【第1章完】異世界スカウトマン~お望みのパーティーメンバー見つけます~   作:阿弥陀乃トンマージ

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第1話(1)突然のアシスタント

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「ふあ……眠いな」

 

 リュートがあくびをして、目をこする。彼は今とある街の広場を歩いている。

 

「おはようございます!」

 

「!」

 

 突然後ろから大声をかけられ、リュートはビクッとなる。振り返ってみると、小柄で小綺麗なスーツを着て、ショートカットの頭にキャスケット帽を被った女の子が立っていた。

 

「リュートさんですよね! 初めまして!」

 

「えっと……」

 

「あ、し、失礼しました! 私はイオナと申します!」

 

「イオナくんか……二つほどお願いがある」

 

 リュートが指を二本立てる。

 

「なんでしょうか⁉」

 

「まずは声のボリュームを落としてくれ」

 

「あ! す、すみません、テンションが上がってしまって……」

 

「それから……」

 

「それから?」

 

「こう言っちゃあ悪いが、俺の前から消えてくれ」

 

「え⁉」

 

 イオナが驚く。

 

「消えないのなら俺から消える……」

 

 リュートが前に向き直ってスタスタと歩き出す。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

 

「待たない」

 

「私は貴方に用事があるんです!」

 

「俺はない」

 

「イクサおじさんからお話は聞いてないのですか⁉」

 

 リュートが足を止めて振り返る。

 

「イクサおじさん?」

 

「はい、私はイクサの姪っ子です!」

 

「そう言われると似ているな、声が無駄に大きいところとか……」

 

「そ、そこですか……」

 

「で? 話ってなんだ?」

 

「き、聞いてないのですか?」

 

「全然」

 

「ぜ、全然……」

 

「あるいは……」

 

「あるいは?」

 

「興味のないことはすぐに忘れる性質でね」

 

「す、すぐに忘れる……」

 

「ああ、職業柄、無駄な情報は頭に入れたくない。優秀な方だと自負しているが。脳の容量というものにはどうしても限界がある」

 

 リュートは右手の人差し指で側頭部をトントンと叩く。

 

「……」

 

「というわけで、残念ながらこの素敵な出会いもすぐに忘れてしまうだろうね」

 

 リュートは両手を広げて首をすくめた後、再び前に向き直り、歩き出す。

 

「わ、私も同業です!」

 

「……なに?」

 

 リュートが再び振り返る。

 

「スカウトマンです。まだまだ駆け出しですが……イクサおじさんから貴方のアシスタントについて、色々と学ばせてもらえと……」

 

「ああ、そういえば……」

 

 リュートは顎をさする。イオナがパッと顔を明るくする。

 

「思い出して頂けましたか⁉」

 

「そういえばイクサのおっさんとそういう話をしたな……飲み屋で」

 

「の、飲み屋で?」

 

「ああ、ポーカーで負けたんだ。ちょうど手持ちが無くてね。支払いの代わりに姪っ子の面倒をみてやってくれないかと言われたな……」

 

「か、賭け事で決まったんですか……?」

 

「聞いてないのか?」

 

「いや、業界の行く末を憂いている。後進の育成は急務だ。将来性のある若者ならば是非とも自分に指導させて欲しいとリュートさんから強い要望があったと……」

 

「なんでこっちがそんなに前のめりなんだよ」

 

「ち、違うんですか?」

 

「違うね。業界の行く末なんか知ったこっちゃない」

 

「し、知ったこっちゃない……」

 

「ましてや後進の育成なんて面倒なことはまっぴらごめんだね」

 

「め、面倒……」

 

「悪いが他を当たってくれないか? 探せば物好きは意外といるもんだぜ」

 

 リュートは三度歩き出そうとする。

 

「そ、それならば……契約を違えることになりますよ!」

 

「む……」

 

「ポーカーで負けた額を今すぐ支払って下さい!」

 

 イオナは右手を差し出す。リュートは苦笑する。

 

「なんで君に払わなきゃいかん。今度イクサのおっさんに会ったら払うさ」

 

「今度っていつですか⁉」

 

「今度は今度だ」

 

「イクサおじさんもぼやいていましたよ! リュートさんはあちこち飛び回っているから、なかなかつかまらないって!」

 

「ああ、色々と忙しいからね」

 

「それでは困ります。今すぐ支払ってください!」

 

 イオナが右手をさらに突き出す。

 

「あいにく手持ちが……ないわけではないか」

 

 リュートは小太りの勇者から受け取ったお金を思い出す。

 

「支払って頂けるのなら、大人しく引き下がります」

 

「いや、予定外の出費というのは出来る限り避けたい……」

 

「どうするんですか?」

 

 ぶつぶつと呟くリュートにイオナが問う。

 

「はあ……」

 

 リュートはため息をついてイオナの顔を見つめる。イオナが戸惑う。

 

「な、なんですか?」

 

「そういえば、君は俺がこの街に来ているとよく分かったな?」

 

「え? あ、ああ、だって今日はあの日じゃないですか? ほぼ毎年顔を出すと聞いていましたので……去年は来られなかったそうですが」

 

「へえ……意外と調べているんだな。そうか、分かった……」

 

「え?」

 

「アシスタントとしての同行を許そう」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 イオナが頭を下げる。

 

「ただし、二つ言っておく」

 

「な、なんでしょう?」

 

「給料は出さない。コーヒーくらいは奢るがね。それと仕事の邪魔だけはしてくれるな……」

 

「わ、分かりました……」

 

 イオナが頷く。

 

「結構。それではイオナくん、馬車を拾ってきてくれたまえ」

 

「は、はい! ……すみません! あ、馬車がこっちに来ます」

 

「ふむ……イケウロナ魔法学院まで頼む」

 

 イオナとともに馬車に乗り込んだリュートが行先を伝える。

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