ウマ娘 ポロニアダービー   作:O Polonia!

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第8話:ビャウィノチカ、賞金稼ぎの西スラヴ国家レース三連戦

 

 

ナグロダ6500ズウォティ パルティニツェ(Partynice) 芝1700m 6番人気:ビャウィオジェウ

 

 

 スウジェヴィエツのメイドンが終わり、次にビャウィノチカはポーランド共和国南西のシロンスクのヴロツワフにあるパルティニツェ競バ場で開かれるジュニア級プレオープンレース、ナグロダ6500ズウォティへ出走することになった。

 ビャウィノチカがメイドンを後続に大差をつけて勝ったといえど、それでもこのレースにはすでにポーランドやその近隣諸国のジュニア級レースを勝ったり好走したウマ娘も出ているので、流石に人気が高いとは言えない。

 まあどっちにしろビャウィノチカが勝つんだが!

 

 だってパドックの様子を見るにしても、ビャウィノチカほど調子が良くて、能力のあるウマ娘はいないように思えるのだから!

 とは言っても、警戒するべきウマ娘がいないわけではない。例えば3番人気で、ビャウィノチカと出会したスウジェヴィエツのメイドンで2着だったビブワは特に警戒する必要があるだろう。

 まあ今回ビャウィノチカのプランは追い込みで、後方から一気にロングスパートをかける形になる。ただし、それがうまくいくかは別としてだが。

 そもそも今回ビャウィノチカに追い込みで走るよう指示したのは撹乱も兼ねているが、もし事前のプラン通りに行かなくとも、情報を誤認させられたなら、その時点で俺らの勝ちだ。

 

 おっと、ゲートインもスムーズに終わってレースが始まったようだな。

 がしゃりとゲートが開き、ビャウィノチカは意図的な出遅れの後にバ群最後方の大外側から様子を見つつ、このレースに出走していた逃げウマ娘が引っ張ることによって生まれたハイペースの展開に追従している。

 中盤までは特に変わりもなく進み、終盤が近づくにつれてバ群はコーナーに入る。ビャウィノチカはすんなりと曲がり、他がふらつく中でもしっかりと体勢を維持し、スタミナ切れで垂れたウマ娘を尻目に最終直線へと入る。

 

 そうして終盤。最終直線入りと同時にビャウィノチカは一気に速度を上げ、大外の最後方から残り450mはあるパルティニツェのスタンド前ストレートでロングスパートをかける。

 抑え気味ではあるが、それでも他のウマ娘より圧倒的な加速力とスピードでまとめて前にいたウマ娘を置き去りにし、危なげもなくセーフティーリードで1着を掴み取った。

 なお2着には2バ身差でビャウィノチカのロングスパートに合わせてきたビブワが食い込んでおり、流石なものだと感心半分。もう半分におそらく成長すれば現状ビャウィノチカにとってブリスカヴィカと同じくらいの脅威になりうるだろうと、どこまで食らいついてくるのかと恐ろしさと好奇心を感じていた。

 一度彼女のトレーナーとは話をしてみたいものだ。

 

 だがまずはこのレースに勝ったビャウィノチカを祝おう。

 それからウイニングライブも見ないとな!

 

 

 


 

 

 

M.R.シュテファーニク追悼賞 ペトルジャルカ(Petržalka) 芝2200m 3番人気:ビャウィオジェウ

 

 

 ヴロツワフのパルティニツェで開かれたナグロダ6500ズウォティの次は、ポーランドとスロバキアとの国境線となっているタトラ山脈を超えてスロバキア入りした。

 そしてビャウィノチカはスロバキア共和国の首都であるブラチスラヴァのドナウ川沿いに位置するペトルジャルカ競バ場。そこで5月4日に開かれるジュニア級のスロバキア国内オープンレース、M.R.シュテファーニク*1追悼賞へ出走することとなった。

 そしてどうやらスロバキアの方にもビャウィノチカのポーランドでの戦績がここまで伝わっているのか、人気は3番人気とそこそこ高めだ。ビャウィノチカの調子も絶好調。やる気はいっぱい、能力いっぱい。どんな作戦で走らせても必ず勝って帰ってくるだろうさ。

 ただし今回のレースでビャウィノチカに指示したのはスタンダードでオーソドックスな先行策、全世界どこでだってみられるごく普通の作戦。

 ゲートインの方はまあ一応はスムーズに進んでいる。ちょっとぐずっているウマ娘がいるが、まあご愛嬌ということで。

 

 ゲートインが終わり、そのすぐ後にがしゃりと開いたゲートを勢いよく飛び出し、好スタートで先頭に躍り出たビャウィノチカによくやったと心の中で賛辞を飛ばす。にしてもあの飛び出しよう………1人だけカタパルト使ってんのか?

 何はともあれ勢いよく先頭に立ったビャウィノチカはそのまま先頭に立ち続けたりはせず、するりと先頭を他のウマ娘に譲って3番手から4番手ほどの位置で控える。

 位置取りは上々、ペースは少しだけ遅め、先頭の押し付け合いは激し目。そんな感じにペトルジャルカのトラックを周回して序盤と中盤は進み、最終コーナーを曲がって最終直線と終盤に入ってからこのレースの本番が始まる。

 

 最終コーナーを曲がり切ったところから残り350m程で4番手の位置、内ラチ側からビャウィノチカは一気にラウトスパートを掛ける。

 先を走るスロバキアのウマ娘3人を特に気にも止めず、するりと追い越してそのまま2バ身の差をつけ、ビャウィノチカはあっさりとゴール板を超えた。

 タイムは2分23秒14と、まあぼちぼちと言ったところだろうか。

 

 まあなんにしろこのレースに勝ったのはビャウィノチカだし、次のチェコ、プラハのレースもビャウィノチカが制するだろうて!

 ただし今俺らはスロバキアにいるし、チェコでのレースはまだ先だ。だから今はとりあえずビャウィノチカのウイニングライブを楽しもう、話はそれからにしても遅くはならないのだから!

 

 

 


 

 

 

カレル1世賞 ヴェルカー・フフレ(Velká Chcuhle) 芝2400m 2番人気:ビャウィオジェウ

 

 

 ポーランド、スロバキアと連続で西スラヴ国家でのレースが続いたら、次はチェコのレースになるわけで。これでビャウィノチカは西スラヴ諸国である3カ国すべてでレースに出たことになる。

 そして今はプラハ南西のヴェルカー・フフレに位置するヴェルカー・フフレ競バ場で5月中旬に開かれるジュニア級チェコ国内G3レース、カレル1世賞に出走する。

 このレースも、これまでと同じくチェコやスロバキアにポーランド、その他ドイツやオーストリアにハンガリー、ルーマニアといった国々のジュニア級で頭角を表しつつあるウマ娘が出てきている。そんな中でビャウィノチカは、地元であるチェコ所属のウマ娘である1番人気のドブルィヴォヤークシュヴェイク(Dobrý voják Švejk)と僅差で2番人気を確保していた。

 とは言っても今回のレースにおいて懸念点は大いにあり、それが今日の天候とバ場状態だ。なんと言っても今日のプラハは雨がザアザアととにかく強く振りしきり、バ場はここがターフなのかを疑いたくなるほどに不良も不良で、ところどころに大きな水溜りすらできている。

 もはやビャウィノチカが勝つ勝たない以前に、どうか無事に帰ってきてくれと祈りながらパドックの様子を見る。

 

 で、肝心のパドックの様子だが………

 ドイツやオーストリアのトレセン学園仕様の体操服とジャージを着たドイツ・オーストリアのウマ娘は中欧・東欧ウマ娘が自国の民族衣装をベースにした制服を着込んで走るのを見るのがこれで初めてなのか、少し驚いているようだ。

 3番人気はドイツから来たウマ娘のベルリナールフト(Berliner Luft)だが、1番人気のシュヴェイクと2番人気のビャウィノチカに大幅に差をつけられている。そんなベルリナールフトは羽織ったジャージを控えめに脱ぎ捨て、落ち着いた様子でパドックの舞台を後にする。

 しかし本番はここからで、クラクフ様式のワルシャワトレセン学園の制服の上から枠番にして大外枠であることを知らせる16が記されたゼッケンを着け、その上に袖を通さず羽織った白いスクマナ(裾や袖の長い外套)を勢いよく投げるように脱ぎ、その時の遠心力でくるりと回ったビャウィノチカ。

 これを調子が良いと見るか、入れ込んでいると見るかは観客の自由だ。しかし俺としてはビャウィノチカが絶好調であることを、このパフォーマンスで観客や出走者に向けて堂々と見せつけているだけだろうな。

 

 そして1番人気のシュヴェイクが出てきたわけだ。刺繍がふんだんに施され、レースを襟にあしらったシャツの上から真鍮のボタンを縫い付けた紺色のベストにウールの膝丈のズボンからなるチェコのトレセン学園仕様の制服を着込み。その上に枠番である1が記されたゼッケンを着け、白い外套を一気に脱ぎ捨てたその明るい栗毛で人の良さそうな愛嬌ある顔と、どうにも丸っこさを感じるフォルムのチェコウマ娘は素人から見ても圧倒的に絶好調であるとわかるほどだ。

 それにシュヴェイクの戦績を鑑みても、ある種1番人気に押されるのは当然とも言えるだろう。デビュー戦のメイドンは惜しくも2着だが、2戦目のメイドンで1着を掴んだ後はチェコやオーストリアのレースに出て1着を掴み続けている。

 

 今回ビャウィノチカにとって1番の脅威になるのはチェコのシュヴェイクにドイツのベルリナールフト、4番人気でスロバキア出身のシュトゥール(Štúr)、5番人気でハンガリー出身のセントマルギト(Szent Margit)を特に警戒する必要がある。どいつもこいつも揃って実力者ばっかりな上にターフはクソみたいな状態だが、それでもビャウィノチカならきっとうまくやってくれるだろう。

 そう信じながら、もたついているゲート入りの様子を眺める。

 

 するりとビャウィノチカやシュヴェイク、シュトゥールはゲート入りしたが、どうにもそれ以外のウマ娘はぐずったりしているようで、大雨の中ゆっくりとゲートインが進む。

 どうにかこうにかやっとこさゲートインが終わり、ついにカレル1世賞が始まる。

 

 一斉にゲートが開き、真っ先に飛び出したのはビャウィノチカ………ではなく、チェコウマ娘のシュヴェイク、次にスロバキアウマ娘のシュトゥールで、ビャウィノチカは3番手。しかしシュトゥールはすぐに後方に下がって先行策の位置取りを始める。

 シュヴェイクはビャウィノチカと先頭争いを初め、不良バ場だというのにも関わらずペースがどんどん上がっていく。

 ビャウィノチカとシュヴェイク、どちらも早々にスタミナ切れで垂れたりはせず、中盤までハイペースでの叩き合いを続けているので後続が一部垂れ始めている。

 多分これが良バ場だったらレコード叩き出しているんじゃないかと思ってしまうほどに早いペースで2人は先頭争いをしながらストレートを走り抜け、コーナーを曲がってとヴェルカー・フフレのトラックを走り抜けている。

 なんとか2人についていっている後続のウマ娘達は終盤で巻き返そうとスタミナを温存する方向で走っているようだが、どうにもそれは悪手にも思えてくる。

 その点後続集団の中でも先頭の方にいるシュトゥールやセントマルギトは、比較的に先頭争いをする2人を差し切る可能性は高いと言えるだろう。

 

 大雨の中、時にトラック状の水たまりを踏み抜いたりして被った泥にまみれながらも走り続けるウマ娘達にどうか無事で帰ってきてくれと祈りながらもレースを見守り、ついに最終コーナーを曲がって最終直線入りしたシュヴェイクとビャウィノチカ。

 両者ともに体勢を立て直して直線のこり350mほどで一気にラストスパートをかける………はずだった。

 というのも、シュヴェイクがラストスパートをかけようとした時。内ラチ側に存在していた水たまりを思い切り踏み抜いた影響か、それが不発に終わってしまったのだ。

 それもあってかほぼ同時にラストスパートをかけたビャウィノチカには置いてけぼりにされて1着をもぎ取られ、後続でやっとこさ追いつき直線入口からロングスパートをかけたシュトゥールやセントマルギトには追いつかれそうになっていた。

 と、そんな散々なことが降りかかったりしながらも、なんとかシュヴェイクはギリギリで2着を確保していた。

 そしてシュヴェイクを置き去りにした張本人であるビャウィノチカは不良バ場をものともせず、2分27秒45の記録と共に1着を掴み取っていた。なお3着はシュトゥール、4着に僅差でセントマルギトが入り、4着から大幅に離されて6バ身差で5着にオーストリアから来たウマ娘が食い込んでいた。

 

 ビャウィノチカはなんと末恐ろしいもんだと思いながら、泥まみれになりながらも無事に勝利を掴み取ったビャウィノチカを労うべくスタンドから控え室へ向かう。

 ………それにしても、あんな不良オブ不良のターフを全員よく走り抜けられたもんだなぁ………

 

 

 

*1
ミラン(Milan)ラスティスラフ(Rastislav)シュテファーニク(Štefánik)。トマーシュ・マサリクやエドヴァルド・ベネシュとともにチェコスロバキア独立運動を率いた中心的人物の1人にして、チェコスロバキア独立のスロバキア人を代表する人物。イタリアからチェコスロバキアへ凱旋するために搭乗していたイタリア軍機の墜落事故により1919年5月4日に死去。

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