回収した黒いタンクフルボトルを死守しながら、迫り来るガーディアンを撃破していく。デザインは違うとはいえ、基本性能は従来のガーディアンと差はないらしい。だが………数が多い!
「どんだけいるんだよ!コイツら!」
『地上での反応も増えている。早くしないと、圧迫死するぞ。ほら、後ろ』
「ああ、もう!」
潰しても潰してもキリがない。一体どんだけ出てくんだコイツら、というかどれだけ用意したんだよ最上魁聖!
「一気に行くぞ!」
ギアリモコンをセットしたネビュラスチームガンで、無数のガーディアンの群れを薙ぎ払う。エネルギーの余波が室内の一部を抉り、少し崩壊が起きかけいているが、黒煙が晴れると無事ガーディアンの反応はすべて、消え去っていた。
「ひとまず戦闘終了、でいいのか?」
『ああ、反応は全て消失した、すぐにデータを確認しろ』
ベルナージュの声に従い、パソコンの電源ボタンを押す。しかし……
「駄目だ、データが完全に飛んでる。修復には時間が掛かるな………とりあえずはこのボトルを何処かで解析────」
『!っ避けろ!』
頭に響く声を頼りに、反射的に体を逸らす。すると先ほどまで俺が立っていた空間を、間一髪オレンジ色の粒子が貫いた。よく見るとその粒子は、先ほどまで弄っていたパソコンを発生元として、鎖のようにうねうねと形を変えている。
「これは……資料で見たことがある。
確か……バグスターウイルス⁉︎」
不規則に形を変えながらも、空気中で螺旋状に長さを伸ばしていくバクスターウイルス。
バグスターウイルスは並行世界で発生する特殊な新型ウイルスの筈だ。それがなぜ………!
考えられる可能性としては、保存されていた最上の実験サンプルか?いや、一つ間違えば危険なウイルスを、わざわざ自身の研究データを管理するコンピュータに仕込んでおくか?
『考えてる暇はないぞ、あれは私も初めて見るタイプだ。周りへの被害は気にするな、最大火力だ』
「本当に……脳筋だなぁ!」
ベルトのレバーに手を掛け、一気に数回ぶん回す。だが、最初の数回を回しかけた時、バグスターウイルスがこちらに向かって飛んできた。
そして俺の周りをぐるぐると取り囲み、それにより思わず視線が定まらなくなる。次の瞬間、俺の体に激突してきたバグスターウイルスにより壁際まで飛ばされた。
その衝撃の最中、所持していたネビュラスチームガン、そしてギアリモコンとギアエンジンが地面に転がった。
「はぁ、はぁ、はぁ──!」
『大丈夫か⁉︎』
ベルナージュからの心配な声に応える余裕もないが、地面にひれ伏した状態で、何とか不安定なバグスターウイルスの姿を捉える。床に転がったスチームガンと、二本のギア。それの周りでぐるぐると渦を巻いたバグスターウイルスは、やがて人のような輪郭を形成し始めた。
「嘘……だろ?」
ネビュラスチームガンの引き金を引いたバグスターは、黒のアンダースーツに青色の歯車を形成し、カイザーシステムを起動。青き破壊の帝王へとその姿を変えていく。
カイザー、かつて最上魁星が作成し俺自身も使用した戦士が、姿を現した。
「……なるほど、悪くない」
「何………?」
カイザーはポツリと呟くと、自身の全身を舐め回すようにじっくりとそのボディーを見つめる。そして俺へと視線を向けた。
「丁度いい、肩慣らしに付き合ってもらおう!」
何とか立ち上がったが、その瞬間にカイザーの蹴りが胸部にヒットした。無論ライダーシステムにより、人体そのものへのダメージはある程度軽減されていのだが、今の一撃を受けた途端、妙に体の動きが鈍り始めた。
「体……が…重い……!」
「元は対ライダーシステム用の発明品、効果は……見ての通り充分のようだな」
何とか体を動かしカイザーへと殴り掛かるが、軽々とその一撃は受け止められる。そして腹部へと決まるカウンター。体勢を崩された所へ、さらに顔に連続パンチを叩き込まれる。
防御もままならないまま、カイザーが右腕を大きく振るって放った一撃が、胸部に命中。壁に叩きつけられ、背中に衝撃が走った。
前と後ろからの痛みのサンドイッチ………なかなかにヤバいな……!
「葛城のライダーシステム、存外呆気ないものだったな……!」
「カイザーシステムにそれほどのスペックはないはず………どういうカラクリだ……」
「ああ、この改良品自体の出来は悪くはない。だが、バグスターウイルスを使用した本来のカイザーの前では、足元にも及ばんよ!」
カイザーは左腕で、俺の首元を押さえつける。その腕を上から両手で引き離そうとするが、動かない。先ほどの発明品とやらの効果が効いてきているようだ。
「うわぁぁぁあ!」
ギアトルクガントレットから生成された、青い歯車状のエネルギーカッターがゼロ距離で押し付けられた。ジリジリと削れていく装甲の音に、少しずつ恐怖が湧き上がってくる。腕を使って引き剥がそうとしても、歯車の回転により中々動こうとする気配がない。そして、ついに限界が訪れた。
ライダーシステムのダメージ上限を越える攻撃を受け、変身が解除される。ドライバーからシュトルムパンツァーが、抜け落ち片膝を地面に着いた。
『千華体を貸せ!ここは私がっ』
「駄目だ!その力は、エボルト攻略の為の………」
『そんな事を言ってる場合ではないぞ!』
「駄目だ!」
「何をゴチャゴチャ言っている!」
カイザーの膝蹴りが鳩尾に突き刺さる。瞬間、口の中に広がる嘔吐感。思わず胃の中のものを全て吐き出しそうになるが、口を押さえて、何とか堪える。
俺を見下ろすカイザーを見上げるが、何も状況は変わらない。すると俺の顔を初めてまともに見たカイザーは、驚くような仕草をした。
「島田千華……なるほど葛城の仕業か?」
「葛城……?何を言っている……!」
「本当に、残念だなぁ〜オマエの存在は最っ高にファンキーだってのによ!!」
まるで、先ほどまで俺を攻撃していた事を忘れたように、嘆き悲しむような大声で叫び出したカイザー。何だコイツ情緒不安定か?
「だが、これも運命。さらばだ」
ネビュラスチームガンの銃口を俺の額へと向けるカイザー。
どうやら本気らしいな。だが先ほどのダメージもあって、俺の体は満足に動かない。それにベルナージュの声が頭に響くが、上手く聞き取れない。どうやらここが限界のようだ。
まだ俺には、やるべきことがある。だが、もう無理だ。本当に情けない。ここでやられてしまえば、エボルト撃破の時は一生訪れない。なのにここで………!
目を瞑った。もう助からない、そう本能が感じ取った。
カイザーが引き金を握る音が聞こえる。グッと力が込められ、間も無く銃弾が発射される。
そして、それが俺の頭を貫通………
することはなかった。
「ビルド!貴様ぁ……!」
カイザーを横薙ぎに払った風を纏った斬撃。それによりカイザーの射線から俺の体が外れた。そして、その斬撃を放った主が姿を現す。
ビルドニンニンコミックフォーム
なぜ彼がここにいる?桐生戦兎がここにいる筈がない。それに何より、ニンジャとコミックのボトルは、エボルトの手にあるはず………では彼は一体?
そんな俺の疑問など置いといて、現れたビルドはカイザーとの戦闘に突入。4コマ忍法刀を使いカイザーの銃撃を弾くビルドは、距離を狭め近接戦闘を狙う。それに対してカイザーは、腕、足、首などを狙う一撃一撃を適切に躱し、適度に銃撃を放つというダメージを受けないような、立ち回りを行っている。
互いに実力は互角、一歩も譲らない攻防が続いていく。そして近距離で交差した刀と銃、二人の戦士は飛び散る火花越しに相見える。
「お前……葛城巧ではないな?」
「………」
「………まあ、いいさ!今度会ったら、もっとファンキーなモンを見せてやるよ!」
何を話していたかは聞こえなかったが、カイザーがビルドから距離を取ると、スチームガンの引き金を引いた。そして煙幕と共に撤退するカイザー、対するビルドはそれを追うことはせず、俺に向かって駆けてきた。
「大丈夫か?」
僅かに耳に聞こえた声に、ゆっくりと首を縦に振る。安心感、と言ったものだろうか。今は何より助かった、という感情が俺の心を満たしていた。
その反動か何かだろうか?
………急に意識が遠くなってきた。まぶたも重くなり、ベルナージュの声も遠く……………
『一つ、昔馴染みとして警告しておくわ。
あなた、そのままだといつか野垂れ死ぬわよ』
夢…………か
だが、以前とは明らかに雰囲気が違う。前回は、5、6才の子供目線での視点だったが、今回は、今の自分と見える高さはほとんど変わらない。
それに以前は霧のようなモヤがかかっていたが、妙に今は意識がハッキリとしている。
場所どこかの喫茶店、テーブル越しに金髪の少女が、紅茶を片手に鋭い視線を向けていた。
今回は彼女との記憶、しかし………よりによってあの時とは…
『『自分がどうなろうといい、みんな自分のことなんて気にも留めてない』、そう思うのはあなたの自由よ。でもね、自分のこともロクに理解しようとしていない人間に、そんな事を言う権利はないわ』
そうだ、君はそんな人だった。
いつもは少し残念なくせに、こんな時だけ真剣な目を俺に向けてきた。
『………少なくとも、今あなたの目の前にいる人間は、あなたが傷付けば本気で悲しむわ。
それだけは、忘れないで』
人を見透かしたような事を言って、
君は本当に………何で……俺の欲しかった言葉を………
『……少し口が滑ったわね、ところでこんな格言を─────』
………………随分と苦い記憶だった。
随分と言っても、俺の中では二年ほど前の記憶なのだが……
それよりも……ここはどこだ?
最上の研究所……じゃないな。どちらかと言うと、雰囲気はファウストの方に似ている。
「ベルナージュ聞こえるか?」
頭の中で呼びかけるが、反応がない。眠っているのだろうか?いや、あいつが眠ってるとこ見たことねぇな。
とりあえず体を起こし、先ほどまで爆睡していたベッドから抜け出す。すると、後ろから声が聞こえた。
「気がついたようだな」
振り向くと、スーツの上から白衣を羽織った男が立っていた。それだけではよく見る研究者、という印象なのだが、彼はその手に………ビルドドライバーを握っていた。
……何者だ?
警戒し、思わず一歩距離を取る。
「危ないところだったが、君も火星の王妃も無事だ」
「!なぜそれを知っている、それにあんたは……!」
男に対して視線を強める。
だが彼はそれに動じることもなく、変わらぬ口調で口を開いた。
「私は葛城忍。このドライバーの開発者だ。
………着いてこい島田千華、見せたいものがある」
パッパ来ちゃった!
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