IS 少女の怨嗟と憎悪による復讐 作:来亜
「シャル。今日は付き合ってくれてありがとな。」
「ううん。ぼくも必要なものがあったから、ちょうどよかったしね。」
一夏とシャルロットは駅前のショッピングモールに、三日後の臨海学校の準備に必要なものを買いに来ていた。必要なものは水着だけだが、それを買い終えて辺りを歩き回っていたところだった。気がつけば駅前より少し離れたとこにいた。
「一夏。あそこに喫茶店があるよ。行ってみる?」
「そうだな。休憩がてら、行こうか。」
一夏たちは、少し古い外見の喫茶店に入っていった。
「ちはー。・・、」
「おい蓮!おまえ心配じゃないのかよ!」
「そんなことでいちいち騒ぐな。・・・いらっしゃいませ。」
「えっ?お客さん?いらっしゃ・・・、ん?」
入るなり、なにか店員同士が揉めていたので一夏たちは固まってしまった。すると一夏たちを見た茶髪の人が良さそうな店員が一夏をマジマジと見る。
「君、IS学園の生徒?」
「は、はい。そうですけど。」
「蓮。この人たちに聞いてみるのは・・、っておい、何すんだよ!!」
「こちらにどうぞ。」
「あ・・、は、はい。」
顔が怖くて無愛想な店員が、茶髪の店員を押しのけて一夏たちを席に案内する。
「ご注文は?」
「えっと、アイスコーヒ「コーヒーはうちはやってない。飲みたいなら缶コーヒーでも買って来い。」え?」
さっきまで丁寧な口調だった無愛想な店員が、急に口調を変えてきた。顔も怖いのでこの口調になったら怖さが倍増したような気がする一夏とシャルロットだった。
「ア、アイスティーください。こっちの方にも同じものを。」
「かしこまりました。」
シャルロットが機転を利かせ、すぐに注文を変えた。元の口調に戻り、奥に行った姿を見てほっとする二人。
「ったく、蓮のやつ客にまであんな言い方しなくてもいいのに。なぁ?」
「い、いや・・・。」
「あはは・・・。」
茶髪の店員に話しかけられて苦笑する二人。
「おまたせしました。」
さっきの無愛想な店員がアイスティーを持ってきた。
「蓮、やっぱ聞いた方がいいんじゃないか?」
「おまえはまだ仕事があるだろ、さっさと終わらせてこい。」
「わ、わかったよ。じゃあ代わりに聞いておいてくれ。」
茶髪の店員が追い返されて、蓮が残って気まずくなる。
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・・・・。」
沈黙が続く。あの店員がずっとこっちを見ている。まるで射殺すように見ている。
すると・・・。
「おまえら、IS学園の一年生か?」
「・・・え?」
「そ、そうですけど・・・・。」
「神崎幽。知ってるか?」
「えっ!?幽のことを知ってるんですか?」
「俺がそれを聞いてるんだ。・・・その口ぶりなら知ってるようだな。」
「はい・・・。同じクラスなので。」
「あいつがこの一週間連絡をよこしていない。おまえが同じクラスというなら何か知ってるはずだ。言え。」
「それは・・・。」
一夏は言おうか迷った。あんなことがあったなんて、一般の人には言えない。事実、あの一件は緘口令がしかれている。でもこの人は幽の知り合いみたいだし。何も知らないというのも。
「どうなんだ?」
「じ、事故というか、なんというか・・・。それで、連絡が取れなかったんじゃないかと思います・・・。」
こう言うしかなかった。納得してはくれないと思うけど。
「事故だと?あのIS学園でか?」
「詳しいことは言えないんです。僕たちには緘口令が敷かれてるから・・・。」
「ふん。信用に関わるからだろうな。都合の悪いことは口止めか。」
「・・・っ。」
「おまえたちに聞いた俺が馬鹿だった。もうこのことに関しては何も言わなくていい。」
無愛想な店員は外に行ってしまった。
「ごめんね君たち。あいつ、ほんとは良い奴なんだけどここんとこ荒れてんだよ。やっぱ心配なんだろうけど・・・。」
「すいません・・・。何の力にもなれなくて・・・。」
茶髪の店員が謝ってきた。謝られて一夏は申し訳なくなる。
「あ、おれは城戸真司。ここのスタッフだ。で、さっき出て行った奴が秋山蓮。ここの店長。」
「織斑一夏です。」
「シャルロット・デュノアです。」
自己紹介をすると、真司が切り出した。
「二人とも、やっぱ言えないかな?幽ちゃんのこと。」
「すいません・・・。でも、なんで幽のことを知ってるんですか?」
「ここは幽ちゃんの店だからね。おれは居候してるから。」
「えっ?でも店長はさっきの人じゃ・・・。」
「オーナーって言えば分かるかな?あいつがオーナーならおれはここにいないよ。高い家賃取られるだろうし。それにあいつも、居候してるからな。」
「そうだったんですか・・・。」
一夏とシャルロットは内心おどろきながら納得した。そして真司は話を続ける。
「蓮はおれよりも幽ちゃんと付き合い長いからなぁ。口ではああ言ってんだけど、おれよりも心配してるだろうし。」
「・・・・・。」
外では蓮が自分のバイクに乗り、出かけようとしていた。
さっき城戸たちが話していたことは聞いた。たしかにあいつの・・・、優衣のことは気になる。あいつはいま、深い闇を抱えてる。たった一人では抱えきれないほどの闇を・・・。だが俺ではそれをどうすることはできない。
「はぁ・・・・。」
蓮はため息をつき、あるものをとりだす。
それはコウモリの紋章が刻まれたカードデッキだった。
俺はもうこれを使えない。今更こんなものを取り出して、俺は何をしてるんだ?もう俺の出る幕はない。・・・だが、それでも俺は、何とかしようとしてるのか?だとしたら、未練がましいことだな・・・。
カランカラン
店のドアが開き、一夏たちが出てくるのと同時に、蓮はすぐにカードデッキをしまった。
「あ・・・・。」
「・・・・・・・。」
一夏と蓮の目が合い、一夏はたじろぐ。蓮はバイクにエンジンをかけた。
「おまえは何のためにその力を使って戦う?」
「えっ?力って・・・?ISのこと、ですか?」
「質問を質問で返すな。おまえはその力を何のために使い、戦うかと聞いている。」
「おれは・・・・。以前は守られるような立場から抜けるために戦っているつもりでした。でも、今はまわりにいる仲間を守る為に、戦いたいと思っています。」
「仲間か・・・。おまえの戦う理由がそれにあるのか。だが、おまえにはその力がないように俺は見えるな。」
「な、なんでですか。なんであなたがそんなことを言えるんですか。」
「おまえは幽が事故に遭った時、何をしてた?」
「っ・・・!それは・・・。」
「何もしなかった。いや、できなかったようだな。」
「くっ・・・!」
一夏は先日の出来事を思い出し、歯がゆくなった。
蓮の言うとおり何もできなかったのは事実。あの時幽の暴走を見て、一夏はただ立ってることしかできなかった。
「理想や口先だけが良くても力が伴わねば意味などない。おぼえておけ。」
蓮はバイクを走らせて行った。
「一夏・・・。」
「力が伴わねば意味はない・・・。」
シャルロットが心配そうに見てる傍ら、一夏は蓮が言った言葉を繰り返していた。