IS 少女の怨嗟と憎悪による復讐 作:来亜
「・・・・。」
わたしが目を覚ましたのは、夕暮れ時だった。気が付いたらわたしは自室にいた。
あのときわたしはボーデヴィッヒに攻撃していた。だけど、あれはわたしじゃない。わたしは見ていた。暗い空間のような場所で、そこに映されていた一部始終を。
「・・・ねぇ、いるんでしょ?」
わたしは鏡に向かって声をかけた。すると鏡の中のわたしが表情を変えて・・・。
「なんだ?どうかしたのか?」
「・・・なぜ、ボーデヴィッヒに攻撃をしたの?」
「・・・。おまえ、見えていたのか?」
「・・答えて。あなたはいったい、なにをする気なの?」
「戦うだけだ。あいつはおもしろそうな奴だからなあ。次は逃がさないが・・・。」
「・・・どういうこと?」
いったい何をする気なの?わたしは問いかけた。
「あいつは『わたし』を楽しませてくれるかもしれない奴ってことだ。『わたし』は、戦ってるときだけが一番すっきりするんだよ。」
「・・・・。」
わたしには信じられなかった。こんな存在が、わたしに住んでいたなんて。いつ、どこでこの人格が生まれたのかはわからない。
「『わたし』はもう行く。しばらくしたら、また体を借りるぞ。」
そう言うと鏡の中の『わたし』は消えて、いつものわたしが映しだされていた。
「・・・・。」
あの『わたし』は、いったい何者なのか?本当に戦うだけが目的なのか?わたしはしばらく考えようとした。いや、それよりもやることがある。
わたしはPCを起動させ、デュノア社の機密データが保管されているメインサーバにクラッキングをした。そこから社員データ、デュノア社社長の家族構成、会社の状況など会社に関係するものを全て閲覧した。
「・・・なるほど、そういうことね。」
結局のところ、わかったのは「シャルル・デュノア」という人物は存在しなかったこと。
二人目の男性操縦者が現れても世界中で騒がれなかったこと。
今回「シャルル・デュノア」として送り込まれた人物のねらいとその理由。
そして、その人物の正体。
わたしはその人物を問い詰めるべく、部屋を出た。
おれは学園の敷地内にいた。もう日も落ちてきたところなのでそろそろ帰ろうかと思ってた時に・・・。
「お願いです教官。どうか今一度ドイツに戻り、再びご指導を!あなたの能力は、こんなところで発揮されるはずはありません!」
「何度も言わせるな。私には私の役目がある。もう戻ることはない。」
「そんな!?だいたいここの人間など、教官が教えるに値しません!ISを、飾りか何かと
はき違えている者たちなどのために教官の時間をさかれるのを見過ごせません!」
「そこまでにしろ愚か者が。少し見ないうちに偉くなったつもりか?成人してもいないただの小娘がもう選ばれた人間気取りとは、嘆かわしいにもほどがある。」
「わ、私は・・・ただ・・・。」
「さっさと寮にもどれ。これ以上貴様のような人間に関わることこそ、私の時間がさかれるということがわからんのか?」
「・・・!」
ラウラはそのまま走り去ってしまった。しばらくすると・・・。
「そこの男子。盗み聞きとは関心ならないな。」
「いっ!?」
ばれた。しかたなく、おれは木陰から姿をあらわした。
「くだらんことをしている暇があったなら、自主訓練などに勤しめ。」
「わかってるよ。なぁ、千冬姉、朝、ラウラが言ってたことって、やっぱりおれが・・・。」
おれは千冬姉に話した。あいつが、おれが千冬姉の弟だと認めないと言ったことを。
おれ自身わかっている。その原因がおれだということも。千冬姉は、
「おまえが気に病むことではない。あれは昔の話だ。もう、終わったことだ。」
そう言うと千冬姉は行ってしまった。
おれは第2回モンドグロッソの決勝戦当日に、何者かに誘拐されてどこかの倉庫に閉じ込められた。そのとき近くには数人の見張りがいた。しばらくして見張りの一人がおれに銃を向けた瞬間、倉庫に何かの気配を感じた。そのときには見張りが一人減っていた。他のやつらも少しパニックになっていた。そして、目の前に怪物が現れた。恰好はあまりおぼえていないが、少なくとも2メートルは超えていた。そんな怪物が、周りにいた奴らを、
喰った。
そのとき初めて目の前で人が死ぬという体験をした。怪物がおれに気付き、近づいた瞬間、おれは気を失っていた。
気づいたら、おれは病院にいた。横を見ると千冬姉が心配そうな顔でこちらを見ていた。
あとで聞いた話では、千冬姉は決勝戦を放棄しておれの捜索に当たっていたと言う。
おれのせいで2連覇を逃した千冬姉。もう、あんな思いはしない。おれは、もうあの時とは違う。みんなを守る力もある。おれは決意を固め、寮に戻った。
ぼくは、デュノア社に定時報告をすべく、社長に連絡をしていた。
「首尾は上々か?」
「はい。織斑一夏と同室になりました。これで、白式のデータを・・・。」
「忘れるな。失敗すれば、我が社に命はないも同然。おまえ次第で、社の人間の大半が路頭に迷うことになる。そうなりたくなければ、なんとしてでもデータを奪取しろ。いいな?」
「・・・はい。では、定時報告はこれで。」
そう言うと、通話は切れた。
「はあ・・・。」
ぼくはため息をついた。
わかっている。この生き方に意味なんてないと。だけど、こうするしか、他に生きる道なんてない。ぼくがやらないと、社長の言った通り、社員たちは職を失うことになる。
ぼくは、着替えようと制服に手をかけた。次の瞬間。
ガチャ
「うわぁ!」
ドアが開いたので制服から手を放した。そこにいたのは、一夏だった。
「・・・どうしたんだ?シャルル。」
「な、なんだ一夏か。でもノックぐらいしてよ。」
「なんでだ?ここはおれの部屋でもあるんだぞ。男の着替えなんてみても別に何ともないだろう。」
「そ、そうだよね。ごめん・・・。」
いけない、いけない。自分の立場を忘れていた。一夏だけにはばれてはいけない。ぼくは細心の注意を払うことにした。
「・・・・。」
「・・・・。」
会話が続かない・・・。でもおかしいな。一夏がこんなに寡黙になるなんて。もうすこし社交的なはずなのに。
「ねぇ一夏。なんで、今日はそんなにしゃべろうとしないの?」
「・・・・。」
やはり会話が続かない。だんだん気まずくなっていく。すると一夏が。
「シャルル。おまえ、おれに隠し事してないか?」
え?
「べ、べつに、ないと思うけど。」
「じゃあ、なんで白式のことをそんなに知りたがるんだ?」
「えっ!?そ、そんなことないよ。ぼくは、ただ。」
「だれかに白式のデータを奪えと指示されてるんじゃないのか?」
「や、やめてよ一夏。ぼくがそんなことできるわけが。」
「・・・ここまで言われて、まだしらをきるのね。」
「えっ?」
そう言うと一夏の体が、ガラスが割れたようになり、中から、
「神崎・・・さん?」
「・・・・。」
同じクラスの神崎さんがでてきた。