魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター 作:MTHR
メガボルテージ放送前に投稿したかったのですが、名探偵コナンや僕とロボコの劇場版を見に行ったり、仮面ライダーの方の小説の実費に夢中だったことや、仕事が忙しくて思うように進められませんでした。
だというのに、知らぬ間に評価バーの色が赤になっていて……皆様、本当にありがとうござます。
今回はイーブイ回。サブタイトルの元ネタは仮面ライダーガヴ第25話『虚像の幸せ 蜜の味』からです。
イルマ「リコ、僕達も仮面ライダーの方に負けないように活躍しよう。そして
リコ「いや、それは中の人ネタでも絶対言っちゃダメでしょ!双○の陰陽○の悠○以来のキャラ崩壊してるから!!」
イルマ「打ち首獄門の方がいいですかね」
リコ「違う!!」
ドットのテラスタル研修の基礎テストが終わり、ついに残るはイルマの基礎テスト。
そしてイルマ達四人はハッコウシティを発ち、イルマの基礎テストの相手であるハイダイがいるカラフシティを目指していた。
「オーガポン、“ツタこんぼう”!」
「ぽにっ!」
森の中でイルマの指示が響き、オーガポンは緑のエネルギーを纏う棍棒を振り下ろす。その視線の先にいたのは、“シャドークロー”を構えるフクスローの姿があった。
「今だ!フクスロー、“シャドークロー”を重ね合わせて!」
『おう!!』
イルマの指示で、フクスローは両翼の影で作られた爪と爪の間に爪を重ね合わせると、フクスローの両翼の間に、影で出来た盾が作られた。
その瞬間、オーガポンの棍棒が振り下ろされ、影で作られた盾と衝突した。凄まじい衝撃波と共に、金属音が響き渡り、オーガポンはフクスローから距離を取った。
「──よし!新しい防御技も完成だね」
『まっ、俺ちんにかかればこんなもんっさ』
「ぽにっ!」
そこでイルマはパンッという音をならしながら終了を告げる。
カラフシティに向かう道中に昼休憩することにしたのだが、ヘルクッキングメイカーであるイルマは昼食作りに参加させて貰えず、時間をもて余していたイルマはカラフシティの基礎テストのための特訓をする事になり、そこで“シャドーシュート”に続く新たな技の開発を行っていた。
そして新たに習得したのが、シャドークローを応用して編み出した防御技──“シャドー・ウォール”である。
フクスローは、相手の攻撃を流して反撃に繋ぐカウンタータイプだが、くさ・ひこうタイプで弱点が多い上に飛行速度もそこまで高いわけではないため、一つでも防御のための策を考えておいた方がいいと考えたのだ。
「イルマ~。ご飯できたよ~~」
「あっ、丁度いいタイミング。皆、行こう」
「くふぅ」
「ぽにっ」
「キルキル」
「ぶいっ」
そこへ、昼食の準備を終えたリコ達がイルマを呼びに来たことで、イルマ達は特訓を終わらせてフクスロー達に声をかけると、フクスロー、オーガポン、キルリア、イーブイが返事をしてついていこうと歩き出す。
「ぶい?」
その時、一番後ろを歩いていたイーブイは、何鹿足音を聴いて振り向く。
すると、草木の茂みの影から除く茶色の毛並みを見て、イーブイは目を見開いたと同時に、イルマは立ち止まったイーブイに気付いた。
「イーブイ、どうしたの?」
「ぶい……ぶいっ!」
「あっ!イーブイ!?」
イルマが呼び掛けようとするが、次の瞬間にはイーブイは茂みの奥に向かって走り出してしまい、イルマは慌ててその背中を追いかける。背後からリコ達の声が聞こえてくるが、緊急事態のために仕方なく無視してイーブイを追いかける。
フクスロー達と共に茂みを掻き分け、少し大きめの広場に出たイルマは、キョロキョロと視線を右往左往させるイーブイを発見した。
「イーブイ、探したよ。ここで何してたの?」
「ぶい……ぶい!」
「あっ、ちょっと!?」
イルマに抱き上げられたイーブイはしょぼんと耳を垂れさせたかと思うと、ピクリと耳が反応し、イーブイは再びイルマの手から飛び出し、茂みの中に入り込む。
それを見たイルマ達も、仕方なくその茂みの中へ入っていくと、イルマ達は目の前に広がっている光景に目を見開いた。
「ブイブイ!」
「ブイ、ブイブイブイ!」
「シャワッ!」
「ブイ!」
「ブー!」
「サン!」
「ブイブイブーイ!」
「リーフィ」
「グレイ」
茂みの向こうは、食べ頃の木の実がなった木々やプールくらいの大きさはありそうな池がある草原だった。そこには大中小様々な体躯をしている無数の通常色のイーブイに、イーブイの進化系である【シャワーズ】【ブースター】【サンダース】【リーフィア】【グレイシア】が、イーブイ達と仲良く過ごしていた。
その光景はまさに、イーブイの楽園とも言うべき光景だった。
「凄い……まさか、こんな場所があるなんて……!」
イルマ達が目を輝かせていると、イルマが連れているイーブイは、呆然とその光景を見つめたあと、ゆっくりと歩き出し、茂みから飛び出した。
それを見て、イルマ達も茂みから飛び出そうとした時、イルマの背後の木々の陰から、ヌウッと手が延びてきたかと思うとその手が一瞬にしてイルマの口を塞いだ。
「ッ!?」
「そこ……は……いっちゃ…ダメ」
イルマが慌てて振り替えると、そこには白銀の短髪に眼鏡を掛けた美女が、イルマの口を塞いでいた。その側には、彼女のポケモンと思われるバシャーモの姿もあった。
「貴方……何処かで……?」
イルマはその女性とバシャーモの姿を見て、何処かで見たような気がしてしばらく見つめていると、その女性はスッとイルマから視線をそらし、何故かイルマの顔を見ないようにしながら、野生のイーブイ達を指差しながら口を開いた。
「ここ…野生のイーブイとその系統が群れを作ってる…場所……人間は…入っちゃいけない……」
「そうなんですか……あっ!もしかして、イーブイ……」
何やらあのイーブイ達の群れについて知ってそうな女性の言葉に、茂みに留まることにしながらも、ある可能性に至る。
それこそ、パルデア地方にピクニックに行ったさいに拾ったあの白銀のイーブイの卵が、ここで発生したものなのではないかと。
「ぶいっ!!」
イルマがそう考えているなかで、イルマが連れていた白銀のイーブイは、数多くのイーブイ達やその進化系達に向けて声をあげた。その声に反応して、一斉に白銀のイーブイに顔を向けるイーブイ達。
「ぶい、ぶいぶい!!」
白銀のイーブイは、尻尾を喜びでブンブンと振りながら駆け寄っていく。
「ブイッ!」
「ッ!?」
その時、白銀のイーブイの足元に、無数の星の弾幕が降り注いだ。
白銀のイーブイや、茂みの影から様子を見守っていたイルマ達が、驚いたようにイーブイ達の群れに目を向けると、あることに気付いた。今まで和気あいあいとしていたイーブイやその進化系達の白銀のイーブイを見る目が、全員厳しいものになっていたことを。
生まれてこのかた、野生のポケモンからそんな目を向けられたことのない白銀のイーブイはその視線に怯むように後退しているのを見て、イルマは我慢ができずに茂みから飛び出した。
「イーブイ!大丈夫!?」
「あっ……」
銀髪の女性が制止の声を上げようとしたが、それよりも早くイルマは飛び出し、白銀のイーブイを抱き起こした。
その時、茂みから姿を表したイルマの姿をみたイーブイ達が一斉に反応した。
「ブイッ!ブイブイッ!」
「ブーイッ!」
「シャワッ!!」
イルマの姿を目にした瞬間、イーブイ達は途端にあわて始め、一斉に踵を返して走り出してしまう。何がなんだか分からないイルマ達がその光景を眺めていると、やがて湖から飛び出したシャワーズが“くろいきり”を発動させ、シャワーズの全身から発生した真っ黒な霧がイルマ達の視界を遮った。
やがて霧が晴れると、イーブイ達の姿は、影も形もなくなっていた。
「いなくなっちゃった……」
「ぶい……」
イルマの腕の中で、ペタリと耳を倒すイーブイ。イルマはイーブイの様子に気付いて慌てて彼女の頭を撫でて慰めていると、フクスロー達や銀髪の女性とバシャーモが歩み寄ってきた。
「大…丈夫…?」
「え?あっ、はい。すみません。行っちゃダメだって忠告してくれたのに……」
謝罪する入間に気にする必要はないと答えた後、銀髪の女性は先程までイーブイ達が集まっていた地点に目を向けながら口を開いた。
「ここ…の…イーブ…イ達は他所……の人間や…ポケモン…を、とても警戒してる。特に、その子は世界的に…見ても希少な色違いだから……」
「だから何ですね……。ごめんね、イーブイ。折角ウチを見つけられたと思ったのに……」
女性の言葉に納得を見せたイルマは、イーブイの頭を撫でる。
「ウチ……?」
「あっ、はい。実はこの子、元々タマゴの状態で置いてあって、今は孵化してから家族の元に返すために連れているんです」
それを聞いた女性は、何か思い当たる節があるように
「その子、もしかして……あのタマゴ…の?」
「!何か知ってるんですか!?」
「私…この辺りのポケモ…ンの…生態…調査…してるから……」
「なら、どうか教えてくれませんか!?」
イルマはすぐさま飛び付いた。イーブイについて何か知っている可能性があるならば、決して見逃しておく訳にはいかない。
銀髪の女性は少し考えたあと、たどたどしい口調で話し始めた。
曰く、先程まで屯していたあのイーブイ達には、数ヶ月程前までシャワーズ達と同じくイーブイの進化系である【エーフィ】と【ブラッキー】の夫婦が群れのリーダーとしてイーブイやシャワーズ達を纏め、平和に暮らしていたらしい。
やがて、エーフィとブラッキーの間にはタマゴが生まれたらしい。そのタマゴは、本来なら茶色の筈のイーブイのタマゴが、何故か銀色のタマゴだったらしい。
しかし、ある日突然、事件は起こった。
イーブイ達が住みかとしていた場所に、あるポケモンがやって来たのだ。
そのポケモンは、よろいポケモンの【バンギラス】というポケモンだった。バンギラスの系統のポケモンは、パルデア地方では主に洞窟に暮らしている個体がほとんどのなのだが、そのバンギラスは洞窟ではなく森を中心にあちこちを転々としながら住みかを変え続け、かなり気性の荒い性格をしたはぐれもののバンギラスだという。
そのバンギラスは、食べ物が豊富なブラッキー達の住みかを狙い、既にそこを住みかとしていたイーブイの群れを排除しようと暴れ始めたのだ。
当然、イーブイ達は抵抗しようとしたが、片腕を動かしただけで山を崩し地響きを起こすというとてもつもないパワーを秘めているバンギラスの前には抵抗も空しく、あっという間に蹴散らされてしまい、シャワーズ達が必死でイーブイ達を逃がすなか、残ったのはリーダーであるエーフィとブラッキーだけであったらしい。
そして、遂にバンギラスの“はかいこうせん”により、大爆発の影響でエーフィとブラッキーは行方知れずとなり、二人の間にあったタマゴも、爆発に巻き込まれて何処かへと消えていってしまった。
全ての話を聞き終わり、イルマは顔を強張らせながら、銀髪の女性に問い掛けた。
「それじゃあ、そのエーフィとブラッキーは……!」
「わから…ない…けど……以降…その2体…は、姿を…見せない。シャワーズ達…は、別の住みか…を見つけたけど……その日…から…他所のポケモンや人間…に…厳しくなった」
女性の言葉に、イルマは納得を禁じ得ない。
余所者に住みかをメチャクチャにされてリーダーを失ったという散々な目に遭ったのであれば、イーブイの群れが余所者を警戒するのには頷けなくもない。
イルマの連れているイーブイはほぼ間違いなくエーフィとブラッキーのタマゴから孵化した存在である可能性が高いが、タマゴの状態だった為、それを簡単にイーブイ達に証明させることは難しいだろう。
「……ぶいっ!」
「あっ、イーブイ!?」
すると、イルマの腕の中で話を聞いていたイーブイが、イルマの腕から飛び出して走り出してしまった。
イルマが追いかけようとすると、後ろから声が掛けられた。
「イルマ…やっと見つけたよ……」
「っ!リコ……」
そこにいたのは、イルマを昼食に呼びに来たのに、イルマが何処かに行ってしまった為に今まで探し続けていたリコの姿があった。
その姿を見て脚を止めてしまったイルマは、直ぐにイーブイに視線を向けると、イーブイの姿は既に豆粒のように小さくなってしまっていた。
「フクスロー、イーブイを追いかけておいて」
「くふぅ」
イーブイも気がかりだが、何も言わずに走り出すのも気が引けるため、イルマは相棒に声をかけ、フクスローが翼を羽ばたかせながら空を飛び、イーブイを追っていくのを見届けるのと同時に、リコがイルマのもとに辿り着いた。
「もう、探したんだよ。何処に行ってたの?」
「あぁ、ゴメン。ちょっとこの人から……あれ?」
「この人って……誰もいないけど?」
イルマがリコに銀髪の女性の事を紹介しようと振り返った時、イルマは先程までいた女性とバシャーモの姿が霞のように消え去っていることに気付き、目を丸くした。
(あれ?やっぱり、何かあの人何処かで見た気が……うーん、何処で会ったんだろう?スゴく最近な気がするんだけど……)
頭を捻り、どうしても、最近にたようなことがあった気がするイルマ。
「……イルマ、フクスローとイーブイはどうしたの?」
「えっ?えっと……」
そこへ、リコがオーガポンとキルリアしかいないことに疑問符を浮かべながら問い掛けられると、イルマはリコに説明をするために口を開いた。
一方、イーブイを追って空を飛び上がったフクスローは、上空で、森から少し離れた場所に立っている大木の根元にいるのを目にし、素早く急降下した。
『そんな所にいたのか』
「
イーブイは振り返りフクスローの姿を目にするが、直ぐに暗い表情のまま俯いた。
『……親御さんの事、そんなにショックだったのか?』
「
ますます表情に影を落とすイーブイ。
タマゴから孵り、ずっと会いたいと思っていた両親はとっくの昔に行方不明となり、その両親が率いていた群れからも自分を分かって貰えずに敵意を向けられてしまうのは何よりも辛いことだ。それをフクスローには理解することも出来ない為、少しだけ言葉に迷ったフクスローは、ポンポンとイーブイの頭に翼を置いた。
『……そう落ち込むなって。また会って、お前が行方不明のタマゴだって話せば分かってもらえるかもしんねーだろ?』
「
マイナス思考に捕らわれたイーブイの言葉に、やはりフクスローはフォローする言葉が出来ないように視線を彷徨わせた。元々陽気な性格ゆえに、こう言った話をフォローするのはにがてなのだ。
『まっ、俺ちんにはどうすりゃいいのかわかんねーけどよ……イル坊なら何がなんでもお前を助けようとするだろうな。アイツ、あぁ見えて頑固だからなぁ』
イーブイはその言葉にピクリと耳を反応させ、何かを考え込む。
その時、イーブイとフクスローの耳に、爆発のような音が聞こえた。
「
『行ってみるぞ!』
視線を向けると、そこには森の一部から凄まじい爆発が起きている光景であった。
フクスローがイーブイを促し、彼女を背中にのせると、フクスローはその爆心地に向かって飛び出していった。
一方、リコに事情を説明したイルマは、リコと後から続いてやってきたロイとドットと共に、何処かへと走り去ってしまったイーブイと、それを追っていったフクスローを探して森のなかを歩き回っていた。
「ダメ、見つからない……」
「何処に行っちゃったんだろう……」
イルマ達はかれこれ一時間くらい探しているのだが、イーブイとフクスローの姿が見つかることはなかった。
「でも、イーブイのタマゴにそんな事があったなんてね……」
「群れの方はイーブイを仲間内のタマゴから生まれたイーブイだって分からないみたいだし……イルマ、お前あのイーブイをどうする気なんだ?」
イルマからの話を聞いていたロイは暗い表情をし、ドットは息を切らしながら質問すると、入間は無言になって考え込む。
イーブイがかつて暮らしていた群れが見つかったと言うなら、何としてでも元の場所に戻してやりたいのが本音だ。だが、どうすればあのイーブイ達が白銀のイーブイを受け入れてくれるのかを考えても、妙案が思い浮かばない。もしも彼等が受け入れてくれなかったら、白銀のイーブイは引き取るべきなのか、それとも施設に預けるなりした方がいいのか……
答えに迷っていたその時、近くで爆発のような音が聞こえてきて、イルマ達は一斉に顔を強張らせた。
視線を彷徨わせると、それほど離れていない地点で、爆煙のような黒い煙が上がっているのが見えた。
「何、あの爆発!?」
「行ってみよう!!」
イルマ達は颯爽と走り出し、その爆心地にたどり着くと、目の前に繰り広げられている光景に目を見開いた。
「バンギラァアアアアアアアッ!!」
そこでは、鎧を纏った怪獣のような緑色のポケモンが、先ほど見たイーブイの群れを襲い、イーブイ達は慌てて逃げ惑い、シャワーズ達が立ち向かおうとしている光景だった。
「ロトム、あのポケモンは!?」
『バンギラス。よろいポケモン。いわ・あくタイプ。片腕を動かしただけで山を崩し、地響きを起こすとてつもないパワーを秘めている』
「バンギラスって……!?」
「まさか、話に出てきたバンギラス!?」
スマホロトムの図鑑説明を聞いて、イルマは頭のなかに浮かび上がった可能性を口にする。
イルマの推測通り、このバンギラスは銀髪の女性が話していたエーフィ達を襲ったバンギラス。彼等が元いた住みかを捨て、新たな住みかを探した結果、イーブイ達の住みかを新たな場所に選び、先にすんでいたイーブイの群れを追い出そうとしているのだ。
そして、バンギラスが自身に立ち向かおうとするシャワーズ、ブースター、サンダース、リーフィアに向けて右手を振り上げるのを見て、イルマはオーガポンに指示を出した。
「とにかく止めなきゃ!オーガポン、“ツタこんぼう”!」
「ぽにっ!!」
飛び出したオーガポンが、緑色の棍棒にエネルギーを纏わせながら、バンギラスの腕めがけて棍棒を振り抜いた。
「バギ……!」
流石に、地形を変えると言われる破格のパワーを誇るバンギラスの一撃を押し返すのは難しかったが、それでも弾くことは出来た。
同時に、リコ達はシャワーズ達の前に立ち並んだ。
「イーブイ達の住みかを荒らさせない!アチゲータ、“チャームボイス”!」
「アゲ~~!」
「バキャアアアアッ!!!」
ロイの指示を受け、アチゲータは美しい歌声を響かせて攻撃を放つが、バンギラスもまた“あくのはどう”で迎え撃つ。
タイプの相性はバンギラスが不利だが、中間進化系であるアチゲータと最終進化系にしてスペックの高い種族であるバンギラスとでは、どうしてもバンギラスの技の方が威力が上であり、アチゲータの歌声は、バンギラスの邪悪な波動に押し負けた。
「アゲッ!?」
「アチゲータ!!」
地面を転がるアチゲータ。同時に、バンギラスは地面を踏み鳴らすと、地面から鋭く尖った岩が隆起する“ストーンエッジ”を放った。
「クワッス、“アクアブレイク”!」
対してドットが指示を出すと、クワッスは水流を纏い、効果抜群の技を炸裂させるために走り出す。しかし、それはバンギラスが回転して放った尻尾の攻撃により不発に終わってしまう。
そこへ追い討ちをかけるように、バンギラスは足音を立てながら近付く。
「クワッス!!」
「オーガポンは“ツタこんぼう”!キルリアは“れいとうパンチ”!」
「ニャローテ、蕾でクワッスを助けて!」
イルマとリコが素早く指示を出し、オーガポンの棍棒とキルリアのパンチが炸裂してバンギラスが後退した隙を突いて、ニャローテは蕾に着いた蔓でクワッスを引っ張りあげた。
「バキャアアアアッ!!!」
その時、バンギラスは両腕を空に上げながら咆哮を上げると、頭上に巨大な氷塊が無数に発生し、まるで本物の雪崩の如き勢いで、オーガポンとキルリアに襲いかかった。
「オーガポン!キルリア!」
「ぽに……」
「キル……」
氷塊に押し潰されたオーガポンとキルリアは何とか這い出して姿を露にするが、咲きにダメージを受けると威力が二倍になる“ゆきなだれ”は、みどりのめんの状態だった為に効果抜群となったオーガポンと、まだまだ経験が低く避けることが出来なかったキルリアは大ダメージを受けてふらついてしまっていた。
「バギャアッ!!」
その時、バンギラスは追い討ちをかけるように口を開き、“あくのはどう”の構えを取る。リコ達が頬をひきつらせて身構え、イルマは一か八か、サザンドラを繰り出そうとモンスターボールに手を伸ばした瞬間、真横からポケモンの声が聞こえてきた。
「くふぅ!」
「バッ!?」
ニャローテのマジカルリーフにも匹敵する莫大な量の葉が襲い掛かり、バンギラスは技を中断させた。
「くふぅ!」
「ぶい…!」
「フクスロー!イーブイ!」
それは、フクスローとイーブイであった。イルマ達の前に着地したフクスローの背中から飛び降りたイーブイは、バンギラスの威容に気圧されたように動けなくなってしまう。
しかし、それはバンギラスにとっては滑降の獲物だった。バンギラスは、動くことの出来ないイーブイに向けて、“あくのはどう”の構えを取った。
「ッ!フクスロー、“かげぶんしん”!」
イルマは即座にフクスローに指示を出し、フクスローは周囲に無数の分身を生み出し、バンギラスの周りを飛び回る。バンギラスは、その光景に僅かに動揺して技の発動を止めてしまう。
その隙を見逃さず、イルマ達は一斉に指示を出した。
「ニャローテ、“マジカルリーフ”!」
「クワッス、“アクアブレイク”!」
「アチゲータ、“かえんほうしゃ”!」
「フクスロー、“リーフストーム”!」
ニャローテとフクスローの葉の嵐と、クワッスの水を纏った一撃、アチゲータの炎が一斉に迫る。
効果抜群の技を含めた強力な技を前にして、バンギラスは両腕を広げながら声を張り上げた。
「バギャアッ!!」
「ニャッ!?」
「くふっ!?」
「アチ!!」
「クワッス!!?」
その瞬間、バンギラスを中心に、凄まじい砂嵐が発生した。
周囲の天候を砂嵐が吹く状態にさせる“すなあらし”が発動したことで、自身の周囲に擬似的な砂の防壁を作り出したバンギラスは、その砂嵐によってニャローテ達の技を掻き消し、その衝撃波によってニャローテ達は吹き飛ばされた。
その砂嵐が、やがて周囲の天候を揺るがす程の規模に変化すると、バンギラスは口を開き、そこに莫大なエネルギーを蓄積し始めた。
「不味い……“はかいこうせん”だ!!」
「に、逃げないと!!」
ポケモンの技でも屈指の破壊力を持つ技のモーションを見てイルマが顔色を変えて叫び、リコ達は一時退避をしようとする。
しかし、その強力な技を目にして、退避に動けないものがいた。
「ぶ、ぶい……」
「イーブイ、此方!」
それは、バンギラスの威容に怯えていたイーブイだった。イルマが血相を変えて叫ぶが、イーブイは動くことが出来ない。
次の瞬間、バンギラスの“はかいこうせん”が、動くことの出来ないイーブイに向けて発射された。
凄まじい爆発が起こり、森一帯に轟音が轟く。
姿勢を低くして爆発の余波に耐えていたイルマ達。そこで、イルマはガバッと上半身を起き上がらせてイーブイに視線を向けると、目の前に会った光景に絶句した。
「くふ……っ!」
「ぶ、ぶい……」
「フクスロー!!」
そこには、動けなかったイーブイの前に立ったフクスローが、“シャドーウォール”を発動した状態で“はかいこうせん”を防いでいる光景だった。
どうやらフクスローは、ゴースト技である“シャドークロー”の発展系である“シャドーウォール”を利用して、ノーマルタイプの“はかいこうせん”を無効にしたらしいが、そもそも“シャドーウォール”は物理技への防御の為に編み出した技であるため、防御範囲は影で構成された爪と爪を重ね合わせた部分しかなく、完全に防ぐには無理があった。
そして、その防ぎにれな買った範囲の技を食らったフクスローは、目を回しながらドサリと倒れ込んだのを見て、急いでフクスローをモンスターボールに戻した。
すると、“はかいこうせん”の反動で動きを止めていたバンギラスが動きだし、イーブイの前にやって来たのだ。
「ッ!イーブイ!!」
「っ!」
それを見たイルマは走り出し、イーブイを抱き上げる。しかし、イルマがイーブイを抱き上げて、腕の中のイーブイ瓶を見開いたのと、バンギラスが再び放った“あくのはどう”が迫るのは同時だった。
「イルマァッ!!!」
リコが血相を変えてイルマの名を呼ぶ。
しかし無情にも“あくのはどう”はイルマとイーブイに向けて迫ったその時、
「ぶいっ!!」
イルマの腕の中から飛び出したイーブイが、“あくのはどう”を真正面から受け止めたのだ。バンギラスはそれでもなお“あくのはどう”を持続させ、イーブイ始めんに両足を着けて必死に耐えようとする。
それを見たイルマが声を上げようとしたその時、不思議なことが起こった。
「ぶいぃぃ………ぶいぃっ!!」
バンギラスの技を耐えていたイーブイの体が、突如として青色に光りだしたのだ。
イルマ達がその光景に目を見開き、バンギラスが思わず“あくのはどう”を止めると、光を放つイーブイはどんどんシルエットを変化させていき、体からリボンのような触覚を生やしていく。
やがて光が弾け、姿を変えたイーブイの姿が露になった。
「フィアッ!!」
首元と左耳に結んだ形状の、耳の後ろと首のあたりからはそれぞれ2本ずつ流した形状のリボンのような触角が生えていて、毛色は白を基調に耳や尻尾などの先端部位は水色を、目や触角の先端はピンク色をした、ファンシーな色合いのポケモンだった。
「進化した!!」
イルマは早速スマホロトムを取り出し、目の前に立つポケモンを検索する。
『ニンフィア。むすびつきポケモン。フェアリータイプ。敵意を消す癒しの波動をリボンのような触手から相手の体に送り込む。触覚を靡かせ宙に舞う姿は優雅だが、技は鋭く急所を狙う』
図鑑説明を読み終えたイルマはイーブイの進化系──【ニンフィア】に目を向ける。その視線に気づいたニンフィアはピンク色の目をイルマに向けると、力強く頷いた。
「フィア!」
「……うん、やろう!」
たった一回のアイコンタクトで、イルマはニンフィアの闘志を正確に理解し、コクリと頷くと、共にバンギラスに向かい合う。
ロイやドットは自分達も参戦すべきでないかと言おうとしたが、何か邪魔をしてはならないと感じたリコがそれを制した。
そして、イーブイの進化に動きを止めていたバンギラスは、直ぐに戦意を取り戻し、今度は“ゆきなだれ”を放ち、発生させた氷塊をニンフィアに向けて襲い掛からせる。
「ニンフィア、“みきり”からの“スピードスター”!」
「フィア!」
対するイルマは連続での技の発動を指示し、ニンフィアは優れた観察眼で迫り来る雪崩の隙間を見つけ出すと、氷塊一つ一つを足場にして氷塊を避け続けると、バンギラスへと続くその隙間を貫くように星の弾幕を放つ。
「バギッ」
必ず命中することが出来るその技は、バンギラスに少なくないダメージを与えた。
ニンフィアの特性“フェアリースキン”。ノーマルタイプの技をフェアリータイプに変える効果を持つこの特性により、フェアリータイプとなった“スピードスター”は、あくタイプを持つバンギラスには強烈な一撃となった。
「……バギャアッ!!」
しかし、必殺には至らず、バンギラスは苛立たしげに声を上げ、“あくのはどう”を放つ。
「“あなをほる”!」
「フィアー!!」
ニンフィアは素早く地面を穴を掘り、地中に隠れることで赤黒い波動を回避する。
バンギラスは、いつニンフィアが出てきても対応できるようにキョロキョロと地面を見渡して警戒心を強めていくと、イルマは地中にいるニンフィアに指示を飛ばした。
「ニンフィア、“スピードスター”!」
「ッ!?」
その瞬間、地面からバンギラスを囲うように、大量の星の弾幕が飛び出した。
予想外の事にバンギラスが硬直した時、“スピードスター”に紛れてニンフィアが地中から飛び出す。バンギラスはそれに気付いて振り向くが、ニンフィアは“スピードスター”を足場にして飛び回り、素早い動きでバンギラスを翻弄する。
「フィア!!」
「バギッ!?」
そして、ニンフィアは首元のリボンから伸びた触覚を伸ばし、バンギラスの目元に素早く巻き付けることでバンギラスの視界を封じる。
「決めるよ、ニンフィア!“ムーンフォース”!!」
「フィアッ!!」
突如目の前が真っ暗になったことに混乱するバンギラスに向けて、ニンフィアは夜空に浮かぶ満月から光を集め、ミルク色のエネルギー弾を生み出すと、それをバンギラスに向けて発射した。
フェアリータイプ屈指の大技が直撃したバンギラスは大爆発を起こし、ニンフィアの触覚が解かれてヨロヨロと後ろに下がると、ズズンと音を立てながら倒れ込んだ。
「やった!勝てたよニンフィア!!」
「フィアー!!」
「やったね、イルマ!ニンフィア!」
「まさかニンフィアに進化するなんてスゴいよ!」
イルマはニンフィアを抱き上げて喜びを露にし、リコ達が駆け寄ってくる。
すると、近くの茂みから、隠れていたイーブイ達やシャワーズ達が姿を現し、声を上げた。
「ブイ、ブイブイ!」
「ブイブイー!」
「ニィ?……フィア!?」
イーブイ達がイルマが地面に下ろしたニンフィアの周りを囲んだかと思うと、イーブイ達は尻尾を使ってニンフィアを胴上げしだし、シャワーズ達もイーブイ達の外側でニンフィアの姿をジッと見つめていた。
胴上げされるニンフィアは、予想外の事に目を丸くするが、イルマ達はイーブイ達の行動を見て、笑みを浮かべた。
「ニンフィア、受け入れてもらえたんだね」
「よかった~~」
「意図せずに解決してるし……」
「でも、良かった。これならもう大丈夫そうだし、これからは……」
そこで、あることに気付いたイルマは口を閉じ、哀愁の籠った目でイーブイ達に胴上げされるニンフィアを見つめる。
(仲間に受け入れてもらえたなら……ニンフィアはもう……)
イルマの隣に立っているなかで、その目に気付いたリコは、心配そうな表情でイルマの袖口を掴んだ。
「イルマ……大丈夫?」
「え?うん、大丈夫。少し考え事してた………でも、決めたから」
帽子を深く被りながら空を見上げるイルマ。
リコは、深く被った帽子の鍔にかくれたその顔が、まるで泣いているように見えていた。
翌朝。
「フィア~……」
目を覚ましたニンフィアは大きく欠伸をすると、触覚でゴシゴシと目を擦った。
バンギラスを追い払い、すっかり受け入れてもらえたニンフィアは、そのままイーブイ達と宴会を始め、気がつかぬ間に眠ってしまっていたのだ。
「……フィア?」
そこで、ニンフィアはある違和感に気付いた。
イーブイ達も警戒していたが、ニンフィアの仲間だと分かると宴会に迎え入れてもらえて、いつもならば直ぐそばにいて眠っている筈の存在──イルマの姿が何処にも見当たらないのだ。更には、リコ、ロイ、ドットの姿も見えない。
ニンフィアが、イーブイ達がまだ眠りについている住みかの辺りを走り回ってイルマ達を探し回っていると、イーブイの群れの纏め約的な存在であるシャワーズが、ニンフィアに近づいてきた。
「
「
ニンフィアがイルマ達の行方を尋ねると、シャワーズは神妙な顔で、昨晩の出来事を話し始めた。
昨晩の事。
ニンフィア達が宴会で騒いでいるなかで、イルマはシャワーズに一人話し掛けていた。
『イーブイを……ニンフィアの事を、どうかよろしくお願いします』
イルマは、言葉が通じないシャワーズの前に膝をついて、深々と頭を下げた。
イルマはシャワーズに、ニンフィアは元々自身の手持ちではないため、これからこの群れにいれてほしいと頼み込んできたのだ。
シャワーズとしてはニンフィアを受け入れることに異論はないが、まさか人間の方から頭を下げられるとは思わずにシャワーズが少々戸惑っていると、顔を上げたイルマは再び口を開いた。
『故郷で、仲間達と一緒なら……きっと彼女も幸せに生きていけます。何も言わないでお別れは悲しいけど……多分、彼女の顔を見たら、お別れできないから……』
それを聞いたニンフィアは、一目散に走り出し、森ので入り口へと向かう。
シャワーズや、目を覚ましたイーブイ達が後ろをついてくる事にも気付かず夢中で走り続けると、ニンフィアは森ので入り口にたどり着いた。
しかし、森ので入り口にたどり着いても、そこには既に誰もいない。
ニンフィアの叫びが、草原に空しく木霊した。
▪︎キャラ紹介
イーブイ✨→ニンフィア✨ (♀️)
イメージCV.悠木碧→田村ゆかり
テラスタイプ:不明
性格:ひかえめ
特性:きけんよち→フェアリースキン
技:みきり・スピードスター・つぶらなひとみ→ムーンフォース・あなをほる
▪︎今回の見所
~新オリジナル技“シャドー・ウォール”~
両翼にシャドークローを発動させ、爪を重ね合わせるような形で壁を作る防御技。
元ネタは『キン肉マン』からウォーズマンのクロー・ウォール。
~本編のラスト~
元ネタは吸血鬼すぐ死ぬの55話『Jone meets Draluc』から。
因みに入間君は吸血鬼すぐ死ぬの人気投票で1万655無量大数667京1998兆1166億1340万1330票を貰い11位にランクインし、西修先生の書き下ろしでゲスト出演している。
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