「ちっ、どこ行きやがったあいつら」
「連絡取れないんですか?」
「掛けてんだが、さっきから全然出る気配がねぇ」
「もしかして、もうビルドたちも会っちゃってたりして……」
東都市街地に潜入した僕たちは、街中を彷徨いていた。戦闘の影響で大きな混乱が起きており、潜入自体にさほど苦戦はしなかったのだが、北都三羽ガラスとの合流に手間取っていたのだ。先ほどから電話にもでず、行く先々で両軍の小競り合いに巻き込まれながら、三人を捜しつつパンドラボックスの保管場所である施設を目指していたのだが………
「たくっ、あいつら俺が方向音痴なの知っててやってんのか?」
なんと一海さんは、重度の方向音痴だったのであった!………個人的には、結構衝撃的だった。
自信満々といった様子で戦場を歩き回っていたので、何かあるのだろうと思っていたのだが、特に収穫もなく、しばらくして聞いてみたら、特に隠す様子もなく答えてくれた。
こちらから見ても完全に開き直っており、それがどうした?と言った態度で、このまま直す気は到底ないのだろうと僕は感じとった。まあ、それでも問題はない。この人は戦ってくれていれば、それでだけでいい。それは一海さんだけでなく、ライダーシステムを使う僕たち全員の役目なのだから。
まあ、それはそれとして、僕も東都に来るのは初めてで、この場所の土地勘もないなので…………結論から言うと、二人で迷子になっていた。一海さんは、断じて認めないであろうが。
それとは別にしてもう一つの問題もあった。それは、一海さんの態度である。
「……納得いかねぇな。こんなのは、俺が求めてる祭りじゃねぇ」
先ほどから先頭の余波などを受けて、救急車で運ばれる一般人やその場にうずくまる人々を多く見て来た。中には親が撃たれ、担架にしがみつきながら泣いている子供や、はぐれて一人その場で泣き叫ぶ子供もいた。………自分にも思うところが無いわけではない。だが、今はそれは別の話だ。
「おっ?結構盛り上がってんな」
市街地から少し外れた雑木林で、僕たちは三羽ガラスたちと東都の仮面ライダーたちを見つけた。途中まではビルド相手に若干優勢程度であったが、クローズが乱入したことにより形勢が一転、三人は変身を解除された。そして、所持していた北都のボトルは、ビルドたちの手元に渡った。
「見ーつけた!」
地面にひれ伏す三羽ガラスとビルドたちの間に、僕と一海さんは壁になるようにして割り込んだ。
「お前たちは………」
「俺に内緒で何楽しんでんだ。ゴラァ」
スクラッシュドライバーを装着する一海さんに合わせて、僕もネビュラスチームガンを取り出す。
「そのドライバーは……」
スクラッシュドライバーを見て、警戒の色を示し臨戦態勢に入るビルドたち、その一方で……
「もしかして機嫌悪い?」
「みたいだね」
「カシラ、千華何やってたんすか?遅いですよ!」
「方向音痴の俺たちだけにしたお前らが悪りぃんだろうが」
「千華もいるから大丈夫だと思ったんだけどなー」
いつも通りに戯れ合う四人。……流れ弾が飛んできた気もするが、気にしなくてもいいだろう。
「お願いカシラ、千ちゃん。俺たちのボトル取り返して!」
両手を合わせて懇願する黄羽さんを見た一海さんは、呆れたように溜息を吐いた。
「たくっ、しゃーねーな。千華ァお前はビルドの相手しろ。クローズは俺がやる」
「……了解」
ロボットゼリー
「変身」
「潤動」
「仮面ライダーグリス、見参」
「仮面ライダーグリス……」
「心の火…心火だ。……心火を燃やしてぶっ潰す」
自身の胸に手を当て相手に宣言するように、また自分に言い聞かせるように、グリスは顔を上げた。それに応えるようにクローズがグリスに殴りかかる。
「万丈!」
「あなたの相手は僕ですよ」
グリスとクローズに気を取られているビルドに、スチームブレードで切り掛かる。不意を突いた攻撃ではあったが、ブレードに当たるギリギリで体を捻られ、避けられた。
続けて脇腹目掛けて一突き。
しかし今度はベルトから武器を召喚され、受け止められる。だが勢いを殺さずそのまま一歩前へ踏み込み、お互いに武器を間に挟んで、ゼロ距離での迫り合いになった。ブレード同士が衝突し、小さな火花がいくつも生まれる。
「これは、最上魁星の……」
「ええ、カイザーシステムその改良型です。
エニグマなる物は使えませんが、単純なスペックはこちらが上だ!」
腕を大きく振り払うと、ビルドが数歩後ずさった。そこへスチームブレードを使っての連続攻撃を畳み掛ける。体勢を崩されたビルドは、ドリルクラッシャーを使っての防御にまわることしか出来ていない。
ビルドドライバーは、フルボトルを入れ替えることでの手数の多さが、特徴だと内海さんから聞かされた。そしてその入れ替える余裕がなければ、充分に対応可能ものだとも。
さらに先ほどの戦闘で疲弊しているのか、ビルドの装甲の一部に、攻撃が当たり始める。
しかし、流石は腐っても仮面ライダー。攻撃と攻撃の間のわずかな合間に、カウンター狙いでドリルクラッシャーの突きを放ってきた。僕もそれにタイミングを合わせ、スチームブレードでそれを防ぐ。回転するドリルと、スパークリングの左足から発生する『ラピッドバブル』の力により、徐々に押され始める。
だがこれは───チャンスだ
僕はスチームブレードを
「なっ!?」
ブレードという支えが消えたことにより、顔面に迫ってきたドリルクラッシャーを首を捻り避け、鳩尾辺りに目掛けて、膝蹴りを喰らわせる。ビルドが体勢を崩した隙にブレードを接続、バルブを半回転させる。
プラズマを纏ったブレードで、胴体を斜め右に向け切り上げ、さらに返す刀で首元に再度斬撃。それをまともに喰らったビルドは、衝撃で数メートルほど吹き飛ばされる。
「くっ……!」
「これで変身解除されない………ならば!」
電子音声をバックに、ギアエンジンをネビュラスチームガンにセットし、狙いを定める。まだ立ちあがろうとしているビルドだが、流石に足元がおぼつかないでいる。
そしてトリガーに力を加え、発砲しようとしたそのとき、
「帰るぞ……途中参戦で倒した相手から、戦利品を貰うってのは性に合わねぇ」
クローズを撃破し、変身を解除した一海さんが踵を返すした。どうやら、まだ満足出来るような闘いではなかったらしい。ここでさらに機嫌が悪くなるのは面倒だ。
僕も変身を解除し、ビルドを一瞥。一海さんたちに駆け寄る。
「…待て!……そのドライバーどこで手に入れた?」
かろうじて立ち上がったビルドの声が、後ろから聞こえる。僕はそれを無視して進むが、一海さんは律儀に口を開いた。
「ああこれか、陽気なオッサンに貰ったんだよ。……ボトルはそのうち取りに行く。複眼洗って待っとけよ」
「待ってろよ!」
「べーだ!」
その場を後にする四人の背中を後ろから追う。しかしそのとき、一海さんが不意に立ち止まった。
「あの女どっかで………」
その見つめる先には、倒れたクローズに駆け寄って来たビルドたちの仲間と思われる女性、いや少女がいた。
「一海さんどうかしましたか?」
「いや、何でもねえ。行くぞ」
何か引っ掛かりがあるようだが、僕はあの少女に見覚えがない。おそらく一海さんの知り合いか誰かだろうが、どうでもいい。ただ、彼女が理由で何か良くないことがある場合は御免だが。
「流石カシラ。あの仮面ライダーボッコボコだったじゃないですか」
「千ちゃんも強かったしね。次戦っても余裕でしょ」
「俺たちも、次はカッケェとこ見せてやるよ」
肩を組んでくる赤羽さんたちの声を聞く。案外、俺もこういうのが好きなのかも知れない。
「しかし、次はどこへ行きますか?多分奴らもすぐには、動けないと思いますけど」
「そうだな………テメェらテレビ出たくねぇか?」
「レディースandジェントルメン。北都の仮面ライダーグリスだ。いよいよ戦争が始まったな。
だがスカイウォールが邪魔して戦車や戦艦はおろか戦闘機すら飛ばせない。だから…俺たちが最高の兵器ってことになる」
僕たちは、東都のテレビ局の一つをジャック。ゲリラ放送による宣言を各所に放映していた。もちろん、北都の政府官邸に向けても。
「俺たちの目的は、あくまで東都政府が保管しているパンドラボックスと、仮面ライダービルドが持っているボトルだ。そいつを回収できればすぐに引き揚げる。……だが拒否した場合は力づくで奪い取る」
グリスとなった一海さんは、画面の先の相手を威圧するように、わざと大きな素振りで、宣言する。警告のつもりなのだろうか?
「今日から原則として、民間人は傷つけない。おとなしく家にいれば、危害を加えることはないってことだ。…けど戦場に足を踏み入れたら、命の保証はねえからな」
グリスは最後に、カメラに自分の顔を大きく映して、撮影を終了させた。これでここにもう用はない。先ほどの放送で、危害を加えないとも宣言したので、テレビ局の人間にも無闇に手を出すつもりもないし。
「カシラ、結局一人しか映ってなかったじゃん」
「うっせえ、俺の方がイケメンなんだから、子供達も安心するだろうが」
「いやー、あの言い方じゃダメだろ」
「でも、インパクトはありましたよ」
電話を終えた一海さんに、飲み物を投げ渡す。あれだけ喋った後だろうし、流石に喉が渇くだろう。
悪いなと言って、水をがぶ飲みしたそのとき、
「カシラ!ねえねえ、カシラ!外がすごいことになってるよ」
黄羽さんが満面の笑みを浮かべて、走って来た。どうやら東都政府が、早速ガーディアン部隊を送って来たらしい。……思った以上に仕事が早いな。
「ふっ、おもしれぇ」
一海さんは残ったペットボトルの中身を一気に飲み干すと、片手で思いっきり潰し、口元を拭った。
「第二ラウンドと行こうか」
・オリ主くん
初戦闘。ちなみに身体能力が、ガスの影響もありかなり上がっている。
カイザーシステムのカタログスペックだけなら、
鷲尾兄弟>オリ主くん>最上の順
・猿渡一海
描写はないが、三羽ガラスと合流するまでに、民間人を攻撃していたスマッシュやガーディアンをオリ主と二人で、息を合わせて叩きのめしていた。
・桐生戦兎
我らが主人公
同一個体ではないとはいえ、カイザーの登場に動揺していた。
・万丈龍我
街中で二人がスマッシュ相手に無双していたのを目撃した。
その時点で十分に怪しんでもいいのだが、二人のコンビネーションに「スッゲェー」と素直に感心していた。