IS 少女の怨嗟と憎悪による復讐   作:来亜

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第22話

「まだ、目を覚まさないか・・・。」

一夏は幽のもとにいた。学年別トーナメントから一週間経っても、幽は目を覚まさなかった。一夏にとって、この一週間はいろいろあった。シャルルが男装をやめてシャルロット・デュノアとして転校してきたり、転校してきたその日に殺されそうになったら、ラウラが助けてくれてあとキスをして『おまえを私の嫁にする!』と言われたのだ。

 

そんな一週間を過ごしてきて、ずっとあることを考えていた。

 

あの男のことだった。急に現れて幽の暴走を止めた。その後、教師たちに拘束されそうになったら二体の化け物を呼んでそのまま消えてしまった。あの男は、千冬姉と幽

に何か関係がある。そう思っていた。

 

千冬姉があの男と話すときは、他人とは思えない態度で話していた。それに幽のISを開発をしたとも言っていた。

 

聞かなきゃいけない。あの男ことを、千冬姉に・・・。

 

「織斑、ここにいたのか。」

「千冬姉・・・。どうかしたのか?」

「学園では織斑先生と呼べ。っ、まあいい。それより話がある。外せるか?」

「はい。おれもちょうど、話したいことがあったから。」

「そうか・・・、来い。ここじゃ騒がしくなるかもしれん。」

 

一夏は千冬についていき、部屋をあとにした。

 

 

 

 

 

「行ったか・・・。」

 

幽・・・いや、『彼女』が幽の体を使い目を覚ました。この一週間、『彼女』も幽が意識を失ってる間は体を使わなかった。

 

 

「あぁ・・・。」

『彼女』は、首を回してベッドを下りて一つ背伸びをした。

 

「行くか。」

 

『彼女』は部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

「結局『わたし』が知ってるやつは見なかったな。無駄足だったか。」

『彼女』は学校内を散策したが、特に誰にも会わず退屈な時間を過ごしただけだった。

 

 

「そうかしら。私が来たからその無駄足はチャラになるんじゃない?あなたにとっては。」

「ん?」

 

後ろから声がして振り向くと、『彼女』にとって見知った顔がようやく現れた。

生徒会長の更識楯無だった。

 

「騒ぎを起こしておまえをいぶりだす手もあったな。おかげで手間が省けたが。」

「ふふ、この私がいるかぎり、そんなことはさせないわよ。」

「おまえ・・、名は?」

「更識楯無。更識家現当主でロシア代表のIS操縦者であり、IS学園の生徒会長よ。あなたは?」

「名前なんてない。誰かと言われればこいつだと言うしかないな。」

「あら、名前が無いなら、こう呼べばいいかしら?ミラーモンスターを飼ってる飼い主さん?」

楯無が勝ち誇った顔で『彼女』に言った。楯無は『彼女』の尻尾これでつかんだと思っていた。だが・・・。

 

 

「ふはははっ。あんなもの仕掛けて得た成果がそれか。こいつがあんなことになった原因にもそれが入ってるかもな?」

『彼女』にとってその程度の情報はどうでもよかった。それに盗聴器など仕掛けていることなどお見通しだった。

 

 

 

「どういうこと?」

「聞いたんだろう?最後に入ってた音声を。そして、誰に対して言ってたのもわかるだろう?」

「・・・ええ。だからと言って彼女に対する監視はやめないわ。あんな暴走までしたならなおさらよ。」

「それは誰の為だ。おまえの為か?」

「学園の為よ。私は生徒会長。学園を危険から守る義務があるの。その危険が学園に所属する生徒だとしてもね。」

 

「だから心にも無いことを言ってこいつを油断させるのか?裏切られた人間の心は計り知れないぞ?」

「恨んでくれても構わないわ。その後の償いはいくらだってしてあげる。」

「償い?っははははははは!」

 

楯無の言ったことに『彼女』は笑った。

 

 

「そんなことして何になる?そんなものはただの独りよがりで身勝手なことだ。そんなことされた奴にとっては、許しを乞いてるようにしか見えないだろうよ。そして償いとやらをした人間はこう思うんだよ。自分はそんなつもりじゃなかったと。」

「・・・・っ。」

 

楯無は言い返せなかった。たしかに彼女の言ったことは合ってるかもしれない。そしてなにより楯無も、自分の独善で人を傷つけたことはある。ゆえに返す言葉が無かった。

 

「こいつの目的は復讐だ。ある日を境に、復讐の為に名前を捨て、死に物狂いで強さを手に入れた。こいつには復讐しか残っていない。それを邪魔する権利などどこにもありはしない。」

 

「復讐・・・・・。そんなの・・・。そんな人生、むなしいだけよ。」

「『わたし』に言っても仕方ないだろう?かと言って目の前で言っても、家族とやらがいるおまえに何がわかると言われるだろう。帰って憎しみが深くなるかもな?」

 

「・・・・・。」

「へっ。」

 

楯無は『彼女』を睨みつけ、『彼女』は笑みを浮かべている。

 

 

「少なくともあなたは、私にとっては敵ね。」

「退屈せずに済むかもな?おまえが遊び相手になるとは。楽しみにしてるぜ?オレは。」

 

『彼女』は部屋へ戻っていった。

 

 

「危険ね。『彼女』は・・・。幽ちゃんの復讐するという人間がこの学園にいるのなら、それも止めなきゃいけないけど、何より『彼女』を何とかしなくてはいけない気がするわ。『彼女』がミラーワールドと何か関わってるのは絶対だし、何よりミラーモンスターを使役されてここで暴れられたら・・・。」

 

先週の件でまたミラーモンスターが出てきたのは知ってる。ミラーモンスターを呼んだ人物は、ISを装備した教師を殺せるとも言っていた。

 

『彼女』をどうにかしないと。あの様子じゃ、こっちが持ってる情報なんて高が知れてるようだったし。

 

 

「会長。ここにいましたか。」

「虚ちゃん・・・。どうかしたの?」

「どうかしたのじゃありません。休憩すると言ったきり戻ってこなかったじゃないですか。」

「ごめん、ごめん。今戻るから。」

 

生徒会のメンバーの布仏虚に見つかり、楯無はまた生徒会室に戻ることになった。

 

 

 

 

 

 

「それで、話とは何だ。」

「ああ。あの時現れた男のこと聞きたいんだけど・・・。」

 

一夏は千冬に士郎のことを聞いていた。千冬は士郎の名前を出されて、顔が曇る。

 

 

「・・おまえには関係無い。」

「千冬姉!なんか知ってるんだろ?あの人のことも、幽のことも!だったら教えてくれ!!」

 

「・・・ちっ、わかった。だが、誰にも話すなよ。特に神崎にはな。」

「ああ。わかった。」

 

根負けした千冬は他言無用を条件に話すことにした。

 

「あの男は神崎士郎。神崎幽の兄で私のかつての幼馴染だ。」

「幼馴染?束さんの他にいたのか?でも幼馴染なら、おれは知ってるはずじゃ・・・。」

「束と違って頻繁には来なかったからな。おまえと直接会ったのも数える程度ぐらいだ。覚えてないのも無理はない。」

 

「そうだったのか。でも、幽は?その人の妹だったんだろ?」

 

「私も会ったか会っていないかは神崎がここに転入してくるまではわからなかったん

だ。士郎に妹がいるのは知っていたが・・・。」

 

 

 

「そうだったのか・・・。士郎って人は、束さんと同じ幼馴染で、幽の兄さんだったのか・・・。千冬姉。一つ聞いてほしいことがある。」

 

「聞いてほしいこと?」

 

「あの時出てきた二体の化け物。おれ見覚えがあるんだ。」

 

「なんだと?一体どこでだ?」

 

一夏は士郎が連れてきたガルドストームを見たことあると言った。千冬はこれに驚き一夏に事情を聴く。

 

「誘拐されたあの日、犯人がおれを銃で撃とうとした時に、暗かったんだけどあの化け物が犯人を・・・殺したんだ。その時おれ、途中から気を失ってて・・・。気づいたら、千冬姉がいる病室にいたんだ。」

 

「そんなことが・・・。だからおまえが、あんなにおびえていたのか。」

 

千冬は納得したと同時に、士郎が一夏を誘拐していなかったことに気付いた。

ならば、なぜあんな嘘を?一夏が誘拐されたときに現れたというミラーモンスターを呼んだのは士郎だ。偶然出てきたというのは考えにくい。

 

 

 

 

「士郎・・・。おまえの役目とは、一体なんだ・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い。

 

深くて、底の見えないような影。いや・・・、闇と言ったほうが正しい。

 

そんな闇が、わたしの前に迫ってくる。迫り来るたびに声が聞こえる。

 

 

『ニクメ。オマエカラスベテヲウバッタモノドモヲニクメ。ソノニクシミガチカラトナル。ソノニクシミヲカテトシテヤツラヲセンメツシフクシュウシロ。』

 

 

わかってる・・・。わたしの生きる意味はあいつらに復讐すること・・・。

 

 

『チカラガホシケレバクレテヤル。ソノタイカハオマエノニクシミダ。』

 

 

憎しみ・・・。この感情だけがわたしを突き動かしている。それを渡すなど・・・。

 

『ニクシミヲツノラセレバイイ。ヤツラヲイマイジョウニニクメ。ソノタメノチカラナラクレテヤロウ。』

 

今以上に、憎む・・・。そうすれば、力を渡すと言うの?なら、いくらだって憎んであげる。お兄ちゃんを殺した、あいつらを・・・。

 

 

 

『ソウダ。オマエハソレデイイ。』

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・。」

 

そこでわたしの目は覚めた。あの黒いのが何なのかはわからない。あの夢は一体なんだったのか。力を与えると言っていたが・・・。ちがう・・・。わたしは他人の為に復讐するのではない。あの黒いのが何を考えているかは知らない。あれがただの夢じゃ無ければ、あの黒いのの為に、わたしは復讐しようとしている。ちがう・・・。

わたしはお兄ちゃんの為に、この身を復讐に投じた。あれがただの夢だろうが関係ない。わたしを利用して何を考えているのか知らないが、わたしも利用してやる。

 

「・・・与えてやるという力を利用して。」

 

 

カツン

 

 

「・・・ん?」

 

何か落ちる音がした。ふと見ると、カードが落ちている。どうやらベントカードのようだった。拾ってみると・・・。

 

 

 

 

 

『コントラクト』

 

こう書いてあった。

 

 

「・・・まさか、いきなり力をくれるなんて、夢の裏付けのつもり?」

 

コントラクトと言うカードは知っている。あのミラーモンスターと契約し、アドベントというカードになる。わたしが唯一持ってなくて、一番探していたカード。だがこれだけでは何の効力も持たない。これを使えるようにするには行かなくてはならない。

 

 

「・・・ミラーワールドに。」

 

 

だが、果たして行けるのか?前回は『彼女』に連れてこられたが・・・。

 

わたしはおそるおそる窓に手を伸ばす。すると窓に手が触れた瞬間、手が引っ張られてそのままミラーワールドに引きこまれた。

 

 

 

 

 

 

見てみると先ほどいた場所と変わらないように見えるが、この世界ではすべてが逆になっている。二度目だが見慣れない。

 

 

「・・・まだ居たらいいんだけど。」

 

わたしの狙いは決まっている。あの赤い龍だ。ベノスネーカーを退けたほどの力なら、使える。わたしは校舎のほうに探しに行った。

 

 

「・・・・・・。」

静かなところだ。ここには本当に何もいないのか?本来は生徒たちや教師が通る廊下が、わたしの歩く音だけがする。本来は喋り声がする場所がこんなにも静かだなんて・・・。

 

 

「ゴオオオオオオオオオ!!!!!!!!」

 

ガシャアアアン!!!!

 

「っ!?くっ!」

 

咆哮と共にガラスが割れた。何かが突っ込んできたようだ。その正体が、わたしの探してたものだ。

 

「ゴオオオオオオオオオ!!!!!」

「・・見つけた・・・!」

 

赤い龍だ。龍はわたしに向かって突進してくる。わたしはそれをかわし、ISを展開した。

 

『トリックベント』

 

シャドーイリュージョンを使って五人の分身を作り、攻めるが・・・。

 

「ゴオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」

 

バキィン!バキィン!バキィン!

 

次々と倒されていく。やはり強い・・・。まともにやらなければこっちが殺される。

 

ドガッ!!

 

「ぐうう!!」

 

剣のついた尻尾でわたしと分身を弾き飛ばした。分身は消え、わたしは壁を突き破り、外に投げ出された。

 

「ゴオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」

 

龍が追撃と言わんばかりに火球を撃ち放ってくる。

 

「くっ!」

 

『アクセルベント』

 

わたしは飛んでくる火球を高速で回避して、

 

 

『ソードベント』

 

 

ドラグセイバーで斬りつけた。

 

ガキィン!

 

「ゴオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」

 

「ぐあっ!!」

 

だが龍は何も無かったかのように、わたしは反撃され校舎に飛ばされて叩きつけられた。

 

 

「ゴオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」

龍はわたしに向かってくる。自分で試してみたがすごい力だ。あの赤い龍。やはり、選んで正解だった。

 

 

わたしはコントラクトを取り出した。

 

カードが光りだし、龍が光に覆われた。

 

 

 

「ゴオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」

 

龍を覆った光が、カードに吸い込まれて、龍は光と共に消えた。

 

 

 

 

「・・・これが、アドベント・・・・。」

わたしの手にはコントラクトのカードではなく赤い龍のカードになっていた。どうやらうまくいったようだ。

 

「・・ドラグレッダー・・・。」

 

カードにはドラグレッダーと記されてる。これがおそらく、あの龍の名前だろう。

 

 

「・・・?」

突然、わたしの体が輝きだした。いや、正確にはミラーマスターが輝きだしたのだ。ミラーマスターの形態が次々と変わっていく。一次移行(ファースト・シフト)や二次移行(セカンド・シフト)ではない。スカートアーマーが消え、装甲が変わり、ヘッドギアがフルフェイスの仮面になっていく。そして、機体の色が赤くなり、ライドバイザーがドラグレッダーの頭のようになっていた。

 

「これは・・・?」

 

『フォーマット完了。龍騎、形態変化確認。』

 

龍騎?いったい、どういうこと?わたしはISを解除し、待機状態に戻した。

 

「カードデッキに、紋章が・・・。」

ミラーマスターの待機状態であるカードデッキには龍の紋章が入っていた。ミラーマスターは龍騎という機体に変化したのか?そう言えば、『彼女』の機体も蛇の紋章があったはず。『彼女』に聞けば・・・いや、今日はここまででいい。アドベントが手に入っただけで、収穫はあった。今日はもうここから引き上げるとしよう。

 

わたしは寮へと戻り、入ってきた窓ガラスから元の世界に帰った。

 

 

 

 

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