IS 少女の怨嗟と憎悪による復讐 作:来亜
「神崎さん・・・?」
「・・・・・。」
わたしは自分にかけていたコピーベントを解除した。
「どうして、神崎さんが?それより、なんで一夏の姿に?」
「・・・それに関してはあなたに説明する義務はない。だから答えない。それと、あなたのことはすでに調べた。シャルロット・デュノア。あなたはデュノア社からIS学園に男性操縦者として潜入し、織斑一夏のISからデータを奪取することを指示された。」
「そこまでお見通しなんだね。」
彼女は自嘲気味に答えた。
「・・・・・。」
「神崎さん?」
わたしは部屋の出口の前に立ち、扉を開けた。するとそこには・・・。
「あ・・・。」
「・・・いつまで立ち聞きをしているの?」
織斑一夏がいた。先ほどから人の気配は感じていたが・・・。
「一夏・・・。」
「幽・・・・。シャルル・・・・。」
織斑一夏は部屋に入り、重々しく口を開いた。
「・・・シャルル。さっきの話って、本当なのか?」
「そうだよ。ぼくはデュノア社からの命令でIS学園に来た。そして、白式のデータを盗んでくるように言われた。」
「命令?デュノア社からってことは、まさか。」
「うん。ぼくの父親、デュノア社の社長からの命令なんだ。」
「だけど、父親からの命令って・・・。そんな・・・。」
「一夏。ぼくはね、愛人の子なんだ。」
「なっ!?」
そう。シャルロット・デュノアは現デュノア社社長と社長夫人との間に生まれた子ではない。それは社会から見て許されざる所業であった。デュノア社社長は社長夫人とは別に女を作っていた。その女と社長との間に生まれた子こそが、
彼女、シャルロット・デュノア。
「お母さんが亡くなって、そのままぼくは父親に引き取られたんだ。」
「・・・・・。」
「シャルル・・・。」
「それでデュノア社でISの適正検査を受けさせられて、適正値が高いことがわかって、そしたら、デュノア社のISのテストパイロットにさせられて、とにかくいろいろなことが飛び込んできたんだ。お母さんのことの整理もつかないまま。」
「じゃ、じゃあなんでおれのISのデータを・・・。デュノア社は量産機のISのシェアが世界第三位なのにどうして・・・?」
「・・・・経営困難。ただそれだけの理由。デュノア社はたしかに第2世代型量産機のシェアはどこにも引けを取らない。だけど機体性能などが良くても、いまは第三世代が主流になっている。未だ第三世代の開発のめどが立たないデュノア社は焦っていた。だからこんな広告塔代わりにもなる雑なスパイを送り込んでくる。それほどデュノア社は切羽詰まってるってことよ。」
「広告塔・・・?どういうことだよ・・・。」
「・・・男装をさせた理由。あなたのような存在が出てきたから、男性操縦者と言っておけば、いい宣伝になるとでも思ったんでしょう。」
「そんな・・・。じゃあ、これからシャルルはどうなるっていうんだよ!」
「・・・わたしがこのことを学園に報告すれば、シャルロット・デュノアはフランスに強制送還されて、フランスの司法に則って相応の罰を受けることになる。デュノア社は当然、つぶれるか、よくて他企業の傘下に下る。」
「なっ!?幽!おまえ、シャルルのことを聞いて何とも思わないのかよ!!」
「いいんだよ、一夏。元々いつかはばれる覚悟でやっていたんだ。それに、ここで過ごした日々も楽しかったし。」
「シャルル!おまえ、それでいいのかよ!その選択肢で後悔が無いのかよ!」
「で、でもぼくには、選択しなんて無いし、これからどうすればいいかなんてのもわからないよ・・・・。」
「・・・・・。」
わたしは無言で部屋を出ようとすると・・・。
ガシッ
「・・?」
織斑一夏に手をつかまれた。
「どこに行くんだよ。」
「・・・このことを、学園に報告する。」
「幽!おまえは、本当に何とも思わないのか。シャルルのことを!そして、おまえ自身がしようとしていることを!」
「・・・・あなたこそ何とも思わないの?彼女はあなたを騙していた。そして、あなたのISのデータも盗もうとしていた。」
「何とも思っていないと言えば嘘になる。でもシャルルが望んでしたことじゃない!親に言われて、仕方なくしたことだ!!」
「・・・・だからといって、人を騙したり、データを盗んだりして良いわけが無い。それに彼女は逃げ続けていた。自分の運命から。どうやって生きたらいいのかわからない。これからなにをすればいいのかわからないと逃げ、足掻かず、抗わず、ただ人に従うしかできない人形のように生き続けた彼女に、救いなど必要ない。」
「っ!幽!」
「・・・っ!」
ドン!!
「がっ・・・・。」
「一夏!」
わたしは織斑一夏を投げ飛ばした。彼が急につかむ腕の力を強めたので投げ飛ばした。それに少しは痛い目に会わないとわからないだろう。現実は非情だと。
「・・・それに彼女をかばってどうするつもり?相手は大企業。あなたにできることなんて、程度が知れる。」
「・・・IS学園特記事項第二十一・・・・」
「・・・?」
「『本学園の生徒はあらゆる国家、組織、団体などによる帰属、外的干渉は原則的に許可されないものとする。』これがあれば、少なくとも3年間はデュノア社でも、フランスでも、シャルルには手出しできないはずだ!その間、シャルルは本当に自分のしたいことを見つければいいんだ!」
「一夏・・・。」
「・・・・。」
たしかにその項目があれば、このことを黙っていればここにいることができる。
「それでも、彼女があなたをまた騙すつもりでいたら?」
「その時考えればいい。おれはシャルルを信じる。幽、たのむ。シャルルのことを・・・・。」
「・・・・黙っていてくれと・・・?」
「たのむ!」
「・・・・・・・・・。」
どの道今の彼女には何の力も持たない。これなら野放しにしても問題ないと判断し、わたしは・・・・・。
「・・・・・なら、わたしの邪魔になるようなことだけはしないで。」
「え・・・?」
「・・・それさえ守れば、別に彼女を学園につきだしたりはしない。」
「わ、わかった!」
「・・・・わたしはもう行く。」
わたしは今度こそ部屋を出ようとした。そのとき・・・・。
「待って!」
「・・・・何?」
シャルロット・デュノアが引き留めた。
「その・・・ありがと、神崎さん。」
「・・・・・。」
わたしはそのまま部屋から出た。
「・・・・・・。」
『彼女』は街にいた。
そこにはだれもおらず、『彼女』だけがいた。
「・・・・・・・・・・。」
どのくらい居たのかわからない。静かすぎるその街に・・・。
「ようやくきたな。」
それはあらわれた。
「・・・・・。」
『彼女』は襲いかかるそれにカードをかざした。
そのカードにはこう書いてあった。
『コントラクト(契約)』