『それで………わざわざ奴らの反感を買うような真似をした、と』
「でも実際、あのドライバーを最大限利用するにはこれが一番でしょ。ベルナージュの力も残り少ない状態で、あんな博打はリスクが高すぎる」
ま、ベルナージュの気持ちもわからんでもないけど、流石にアレは脳筋が過ぎるでしょ……。前から若干思ってたけど、この人「パワーis正義」みたいな主義の人だよねー。
『そうか……しかし、博打を打ったのは貴様も一緒。まさか、何も考え無しという訳でもあるまい?』
「うん。とりあえずこの後、人に会おうと思ってる」
『人?協力者がいるのか?」
「いや、協力してくれるかどうかはまだ分からない。でも、可能性は低くない」
とりあえず今はエボルト覚醒の妨害と、奴を倒すための準備を同時進行で進める。妨害の方は、既に仕込みは仕掛けてある。問題はパンドラボックスを解放される事だが、ビルドたちと幻徳さんの下に残りのボトルがある限りは、残り二つのパネルが完成する心配はない。後は俺が程々に状況をコントロールすれば、膠着状態に持ち込めるだろう。
そして一番の問題は、奴を倒す方法を探すことだ。かつてベルナージュはエボルドライバーを破壊することで、奴との勝負にケリを付けた。。そしてその際、エボルトの内部エネルギーが誘爆、エボルトの体は粉々になったらしい。ならば、それを利用しない手はない。
こちらの準備が整い次第、エボルトドライバーを敢えてエボルトの手に渡し覚醒させたところを撃破する。というのが今の大まかな筋書きだ。
「問題は、その方法をどうするか………」
『現状存在しているライダーシステムでは、覚醒したエボルトを倒すことは不可能だ。……ただハザードトリガー、だったか?あれを使い、ハザードレベルの急激な上昇を意図的に引き起こすことが出来れば、勝機はある』
「なるほど……でもハザードトリガーって一つしか無くない?」
『………それを考えるのはお前の仕事だ』
丸投げしやがったよ、この人。
というか勝機はあるって、そこは『絶対に勝てる!』とか嘘でも言って欲しかったなー。まあ変な嘘を言われるよりかはマシか。
「……それはおいおい考えるとして、今はこの後の交渉に専念しよう。サポートお願い、ベルナージュ」
『わかった。だがこれからは、勝手な行動はするなよ。私に必ず相談しろ』
あんたは俺のオカンか!
なんか束縛強いと思うよ、ベルナージュさん。親になったら、過保護になりそう。
でも実際千代さんは、こんな事あまり言わなかった気がする。どっちかっていうと俺のやり方にあまり口は出さなかったし。それとは別にして、ちゃんと愛情は感じてたけどね。
というか──バーバー桐生潰れてんじゃん!
やっぱこれも西都侵攻の影響か、いやよく見ると近くで野外営業しているらしい。あの店主さんいい人だったからなー、今度お詫びの品持って謝りに行こう。ホントに失礼なことしてきたし。
というか今もバーバー桐生にいるよね?あの人。いくら方向音痴だからって、流石にこの近所で、迷うなんてことは、ないと思いたいが……
「というかベルナージュ、何で心の中でも無いのにこうやって話出来てるの?あまりに自然で、見逃してたけどさ」
『美空の体とは違い、お前の体の中は特殊だからな。力さえ使わなければ、二つの意識が同時に起きていても大きな障害は起こらない』
「なるほどね」
『ただ、会話をするときは気を付けろ。周りの人間から見れば、お前は一人で要領を得ないことを喋っているおかしな奴だからな』
ベルナージュの意識が体の中に入ってきてから、口を動かす機会が増えた気がする。以前はあまり考えていなかったが、こうやって誰かと話すのも、なかなか良いものだ。今みたいに、移動中などの時間が暇でもなくなるし、何より今までは一人で行動する事も多かったので、例え体がなくても相談できる人間が居るというのは、心持ちが結構楽だ。
『それで?今は何処に向かっている?』
「最上魁星が所有していた個人の研究所、何かヒントがあると思って」
エボルトに調査をしてくると相談したら、あっさり許可が出た。おまけに彼個人が所有していた研究所の所在や研究データまで渡して……なんか逆に信用され過ぎてて怖いんだが。
「最上はかつて葛城巧の上司として、共に平行世界移動装置『エニグマ』の研究を行っていた。しかし、その最中で事故に遭い葛城に対し強い憎悪を抱くようになったらしい」
『その男の研究が、エボルトの攻略に役立つのか?』
「以前のエニグマ事件の時に、彼はネビュラガス由来ではない独自のテクノロジーを使っていたらしい。その中にエボルトも把握していないものもあると思って」
最上の研究所。いや、かつてそうだった場所は、都心から少し離れた郊外の廃墟にあった。外から見た限り、古びた壁に汚れがこびりつき、草木が無数に絡まっており、まるで幽霊屋敷のようだった。長年手が付けられていなかったのだろう、一目見たときはホントにここで合ってるのか、疑いたくなった。
鍵の壊れた扉を開け内部に入るが、既に何処かの組織の捜査が入った後だったのか、資料はおろか研究機材も跡形なく持ち去られていた。精々残っているのは、所々が錆びている椅子や机、壁に取り付けられている備え付けの本棚くらいだった。無駄足だったということか。
「どうする?他にアテはないぞ……」
『千華、少し体を貸せ』
困り果てた俺の頭に、ベルナージュの声が響く。体を貸すとは、力を使うということだろうか?
「何をする気?」
『大丈夫だ、すぐに終わる』
そう言った途端、急に体に衝撃が走っ───て⁉
なんか体浮いてる⁉というか……下にあるこれって、俺の体⁉自分の姿を第三者視点で見るって、なかなか気持ち悪いんですけど……
「喚くな、すぐに終わると言っただろう」
口を開いた俺の体、その目はベルナージュと同じ鮮やかなエメラルド色に染まっていた。
壁にある空の本棚に手をかざす俺の体のベルナージュ。するといつもの黄金の粒子が溢れ出しかと思うと、突如本棚が横にスライドした。そして現れたのは、本棚に隠されていた地下へと続く長く薄暗い階段だった。
『これは?』
「隠し部屋というやつだろう。本来なら最上の認証無しでは入れないようだったが、面倒くさかったのでな。少々強引にいかせてもらった」
火星の力ってスゲー!
にしてもベルナージュ、やっぱり発想が脳筋だわ。普通こういう時って、もうちょいヒント探すとかするもんでしょ。………別に悪口言ってる訳じゃないよ?
「うぉっ!戻った……」
『さっさと降りるぞ。何か嫌な予感がする』
ベルナージュに促され足を踏み入れた地下への階段は、明かりが設置されておらず、薄暗く一寸先も見えない暗闇に包まれていた。
しかしここも、おそらく長年人が近づいていない割には、ホコリや汚れがあることもなく妙に清掃が行き届いてる印象があった。
しばらく歩くと、階段が途切れ隠し部屋に着いたようであった。目の前の扉を開け部屋の中に入る。すると俺が足を踏み入れた途端、内部のセンサーが起動したようで、部屋中の照明やモニターに一気に明かりが灯った。
「ここが、最上の研究所………他に隠し部屋みたいなものは?」
「無いな」
「じゃあ、ここに何かがあるって訳ね」
とりあえず手当たり次第に、近くの資料を漁ってみる。だがどれもエボルトから渡された資料と同じもの。特に目新しい記述は無かった。
しかし、他にも棚や机の引き出しなど複数の怪しい場所はある。そこの資料一つ一つに、目を通しながら何かないかと探す。その中で一つ、シルバーのアタッシュケースが紙の資料の山に埋もれ、隠れていた。
どうやら鍵は付いていないようで、取り出し中身を確認する。すると、
「黒い……タンクフルボトル?」
二本の同じ形状をした黒一色のタンクフルボトル(らしきもの)が入っていた。刻まれている文字はいずれも『T/T』、おそらく何者かが製作したものだろう。とりあえずはこれの正体を探るか。
「ここに何か残ってないかな……っと」
部屋の中央の大型パソコンにアクセス、とりあえずはタンクフルボトルで検索をかける。しかし、出てくるのはパンドラボックスの情報のみ、少し検索方法を変えてみるか。
確かこれと同じ場所にあった資料に、何か気になる記述があった。確か名前は……
「『ファントムリキッド』これなら……ビンゴ!」
キーワードを入力すると膨大な研究データの中から、複数のファイルがピックアップされる。その中で、一番上に表示されたページを開く。
『ファントムリキッド No.01』そう書かれた資料の内部には、スカイウォールから少し離れた無人島にて発見された、変質したネビュラガスに関する記載があった。
「『このネビュラガスを、『ファントムガス』と命名。複数のネビュラガス被験者の体内にこれを打ち込んだところ、ネビュラガスの成分の弱体化が報告された』……これは!」
『ああ、ネビュラガスはパンドラボックス由来のもの……同じ力を持つエボルトにも効く可能性は十分にある』
僅かだが希望が見えた。先ほどよりも明るい心持ちで、次のデータである『ファントムリキッド No.02』をクリックする。
「『ファントムガスを改良し、圧縮、高濃度の状態で液体化したところ更なる効果増大が判明。これを『ファントムリキッド』と命名し、研究を続ける。ファントムリキッドは、並行世界間の融合の際に生じるエネルギーでより純度の高いものが生成できると確認。エニグマを利用して、試作品第一号を完成させる』」
『ではそれが……』
「ああ、おそらくその試作品だろう」
俺の手に握られた黒い二本のタンクフルボトル、おそらくこれがエボルト攻略の鍵になる。だが、これはあくまでも試作品。
おそらく完成品もあるはずなんだが………
画面をスクロールさせ、おそらく時系列的に最後の研究データが残されているであろう、一番最後のファイルを開く。すると、
「なんだ、コントロールが⁉︎」
突如赤色の警告画面へと切り替わったモニターから、次々にファイルが閉ざされていく。どうにかしようと、必死にクリックボタンを連打するも何も事態は好転しない。そしてついに、パソコン本体の電源が落ちてしまった。
「……トラップか!よほど用意周到だったようだな……最上魁聖!」
『……悪い知らせだが、それだけでは無いようだ』
地上へと繋がる階段から、何やら金属音が聞こえてきた。そちらの方を振り向くと、突如扉越しに銃弾が飛んできた。
「何だ⁉︎」
『地上の一部に、ガーディアンを待機させていたらしい。そのトラップとやらを踏むのを、スイッチにしてな』
パソコンの置かれた机に身を隠し、銃弾の攻撃を避ける。こっそりと体を出し、ガーディアンの姿を目視するが、その姿は三都、ファウストどの組織のものとも違い胸部にXのデザインマークが刻印されていた。
『ひとまずはこの状況を抜け出す方法を考えろ』
「了解、サポートよろしくベルナージュ。
────変身!」
カイザーの遺産(厄ネタ)
・オリ主
無事エボルト陣営に潜入完了して、貴利矢さんムーブに努めている
次なる目標はハザードトリガーに!
・ベルナージュ
色々と脳筋な人
コンピューターなどの精密機械の類は下手に触ると、データが吹き飛ぶ可能性がある
・最上魁聖
出てこないとか言いながら、研究データを利用された人
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