあ、こっちは……あっ!カメラ……」
ドットはクワッスに指示を出そうとしたが、その瞬間、自身の周りを漂うスマホロトムを目にして硬直してしまう。
当然、指示が出ないならば、クワッスがアチゲータの動きに対応できる筈がなく、クワッスは“じだんだ”や“かえんほうしゃ”など、効果は分割させるとは言え、強力な技のサンドバッグと成り果ててしまえば……気絶してしまうのは当然の事である。
「ごめん、クワッス……」
「クワッス……」
何度も炎を食らって倒れたクワッスに声を掛けると、クワッスは弱々しく起き上がる。
「ドット、なんかいつもと様子が違った……」
「ありゃりゃ~。生ぐるみん氏、何がどうしたの?」
ドットの様子が可笑しいことに気付いたリコは心配そうな眼差しを、ナンジャモは不思議そうな表情で尋ねると、イルマが自身の考えを口にする。
「多分……カメラが自分の方に向いてて、頭が真っ白になったとか?」
「ッ、あぁ…そうだよ」
理由を的確に当てられてウグッとなったドットだが、否定のしようもないので、素直に頷くと、当然ながらリコ達が首をかしげる。
「カメラ?」
「いつもぐるみんで配信してるのに?」
「あちゃ~。なるへそ物語」
頭に疑問符を浮かべるリコとロイにたいし、ナンジャモは理由が分かったのか頭を抱える仕草をすると、その理由を的確に言い当てた。
「生身の姿でカメラの前に立つのは緊張しちゃったかな?」
「……」
ナンジャモの言葉に、ドットは無言だった。この場合、沈黙は肯定するのも同然だった。
「ドット……」
「大丈夫!この僕がアドバイスを授けよう!」
リコが心配そうな眼差しを向けていると、ナンジャモは笑顔で声を上げた。
「インフルエンサーにもテラスタルにも必要なのは……映え!」
「映え?テラスタルに?」
「何で?」
「きらびやかにテラスタルして、見ている者を楽しませる!映えて、映えて、目玉をエレキネットすれば、バトりもバズりも間違いな~し!!」
「……そうなんですか?」
「まっ、かもしれねぇな」
「あぁ、映えは大事だな」
クルクルと回りながら言うナンジャモの言葉にリコ達ライジングボルテッカーズが首を傾げている中で、何故か、フリードやバチコだけは理解を示していた。
「でも、ぐるみんじゃない僕に映えるバトルなんて……」
「いやいや、生ぐるみん氏、落ち込んでる場合じゃないぞ!この僕、ナンジャモが、ビリッとバリッと手助けしてしんぜよ~!」
ナンジャモの言葉に、ドットは下に向けていた顔を上げた。
その後、ブレイブアサギ号にやって来たリコ達。
ドットは一旦自室に戻り、イルマ、リコ、ロイの三人は甲板の柵に寄りかかりながら話し合っていた。
「ナンジャモさんが優しくて良かったね」
ロイがそう呟く。
あの後、ナンジャモは基礎テストの特例として、ぐるみんの姿でバトルをしても良いと言うことになったのだ。ナンジャモはコラボすれば再生数がうなぎ登りならぬシビルドン昇り間違いなしと笑みを浮かべていたが……ドットには好条件に思える。
「う~ん。でも、ドットはそれで良いのかな?」
「どういうこと?」
「何て言うか……ぐるみんはドットじゃないし……」
「中の人なんていないってこと?」
「そう言うことじゃなくて……」
聞き返してきたロイの言葉に困ったような笑みを浮かべていると、突如横から声が聞こえた。
「着ぐるみで自分を誤魔化しても、カメラに写るのが苦手なアイツの根本的な問題は解決しねぇ……ってことじゃねえか?」
声は聞き覚えがあるが、その口調は普段は聞きなれないものだ。
リコとロイがバッと顔を向けると、そこには見慣れた白いスーツを着こなしながらも、肉食獣のように鋭い目付きに紫がかった青い髪をしたイルマ……悪イルマの姿があった。
「あ、悪イルマ!?」
「えぇっ!?悪い方のイルマ!?なんで!?」
「出たくて出て来たんだよ。悪いのか?」
驚きを露にするリコとロイに、イルマの中に眠る別人格は少しムスッとした表情で答えると、小腹がすいたのか、ポケットからマカロンを取り出してパクリと口に含んだ。
その時、リコの持つスマホロトムが、リコの懐から飛び出したのだ。リコが何事かとその画面を覗き込むと、そこにはぐるみんのライブ配信の告知が表示されており、リコが目を丸くすると、彼女の耳に、聞き馴染みのある声と音が聞こえてきた。
「よっす~。ポケモントレーナーの皆!ぐる~びんしてる?」
「チャチャーン!」
「クワッス!」
「今日は久しぶりに、ぐるみんのライブ配信なのだ~!」
その声がした方に目を向けてみれば、船首付近で、ぐるみんの着ぐるみを着たドットがいた。今まで、部屋に出ないでライブ配信をしていた筈のドットが突然部屋から出てきた事にリコ達が困惑し、悪イルマは
『早速だけど、皆に大・大・大発表があるぜ!ぐらみんは、あることへの挑戦を決めたのだ!』
「それって……」
「ぐるみんでテストを受けることを決めたって言うつもり!?」
「……」
まさかというような表情でぐるみんに視線を向けるリコとロイ。悪イルマは白けた目でリコのスマホロトムを覗き込む。
『そのあることとは……』
「「あることとは……!?」」
「いや、そこにいるのに何でスマホに顔寄せんだよ」
悪イルマのツッコミも耳に届かず、ゴクリと唾を飲み込んでぐるみんのライブ映像を凝視するリコとロイ。
そして、ぐるみんは……
『それは…………………………のちほど!!』
「「ズコーーッ!!」」
「じゃあ今ライブ配信すんなよ」
リコとロイは盛大にずっこけ、悪イルマの冷ややかなツッコミが虚しく響いた。
数時間後。
ライブ配信が終わったかと思うと、ぐるみんはブレイブアサギ号から飛び出してハッコウシティの町並みを歩いていた。
ぐるみん姿でチュロスを食べに行ったり(食べていたのはクワッスとカヌチャンだが)、ラップを歌いながらハッコウシティの町並みを歩いたりすれば、大人気の動画配信者であるドットは当然注目を浴びる。人々はスマホロトムでぐるみんの姿を激写していくが、ぐるみんは動じる様子はない。本人は外で配信しても良いと言ってるのてま喜ばしい事かもしれないが、同行しているクワッスは、終始浮かない顔をしていた。
その後、路地裏に入り込んで着ぐるみを脱いだドットは、スマホロトムで動画の再生数を確認した。
「良かった。楽しんでくれたみたいだ。これならテストの時の映えも安心だ」
「クワッス」
「クワッス、どうした?」
ムスッとしたような表情のクワッスの姿を見てドットが首を傾げると、リコ達が路地裏にやって来た。
「ドット!」
「すごく盛り上がってたね!」
「ロケも好評だったみたいで良かったよ」
「うん、すごく楽しそうだった」
「カメラとか、全く気にならなかった。やっぱり、ぐるみんの姿だと力が出るみたいだ」
ぐるみんの着ぐるみを見せながらそう語るドット。明るい声に聞こえるが、その声に違和感を感じたリコは眉を下げる。
「ねぇ、ドット。さっきぐるみんが言いかけていたある事って……」
「あれって、ぐるみんでテラスタル研修の基礎テストを受けるって事でしょ?」
「うん。ナンジャモ姉さんの許しも出たからね」
「そうなんだ……」
明るい声で答えるドット。
ロイも笑顔だが、リコだけは眉を下げ、気乗りしないような表情を浮かべていた。そのリコの様子に気が付いた悪イルマは、壁に寄りかかったままリコに声をかける。
「リコ、何か言いたいことあんなら言えば良いんじゃねぇか?」
「何か問題あるのか?」
「えっ!?う、ううん、いいと思うよ。でも、ドットはそれでいいのかなって……」
「どういうこと?」
「ちょっと、無理してる気がしたから……。急にぐるみんでロケをやったり、妙に明るく振る舞おうとしてる感じで……」
「えっ、そうなよ?」
「……無理なんてしてないよ」
ドットが俯きながらそう言った時、ドットは視界のはしで、クワッスがぐるみんの着ぐるみを引きずっているのを目撃した。
「ダメだよ、クワッス!」
「クワッス!!」
着ぐるみを取り替えそうとしたドットだが、クワッスは着ぐるみの前に立ち、ダメだというように腕を広げ、厳しい声を上げた。
「クワッスも、ドットの様子がおかしいとおもってたの?」
「ねぇ、ドット。本当にこのままテストを受けて……」
「良いんだよ!!」
リコが声をかけようとした時、ドットは大声を上げた。
普段のドットなら絶対に上げないような声に、リコはビクッと肩を震わせ、ロイは目を丸くしている。
「もう決めたんだ。僕はぐるみんでテストを受ける。それの何がいけないんだよ!!」
ドットの言葉に、リコとロイは目を丸くしてドットを見つめていると、そんなドットの言葉に答えるものがいた。
「───鏡をみてみろ、それが答えだ」
「あ、悪イルマ!」
それは、ずっと壁にもたれかかっていた悪イルマだった。
悪イルマは背中を壁から離すと、ツカツカとドットに歩み寄ると、謎の威圧感に気圧されているドットに、冷めた表情で告げた。
「今のお前は中身の入っていない宝箱みたいなもんだ。
「なっ!?」
「ちょっ、イルマ!言い過ぎだよ!!」
あまりにも容赦のない言葉にドットが絶句し、リコはロイと共に慌ててイルマを宥めようとするが、悪イルマは意にも介さない。
「お前が動画の再生数を伸ばしたいだけなら、ぐるみんになっても構わない。だがテストに合格する気でいるなら、そんなちゃちな策なんて使わずに、中身まで輝いてみせろ。それも出来ないなら、お前は所詮外面だけの女って……“生ぐるみん氏”ってことだ」
「お前……!結局何が言いたいんだよ!!」
続けて放たれる罵詈雑言に、ドットは歯を食い縛って悪イルマに掴みかかろうとするが、その直前で悪イルマはヒョイッと体を反らして避けた。
「聞き分けがないなぁ……なら、こうだ!」
「クワッ!?」
「「「ッ!!?」」」
悪イルマは突如、クワッスの近くにあったぐるみんの着ぐるみを掴み上げた。
目を見開くクワッスやリコ達を尻目に、悪イルマは踵を返し、フクスローとイーブイと共に路地裏から飛び出していってしまった。
「なっ……!?」
「悪イルマ、ぐるみんを持っていっちゃったよ!?」
「何考えてるの~!?」
三者三様の反応をみせながら、ドット達は急いで悪イルマを追いかける。
そうして悪イルマを探しながら走っていき、メインストリートまでやって来ると、リコ達はバトルフィールドにもなっている場所に、人が集まっていることに気づいた。
何事かと、リコ達もそこに向かい、人混みを掻き分けていくと、そこには、フィールドのど真ん中で、ぐるみんの着ぐるみを持って仁王立ちする悪イルマの姿があった。彼の側にはフクスローとイーブイだけでなく、いつの間にボールから出したのかオーガポンの姿もあった。
悪イルマは、ドット達を目にすると、ニヤリと笑いながら大きく声を上げた。
「ドット!こいつを返してほしけりゃ、力ずくで奪ってみろ!そうでないと……」
悪イルマがオーガポンと目を合わせると、オーガポンはお面を付け替えてかまどのめんの姿となる。それを見て嫌な予感がするリコ達だが、次の瞬間、悪イルマはその予感を的中させるように、オーガポンは愛用の棍棒に、かまどのめんになった事で追加された炎タイプの力で、棍棒を発火させた。
「ま、まさか…あの着ぐるみを燃やす気!?」
「「!!?」」
悪イルマの恐ろしい考えを看破したリコの言葉に、ドットやロイも顔を強張らせる。
すると、そんな騒ぎに、ハッコウシティにいる野次馬達は次々とスマホロトムを取り出す。
「何、あの子達?」
「見たことないポケモンがいるぞ!」
「あのキルリアとイーブイ、色違いじゃん!2体も連れたトレーナーとかスゴすぎない!?」
「あの子もイケメンじゃない?」
準伝説ポケモン+色違い2体+イケメンという人の注目を集める要素のてんこ盛りである悪イルマ達に、人々はこれから何が起こるのかとワクワクしながらスマホロトムを向ける。
次々と向けられていくカメラを目にして、ドットは注目されているのが自分でないと分かっていても、身を強張らせる。その時、足元にいたクワッスが飛び出した。
「クワッスッ!」
「やっぱり来るか……キルリア、“れいとうパンチ”!」
「キルッ!」
「クワッ!?」
悪イルマの指示を受けたキルリアが飛び出し、冷気を纏わせた拳を炸裂させる。フェイントを受けたクワッスは、ドットの前まで転がった。
「クワッス!」
「クワッ、クワッス!!」
駆け寄ろうとしたドットに、起き上がったクワッスは声をかける。その意図を察したドットは回りをチラチラ見ながら狼狽える。
「クワッス、でも…ここでバトルなんて……」
辺りにはスマホロトムが多数向けられており、ドットはうまく声を出せない。
それを見たクワッスはキルリアに向き直り、一人で飛び出した。右側の翼を光らせ、キルリアに向けて“はたく”を繰り出そうとする。
「キルリア、“ねんりき”」
「キル!」
「クワッス!?」
対するキルリアは、悪イルマの冷静な指示を聞いてサイコパワーを操り、飛び掛かってきたクワッスを一気に地面に叩きつけた。
「“テレポート”から“れいとうパンチ”」
「キルッ!キルリッ!」
「クワーーーッ!?」
瞬間移動で背後に回ったキルリアが、起き上がろうとしたクワッスに極寒のアッパーカットをお見舞いして殴り飛ばした。
「“ゆびをふる”」
「キルルッ!」
指をチッチッとふったキルリアは、頭の中にある技が思い浮かび、キルリアは両手に力を込め、両手に蒼い光弾を形成していく。
「キルッ!」
「クワーーーッ!?」
キルリアが引き当てた“はどうだん”が炸裂し、爆発を起こしたクワッスは地面に崩れ落ちるが、それでも諦めないと言わんばかりにキルリアに突撃する。
「“テレポート”」
「キルッ!」
「クワッ!?」
キルリアは再び瞬間移動を発動し、クワッスの目前に現れる。動揺したクワッスの隙を突き、“れいとうパンチ”が再び炸裂した。
「ロイ、悪イルマを止めなきゃ!」
「うん!アチゲータ!」
倒れるクワッスを見て、もう我慢できないと言わんばかりにリコとロイが飛び出そうとすると、ドットがそれを制止するように腕を伸ばした。
「……僕にやらせて!」
「……フッ」
ドットの言葉に、悪イルマは面白そうに口角をつり上げながら、ぐるみんの着ぐるみを脇に抱える。
「行くぞ、クワッス!」
「クワッ!」
そして、前に出たドットとクワッスは互いに頷き合うと、クワッスはジャンプをするように飛び、体制を直してキルリアに向き直った。
「“みずでっぽう”!」
「クワッス!!」
ドットの指示で、クワッスは口から猛烈な水流を放つ。それを見て、悪イルマはニヤリと笑う。
「利用してやれキルリア、“アイスブレイド”!」
「キルッ!」
キルリアが“れいとうパンチ”の要領で両手に冷気を纏わせながら走り出すと、迫り来る水流を絶妙なタイミングでかわし、水流に手刀を振るう。
途切れた水がキルリアの両手の冷気によって凝固され、キルリアの両手に、氷で出来た剣が作り出された。
「ッ!?」
「…キルルッ!」
「ッ!避けろ、クワッス!」
「クワッ!?」
常識破りな戦法に目を見開くドットだったが、キルリアが剣を手に走るのを見て、咄嗟に指示を出す。クワッスはギリギリのタイミングでキルリアの剣を回避すると、バックステップで距離を取るが……
「“テレポート”!」
「キル!」
「クワッ!!?」
背後に瞬間移動したキルリアの剣がクワッスを切りつけた。クワッスは地面に倒れるが、氷で出来た剣のためか、ダメージは無視して言いレベルではないが、戦闘不能に陥る程ではないくらいには体力が残っていた。
「……やっぱり、アイツのバトルテクは予測しづらい。それに“テレポート”……どうすれば……」
冷気で液体を凝固させて武器にするという型破りな戦法に、“テレポート”の瞬間移動によ予想不可能繰な怒涛の攻撃。クレバーな戦法を得意とするドットに、他では見ることが出来ない戦いかたをするキルリアは強敵だった。
その時、ドットは周囲のスマホロトムが、自信に向けられていることに気付き、身を強張らせる。
「クワッス!」
「……あっ!集中だ!」
クワッスに声をかけられ、なんとか意識を取り戻すドットは、視線をキルリアと悪イルマに向ける。自然と、頭のなかを埋め尽くしていたカメラは消えていっていた。
「……よし、連続で“みずでっぽう”!」
「クワッス!クワッ!クワッ!」
「数打ちゃ当たると踏んだか?避けろ!」
「キルッ!」
クワッスは連続して水流を吐き出すが、キルリアはバレエを踊るように軽やかな動きで水流を避けていく。
「“テレポート”から攻撃だ!」
「キルッ!」
「クワッ!?」
キルリアは瞬間移動を発動し、クワッスの背後に出現したと同時に剣を振るい、クワッスは地面に倒れる。
「クワッス、今度は“はたく”だ!」
「クワッス!!」
起き上がったクワッスは翼を振り上げてキルリアに突撃する。キルリアはそれに対して氷の剣を構え、悪イルマの指示を待つ。
「もう一度“テレポート”」
「キル!」
「クワッ!?」
「クワッス、大丈夫か!?」
「クワッス!」
キルリアが瞬間移動でクワッスの前に現れて片方の剣を振るい、クワッスの翼とぶつけ合うと、もう一本の剣を振るってクワッスを吹き飛ばした。
ドットが声をかけると、倒れていたクワッスは起き上がり、まだやれるというように答えた。
「……よし、だけどもうわかった!クワッス、突っ込め!」
「クワッス!!」
すると、何とクワッスはドットの指示を信じて、真っ直ぐにキルリアへと突進する。
「キルリア、“テレポート”だ!」
「キルッ!」
それに対して悪イルマが指示を出すと、キルリアは剣を構えて瞬間移動を発動。クワッスの目前に出現して剣を振り下ろそうとして……
「今だ!クワッス、“けたぐり”!」
「クワッス!クワ!クワ!クワッス!!」
「キルルッ!?」
「キルリア!?」
絶妙なタイミングで放たれたクワッスの連続蹴りが炸裂し、キルリアは蹴り飛ばされてゴロゴロと地面を転がった。
「とどめだ!“みずでっぽう”!!」
「クワッス!!」
クワッスは全力で水流を吐き、キルリアに直撃する。
同時に、キルリアの体を煙が包み込み、モクモクと立ち上る煙をジッと見つめるドットとクワッス。すると、煙が晴れていき、キルリアの姿が露になった。
「……キル」
「よし!」
「クワッス!!」
そこには、氷の剣を手放して膝をつくキルリアの姿があった。
起き上がったキルリアは、クワッスに向かい合うように立つと、しばらくの間クワッスをジッと見つめ、クワッスもまたジッとキルリアを見つめていると……
「キル、キルキル!」
「クワッス!」
「えっ?」
キルリアは笑顔でクルクルと回り、クワッスも笑顔を浮かべて答えた。すると、クワッスとキルリアは意気投合したように笑い合い、ドットは毒気を抜かれたように目を丸くする。
すると、ぐるみんの衣装を脇に抱えた悪イルマが目前までやって来た。
「お、おいイル……!?」
「んなっ!?」
ドットが悪イルマに向けて口を開こうとした瞬間に悪イルマがとった行動に、リコが目を丸くした。
何故なら、悪イルマはドット顎に軽く手を添え、指で軽くクイッと持ち上げながら、相手と自分が見つめ合うようにさせる行為──所謂『顎クイ』をしていたのだ。周囲の野次馬がざわめき立つ。
「……うん。俺好みになったじゃねえか」
「な、な……!」
悪イルマは、普段のイルマとは別タイプのイケメンだ。この状態になると、歩いているだけで注目を浴び、普段のイルマをよく知るライジングボルテッカーズは兎も角、道行く人は挨拶をしただけで心揺さぶられる事がよくある程だ。そんな顔が至近距離にあれば、流石のドットでも赤面を免れない。
「ちょっ、イルマ!今すぐ離れて!!」
「うぉっ!?」
その時、一瞬で悪イルマの背後に回り込んだリコが、悪イルマの襟を掴み、何処にそんな力があるのかといいたくなるような力で、悪イルマをドットから引き離した。
「悪イルマ……私、ちょっと
「おい、なんかルビがおかしな事に……」
「ちょっ、リコ!?」
全身から黒いオーラを出しながら悪イルマの襟を掴んだまま彼を何処かに引き摺っていくリコに、ロイは悪イルマが手放したぐるみんの着ぐるみを拾い上げながら追いかけた。
『おはこんハロチャロ!いやぁ、白熱したバトりだったねぇ!』
「…!ナンジャモ姉さん……」
悪イルマの指の感触に呆然としていたドットは、何処からか聞き覚えのある声が聞こえきてそこに目を向けると、そこにはビルのスクリーンに、ナンジャモの姿が映されていた。自然と、ドットに注目していた野次馬もそこに視線が集められる。
『今のバトり、皆の者は脳内のフォルダに焼き付けた!?ここで、大・大・大ニュース!こちらの物静かで利発な少女こそ、今回テラスタル研修で僕に挑戦するトレーナーなのだ!』
「えっ!?」
ナンジャモが大スクリーンで発表した事実にドットは目を見開き、その情報を聞いた野次馬は「そうなんだ」「頑張って」とドットに声をかける。
『基礎テストは、後日「ドンナモンジャTV」だけで独占生配信!楽しみにしてるぞ、ドット氏!』
「ドット氏……」
ナンジャモが自分を呼んだ名前を復唱するドット。すると中継が終わり、辺りに歓声が沸き上がると、ドットは思い出したように、リコ達が去っていった方に向かって走り出していった。
一方、最初の路地裏に逃げ込んだリコは、いろいろとやらかして大騒ぎを起こした張本人を正座させていた。ロイはそんなリコの気迫に顔を青くしていた。
「あ、あの……リコ……?」
「ナニ?」
「あ、なんでもありません。はい」
正座されられたイルマは、既に悪イルマではなく普段のイルマに戻っていた。連行されている間に悪イルマら深層意識に引っ込んだらしく、表面に出てきたイルマは悪イルマの時の記憶がなく、何故リコに連行されているのかすら分かっていない。だが、反論しようにもリコの迫力が怖すぎて、反論す事が出来なかった。
すると、路地裏にドットがやって来たことで、リコの威圧が収まり、イルマはホッと息を吐く。すると、ドットは自分が悪い方の人格ではなく普段の自分に戻ったことをリコから聞くと、クワッスを抱えながら口を開いた。
「あの……さっきは怒鳴ったりしてごめん」
おずおずと謝罪してきたドットに、リコとロイは目を丸くし、イルマは何の事だか分からずに首をかしげる。
「クワッスと一緒に戦ってたら、カメラなんて気にならなくなってたよ。アイツが無理矢理連れ出してくれなかったら、ずっと変われなかったと思う……」
「ドット……」
「ナンジャモ姉さんが、初めてドット氏って呼んでくれたんだ。少しは、僕の事を認めてくれたのかも」
そう言うと、ドットは前上で目を隠しながらも、明るい表情で宣言した。
「ドットでテストを受けるよ」
「「!わぁ……」」
ドットの宣言に、リコとロイは顔を明るくし、ドットはクワッスを自身の顔の前まで持ち上げる。
「よろしくな、クワッス」
「クワッス」
ドットの言葉に、クワッスは任せろとと言うようにポンッと自身の胸を叩いた。
「……何の事?何の話?」
『知らぬが仏ってやつだぜ、相棒』
「ぽーに」
「ぶぶぶい」
「キルル♪」
そんな中、イルマだけは状況がまるで分からず、ドットやリコ達をみながら、首をかしげているのだった。
・今回の見所
~悪イルマ~
ドットの相手役をブロロンから変更してドットとバトルをした主人公。アニメ通りブロロンの相手でも良かったかもと思いましたが、それなら悪イルマだも良いんじゃないかと思いました。
感想、評価お待ちしております。