痛ってー、それに腹も減ったし。
会場の通路を歩くけれども、疲労のせいか終わりのない迷宮のように感じる。誰も居なかったんなら、今すぐ大の字になって三秒で入眠出来る自信がある。
でも残念。先にあるT字角の先から人一人分の足音が聞こえてきた。多分音からしてハイヒール、おそらく女性だろう。ぶつからないようにわざとスピードを落としすか。
そして歩いて来た女性は、俺に気付くことなく前に進んで………………待てよあの人、確か石動美空と一緒にいた………何で西都陣営に……?
どうせ秘密主義の難波のことだ。ロクでもないことがあるに決まってる。だが………
『大切なのは、疑問を持ち続けることだ。神聖な好奇心を失ってはならない』
「なぜにアインシュタイン?」
思わず声が出るが、本当に何でだ?反射的にツッコミをしてしまったが………なんか紅茶の匂いの幻覚もほのかに漂ってくるし……
「まあ、何はともあれ」
ローグがビルドから奪ったボトルであるスマホを取り出し、数回振る。そして懐から、シュトルムパンツァーを取り出す。あんま使ってなかったけど、やってみるか。
シュトルムのボディー部分に、スマホフルボトルをセット、すると電源が付いたように、シュトルムが動き出した。
『パンツァー!』
「よし、頼むぞ」
彼女の後に着いていくと、そこは難波会長達の待機するvipルームだった。シュトルムを扉の閉まるギリギリのタイミングで室内に入れ込むと、気づかれないよう速度を落として、部屋の隅に向かった。
いつもあのくらい大人しかったら、文句なし何だけどな〜
スマホを取り出して、通話アプリを起動。シュトルム越しに中の会話を盗聴する。
『─────君のおかげで、代表戦をものにできる。よくやった』
『約束を……守っていただけますか?』
『それはデータが正しいか、証明できてからだ』
『……分かりました』
データ?……まさか、彼女が東都に潜んでいたもう一人のスパイ?
『余計なことはするなよ。お前は私から逃れられない』
『はい………』
難波チルドレン、にしては関係がいささか険悪のようにも感じる。本来彼らは、絶対的な忠誠を難波に誓っている………しかし今の彼女と会長の話を聞く限り、彼女は何か弱みを握られているようだ。
しかし、データ。ビルド達の新兵器かなにかだろうか?もしそうだとしたら、この代表戦は………
『鍋島も哀れだな』
鍋島?それが彼女の弱み、家族か恋人などの関係者か?
『………失礼します』
………ここまでか、さっさとずらかろう。
ドアが開いたと同時に、最高速度で出てきたパンツァーを回収。スマホフルボトルを抜き取る。
……正直、後ろめたい気持ちはある。
これからある最終戦の結果も気になることだし、下手したらこの行動はあらゆる方面に喧嘩を売ることになる。
でも、俺は一人でも多くの人間が傷付かない為に、この戦いを承諾したんだ。ここで他の人間が犠牲になるというのなら、この戦いでの勝敗なんてどうだっていい。
ひとまずは難波の研究所に向かおう。あそこなら、何かヒントがあるはずだ。
「おい、大丈夫か?」
紗羽に対する人質として、西都の施設に囚われた元ファウストの構成員鍋島、そしてその妻と娘。
彼らを救出するため、仮面ライダーグリス、猿渡一海はたった一人監禁先に強襲を仕掛けていた。
幸いスマッシュはおらず、配備されていたのは西都仕様のガーディアンのみ。しかし代表戦の直後、しかも数の利を有しているガーディアンとの戦闘で消耗は激しいものになっていた。
「娘が…娘があの建物に……!」
鍋島が指で指し示す先、そこは柵を越えた先にある白塗りの建物であった。グリスが一飛びでその柵を越えようとしたそのとき、建物の中から何者かが出てきた。
「パパー!」
「は、遙!」
鍋島の娘鍋島遥………そしてその後ろから着いてくる西都のガーディアン。ガーディアンは、手に保持するライフルの銃口を遥の頭へと向ける。
「ああ、遥……!」
「やめろぉ──!」
必死に駆けるグリス、だがこの距離では………
ドンと、弾が発射される音が聞こえた。腹の底まで響き、鼓膜を揺らす激しい音が。そして、
──────ガーディアンがゆっくりと膝をついた。
そしてグリスは、その後ろに立つ一つの影を捉えた。
ミリタリーグリーンの装甲に、左右非対称の左腕から伸びる戦車の砲身を模したキャノン砲………決してこの場には居ないはずの男、彼がその場に立っていたのだ。
「千……華?」
そう、仮面ライダーパンツァービルド、島田千華が。
「大丈夫?」
「あっ、仮面ライダー!うん、どこも痛くないよ!」
「そっか。遙ちゃん、危ないからちょっとしゃがんでてね」
「うん、わかった!」
千華は遥の頭を優しく撫でると、近くにいたガーディアンを殴り付ける。続けて、少し遠くの相手にパンツァーキャノンを発射、容赦なくスクラップを量産していく。
「おい千華ぁ、どういう風の吹き回しだ?」
「………無抵抗の少女を傷付けるポンコツの故障品を処分しているだけ、ですよ」
「そうか………なら、そういう事にしといてやるよ!」
駆けつけたグリスに背中を任せ、前方のガーディアンに殴りかかるパンツァービルド。
ある時は仲間として、またある時は敵として戦場で戦った者たち。目的も環境も全く違う。しかし今だけは、共通の目的の為に、かつてのように互いに背中を預けるのだった。
『鍋島は?』
「全員無事だ」
一海さんと協力して、鍋島一家の救出に成功。滝川さんにそれを伝えた。
………さあ、帰ったら説教──だけで済んだらいい方だろう。
ぶっちゃけ何をされるか僕にもわからん。でも死ぬよりキツいことをやらされるのは明らかだ。
はぁ〜足が重い。正直帰りたくねぇー。
「おい千華」
「一海さん………」
「テメェなんでこんなことした。立派な裏切り行為だぞ」
「確かに、そうですよね」
「なら何で……」
正直言うと、半ばノリでここまできた。ここまで立派な反逆罪が成立するとはね…………。無論、反省はしている、だが後悔はしていない。それに
「自分以外の誰かの為に戦うのも、悪くない。
………そう思ってですね」
「そうか……おい、持ってけ」
一海さんがポケットから何かを取り出し、僕に投げた。片手でそれをキャッチし、顔の前に持ってくる。
「これは、ロボットフルボトル?……何で」
「ソイツを奪いに行ってた、そう報告しろ」
「でもそんなこと……」
「勘違いすんな。借りは返すから意味がある………これでおあいこだ」
一言吐き捨てるとその場を去る一海さん。まあ正直、これだけ持って行ってもグチグチグチグチ言われることに変わりはしないが、有り難く保管しておこう。いつか一海さんにもう一度借りを貸すために。
………早く行かないと代表戦終わるな。
「自分が何をやったか分かってるのか?」
「だからこうして、ボトルを持ってきたんですが………」
「そういう問題ではない!」
内海さんが机を思いっきり叩く。あれガラス製で相当痛いはずなんだけど、痛がっている様子は一切ない。この人実はサイボーグだったりしない?
「貴様のやった事は、我々への立派な反逆行為だ!そう簡単に許される訳が………」
「内海、その辺にしといてやれ」
「………スターク」
いつも通り、神出鬼没に突如目の前に現れたスターク。毎回思うけど、軽いホラーだ。
「この事を黙ってたのは、俺たちの方だ。こいつにも、思うところがあったんだろ、それに今は人手が少ないからな、使える人材は使うべきだ」
スタークに諭されると、あっさり引き上げた内海さん。
代わりにスタークは僕の前に立ち、手に持ったタブレットの画面を見せた。
『代表戦は西都の勝利に終わりました。しかし東都政府は要求に従わず………』
「………待ってください。何ですかこれは?」
ローグはビルドに負け、代表戦は東都の勝利で幕を閉じたはず。なのになぜ、西都が勝ったような報道をしているんだ?僕もあの戦いについては、思うところあるが、それでも負けを認めている。
しかしこれでは、余計な戦火が広がるばかりだ。
「………俺も納得はしてないさ。だが、難波会長と御堂首相は動いちまった。奴らは東都全土を焼け野原にするまで止まることはしない………もう誰にも止められないんだよ」
「そんな……僕は、早く戦争を終わらせる為に、なのに何で……」
「最初から難波は結果はどうであれ、戦争を続けるつまりだった………そういうことさ」
…………ふざけるなよ。
何が国民のためだ。何で僕たちは、戦ったんだ。これでは全て、彼らの掌の上じゃないか。
「今回の進行に使われる新兵器ハードガーディアン、そしてお前のパンツァービルドのデータを元に製作したパンツァーガーディアン。千華、お前にはこいつらの指揮官として戦って貰いたい」
「待ってください、いきなりそんな………」
「無論、東都全域の指揮をしろと言ってる訳じゃない。一部エリアだけだ。それにな千華……こうすりゃちっとは、犠牲を減らせるかもだぞ?」
………分かってる。
この人は適当に言ってるだけだ。これは、そんな簡単に終わる問題ではない、でも今は…………今だけは、
「やってやりますよ」
ああ、(戦争)まだ続くね
・オリ主
ようやく仮面ライダーっぽいことが出来た男
だが完全に堕ちるのはまだ先
・猿渡一海
オリ主の共闘をあっさり受け入れ、尚且つ怒られないようにフォローした男
絶対職場だといい上司
・スターク
ようやく戦兎のような気持ちになったか、嬉しいね〜
実は自分たちに反旗を翻したのを、一番喜んでいる
ただ、これ以上邪魔をされても迷惑なので、指揮官とかいう単独行動が許されない面倒くさいポジションを押し付けた。
初登場以来使われなかったシュトルムくん単体の活躍でした
ライダーの変形ガジェットって、なんかテンション上がりますよね