【第1章完】異世界スカウトマン~お望みのパーティーメンバー見つけます~   作:阿弥陀乃トンマージ

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第9話(4)見識改新

「あ、こちらです。リュートさん」

 

 イオナが声をかける。

 

「そこは……」

 

 リュートが歩み寄って、首を捻る。

 

「物置代わりの部屋だそうです。ただしかなり古くて狭いので、ホテルの方もほとんど使っていないみたいです」

 

「部屋を二つ使いたいという話だったが、こちらにいるのかい?」

 

「ええ、滞在中はほとんどこもりっきりです……」

 

「すみません、リュートです。お話をしたいのですが……」

 

 リュートがドアをノックする。

 

「……どうぞ」

 

「失礼……!」

 

「おおっ……」

 

 部屋に入ったリュートとイオナが揃って驚く。部屋中にびっしりと武具類が置いてあったからである。武器の手入れをしながらクイナが顔をリュートたちに向ける。

 

「お疲れ様です」

 

「ええ、お疲れ様です……」

 

「武器の手入れとは精が出ますね」

 

「それが仕事ですから……」

 

「ふむ、お若いのに感心、感心……と、言いたいところですが……」

 

「はい?」

 

「貴女はもう少し見識を広げた方が良い」

 

「見識を広げる?」

 

「そうです、例えば、街に出てみるとか……」

 

「……さほど興味がありません」

 

「何も無理に遊べと言っているわけではありません。散歩するだけでも大分違いますよ?」

 

「散歩するだけで?」

 

「ええ、街中で戦闘になった場合、適している武器は何かとか……」

 

「……道幅が狭かったりするので、大きな武器は不向きですね……」

 

「そうです。例えば、モンスターが襲撃してきた、若い男たちは皆出払っている……」

 

「非力な女性や子供、ご老人でも扱えるような軽量の武器などが望ましい……」

 

「そうです、そういうことです……」

 

「ふむ、そう考えてみると、新たな発見がありそうですね。良いアイディアも浮かんできそうだ……一段落したら、ちょっと後で近所を散歩してみます」

 

「是非……」

 

 リュートは笑顔で頷く。

 

「あ、リュートさん……」

 

「いたか」

 

「ええ」

 

 イオナが歩み寄ってきたリュートに応え、ある場所を指し示す。

 

「レストランか、入るぞ……」

 

 ホテル内のレストランにリュートとイオナが入る。

 

「……」

 

「やあ、オッカちゃん」

 

 リュートが手を挙げる。

 

「………」

 

 オッカが無言で会釈する。もぐもぐと口が動く。

 

「はは、随分と食が進んでいるようだね。ちょっと失礼するよ……」

 

 リュートとイオナがオッカと同じテーブル席に腰かける。

 

「…………」

 

「美味しいかい?」

 

「……今まで食べたことないくらい美味しい」

 

「それはなによりだ。育ち盛りだからな、どんどん食べな」

 

「うん……」

 

「い、良いんですか?」

 

 イオナが小声で尋ねる。リュートは笑う。

 

「……お代は勇者さま持ちだからな、心配ないさ……さて、オッカちゃん、食べたながらで良いから話を聞いて欲しい」

 

「……………」

 

「竜人族である君の成長スピードは普通の人間より早い。君はあっという間に大人になる。なにが言いたいかというと、ただ食べるだけで子供の時期を終えて欲しくないんだ」

 

「……どういうこと?」

 

「もっと色んなことを見て聞いて、触れてみて欲しい。そうすることによって、君の竜人としての人生はより豊かなものになる」

 

「豊か?」

 

「お腹だけでなく、心も一杯になるってことさ。まあ、多少は余裕を持たせた方が良いけど」

 

 リュートが自らの左胸に手を添える。

 

「……それで、皆のことを助けられるの?」

 

「……ああ」

 

「分かった。やってみる」

 

「良い子だ」

 

 素直に頷くオッカを見て、リュートが笑顔を浮かべる。

 

「ふむ……」

 

 夜、ホテルの廊下をリュートと並んで歩くベルガが顎に手を当てて頷く。

 

「ベルガさんが一緒にご提案して下さって助かりました」

 

「ターンオーバー……メンバーのローテーションですね。あまり考えたことがありませんでしたが、これくらいの規模のパーティーなら有効に作用するかもしれません」

 

「実際の戦闘でのその辺りの采配は、ベルガさん、レプさん、もしくはファインさんあたりで取ってもらうと良いのかなと考えています」

 

「そうですね……今日は遅いですから、明日の朝食時にでも相談してみます……あら?」

 

「どうしました?」

 

「あれ……」

 

 リュートがベルガの指差した先を見ると中庭を覗くメンバーたちの姿があった。

 

「なんだ?」

 

 リュートたちが歩み寄る。ベルガが声をかける。

 

「皆さん、夜も遅いです。もうお休みに……」

 

「しっー!」

 

 カグラが人差し指を口に付けて声を上げる。マイが呆れる。

 

「その声がデケえよ……」

 

「お二人とも、あれを見てください……」

 

 ユキが中庭を指し示す。リュートたちが視線を移す。

 

「はあ……はあ……はあ!」

 

 そこには一心不乱に剣を振るシャルの姿があった。

 

「いや~物事に懸命に打ち込む若者の姿は絵になるね~」

 

「酒の肴になるの間違いでしょう……」

 

 まだ酒を飲んでいるルパにレプは苦笑する。

 

「なかなか筋が良いですね……」

 

「ええ、そしてあの剣、大事に大切に使っているのがよく分かります……」

 

 感心するアーヴの隣でクイナが深々と頷く。

 

「ふう、疲れたな。今日はこの辺で……いや、まだだ! ……よし、まだ出来る!」

 

「今、回復魔法を使った! 魔法の心得もあったのか……」

 

「すごい……」

 

 驚くファインの横で、オッカが呟く。

 

「……皆さん、パーティーを支えて下さっているシャルさんの為にも、明日から心を新たに頑張っていきましょう……!」

 

 ベルガの言葉に皆が黙って頷く。

 

「これは……その線もありかな?」

 

 リュートが腕を組んで、悪そうな笑顔で頷く。

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