レイヴンの休日   作:鳳.

2 / 5
勘違いシチュエーション、いいですよね。
あと評価9が付いてました。ありがとうございます。


迷子の傭兵 レイヴンに出会う

『621、起きろ。』

スピーカーの設置が終わって久しぶりの肉体労働という言い訳もありいつもより早めに眠っていたが、ウォルターからの通信で目を覚まさせられる。

 

『ここに一直線に所属不明ACが向かってきている。どこの機体だから知らんが、ウォッチポイントの調査前に問題を起こされると困る。偵察に出て、異常があれば撃墜しろ。』

 

せっかくの久方ぶりの休みなのにと愚痴をこぼしたくなるが、パルデウスとやりあった後も「休め」と言ってくれたし、ウォルターも申し訳なく思ってるだろうきっとと気を紛らわせつつ出撃準備を整える。

敵がAC単機ならショットガンとブレードの近接装備のが手早く終わるだろう。あくまで、『敵性機だったら』の話だが。

 

ーレイヴン、あなたはこの機体、敵だと思いますか?ー

 

わからないけど、敵じゃないならあまり無駄に殺したくはないな。給料の出る任務な訳でもないし。

…ここに来て間もないころも、とある任務でテストパイロットを襲撃したことがあるけど、正直格下を嬲るようにするのは気持ちのいいものじゃない。

 

ーですね…。  …ここで、早速取り付けた通信装置を試すときかもしれませんね。ー

 

ん?このスピーカー?どうやって?

 

ー敵の機体にもよりますが、あなたも既にランカー上位。一対一なら最上位でもない限りまず負けることもないでしょう。でしたら、奇襲を仕掛けなくても、こちらから通信をして、敵ではないのなら立ち去ってもらう…というのは。ー

 

…意外とアリかもしれない。敵によっては隠れる必要もないかもな。

 

 

ー目標、確認しました。 あれが…ACですね。…でも、アリーナの情報にも一致する機体はありません。ー

 

アリーナにもない?じゃあ、ジャンクからレストアされたドーザーのか?

 

ーいえ…、ちょっと待ってください。情報がありました。オールマインドの傭兵データです。あの機体は…ACネーム『ストレイド』、識別名『collared person(カラード ぺルソン)』です。ー

 

何だその機体…!?アリーナでそんな奴と戦った記憶はないし、上位ランカーでその名前を聞いたこともないぞ…?

 

ーいえ、その…彼は、ランクF…その圏外でして…アリーナには登録されていない傭兵のようです。ー

 

つまりいつぞやのラミーよりも下…ってことか。ランクを信じるなら。

 

ーそうですね。危険もなさそうですし、通信をしてみては?ー

 

ああ、そうするよ。

俺はACに火を入れた。

 

 

『カラード・ぺルソン』視点

 

やらかした。

今まではオペレーターと一緒にコツコツ日銭を稼いでいたんだ。身の丈に合った仕事で。

でも最近、封鎖機構と企業グループがドンパチやり始めたから、俺らみたいな弱小傭兵でも、MTよりはマシといった程度の数合わせとして、高難度高報酬な任務を与えられることが増えたのだ。

 

俺が参加したのは、封鎖機構の宇宙港占拠の露払い。普段ならこんな任務受けないのだが、高額報酬に目が眩んで…あと、自分の実力を過信しすぎていた。

 

結果他のランク圏外傭兵組とアーキバスMTでの怒涛の第一攻撃で、HCといった初めて戦う機体にかなりの損傷を負わさせられ、なんとか退けたものの帰還に失敗してしまった。

 

ここはどこなのか気になるところだが、損傷は機体外部より衝撃で機械部分に及んでおり、地図、遠隔通信機器はイカれて使い物にならない。

 

なのでこうして、とりあえず休める場所を探して進んでいる訳だが…

 

ロックオン警報

「!?」

 

あわてて機体を停止させ、周囲を確認する。

スキャンをすると、一機のACを検知した。明らかにこちらを狙っている。

マズい。俺は対AC戦はお世辞にも強くないし、弾もなければリペアキットも使い切った。戦闘となれば勝ち目はない。あの機体は…

 

静寂の中、無情なCOMの音声が響き渡る。

 

「敵ランカーacを確認しました。敵識別名『レイヴン』です。」

 

マズいマズいマズい!!

ここで噂のレイヴン!?

今までは大して話題にならない傭兵だったのに、最近急激にアリーナのランクを上げたりアイスワームや複数のC兵器を撃破するといった恐ろしい戦果を叩き出してる独立傭兵だ。そんなヤツが何故ここに!?

ヤバい、死ぬ…

 

…?

 

敵機体はこちらを捕捉しているのは確実なのだが、攻撃してこない。

どういうことだ?お、俺がターゲットとして狙われてる訳ではないのか?

ひ、一先ず、攻撃してこないなら通信だ通信、逃がしてもらえればいいが…

あわてて近距離通信装置を起動し、『レイヴン』に更新を試みる。

「あ、あんた、噂の独立傭兵、『レイヴン』だよな?攻撃してこないが、俺を狙っているのか?俺は狙われてないのか?どうなんだ?」

 

 

ー何考えこんでるんですかレイヴン!早く返事返さないと勘違いされますよ!ー

 

ご、ごめん待って…エアとウォルター以外の人間と意思疎通取ろうとするのが久しぶり過ぎて…なんて言ったらいいのか…

…え、えーと、その?"あなたを狙ってるわけではないです。直ぐにここから立ち去ってほしい。"って。

 

ー了解です。私がスピーカーから再生させます。通信機器のマイクを入れておいてくださいー

 

あ、うん…。

 

そしてスピーカーから、目の前の傭兵に伝えるための音声が出力された。

『あなたを狙ってるわけではないです。直ぐにここから立ち去ってほしい。』

あっ…

ーあっ…ー

 

…エアちゃんボイスじゃないですか。

 

返信が返って来た。

 

『あなたを狙ってるわけではない。直ぐにここから立ち去ってほしい。』

声を聴いた瞬間凄くドキッとした。

 

とても可愛い声だったのだ。それも、若い。

噂の独立傭兵レイヴン。誰も素顔を見たことがないと言うが、まさかの女性だったのか。

女傭兵にありがちな激しめ、もしくは凛々しいタイプの声ではなく、可愛い声というのは凄く珍しい。

一瞬状況も忘れて物思いに耽ってしまった。…が、その一瞬が命取りだった。レーダーに出てた反応にも気付かずに…

 

ーどどどどうしましょうレイヴン、色々勘違いさせてしまったかもしれませんー

 

だだだ大丈夫だよエア、どうせもともと性別年齢外見不詳なんだし~?べ、別に大して相手も気にしてないよきっと

 

ーそそそ、そうでしょうか。だといいのですが、あの機体の方から明らかな動揺の感じた気がするのですが…ー

 

い、いやいや、そんなこと流石に……に…?

 

ーど、どうしました?レイヴンー

 

いや、レーダーに反応が…ん、なんだこの機た…

 

と、その瞬間。

その機影から発砲されたであろう弾が、『ストレイド』の左肩ミサイルを撃ちぬいた。

 

誘爆する…!しかし弾をほぼ使い果たしていたのか、大した爆発はせずコンテナはパージされた。

 

『な、なんだコイツ等…』と通信機越しにぺルソン君の声。

 

ーMTです!複数機います! Rad製の機体の様ですが…ー

 

あそこの機体は色んなとこに売られてる!そんなの手掛かりにならない…!

 

とりあえず目の前にいたストレイドの後ろに陣取り周囲を索敵する。

すると…

 

全方位MTに包囲されていた。

 

と、MTの方から通信が来る。

 

『ようやく見つけたぞ…。レイヴン!よくもブルートゥを殺しやがって!ろくでなしだがアイツに組んでりゃくいっぱぐれなかったてのによぉ!!!』

…なんだコイツら。

ー話の内容からして、ブルートゥが率いていたドーザー、『コヨーテス』の残党でしょうか。これくらいのMT,敵のうちに入りません。殲滅してしまいましょう。

 

…そうしたいところなんだけどさ、後ろのぺルソン君の機体、損傷が著しいんだよね。数だけは少しいるから、やられないとも限らないし、敵対してないのに目の前で死なれるのも気分悪いし。離脱してもらえないかなーって…。

 

ーえーと、その…レイヴンは私の脳波を声として聴いてるのでしょうが、私はレイヴンの声を脳波として聞いています。正直、声真似ならぬ脳波真似はあまり上手にできないんで、通信入れるとしたら私の声になってしまいますが…?ー

 

こ、この際それは仕方がない。会話文を頭の中で考えるから、エア、まんま音読して。

 

 

『ペンソン君…でいいですか?』

と、ここでまたレイヴンからの通信。可愛い。このMT等はレイヴンの味方ではなさそうな雰囲気だ。

普段なら逃げることはたやすいのだが、今回はいかんせん消耗が激しい。

 

『そもそも、あなたは何故ここにいるんですか?』

「地図を失って、任務後の帰り道がわからなくて…。我ながら、情けない話で。」

『どこに住んでたの?』

「グリット334近く、北西らへんです。」

『グリット334の北西?じゃあ、あっち方向だね。』

といいレイヴンは空の一点を指さす。

 

『この敵は俺に用事があって来てるらしい。君はアサルトブーストで一直線にあちらへ逃げて。』

「え…あ、いいんですか?」

『俺の目的は向かってくる敵を撃退するだけ。立ち去るなら別になんもしないよ。あっちの敵は引きつけといてあげるから。ほら、早く!』

「あ…ありがとうございます!!」

アサルトブーストを作動し、俺はレイヴンが指さしている方向に飛んだ。

そちらにいた敵の攻撃に晒されるが、後ろから発射された援護のミサイルが敵を撃墜していく。

 

…これなら、どうにか逃げ切れそうだ。あっちに一直線。

ここでレイヴンと出会えたのはとても運が良かっただろう。後ろ髪を引かれる思いもあるが、戦場から一気に距離を取る。

 

『ああ…女神…』

口からそんな言葉がこぼれていた。

 

…にしても可愛い声な上に俺っ娘か。色々属性過多な気もするなぁ…

 

 

 

アイツは無事に戦場を離脱できたようだ。

緊張しているのか、切られてない無線から彼の息使いが聞こえてくる。

 

俺からしてみればこれくらいのMTの群れは実際敵に数えないので、適当に無双していあのだが。

 

その通信機からこぼれたかのような声が聞こえた。

 

『…ああ…女神…』

 

「………」

ー………ー

 

なんか、あらぬ噂がまた一つ広まっちゃいそうなんだけど。

 

ー…いいじゃないですか。美少女(推定)独立傭兵レイヴン。依頼が増えますよ。ー

 

うーん…

 

なんとも言えない気持ちでMTの最後の一機を足蹴にしたのであった。




次話はまた違う時期の話になります。
ちなみに察してるとも思いますが一応明言しておくと今話の時系列はウォッチポイント・アルファ探索前。チャプタ―3と4の間です。


美少女傭兵レイヴン…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。