闇堕ちタンクくんの光堕ち   作:傘葉

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今回ほぼ戦闘シーンです


進撃のパンツァー

 パンツァービルド、左右対称のタンクフォームの装甲を纏った戦士。そこだけを聞けば左右対称のビルドなだけであるが、この装甲色はミリタリーグリーンを基本とした暗色となっており、ビルドのポップなイメージとは打って変わって、相手に威圧感を与える配色となっている。

 

「目標を確認、戦闘行動に移行する」

 

 オウルハザードスマッシュを捉えた僕は、地面の落ち葉を踏み締めながら、ゆっくりと近づいていく。

 

「何で、嘘だろ!」

 

 オウルハザードスマッシュに、動揺の色が見て取れる。僕が敵に回ったことが、受け入れられないでいるらしい。まだ仲間と思ってもらっているのは嬉しい限りだ。だがその隙が、命取りになる。

 

「ハアッ!」

 

 一気に接近し大きく踏み込んで、無防備な胸元へ膝蹴りを喰らわせる。その衝撃で、無数の落ち葉と同時に、オウルハザードスマッシュの体が空中に浮き上がった。そこへさらに、拳でラッシュを叩き込む。

 

 無数の拳を防御することなく、全て受け切ったオウルハザードスマッシュは、丘を転げ落ち平地に体を打ちつけた。

 

「うっ、はぁはぁ…」

 

 うめき声を上げながらも尚、立ちあがろうとしているが、先ほどのダメージの影響で上手くバランスが取れず地に膝をついた。ネビュラスチームガンを取り出した僕は、丘を降り彼の頭に銃口を向けた。

 

 

 

《パンツァータンク》

 

 

 

《ファンキーアタック》

 

《フルボトル》

 

 

 銃身部に溜まるエネルギーと共に重くなっていくスチームガン。それを右手でひしひしと感じながら、引き金に指を掛ける。そして、一気にトリガーを引く…………

 

「……なん…で…」

「どういうつもりだ⁉︎千華」

 

 ───事が出来なかった。

 スチームガンを真下に向ける。僕は引き金を引かなかった、いや、引けなかったのだ。

 

 心の何処かで、撃つな!と声がした気がした。こんな事は初めてだ……何か違和感を感じる、僕は撃ちたくないと思っているのか?

 

「……人質が死んだら、グリスの怒りに触れることになる。そうなれば後々面倒だ」

「だから撃たなかったと?」

「そうだ」

 

 自分でもわからないが、とりあえずはそう答えておく。風はその答えに納得したのか、変身解除した黄羽の腕を掴んだ。

 

「では、あとは待ちましょう。グリスが助けに来るのを……ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……千ちゃん、ずっと裏切ってたの……?」

 

 両腕を鎖で拘束され膝をついている黄羽が、唇の切れた口で、僕にそう問いかける。その面持ちは、見たことのないような悲痛な表情を浮かべていた。

 

「ずっとも何も、僕たちはただ利害が一致していたから共にいただけのこと。それが無くなれば、こうなることは何もおかしいことじゃない」

 

 返す言葉がないのか、口を閉じ俯く黄羽。もう少しでグリスが到着する、そうすればこの人もそこで用済みだ。

 

 そして、ついに尋ね人がやってきた。

 

「カシラ……赤ちゃん」

 

 赤羽を引き連れたグリスが、怒りの表情を浮かべ、こちらに向かってくる。その目は僕に向けられており、強い敵意を感じ取った。

 

「遅かったな。西都の兵器になる覚悟はできたか?」

「大事な仲間傷付けられて、飲む訳ねぇだろ。

ゴラァーッ!変身!」

 

 

 

ロボットイングリス!

ブラァァァァ!

 

 

 

 

「心火を燃やしてぶっ潰す!」

 

 グリスは僕に向かって、挨拶とばかりに上段蹴りを放ってきた。右腕を上げてそれを防御しつつ後退、さらに放たれるグリスの連撃を、一つ一つ潰していく。しかし、よほど感情の高鳴りが凄まじいのか、攻撃の威力が徐々に徐々に上がってきている。だがそれでもまだ、パンツァービルドの装甲には傷一つついてはいない。

 

───それが僕の油断だった

 

「オラァ!」

 

 黄金のエネルギーを纏った一撃。それは防御の上から僕の体にダメージを与えた。その衝撃そのままに後方に数メートルほど吹き飛ばされる。

 

「なるほど、これがライダーシステムの真価………だが!」

 

 すぐさま立ち上がり、グリスへ接近。それを迎撃しようとしたグリスの一撃を右手で受け止めた。そしてガラ空きの腹部を左側から殴りつける。そして次の一手を打とうとしたとき、両手をグリスによって拘束させられた。

 

「おい千華、戻ってこい。今ならまだ……」

「残念ながら、僕の居場所はここだけなんでね!」

 

 

パンツァーキャノン!

 

 

 左腕に戦車の砲身を模したパンツァービルドの兵装、『パンツァーキャノン』を展開。グリスの胸部装甲に押し当てると、ゼロ距離で発射した。

 

「くっ……クソ…がっ!」

 

 着弾の衝撃で後方に吹っ飛んだグリスだが、尚も戦意を失うことなく、こちらに闘志を向けてくる。グリスの戦闘スタイルは、スロースタートでの逆転型、早めに撃破した方が安全だろう。

 

 ビルドドライバーのボルテックレバーに手をかけ、とどめを刺す状態に入ったそのとき、

 

「オラァー!」

 

 エンジンブロスとリモコンブロスの猛攻を振り切ったキャッスルハザードスマッシュが、グリスの前に立ち、頭部からビームを放った。

 バックステップでそれを回避するが、地面に命中したビームの煙幕で、視界が覆われる。

 

「ちっ」

 

《ヘリコプター》

 

 

《ディスチャージボトル》

《潰れな〜い》

《ディスチャージ》

《クラッシュ!》

 

 やがて煙幕が晴れ、視界を確保することができた。しかしその時には既に、そこに彼らは無く辺りを見回す。すると上空に、右手をプロペラに変化させキャッスルとオウルを吊り下げながら空中を飛行するグリスの姿があった。

 

 向かっているのはおそらく、東都との間にあるスカイウォール。なるほどつまり………

 

「東都の連中と手を組んだか」

 

 その言葉を聞いた風が、ライフルモードを構えていた手を緩める。

 

「増援が来る前に、ここで撃ち落としますか?」

「いや、このまま泳がせよう。もし彼らが東都の下に付いたのなら、この先にビルドたちがいるはず………一気に彼らの戦力を削ることが出来る」

「俺は構わん、兄貴は?」

「私も異議はありません」

 

 その言葉を合図にして、僕たちはグリスの後を追う。空中にいることも相まって、彼らからは僕たちの姿が見えていないようだ。それに先ほどのダメージが響いているのか、以前よりも飛行速度が落ちていた。

 

 そして数分が経過したとき、グリスがスカイウォール付近にたどり着いた。

 

「撃ち落とす。二人とも少し離れて」

 

 小さく頷き、二人が数メートル距離をとった僕は、ボルテックレバーを回す。

 

 

《Ready go!》

 

パンツァーフィニッシュ!

 

 システム音声と共に、左腕のパンツァーキャノンが延長。長距離砲撃仕様に切り替えられる。

 

 複眼越しにグリスの姿を捉えると、照準システムがその姿をロックした。そして左腕を上げ砲弾を発射、反動で少し後退するものの、放たれた弾は狙い通りグリスに命中、重力に引かれ、地面に向かって落ちていく。

 その着地点は、北都側のスカイウォールの根元。

 

「さて、ローグが来る前に終わらせよう」

 

 

 

 


 

 

 

 

「大丈夫か⁉︎」

 

 スカイロードにて待機していた戦兎と万丈の前に、一海と赤羽、そして救出された黄羽が姿を現した。しかし全員漏れなく負傷しており、北都での戦闘の激しさが見てとれた。

 

「気をつけろ、まだ追手が……「見つけましたよグリス」……!」

 

 何とか口を開いた一海の言葉を遮るように、スカイロードの方向から声が聞こえた。思わず全員がそちらを向くと、エンジンブロスとリモコンブロス、そしてパンツァービルドがゆっくりと歩みを進め、距離を縮めてきていた。

 

「誘導作戦とは、考えましたね」

「東都に逃げ込んだからって、助かると思うなよ」

 

 余裕そうな態度を見せるブロス達、そして先ほどから少しも目標である自分たちから目を外さないパンツァービルド。戦兎はドライバーを握り締めると、ゆっくりと膝を上げた。

 

 

 

 

「……ここは俺達に任せろ」

「ふざけんな!俺があいつらを…」

「ここは東都だ………お前たちの出る幕じゃない」

 

 一海にそう告げた戦兎の横に、万丈もスクラッシュドライバーを身につけ並び立つ。

 

「万丈」

「あ?」

「ハザードトリガーを使う」

「………分かった任せとけ」

 

 

 

 

ハザードオン!

 

《ラビットタンク》

《R//T》

《スーパー》

《ベストマッチ

 

《Are you ready?》

 

 

 

ドラゴンゼリー!

 

 

「「変身!」」

 

 

アンコントロール

スイッチ!

ブラックハザード!

ヤベーイ!

 

 

潰れる!流れる!溢れ出る!

ドラゴンイン

クローズチャージ!
ブラァァァァ!

 

 

 

 

 

「ハァッ!」

「しゃぁ!」

 ビルドラビットタンクハザードハザードフォーム、そしてクローズチャージ。東都の誇る戦士たちが、かつての敵の為、今立ちはだかった。

 

 ビルドはパンツァービルドを標的に設定すると、最高速度でダッシュする。そしてそれを迎撃するべく、パンツァービルドも地を駆ける。

 激突する拳と拳、それが互いに拮抗しエネルギーが拡散する。パワーはほぼ互角、ならばスピードで勝負を仕掛ける。

 

 左足にエネルギーを溜め、一気に解放。膝蹴りをパンツァービルドの装甲に打ち込んだ。衝撃でよろけたところへ続けざまに、さらに連撃を喰らわせる。

 

 戦兎の勝利条件は、西都の三人を撤退させること。しかし今戦闘を行えるのは万丈と合わせて二人のみ、しかも戦兎はハザードトリガーの暴走に注意を払いながら、戦闘を行わなければならない。ならば、選択するのは短期決戦、この一撃で終わらせる。

 

 

 

《Ready go!》

ハザードアタック!

 

 右足より放たれる必殺の一撃、漆黒のオーラを纏ったエネルギーがパンツァービルドの装甲を穿たんとする。相手は先のダメージでまだ体勢が立て直せていない。

 

 

───────貰った!

戦兎は仮面の下で勝利を確信した。その期待に応えるかのように、キックがパンツァービルドに命中───────

 

 

 

 

────するはずだった。

 

「なぁっ!」

 

 衝突の直前、パンツァービルドの体が不自然に右側にブレた。よく見ると彼の足のキャタピラが無数に回転、機動力を上げていた。

 

 パンツァービルドの両脚部に取り付けられているタンクローラーシューズの無限軌道装置。それを使い地面を超スピードで走行、顔前まで迫っていたビルド渾身の一撃を、紙一重で回避したのだ。

 

 ビルドから距離を取ったパンツァービルドは、パンツァーキャノンを展開、ビルドの周りを360°回転しながら、一発一発を的確に打ち込んでいく。

 

 着弾の時の音と、舞い上がる土煙により外部の情報が入手できないビルドは、次の攻撃地点を予想できず、ただ防御に徹するを得ない状況に追い詰められてしまう。

 そしてそれも、長く持つはずがない。ベルト付近に砲弾が着弾、衝撃でハザードトリガーがドライバーより弾かれた。

 

「うわぁぁぁ!」

 

 それにより十数メートル吹き飛ばされるビルド、その姿は通常のラビットタンクフォームへと変化していた。何とか起き上がることは、できたが全身へのダメージで立つことが精一杯、これ以上の戦闘は危険だと、戦兎の本能が警鐘を鳴らしていた。

 

「……驚きました、ハザードを使用した上でそのダメージ、正直立ち上がれるとは思いませんでした。それに加え、暴走を抑えれる時間も上がっているとは……」

「……人間は日々少しずつ進化する。過去のデータが当てにならないなんて、当たり前の事だ」

 

 精一杯の強がり、しかし体は限界直前、息の上がり具合も尋常ではない。この状況を打破する方法を考えるが、頭が上手く回らない。

 

「そうですか……ではこちらも少し、変化を加えていきましょう」

 

 そんな戦兎の状態などつゆ知らず、パンツァービルドはドライバーからシュトルムパンツァーを引っこ抜いた。そして左腰に装着されたフルボトルホルダーから、二本のボトルを取り出した。

 

「まさか……」

 

 

《海賊電車》

 

「ビルドアップ」

 

《定刻の反逆者!》

 

《海賊レッシャー!》

 

 

 

 

「このベルトも元々はあなたのそれと同じ、これくらいの芸当は可能です」

 

 

 

《カイゾクハッシャー》

 

 ビルド海賊レッシャーフォームへ変化したパンツァービルドは、右手に出現させたカイゾクハッシャーを戦兎に向けた。

 

 

 

 

《各駅停車〜》

《急行停車〜》

《快速停車〜》

 

 

 

 

《海賊電車!》

 

 

 最大チャージが溜まったカイゾクハッシャーから、無双の電車型のエネルギー弾がビルドに向けて、発射される。だがビルドは、その攻撃に対抗する術を持っていなかった。

 全ての攻撃を受けてしまったビルドは、所持していた複数のボトルを散らばらせながら、その場で変身解除。絶体絶命の状況に陥った。

 

「戦兎!」

「よそ見か!

 

 クローズも救援に向かおうとするも、リモコンブロスとエンジンブロスによってその道を遮られる。そしてパンツァービルドが、戦兎の前に散らばったフルボトルを回収、カイゾクハッシャーの剣先を戦兎の首元に突き立てる。

 

「終わりです、ビルド」

 

 振りかぶられた大きな一撃、無論戦兎にこれに対処する術はない。ただ目を瞑り、その時を待つ以外やることはなかった。

 そして振り下ろされる刃。ここで死ぬ、戦兎はそう覚悟した。だが─────

 

 

 

 

 

「────どういうつもりですか?」

 

 

 

 

 

 そのときが訪れることはなかった。しかし耳には、金属同士の衝突音、そして困惑したパンツァービルドの声が確かに聞こえた。恐る恐る目を開ける戦兎、そこには一人の仮面ライダーが立っていた。

 

 グリスやクローズチャージ同様スクラッシュドライバー装着、ボディーにはパープルを基調とした装甲を持ち、後頭部に『割れ物注意』のマークが貼られた戦士、その名は

 

 

「仮面ライダー………ローグ!」

 

 

 




◾️仮面ライダーパンツァービルド
葛城巧のデータを参考に開発したライダーシステム。
葛城本人は兵器利用を危惧し、スクラッシュドライバー同様に封印していだが、スタークがスクラッシュドライバーの設計図と共に持ち出し、難波重工が完成させたことで、完成へと至った。
タンクの防御力とパワーを強化しているのに加え、短時間のみではあるが、脚部のタンクローラーシューズで高速移動も可能となっている。
左腕部には砲撃用のパンツァーキャノンを装備。砲身、砲弾を自由に換装することができ、あらゆる場面での砲撃に対応可能となっている。
 またビルドドライバーにフルボトルをセットすることで、ビルドアップが可能のだが、ベストマッチ判定機能はついていない。


黄羽生存しました。
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