Is インフィニットストラトス ーBreak the worldー 作:柊一
次の話ができたら、推敲した上で投稿する形を取っていますので、かなり間が開きます。
思い出してのぞいてみたら、進んでた! ぐらいな感じで拾っていただければ幸いです。
―四月 IS学園 一年一組教室―
あのムカツク金髪女と一緒に出席簿で叩かれてから、アタシは席についた。
「一年一組担任の織斑千冬だ。今後一年間、おまえたちの面倒を見ることになった。以後、よろしく頼む」
さっきアタシを叩いた先生が、ふてぶてしく、めんどくさそうにそういった。
「副担任の山田麻耶です。皆、よろしくおねが―」
『きゃぁぁぁっ!!』
『千冬さまぁ!』
『握手して!サインしてぇぇ!』
「って、聞いてない……はぁ」
まぁ、自己紹介だけでクラスが沸き立つのだから、実際めんどくさいのだろう。有名人というのは大変だ。日下さ――山田先生、ドンマイです。
「……少し静かにしろ」
『きゃぁぁぁっ!!』
先ほどと同じようにめんどくさそうに言ってみるが、クラスの熱気は冷める様子が全く無い。織斑先生はIS界隈では飛びっきりの有名人で、しかも世界一になるほど飛びっきり強い人だ。それが担任をやるのだから、この反応は当然だろう。
「静かにしないかっ!!」
ダン!とその手を教卓に叩きつけながら、織斑先生は大声を上げる。あまりの怒気に当てられて、クラスで騒いでいた人たちも水を打ったように静かになった。
「諸君らがこれから扱うISは、ただの『おもちゃ』でなければ、それこそ『胴着』のようなものでもない。ISはスポーツとして認定されていて、世界大会である『モンドグロッソ』も開催されている。しかしながら、兵装と調整の程度によっては、単機で一個師団、ないし一都市を壊滅させる程度には強力な『兵器』へと昇華することを忘れるな。誤って人を殺したくなければ、あるいは自分が死ぬようなめに遭いたくなければ、私の指示には『はい』か『イエス』で答えろ」
ふと見ると織斑先生の手が異様に大きくなっていることに気がつく。あの腕はIS『打鉄』のものだ。金属製の教卓が、人がやったようには思えないほどへこんでいるところを見ると、どうやら振り下ろしたときに展開していたようだった。
その威力とものものしい雰囲気を見て誰もが、特に専用機を持たない一般人は言葉を失い、ただ織斑先生の挨拶を聞くだけだった。
「さて、IS学園には、実際にISを操作しそれなりに戦えるようになるための『操縦科』と、ISの整備、及び研究開発を学ぶ『整備科』がある。諸君らが、身の振り方を考えるのは二年生からだ。操縦科志望の生徒であっても、整備科志望の生徒であっても、どちらの授業も受けることとなる。この一年で感覚をつかんでおけ」
『はいっ!』『イエス!』
「よろしい。それと連絡事項だが、今月中旬から下旬にかけて、学園の南に建築中の整備棟への設備移転作業が行われる。いろいろあって延期になっていた作業だが、これが終了次第、整備科の授業はあちらで行われることになる。授業時間外ならば見学や調整は自由だそうだから、気になる奴は見ておくといい」
整備棟か。わざわざ学園本部と距離を置いているのだから、結構がっちりした施設になるのだろう。移転が終了次第、いってみようかな。
「さて、挨拶のつもりがだらだらと喋ってしまったな。これで最後にしよう。授業を始める前にまず、クラス代表を決定しておきたいと思う。私への取次ぎやクラスでの話し合いの司会、学年行事への出場……まぁ、身も蓋もないことを言えば『雑用』だな」
そういって、織斑先生はばっさりと切り捨てた。教師なんだから、もう少し言葉を飾ったっていいだろうに。その言葉に、クラスの半数ぐらいが『どうすんの?』的な空気を出しながら周りを見ていた。……約一名、ほかとは微妙に違う空気を出している奴がいたけど。
ちなみにアタシはスルーだ。潜入目的は織斑一夏の警護。下手にヘンな役職を受けて行動が制限されるのだけは避けるべきだ。
「立候補でも構わんが、こいつがいい、という奴がいれば推薦してもらって構わん」
「はい」
「なんだセラノ。立候補か?」
手を上げた奴は、柔和な笑みを浮かべながら首を横に振る。
「いえ、私はこちらのセシリア・オルコットを推薦したいと思います。おそらく、この学年の中で一番の適役だと存じます」
「そーですわね。栄光あるイギリスの代表候補生たる私が、クラス代表に適任でないわけが無いでしょう!」
そのまま高笑いでもしそうな勢いで金髪女が立ち上がった。こいつがこの調子で代表になっても、何だか不安なんだけど。まぁ、関係ないか。
「他にないか?無ければこのまま、オルコットが代表になるが?」
『あぁそうだ。織斑君なんてどうかな?』
「はぁっ!?」
『うん、いいと思う』
『そうだ!そうだ!』
そういっているのは先ほどの活で萎縮しきっていた一般人グループ。いい具合に毒が抜けてきたのか、完全に一夏を推薦する流れになっていた。
「はいせんせー。織斑くんがいいとおもいまーす」
「だそうだ。異議のあるものは?」
『異議なーし』
「い、異議ありっ!そもそも俺が代表って……務まるわけないだろ!?」
人気者の末路を見た気がした。やっぱ、名前を知ってるというか、いろいろとそれっぽく見えるからちょうどいいのだろう。集団心理的に、日本人生徒の中では一夏を推す流れができつつあった。外国の人はそれはそれで……といった様子だったけれど。
「言っておくが、推薦された以上、その期待に応える義務がある」
「ど、どういうことだよ千冬ね―」
「織斑先生と呼べ(すぱこーん!)」
「っ……。ど、どういうことですか!織斑先生!」
「簡単だ。辞退などというフザけた真似は許さないということだ」
うわー、厳しー。
「ちょっと待ってください。男が代表だなんてこと、私は認めませんわ」
とまぁ、そういって人差し指で一夏を突き刺しながら声を張ったのは金髪の女、セシールさんだっけ?だった。どうも、面と向かって名前を言ってもらわないと記憶にあんまり残らないから、名前があっているかはあまり自信が無い。
『えー、なんでー?』
「当たり前ですわ!ISとは女性が操るものです!だというのに、こんな何だかぱっとしない男が代表なんてなった日には、このクラスはいい笑いものですわ!」
すげぇ言い様だな、明らかに一夏を侮っているようだった。よほどかちんときたらしい一夏が言い返すのは、まぁ当然の流れだよな。
「……そうだな。俺が笑いもの程度ですむんだったら、あんたの場合は学年史上最大の黒歴史になりそうだな」
「クロレキシ?おっしゃっている意味がよく分かりませんが、あまりいい意味ではないようですね」
うわぁ。意味が通らないんじゃ、挑発しても意味がないじゃん。一夏は下手打ったようにも見えたが、思いの外建て直しも早かった。
「そうだなぁ。まぁ、噛み砕いていうなら、クロレキシは『人生最大の汚点』ってことだな」
「な、なんですって!?この栄えある私がクラス代表をやるというのに、汚点ですって?!」
「本当に栄えあるのかはわかんないけど、ハエみたいにうるさくわめいてるようじゃ、そんな風には見えないぜ?」
「ばかにして!でしたら、あなたは自分がなるべきだとおっしゃいますの?!」
案外クチが立つってことでいいのか?完全に一夏のペースに入っているようにも見える。
「そうだなぁ。やっぱり皆には悪いけど、いくら雑用といっても、初心者で若輩者な俺がクラス代表になるのはおこがましいってものでしょ」
『えー』
『じゃぁ、織斑君は誰がいいと思うの?』
おーおー。周囲も味方につけたようにも見える。あと、興奮したように喋るセザールさんと違って、その口調はいやに静かで迫力のあるものだった。どうも、怒ると腹の中が冷えてくるタイプのようだ。こうなるとめんどくさいぞ。
……と、ここまではよかった。アタシも笑ってこの寸劇を見ていられた。
「そうだな。綿貫音羽が適任だと思う」
「はぁっ!?」
ま、巻き込まれたぁ!?
まさか、観客席から引きずりだされるとは思わなかった。ヨリにもよって、警護対象の織斑一夏自信によって。
『まぁ、そんなこともある。織斑一夏本人は、我々が護衛をしていることは知らないからな』
『く、日下さん!』
突然の通信に、反射的に送り主のほうを向く。ニヤニヤと面白そうに高見の見物かましている織斑先生の隣で、こちらに向かってにこりと微笑んでから、アタシを地獄に突き落とした。
『あきらめろ。立つしかない。以上、通信終わり』
そんな馬鹿な……
『でもさー。あの子ってさっきの……』
『なんか怖い感じだったよね。大丈夫かな』
「よ、よりにもよってこの方を指名するなんて……どうかしていますわ!」
「どうしてそう思うんだ?」
「そうですね、言葉を選ばないでいうのであれば……。私は、今朝方のやり取りの中で、彼女にどうしようもない頭の悪さを感じました」
なんてことをいうんだ。あの金髪は
『まぁ、あんまり反論の余地ないよね。あの言い回しは』
「うっ」
「代表とは、強く、賢い人間がなるべきものでしょう?賢くはない彼女が代表を務めるのはおかしいと、そう思うわけです」
「なるほどな。まぁ、いまのままじゃぁ、賢い賢くないをどうこういえるものじゃないな」
「い、一夏おまえな……」
「でも、綿貫さんにはこれがある」
そういって取り出したのは、さっきアタシが一夏に渡したチュッパチャップスだった。
「……よくもまぁ、教師の前で見せるなぁ」
「綿貫さん、後でお話がありますので、職員室まで来てくださいね」
「えぇっ!?」
ナンデ、こんなはめられたようになってるんだ、アタシ。
そんな感じにげんなりしたアタシに構わずに、一夏は何か言い始めた。
「このクラスの雰囲気になれなくて割と孤立してた俺に、綿貫さんは気さくに話しかけてくれた。しかも、気を遣ってこんなものまでくれて……。代表は周りをよく見て、率先して動けることも大事だと思うから、綿貫さんが適していると俺は思うぞ」
『んー。織斑くんがそういうなら、そうなんだろうね』
『まー、ぶっちゃけ誰でもいい』
「くぬぬ……」
「でしたら、こういうのはどうでしょうか?」
何か唸ってる金髪の隣で、茶髪の女が丁寧な調子で割り込んできた。
「またかセラノ。何か意見でもあるのか?」
「えぇ。まず代表になるべき人間についてまとめてみましょう。セシリアさんは、強く賢い人間がなるべきだと思っているわけですよね?」
「そうですわ。代表とはそうあるべきものです。そしてその座に最もふさわしいのは―」
金髪が何か言い出したが、茶髪はそれをさえぎるでもなんでもなく、完全スルーして一夏のほうに振る。
「で、織斑さんは率先して動く行動力があり、周りが見えている人がいいと、そういうことですよね?」
「ふえ?」
肩透かしを食らった金髪は、バツが悪そうに視線を泳がせていたが、やっぱり茶髪は気にした様子はなかった。
「お、おう。それで大丈夫だ」
「なら、戦ってみるのが早いでしょう。強く賢く、行動力と注意力があるほうが勝ちますし」
後ろ二つの意味が違うだろ。ただ、単純に取っ組み合えばいいだけだから、平行線の談義を続けるよりか、話はずっと早くまとまるだろう。
「そういう解決方法は、あんま好きじゃねぇけど、アタシはそれでいいや」
それで、適当なところで金髪に負ければいいか。そうすれば、アタシが代表になることは―
『言っておくが、手を抜いて負けることは、相手にとっても、私にとっても最大の侮辱になる。そうなったら……明日の朝日は拝めないと思え』
ソッコーで釘を刺されてしまった。日下さんは普段から言ったことは守る人だから、こういうときに重みがでてくるよなぁ。
「私もそれで構いませんわ。尤も、こんな男に負ける私ではありませんがね」
「俺は―」
「であれば第三アリーナを借りて行おう。形式はリーグ式で、全部で三試合行うものとする」
一夏の発言権は封殺された模様。全く聞こうともしないで話が進んでいく。
「ちょ、だから俺は―」
「主に織斑が調整する必要もあるだろうが、そこの二人は問題ないだろう?」
「もちろんですわ」
「まぁ、はい」
「なら、オルコットと綿貫の勝負は今日、織斑の戦いは来週とする。三戦すべてが終了する、それまでのクラス代表は暫定的に提案者であるリリアナとしておく」
「かしこまりました」
「では以上だ。それでは早速、授業に入る。10ページを開け」
なんだかんだと、金髪と戦うことになった。
というわけで三話目でした。