魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター 作:MTHR
仕事が忙しく、他の小説に現を抜かしてたらいつの間にかここまで時間が経ってました。
イルマ「本当に長かったよねぇ……。アニメではスピネルとの決着もついて新しいストーリーが進んでるし」
リコ「そうだね……これからも連載が続くように、間張ろう!」
イルマ「というわけで、どうなる第70話!」
木々が生い茂る森の入り口に、ポケモンの嗚咽が響く。
そのポケモン──ニンフィアは既に道の向こうへと消えていった
ニンフィアの故郷の住人達であるシャワーズやイーブイ達は、そんなニンフィアの様子にどうしたものかと顔を見合わせながら動けないでいると、イーブイ達の群れの中から、群れのまとめ役であるシャワーズがやって来る。
「シャワ……」
「フィア……」
静かにこちらを見据えるシャワーズに、ニンフィアは戸惑ったように視線を右往左往させる。しばらくの間、シャワーズはニンフィアのピンク色の瞳を見据えいると、コクリと首をたてに振った。
「シャワ」
「フィア!?」
シャワーズの言葉に、ニンフィアは驚いたように顔を上げる。そして、後ろにいる群れの面々に視線を向けると、ブースター達やイーブイ達も、全員笑顔で頷いていた。その姿はまるで「心配するな」とニンフィアに伝えているようだった。
「──フィア!」
ニンフィアは頷くと、森の入り口に背を向け、大きく一歩を踏み出した。
イルマを、探し出すために。
森を飛び出してから2時間。
がむしゃらに飛び出して道を進んでいたニンフィアは、直面した問題の前に耳をペタンと倒れさせた。イルマを探す上で、とてつもなく大きな問題がある事に気付いたのだ。
「フィア~(イルマ…何処にいったんだろう)」
そういうことである。ニンフィアが
「フィ、フィア~(イルマさんの持ってる『すまほろとむ』なら、場所が分かるのかもしれないけど)」
無い物ねだりしてもしょうがないと、ニンフィアはトボトボと歩きだす。
しばらくそうして暗い表情のまま歩いていると、ニンフィアの長い耳が、とある声を拾った。
「ねぇ!あれ見て!!」
「ニンフィア!しかも色違いじゃん!!」
「ニ?」
ニンフィアが何事かと振り返ってみると、そこにはオレンジアカデミーの制服を着た学生らしき男女の姿があった。
そこで、ニンフィアは彼等に場所を聞いてみようと、何やら話し合っている男女に歩み寄ろうとした時、学生達のとった行動に足を止めた。
「絶対にゲットしてやる!行け、ヤトウモリ!!」
「行きなさい、ゴチミル!!」
「ヤトォー!」
「ミルー!」
「フィ、フィア!?」
男はどくとかげポケモン【ヤトウモリ】を、女はあやつりポケモン【ゴチミル】をモンスターボールから召喚する。ニンフィアは突然のことに困惑するが、ヤトウモリもゴチミルも既に臨戦態勢に入っており、次の瞬間にはアクションを起こした。
「ヤトウモリ、“ベノムショック”!」
「ヤトォーー!!」
ヤトウモリは口から紫色の液体を発射する。まさか、声をかけようとしたら攻撃されるなんて思っていなかったニンフィアは、避けるタイミングが遅れてその毒液の直撃を受けてしまった。
「フィアァアアアアアアアッ!!?」
進化してフェアリータイプになったニンフィアに、“ベノムショック”は文字通り毒だ。体を蝕む毒液の痛みに悲鳴を上げながら、ニンフィアは毒液に吹き飛ばされて倒れる。
「ちょっと!あの子をゲットするのはアタシよ!ゴチミル、“シャドーボール”」
「ミルーー!」
続けて、女の指示を受けたゴチミルが禍々しいエネルギー弾を放つ。起き上がったニンフィアは迫り来るエネルギー弾に気付くと、その場から飛び退いて直撃を回避した。
「フィア……フィアーッ!!」
着地したニンフィアは“スピードスター”を放つ。無数の星の弾幕は正確無比に2体に直撃し、爆発が起こる。
「ッ!フィアッ!!」
ニンフィアはすぐさま“あなをほる”を発動し、高速で地面に潜って二人のトレーナーの前から姿を消す。そのまま地面を掘り進み続けた末に、ニンフィアは地面から顔を出した。
「ニィ……ニィ……」
突然の戦闘に苦しげな声を上げるニンフィア。体についた土汚れを払い、近くにはえていた木に背中を預けて休もうとした時、
「あっ!色違いのポケモン!」
「フィアッ!?」
跳ねるように飛び出したニンフィア。辺りを見渡すと、そこには先ほどの二人とは違うポケモントレーナーが、モンスターボールからポケモンを出している姿だった。
「フィア……ッ!」
「ゴースト、“シャドーボール”!」
ニンフィアがその光景に怯えた時、トレーナーが繰り出したゴーストが禍々しいエネルギー弾を放つ。
ニンフィアの体が強張った瞬間、地面に着弾したエネルギー弾が爆発を起こした。
「ニィ…!」
爆炎と爆煙に司会が遮られ、ニンフィアは再び煙に身を紛れさせながらその場から逃げ出した。
それからも、ニンフィアの旅は続いた。
「見つけた!激レアな色違いポケモン!!」
「フィア…!」
ある時は、物珍しさから色違いのポケモンを集めているトレーナーに狙われて襲いかかられ……
「フィア……」
「デル!デルビル!!」
「ヘルガァーー!!」
「ニィ……」
野生のポケモン達にイルマの居所を尋ねようにも、余所者であり色違いと言う得意の存在である自分を誰も受け入れようとはせず、追い返されてしまう……
「フィア……!」
それでも、ニンフィアは諦めることなく、イルマの居場所を探して、道なき道を歩き続けていた。
夜。
普段なら空を美しく彩る星々を隠す暗雲を見上げながら、イルマはポツリと呟いた。
「カラフシティまで、もう少しかぁ……」
ジムチャレンジを行うための舞台まで、あと一日歩けばたどり着ける場所まできていた。自分の試練はもう目の前まで迫っているというのに、イルマの心は空模様と同じようにどんよりと重たいものが滞っている。
既に時間は深夜を回っている。しかし、ロイやドットは既にテントで眠っているにも関わらず、イルマはこの数日間、全くと言っていい程眠れていない為、少々寝不足気味だ。
「イルマ」
その時、テントの外から気配を感じて、外に出てきたリコがやって来て声をかける。しかし、イルマからの返事はない。
「……」
「イルマ……大丈夫?」
「……」
「……イルマ、イルマ!」
「ッ!あ、あぁ…ごめん。少しボーッとしてて……」
ボケ~っと空を見上げていたイルマは、リコが自身の名前を呼び掛けながら目の前で手をブンブンと振ることでようやく意識を取り戻し、苦笑いをしながら答えた。だがリコには、それが無理をして作っている笑みだと簡単に分かった。
「ねぇ、無理してるなら少し休んだ方がいいよ。イルマ、どうみてもイーブイ……じゃなくて、ニンフィアの事気にしてるよね?」
つまり、そう言うことである。
数日前、イルマは偶然にも保護していた白銀のイーブイの家族の群れを見つけ出し、荒れ狂うバンギラスを退けた事でイーブイはニンフィアに進化し、イーブイ改めニンフィアは群れに受け入れられた。
そして、イルマはニンフィアはイーブイ達のもとにいるべきだと、何も言わずにニンフィアを残して、ここカラフシティを目指して旅を再開させた。
それからと言うもの、イルマはこうして上の空であることが極端に多くなった。大好きな食事が出来た時でさえリコが揺さぶらなければ気付かなかった程だ。
「……いや、気にしてないことは…ないけど、大丈夫だよ。ニンフィアはあそこで上手くやれるだろうし。それに、僕はこれからジムチャレンジがあるんだし、いつまでもウジウジしてないで気持ちを切り替えないといけないし……」
「ニンフィアの気持ちはどう?」
「えっ?」
思いがけない言葉に、いるまは思わず目を丸くする。
そして、リコがかつてないほど真剣な目で自分を見ていることに気付いて、イルマは思わず息をのみ、一歩後ろへ下がった。
「イルマ……私、イルマがニンフィアの事を真剣に考えてるのは分かってるよ。でも、イルマが考えてる事だけが、ニンフィアの幸せって事はないんじゃないかな?」
「……」
「ニンフィアになにも言わないで残していくことは……本当にニンフィアが望んでた事なの?」
真っ直ぐに告げられた言葉に、イルマはとっさに返すことが出来なかった。
「と、兎に角!今はジムチャレンジに集中!僕、少し歩いてくるよ!!」
気持ちを切り替えるように、或いはリコの視線から逃げるように、イルマは踵を返して森の中へ歩き出していった。しかし、リコにはその背中が、何時ものような頼り甲斐のあるものには見えなかった。
「私!イルマの事、昔からスゴいと思ってた!ポケモンの気持ちに真っ直ぐ向き合って、寄り添って、どんなポケモンとも仲良くなれる事、スゴくカッコいいと思ってた!でも、今のイルマはぜんぜんカッコよくない!!」
「……っ!」
リコの言葉に、イルマは胸に大きな杭が打ち付けられたような痛みが走る。
歯を食い縛ったイルマはリコの質問に答えることができず、逃げるように森の中へと踏み込んでいった。
「フィア……」
当てもなく彷徨い続けたニンフィアは、いつの間にか森の中に来ていた。空は既に真っ暗で、満天の星が輝いている。
グゥ~
ふと、ニンフィアのお腹がなり、途方もない空腹感が襲ってくる。旅に出てから怒涛の展開でろくに食べていなかったニンフィアは、食べ物を探して辺りを見渡すと、近くに生えていた木に木の実が成っているのを見つけた。
「フィア……ニィーーーッ!!!」
ニンフィアは木の実を見据え、“スピードスター”を発動させる。放たれた星の弾幕が美しい軌道を描きながら、木の実を次々と落としていく。
落ちてきた木の実が山のように積み重なると、ニンフィアはその木の実を拾い上げて、貪るような勢いで木の実を食していく。そうなるまで空腹だったのだろう。
その時、近くの茂みが揺れ動く気配を感じて振り替えると、そこには茂みからひょっこりと顔を除かせるパルデアウパーやパモの姿が見えた。
「……フィア」
ニンフィアは自身が集めた木の実をウパーやパモに差し出すと、二体は嬉しそうに木のみに飛び付き、美味しそうに果実を食している姿をみていると、自然とニンフィアも心穏やかになっていく。
「……」
その光景をみていると、ふと思い出す光景がある。自身が生まれたあの日、入間とその手持ち達が木の実をとってきて、自分や腹を透かしたキテルグマ親子に木の実を分けてくれた時の記憶だ。
それを思い返して、ニンフィアは再び、必ずやイルマのもとに帰るのだと決意を固める。
その時、森の中で、木々がへし折られるような轟音を耳にした。
森の中に足を踏み入れたイルマは、ぶつぶつと呟きながら森の奥へと進んでいた。
「全く……リコはそもそも勘違いしてるよ。ニンフィアは僕のポケモンじゃないんだから……」
元々、イルマはニンフィアをモンスターボールにいれてはなかった。親元に帰りたがっていたイーブイを元の場所に帰すために連れていただけだ。
「家族が見つかったのなら、ニンフィアはいるべき場所にいればいいんだ。そうすればニンフィアだって……」
そこでふと、イルマの足が止まる。
空を見上げれてみれば、真っ白な月が昇っている。その月の白さに、イルマはイーブイの白銀の毛並みを思い出してしまう。
「……幸せなんだから」
言い訳するようなイルマの声が森の中へと消えていく。
心の内に燻る黒いどんよりした感情にイルマは顔をしかめ、頭を振って元のテントに戻ろうとした時、ガサガサと茂みが揺れ動く音が聞こえてきた。
イルマが首をかしげると、その茂みから巨大な影が飛び出した。
「グマァアアアアアアアアアッ!!!!」
「えっ、えぇっ!!?」
そこから飛び出したのは、胴体に輪のような模様のある大きな体躯のクマのようなポケモン──【リングマ】であった。リングマは、鋭い眼光でイルマを睨みながら、鋭い爪を携えた腕を振り下ろした。
「わっ、わわっ!!」
イルマは咄嗟に身を翻してその爪を回避する。リングマは再び爪を振り下ろそうとする。フクスローも他のポケモン達も全てテントに置いてきてしまっているイルマは、その一撃をみて避けられないと悟り、思わず目をつぶった。
「フィアッ!!」
「グマッ!?」
その時、森の奥から飛び出した白い影が、リングマを突き飛ばした。
リングマが尻餅をついた音に目を開けたイルマは、その前で背中を見せ、リングマと対峙するポケモンの姿を眼にして、思わずその名を叫んだ。
「ニンフィアっ!?」
「フィアッ!」
そのポケモン──ニンフィアは、イルマの方を振り替えると、笑みを浮かべて頷く。
その時、起き上がったリングマがニンフィアを睨み付け、爪を発光させ“きりさく”を行おうと走り出すのをみて、イルマは即座に指示を飛ばした。
「ニンフィア、リングマの周りに“スピードスター”!」
「フィアーっ!!」
ニンフィアは星の弾幕を無数に作り出すと、それをリングマに向けて飛ばす。しかし、星の弾幕はリングマを自ら避け、渦を描くようにリングマの周囲を旋回する。
リングマが目映い星の光に目を瞬かせて足を止めていると、突如月の光に影が射す。
思わずリングマが上を見上げると、そこには隙をついて空を跳んだニンフィアの姿があった。
「今だ!“ムーンフォース”!!」
「フィー……アーーーーッ!!!!」
「グマァッ!!!?」
ニンフィアの放った白銀のエネルギー弾が直撃し、リングマは爆発を起こしながら吹き飛ばされる。地面に音を立てて崩れ落ちると、痛むからだを引きずりながら森の中へと逃げ込んでいった。
驚異が去った事を確認したイルマはニンフィアに視線を移そうとすると、突如腹部に衝撃が走った。
「ニンフィア、どうしぐふぁっ!!?」
思わずイルマが地面に背中を打ち付ける。腹部の重みに、イルマが顔を上げると、そこには自身に飛びかかってきたニンフィアの姿があった。
「ニンフィア……」
「フィア……フィア、フィアッ!!」
ピンク色の瞳に大粒の涙を浮かべたニンフィアは、イルマの胸に顔を埋め、大きな声で鳴き始めた。
よく見れば、ニンフィアの身体はリングマの攻撃を受けていないにも関わらずボロボロだ。その姿が、自身がニンフィアにどれだけ辛い思いをさせたのか、ここに来るまでにどれだけのことがあったのか、イルマは分かってしまった。そして、自分がどれだけ愚かな判断をしていたのかも。
「ゴメン………僕、君の気持ち…何も分かってなかった……!」
イルマはニンフィアを抱き締めた。
森の中で、イルマとニンフィアはお互いを抱き締め合いながら嗚咽を溢し続けていた。
三十分後。
「森の中に行っちゃったと思ったら…一体どうしたの!?」
リコは、森の中から帰ってきたイルマが、土まみれに成っている姿をみて仰天してしまった。
「リコに起こされたからなにかと思えば……呆れた……」
「でも、無事でよかった!」
リングマが暴れていた音だろう、イルマが去っていった森の奥から轟音が聞こえてくる事に起こされたドットは呆れたような声を上げ、ロイはピンピンしているイルマの無事に安堵していた。
「って、ニンフィア!?」
イルマの腕に抱き抱えられているニンフィアの存在に気付いた。リコは直ぐに、ニンフィアがイルマ以上にボロボロの姿を眼にすると、なにかを察したのか穏やかな表情を浮かべた。
「フィア!」
「わっ!」
その時、イルマの腕から飛び出したニンフィアは、イルマのテントの中に入り込む。しばらく、テントからゴソゴソという音が聞こえてくると、ニンフィアが何かを咥えながら再び飛び出した。
「フィア!」
「これ……」
それは、イルマの鞄に入っていた空のモンスターボールだった。イルマはニンフィアの差し出したモンスターボールを受けとると、笑顔を浮かべた。
「よし!行くよ、モンスターボール!!」
イルマがモンスターボールを投げる。ニンフィアは空に飛んでいったモンスターボールに向かって飛び上がると、空中でモンスターボールのスイッチを押す。
ニンフィアが開いたボールの中に吸い込まれると、地面に落ちたモンスターボールのスイッチさわ赤い光を発する。
エンジンシティの町とは違い、今度は最後まで揺れたあと、ボールからゲット完了の音が鳴った。
「……ニンフィア、ゲット」
イルマはそのボールを拾い上げると、自身の額にそのボールを押し当てる。
その光景はリコ達だけでなく、テントにニンフィアが入ってきた事で目を覚ましたイルマのポケモン達も眼にしていた。
『はぁ~、やっと戻ったのかよイル坊のやつ』
「ぽに、ぽにおーっ!」
「キルルー!」
「サザ…」
呆れたようにフクスローが呟くと、オーガポンとキルリアは帰ってきた仲間の姿に嬉しそうにしており、サザンドラはテントから顔だけを出して、面倒そうに欠伸をしていた。
そして、再びニンフィアをボールから出した。イルマは膝をおり、ニンフィアに目線を合わせると、優しい笑みを浮かべる。
「これからも、よろしくね」
「フィアッ!!」
イルマの言葉に、ニンフィアは満面の笑みを浮かべて答えるのだった。
~今回の話~
元ネタは吸血鬼すぐ死ぬの「John meets Draluc」から。作者はアニポケでは、トレーナーが苦渋の決断の末にポケモンを逃がしたりする回におつも泣いちゃっていました。
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