「それで、何であいつも連れてきたんですか?」
ベルナージュによって、nascitaに飛ばされた戦兎たち。しかしその中には、一人イレギュラーな人間が混ざっていた。
『島田千華、奴はこの世界の人間ではない』
「世界……地球外じゃなくてですか?」
「………あっ!もしかしてホントは日本語わかってねぇ───、アッ痛った! 」
「万丈、お前は少し黙ってなさいよ」
ベルナージュを指差しニヤけ顔になった万丈は、右から戦兎に叩かれる。万丈はそれに抗議するが、戦兎の視線は既に、ベルナージュに戻っていた。
『……並行世界、俗な言い方をすればパラレルワールドという奴だ。これに関しては私の専門外だが、お前たちは一度、その身で体験しているのではないか』
「パラソル?どっかで聞いたことあるような……」
「だ・か・ら、お口チャックだ万丈。すみませんこの馬鹿が……ところでそれって最上魁星の?」
『その最上とやらの事は知らんが、間違いなく千華の存在はエボルトにとってもイレギュラーのはずだ。奴がどう動くかで、この後の状況は大きく変わる…………お前たちが希望だ』
最後に万丈を指差しそう言い切ると、突如美空の体は力の抜けたように、倒れ込んだ。思わずそれを受け止めた一海の顔が、何とも言い難いことになっているが、ひとまず無視しておこう。……しかし、
「イレギュラー………じゃあ何でそんな人間を?」
「どうした戦兎?」
「………エボルトにとっても島田千華は未知数な存在、計画の途中で、裏切られる可能性もゼロじゃないはずだ。それなのになぜ、わざわざあそこまで肩入れしているのか………」
「そりゃあ、普通に強いからじゃねぇか?あいつ会うたびに手強くなってるからな」
「確かにそうだが………本当にそれだけなのか?」
以前のエニグマの一件の際、わざわざエボルトは、裏切ったはずの戦兎たちに力を貸してきた。それだけ彼も外部からの影響に、危機感を感じていたということだろう。ならばなぜ、同じ外部からの異物であるはずの千華を、私兵として手駒にしていたのか?単なる道楽、という受け取り方も出来るが、戦兎はその裏に何か別の目的があるのではと、考えずにはいられなかった。
「いっそのこと本人に聞くか?俺は、あいつともそれなりに関係あるしな」
「……分かった。頼めるか、かず─────」
瞬間、大きな振動がnascitaを襲った。
「何だ⁉︎地震か⁉︎」
ドカンっと、鼓膜に響く大きな衝撃。小刻みに揺れるイスやテーブル。下から突き上げるような振動に、思わず体勢を崩しそうになる。
……しかし、何か違和感があった。見える範囲にあるものを見るが、そのときに窓の外の風景が映る。これは…………そうだ、この揺れはこの店の中でしか起きていないのだ。
「地下を見てくる。紗羽さんは美空を頼む」
「わかった」
気絶している美空を紗羽に任せ、冷蔵庫の隠し通路から地下に向かう戦兎、万丈、一海の三人。
螺旋階段を降り基地に着いた三人の前には、見るに無惨な光景が広がっていた。
辺り一面に広がる戦兎の実験器具や資料、無数の弾痕を浴び一部パーツが外れた浄化装置、そしてその中央でネビュラスチームガンを持ち、三人を待ち受けていた人物。
「なるほど、ここがビルドの隠れ家ですか……通りで見つからない訳だ」
「……お前が、やったのか」
「それ以外にどう見えるんです?」
千華は煽るような口調で笑顔を向けながら、左手を戦兎たちに見せつけた。その瞬間、戦兎たちの顔が驚愕の色に染まる。
「それは……フルボトル!」
「ええ、他にもあるはずなんですけど、渡してくれませんか?」
「悪いがそいつは出来ねぇ、なぁ!」
予備動作無しで、千華に殴り掛かった一海。対する千華もスチームガンを発射するが、顔を逸らして回避、弾丸は後方の壁に命中し設備が火花を上げるが、気に留める様子もなく拳を振るう。
一海の一撃を後方に体を逸らし避け、スチームガンを向けるが、その手を払われ銃口が天井を向く。そのまま一海は、千華との間合いを潰し、満足に銃の向きを変えれない距離まで接近した。
「どう言うつもりだ……」
向かい合う両者、一海はヘリコプターボトルを握りしめ、その拳を顔面スレスレで止めている。それに対し千華は、スチームガンの銃口を一海の眉間にピッタリと向ける。
千華の手を握る一海の力が、本人も無意識のうちに段々と上がってゆく。ハザードレベルの影響もあるのだろうが、そんな状態で普通の少年が平常心を保てるはずがない。しかし千華は、先ほどの笑顔を崩すことなく、一海と目を合わせた。
「何でこんなことをした!」
滲み出す怒りに、思わず戦兎も万丈も、援護に入るのを躊躇ってしまう。にも関わらず、彼の血走った目に射抜かれている少年は、妙に余裕のある、そのふざけた態度を崩そうとはしない。
「答えろ!」
しびれを切らした一海は、彼の背中を近くの柱に押し当てた。
ガーンと、甲高い金属音が、ラボの中に木霊する。
そして、時間だけが刻々と過ぎ去っていく。一体何秒経っただろうか、十秒?三十秒?それとも一分?この緊迫した状況下で、室内の全員の時間感覚が狂っていたのだ。────たった一人を除いて
「───────」
「⁉︎」
一海の耳元で、何かを囁いた千華。残念ながら、戦兎と万丈には聞こえなかったが、それを聞いた本人の表情を見れば何を言われたのか、薄々察しはついた。そしてまた大声で、挑発する千華。
「見逃してくださいよ、一海さん。仲間………だったじゃないですか俺たち」
「………また裏切るのか、千華!」
激昂した一海は、フルボトルを
「あー残念!赤羽さん達には、仲良くしろって言われたのにな〜」
「お前が……アイツらのことを口にするんじゃねぇ!」
「そんなに怒らないでくださいよ〜、まあとりあえず今回はこの辺で、それじゃあまたお会いしましょう………戦場でね」
スチームガンの引き金を引き、スチームを噴出する。目眩しを喰らい怯んだ戦兎たちだったが、その中で一人一海はなおも千華に殴り掛かるが……既にそこに彼の姿はなかった。
「くそっ!」
湧き上がる怒りを柱を殴り付けることで、発散する一海。その痛々しい姿に、戦兎達はかける言葉が出なかった。
施設の被害を確認した戦兎、それは手痛い結果となった。
「ボトルは残っているものが合計10本、浄化装置も多少の被害は受けたが、動力部は無事だ」
重苦しい空気となるラボの中、一番彼の事を知ってるであろう一海が口を閉ざしたままであり、普段はうるさいほどの万丈の能天気さも、今は鳴りを潜めていた。
しかし、先ほどのベルナージュの話………戦兎たちの切り札になると言う千華の姿は、あまりにも想像とかけ離れていた。ベルナージュが嘘を言ったとは思えない、では先ほどの彼の行動は彼自身の意思なのか、エボルトによる指示なのか………
「………戦兎、あの王妃様の話は悪いがナシだ。今度会った時は………俺が奴をやる」
「でも、あいつがいねぇとエボルトは倒せないって!」
「関係ねぇよそんなもん!奴は俺の敵だ。邪魔するんだったら…………例えお前らでも容赦しねぇ」
「まさか戻って来るとはな………どういう風の吹き回しだ?」
「どうも何も、俺の主はあなた一人だ。スターク……いや、エボルト」
「……ベルナージュ、余計なことを!」
nascitaから撤退した俺は、エボルトの元に舞い戻った。しかし一度仮面ライダー陣営に渡ったのだから、裏切りと言って粛清されそうな予感もしてたのだが、意外も意外あっさりと、エボルトは俺の帰還を受け入れた。
………ここでさらに、信用を勝ち取る必要があるな。
懐からnascitaで奪ってきたフルボトルを、エボルトに投げ渡す。
「戦利品です。どうぞお納めください」
「……俺がこの星を滅ぼす地球外生命体と知って、なぜまだ従おうとする?」
まあ、普通は疑問に思うよな。でも大丈夫、ベルナージュと、ここに来るまでに必死に考えた言い訳を伝えるだけだ。
「先のベルナージュとの邂逅で、俺は記憶を取り戻しました。でも……思い出さない方が良かったかもしれない……今はそう思ってます」
筋書きとしてはベルナージュと邂逅、その時に記憶が蘇るが、俺が錯乱状態になり暴走した……と言ったところだ。
頼む信じてくれエボルト、そして頑張れ俺の演技力!ここから一手でも間違えたら、全てが水の泡になる!
「こんな世界なら、いっそのこと全てを消し去った方がいい。だからあなたにつく、そんな理由じゃ駄目ですかね?」
……どうだ?……頼む!……信じてくれ!
「くくっ、はははっ、ふはははははぁ!」
びっくりしたー!急に黙ったと思ったら笑い出すなよ、心臓に悪いわ!
「これだから人間は面白い!いいだろう千華ぁ!共に心ゆくまで、破壊を楽しもうじゃないかぁ!」
「ええ、こちらこそお願いしますよ、エボルト!」
まずは第一段階成功。エボルト、その首必ずこの俺、いや俺たちが刈り取らせてもらう。
『随分と楽しそうだったな、千華?』
「えっベルナージュ……さん?何を怒ってるの?」
今回の話をわかりやすくすると、
ベ「(戦兎たちと協力して)隙をついてエボルト倒してね」
せ「オッケー、(信頼を築いてから、怪しまれなくなったところを)隙をついてエボルトを倒せばいいのね」
nascita襲撃後………
ベ「は?何やってんの?」
せ「え、だって隙をついて倒せって言ったから………」
ベ「は?」
せ「え?」
みたいな感じです。
話し合いって大事だね
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