闇堕ちタンクくんの光堕ち   作:傘葉

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決別のバレット

「よっ、揃いも揃ってしてやられたな」

 

 

 スカイウォールの外に放り出された僕たちは、重力に引かれて地面と熱い抱擁をかわす。全員変身状態であったので、大きなダメージは受けていないが、それでもなかなかに効くものだ。

 

 そんな折に目の前に現れたスタークだが、正直今は返事をする余裕もない。

 

 

 

「スターク……あの女は」

「石動美空、俺の娘だ。どうだなかなかの美人だろ?」

「そんな事は聞いてない!あのスカイウォールに穴を開けた力は一体………」

「おいおいおい、俺が何でも知ってると思ったら大間違いだぞ。正直……俺にも見当がつかん」

 

 

 

 お手上げと言った様子で、文字通り両手を挙げるスターク。それが真実かどうかは知らないが、これには突っかかったローグも引き下がるしかないようだ。

 

 

 

「まあ今考えても仕方ない、ひとまずは退散するぞ。おーい立てるか?」

 

 

 

 俺に手を差し出したスターク、苦しみながらも何とかその手を掴むが、その時彼の手に妙な力が入ったのを感じた。

 

 

「………いい感じだなぁ」

「ん?何の話を……」

「いや、こっちの話だ。気にするな」

 

 

 

 やはり何を考えているかはわからないが、それでもこの人は信頼できる。それは例え天地がひっくり返っても覆らない、僕の絶対の常識だ。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「スパイからパンドラボックスについての情報提供があった」

「そうか、では今すぐにでも総攻撃を………」

「いや、今回は二手に分かれ活動してもらう」

「なに?」

「どうやら東都は、スパイ炙り出しの為にフェイクの情報を流しているらしい」

 

 

 

 その為の分担か、しかしこの場合フェイクの情報が漏れたと知ったらスパイを行っている人物はどうなるのだろう?………いや、考えなくてもわかる、どうせ難波のやることだトカゲの尻尾切りで見捨てられるに決まってる。

 

 考えてもどうしようもない事に思考を割いてもしょうがない。ひとまずは、目の前のことに集中しよう。

 

 っと、連絡が入った。

 

『東都機械工場の情報はフェイクだった。本命は、そちらだ』

 

 端的に要項を伝えると、プツリと通話は切れた。要するにとっとと確保しろということだろ。人使い荒いなー、いやこの場合もの使いか?自分で言うのも何だけど。はは、笑えよ……。

 

 ローグのスマホにも連絡が来たようだ。足取りが一気に速くなる。

 

「島田、お前は今回後方支援だ」

「何故ですか?」

「……おそらくこの先で待ち構えているのは北都の連中、お前に奴らを

倒せるのか?」

「ええ、パンドラボックスの強奪。それが命令ですから」

「………そうか」

 

 ぶっちゃけ嘘だ。今の僕の状態で、黄羽さんや赤羽さん相手に戦えるかと言われると、正直怪しい。

 それを察してかどうかは知らないが、ローグはそれっきり口を閉ざし一切口を聞かなかった。

 

 

 

 そして、ついにパンドラボックスの元へ辿り着く。その側には、黄羽さんと赤羽さんが、警備として待機していた。

 

 

 

「ローグ……千華、何でここが?」

「パンドラボックスをよこせ」

「そんな事したら…カシラに向ける顔がねえ!」

 

 

 

デンジャー!

 

 

シュトルムパンツァー!

 

 

 

 

クロコダイル!

 

 

《Are you ready?》

 

 

 

 

「「変身」」

 

 

 

割れる!食われる!

砕けちる!

クロコダイルインローグ!

オラァァァァ!

 

 

 

 

パンツァーフォー!

アイアンボディー

アンド

オーバーデストロイ!

パンツァービルド

 

《Yeah……!》

 

 

 

 

「はぁぁ!」

 

 

 パンツァーキャノンを展開し、支援準備に入る。対するキャッスルスマッシュとオウルスマッシュは、前者が前衛での防御、後者が遠距離からの滑空攻撃を放つ戦法を取ってくる……………ハズだった。

 

 

 

「テイヤァ!」

「なっ⁉︎」

 

 

 

 オウルはローグではなく、俺に向かって突進してきた。予想外の攻撃に反撃が遅れる。重力も相まって、正面から攻撃を受けると、そのまま地面に全身がめり込み、蜘蛛の巣上に亀裂が入る。

 

 

 

「ちっっ!」

 

 

 

 組み伏せられた状態でパンツァーキャノンを発射するが、脇で砲身を挟まれ、弾丸の軌道を逸らされる。この近距離では、満足に腕を振り回すことも叶わず、そのまま首元を両手で掴まれた。

 

 

 

「千ちゃん、戻ってきてよ!あのときのことは怒ってないから!」

「……あなたには関係ない。僕の生きる場所は……ここだ!」

 

 

 

 右足で背中を蹴り、怯んだところで高速から脱出。オウルの腹部を殴りつける。そのまま数歩後退したところに続けてパンチをヒット、三発目を叩き込もうとしたとき、オウルに腕を掴まれた。

 

 

 

「………違うよ、千ちゃん。他にも生きていける方法なんていっぱいある。こんな所に居なくたって…」

「あなたたちに何がわかる!僕は………兵器だ。あの人の命令に従って敵を倒し、破壊する!それが僕の生きる意味!」

 

 

 

 また頭痛が走る。何なんだこの感覚は!

 

 

 

「ハァァァァ!」

 

 

 

 ただがむしゃらに、型もクソもない蹴りを腹部に打ち込み、空中へとオウルを浮かす。バランスの取れない状態では、いくらフクロウと言えども満足に動けはしないだろう。

 そこにパンツァーキャノンを展開、威力重視に設定した一撃を叩き込む。

 

 だが、まだ痛みは治らず頭を抑える。一体何がコレを引き起こしている?どれだけ考えても治ることはない、むしろ増している気すらしてくる。

 

 だが、これで一人片付いた、キャッスルの方はローグが相手をしている。ならばあとは、パンドラボックスを押さえれば………

 

 

 

「………まだ、おわってないよ!」

「なに⁉︎」

 

 

 

 吹き飛ばしたはずのオウルが、こちらに向かって走ってきた。

………あれだけの攻撃を受けたらしばらくは動けないだろ、普通。どうせ無理をしているに違いない。

 

 その証拠に、先ほどに比べ動きにキレが無く、速度も目に見えて落ちている。これならば撃破するのは容易いだろう。

 オウルの精彩を欠いた大振りの一撃を難なく捌くと、カウンターを叩き込む。だがそれでもなお止まらない攻撃。ここまでくると、もう力もほとんど残ってないのか、防御しなくともパンツァービルドの装甲に傷一つ付けることはできない。

 

 

「千ちゃん……戻ろうカシラたちのところに!」

「もう、あんたたちに僕は必要ないはずだ!」

「そんなこと思ってない!君が本当は優しい子だって、本当は戦いたくないって知ってる!」

「うるさい!」

 

 

 

 右足にエネルギーを集中させ蹴りを無理やり捻じ込む。後方へ吹き飛ばれたオウルは資材の山に激突。激しい衝撃音と共に埃まみれの煙を撒き散らす。これなら今度こそ、立ち上がることはないだろう。

 

 黄羽さんに背を向けてパンドラボックスに足を進める。

 

 

 

 

「あぁぁぁ!」

 

 

 まだ来るのか!

 煙の中から雄叫びが聞こえる。次こそは仕留めるともう一度、パンツァーキャノンを構える。やがて煙幕の中からオウルの姿が見え………

 

─────変身を解除している⁉︎

 思わずキャノンの砲先がズレた。無意識の内に意識が働いたのか?そんなことを考える間もなく、人間態に戻った黄羽さんの接近を許す。

 

 

 

「……俺たちは千ちゃんの過去を知らない、身勝手に思われるかもしれない、でも………言うよ。俺は千ちゃんと居たあの時が楽しかった!みんなと一緒にワイワイやってたあの頃が!だから………」

「違う……俺は、僕は!」

 

 

 

 黄羽さんを突き飛ばし、ボルテックレバーを力任せに回す。違う違う違う違う違う違う違う!

 関係ない、知らない、僕にそんなもの必要ない!

 

 

 

《Ready go!》

パンツァーフィニッシュ!

 

 

 この一発、この弾丸さえ打ち込めれば、今度こそ終わる。だから、引く!怒りも悲しみも痛みも!全てを乗せて感情任せに引き金に指をかける。相手は生身の人間、掠っただけでも死ぬ。だから……

 

 

 

 

「ああああああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 響く絶叫、それと共に砲弾の着弾音が聞こえる………ハズだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「撃たなかった……それがホントの君の気持ちだよ」

 

 

 

 先ほどまでエネルギーが充填されていた左腕が力無く下を向く。もう、この手を動かす気力も湧いてこない。

 

 

 

「これ……また一緒に食べよ」

 

 

 

 そう言って、黄羽さんは一つの袋を差し出す。あんぱんと書いてあるそれは、以前青羽さんから貰ったものと同じものだった。

 

 いいのだろうか?僕が、この人たちの手を取って………正直、あの頃に思っていたことは、黄羽さんとほとんど一緒だ。楽しかった、嬉しかった。今この場所にいては感じることのできない喜びがあった。

 ………もし、許されるのなら、もう一度あの手を握りたい。あの人たちと一緒に、もう一度笑い合えるのなら僕は、いや俺は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────もういい、あとは俺がやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如、横からローグの拳が飛んできた。黄羽さんはすぐさまフルボトルを差しオウルに戻る、だが反撃を許すほどあの男は甘くなかった。

 一切の攻撃を許さない超攻撃的なラッシュに、黄羽さんはあっという間に壁際に追いやられる。そのそばには、右肩のシールドを破壊された赤羽さんも転がっていた。

 

 

 

 

「大義のための犠牲となれ」

 

 

 

 

 

 

 

クラックアップ

フィニッシュ!

 

 

 

 アクティベイトペンチを思いっきり押し込むローグ────まずいあれは!

何とかそれを止めようと、足を動かす。だが既に………時は遅かった。

 

 

 

「やめろぉー!」

 

 

 

 

 空中へと舞い上がったローグは、両足のエネルギーをワニの顎状に変化、両刃を用いて黄羽さんと赤羽さんをまとめて挟み込んだ。何度も何度も噛み砕かれる二人、まるで見ているこちらの方が痛くなるくらいに。そして変身が解除されると、そこには人間態に戻ったふたりの姿があった。

 

 

 

「勝、聖吉!」

 

 

 

 突如、扉が開いた。そこには一海さん、ビルド、それにクローズの姿もある。だが、それでももう、手遅れだ。

 

 

 

「千華、カシラあんま早くこっちきちゃ駄目っすよ……」

「二人とも仲良く……ね」

 

 

 

 死に際だと言うのに、満足そうな笑顔を見せる二人。辞めろ、その顔を僕に見せないでくれ。僕はそんな立派な人間じゃない、だから………

 

 しかし、その願いが届くことは叶わなかった。光の粒子となって消滅する二人………その時僕の心の中で、何かが弾けた。

 

 

 

 

 

 

「あっ、ああ、ああああああ!」

 

 

 

 

 

 

 まるで喉が裂けるほどの声が出た。もはや言葉でも何でもない、声とも言い難いただの雑音が。

 そして全てを吐き出したときには、僕は力無くその場に座り込んだ。

 

 反響するのは、自分の声ただ一つ。たった一人世界に取り残されたような感覚が、徐々に徐々に僕の心を蝕んでいった。




もっと、もっとだ!もっと……(闇に)堕ちろ!


???「いいか?消滅した赤羽も黄羽もお前も、ネビュラガスを注入した時点でもう人間じゃないんだよ。 だから、お前は『兵器を壊した』に過ぎない」


・スターク(■■■■)
オリ主の心の変化を(感情の学習として)滅茶苦茶楽しんでる、マジもんの邪悪。




次回はおやっさん枠からのありがた〜いお説教入ります
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