Is インフィニットストラトス ーBreak the worldー 作:柊一
…最近、というか先週末から海自のDDGこんごうのキットに挑戦中なのですが、如何せんパーツが細かいですね。
作ったことあるのはガンプラ(しかも素組みだけ)という中、塗料も買って塗装にもチャレンジしているんですが、筆塗りしたら、何だか小学生の自由研究みたいな稚拙な塗りになってしまいました。薄め液の使い方がよく分からんちん。
※最近の話と今回の話は、まるで関係はありません。
―四月放課後 第三アリーナ選手控え室A―
アタシとあの金髪の決闘は、その日の放課後、第三アリーナに一年生が詰め掛ける中で行われることになった。
『ったく、千冬も言っていたが、初日から他人にケンカ吹っかける護衛がどこにいる』
『わるい日下さん。アイツの言葉につい……』
『男がどうのなぞ気にするな。音羽、おまえはれっきとした女だ』
『日下さん』
『現にそうやってISに乗れているではないか。それ以上の証明は、パンツ脱ぐぐらいしか思いつかん』
……よく考えなくても、相当ひどいこと言われてるぞこれ。ISが女の証明だったら、アタシ今女で無くなる可能性もあるよね。
『まぁ、ヘンな揉め事ばかり起こすなよ?通信終了』
ISのもつ個人間秘匿通信が切断され、周囲の様子に気を配る。あたし以外には、訓練用ISの打鉄が甲冑よろしく綺麗に仕舞われているのと、切羽詰った顔の一夏がいるだけだった。
「「はぁー」」
意図したわけでも無いが、同時にため息をつく。一夏のため息には疲れと緊張が色濃く出ていた。
「よう一夏、お疲れ気味じゃねーか」
「まぁ、流れで俺も戦うことになったからなぁ。……どうしてこうなった」
「どーしてこーなったじゃねーよ。しばらくアメ舐められそうにねぇじゃねぇか」
結局あの後、昼休みに職員室へと連行され、ボディチェックを受けることになった。そのせいで、服のポケットというポケットに隠していたチュッパチャップス二十本、個別包装タイプのアメ三十個、全部持っていかれた。一応ストックは持ち込んではいるけど、しばらくポケットに忍ばせるのは避けたほうがいいだろう。はぁ。
「そこなのかよ。もっとこう、戦うことに不安とかないのかよ」
「おま、アメだアメだって馬鹿にするけどなぁ。とりあえず持っておけばいろいろと便利なんだぞ」
「たとえば?」
「町で迷子ってお金もないとき、アメを舐めてれば死ぬことやガス欠することはない」
「……はぁ」
なんだよ。その残念なものに遭遇したようなため息は。
「そりゃオマエ、そうなるのはよっぽどの方向音痴だろうが」
「そうでなくても、動いた後って甘いものほしくならない?」
「それは一理あるけどな。てか、来週までどうしたもんだか。うあー」
頭を抱えるようにして一夏は呻いた。
「なっさけねぇなオイ。アレだけクチの回るおまえだったら、ワンチャンあるかもしれないってのに」
「そうなの?」
口が回るってことは、頭の回転は速いってことだろう。頭の回転が速ければ、それだけ戦闘中にアレコレと見えてくる可能性だってでてくる。あくまでもトロい奴と比べれば、ってことだけどさ。
「操縦についてはアタシが教えてやる。一週間もあれば、まぁ動かせるようにはなるだろ」
そういうと、一夏はアタシの目を見ながら、何か探るような調子で話しかけてきた。
「そういや綿貫さんは―」
「音羽でいいよ。あたしだって一夏って呼んでんだから」
「そういや、いやに自然と下の名前呼んできたな」
「なんだ?下の名前で呼ばれんのはいやか?だったらやめるけど」
「いや、いいよ。音羽はどこかで乗ってたの?IS。やっぱり、日本の代表候補生とか?」
「おまえ、自国の代表候補生も把握してないのかよ」
「そうだなぁ、千冬姉も俺にIS見せようとしなかったし、俺もあんまり興味なかったから……」
世界一の織斑千冬が、弟クンに自分の強いところを見せようとしなかったってことだろ。アタシならドヤ顔で見せに行きそうだけど、何だってわざわざ遠ざけるように仕向けたんだろう。
「そっか。いまだったら代表候補生、その筆頭は更識簪って言うんだ。覚えてやってくれ」
「お、おう。で、音羽自身はどうなんだ?」
「アタシ?アタシは――そうだね、元とでも言えばいいのかな?」
「元?何だって――」
『こちらブルーティアーズ、準備、よろしくてよ』
時間だ。いろいろと話してみたいこともあったけど、まぁいいか。その気になれば分かってしまうことだし。
『あーはいはい。こちら鬼鉄(おにがね)。いつでもどーぞー』
喋りながらカタパルトへと移動し、到着の流れでISを展開する。ほんの一瞬だけ光の壁がアタシを覆い、そのまま装甲を形成していく。
「んじゃ、いってくる」
「お、おう。がんばれよ」
どこかたどたどしい一夏を置いて、アタシは斜陽が差す、狭くて広いアリーナへと放り出された。
―四月夕方 第三アリーナ―
ブルーティアーズをアリーナ中心近くに移動させていると、少し遅れて相手がやってきた。
「……その機体は?」
「んー?あぁ、『鬼鉄(おにがね)』ってんだ。打鉄知ってるだろ? あれのバージョンアップとでも思ってくれ」
目の前にいるのは、全身装甲(フルスキン)のIS。つやの無い銀灰色の装甲には、肌の露出がどこにもありませんでした。ただ、胴体部のボディラインから、中身が彼女であることは想像できます。およそ顔と思わしきところに彼女の顔はなく、鬼をあしらったような仮面――日本鎧を彷彿とさせる装甲の意匠と合わせると、面頬といったほうが正しいのでしょうか?――がありました。「オニ」の名に違わず威圧的で、しかしながら攻防の柔軟さをうかがわせるデザインはまるで……
「まるで、『飢えた狼』ですわ……」
「なかなか気の利いたコメントくれるじゃねぇか。さすがイギリス人だな」
スイッチが入ったような彼女の声は、ハイパーセンサーを使っても読めないほど淡々としていて、ほめられて気を良くしたのか、皮肉に皮肉を返したのかもよめない。
アレを、あんな殺気だったものをISと呼ぶのであれば、私たちが今まで見てきたものは……。
いいや、相手の気迫に飲まれるな。相手は見るからに近距離で戦うタイプ。ブルーティアーズの敵ではありませんわ。
「そういやアタシ、アンタの名前聞いて無かったよな?」
「そ、そういうのは、自分から名乗るのが礼儀で無くて?」
「じゃぁさ、こういうのはどうだ?この勝負に負けたほうが名乗るってのはどうだ。もともと勢いで決まったような、あんまり意味のない勝負だしさ。これぐらいの理由付けはいいだろ?」
この言い方、どうも彼女の中では私の名前のほうがクラス代表の座よりも大事なものであるようです。であれば、何故この場に立っているのか。やる気がないなら、とっとと私に譲ってくださればいいのに。
「では、それで参りましょう。ですが……」
言葉を不意に切って、私は彼女との距離を一気に開く。
「先に名乗るのは、貴方のほうです!」
十分な距離を開けたところで、私はビットを展開し、一気に彼女を包囲する。彼女は飛びのくでもなく、何も言わずにこちらをじっと見ているだけだった。
―四月夕方 第三アリーナ オペレーティングルーム―
『先に名乗るのは、貴方のほうです!』
いうや否やブルーティアーズは後方に一気に距離をとり、ビットの『ブルーティアーズ』を四方に広げる。
そのビットの布陣は、火線が被ることもなく、退避するにも大なり小なりダメージを受けなければならないようだった。
「なるほど、あれがウワサのBTシステムか」
完全に遠隔操作によるビットのコントロール。オルコットインダストリーは第二世代の頃から有線式ビット兵器を研究していたが、まさか無線式にまで進化しているとはな。
「おい。あまりその調子で喋るのはまずんじゃないのか?」
隣で千冬が、私にそう問いかけてくる。調子というのは、口調の話だろう。山田麻耶はのんびりとした調子で話を進めていく。いまの私の話し方とずいぶんかけ離れたものだというのは自覚している。
「本当はな。だが、ここに盗聴器などの集音システムがないのは承知の上だ。変に動かなければ、ばれることもないだろう。それとも、こういう喋り方のほうがいいですか?」
最後だけ、山田麻耶の喋り方をして、千冬に問う。よっぽど違和感があったのかよく分からないが、その場で首を振った。
「急に返られると、戸惑ってしまうな」
「私だって、作った口調ではつかれてしまう。お前の前のときぐらい、自分の調子で喋らせてくれ」
私は、いまは山田麻耶だ。おっとりしていてどこか抜けたところのある、少し頼りなさげな教師。
「……後々困ることになるのはお前だろうがな。それより、綿貫はどうしたんだ?先ほどから機体が少しも動いていない」
確かに、いわれてみれば全く動いていない。五つの銃口が狙っているというのに、身体に緊張した様子はなく、ただ静かにそこに浮いているだけだった。何もない様子を不審がっているのか、ブルーティアーズのほうも撃ちだすことはなく、様子を伺っていた。
「そうだな。おそらくはスペックを見極めようとしているのだろう。彼女が本来使っていた鬼鉄から、だいぶ能力を下げられているからな」
「そんなに違うのか?軍用ISと競技用ISは」
千冬の問いに、私はこう返した。
「……児戯だよ。こんな戦い」
かつて千冬と共にモンドグロッソを目指して切磋琢磨していた日々を思い出す。いろいろと厳しいこともあったが、アレはまるで学校の部活動の延長のような感覚でいられた。だが、いまの私から見たモンドグロッソというものは、やはり『ISは強力な兵器たりえる』という認識を忘れてしまう程度には、なまぬるい。
「……そうか」
千冬はぼそりとそう呟く。あきらめが混じったその声に、私は若干戸惑いを覚えたが、気にしている暇はなかった。
「試合、動いたぞ」
アリーナのほうを見ると、音羽は鬼鉄に搭載された『バリアアンプ』を器用に使い、ビット包囲陣を突き抜けていた。
「セシリア・オルコットといったか。あの娘。音羽に時間をやってしまったことを後悔するぞ」
「なぜそういえるんだ?」
「決まっているさ。私の娘だからな」
千冬は一瞬だけ怪訝な顔をしたが、すぐにその視線を興味ありげに音羽のほうへと送った。
☆
四方八方の退路はふさがれていたが、それはあくまでも火線での話。四基では退路を完全にふさぎきることなんてできない。それでも、この陣形で一斉射撃されてしまえば、ISのシールドバリアの仕様上、どう動こうとも多かれ少なかれダメージを受ける。
普通だったら、逃げ切るには多少の出血は覚悟しないといけない場面だ。
「バリアアンプ。シールドバリア機能停止」
『了解。シールドバリア機能停止』
だったら、シールドバリアなんてなければいいのだ。鬼鉄に搭載されたバリアアンプなら、それができる。普段は展開箇所を思うだけで、ヤタが上手いことそのイメージに合わせてくれるのだが、機能のオンオフには宣言が必要だった。
ようやくやってきた一斉射撃を左上後方に飛びぬける。少しだけ身体をひねったところ、肩部装甲を少しなでた程度で済んだ。ビームのエネルギーによって肩装甲が赤くなっていたが、ほんの先端のごく僅かなところだ。熱が広がったとしても、火傷に至るほどのものではない。鬼鉄の装甲はバリアの制御装置の意味もあるが、今はバリアを切ってエネルギーの消費を抑えることのほうが重要となる。
回避直後、ちょうど金髪とアタシの間にビットが挟まるように移動する。こうすることで、ビットもISも肉眼で捉えることができる。ISのハイパーセンサーを用いれば、普段なら死角となる背後や真上だって視ることができる。でもそれはあくまでも、すごすぎるセンサーのせいで視えているように錯覚しているだけらしい。もしも視覚センサーを欺瞞できるだけの装備がビットに内蔵されていれば、背後からの急襲を受けかねない。
「ちっ……」
集音センサーが金髪の舌打ちを捉える。本人も気づいていなさそうなほどに小さな音だったが、ばっちり集音できていた。顔や声音に出ているように、この布陣は好きではないらしい。一見すると複雑な軌道を取りながら、ビットをなんとか背後に回らせようと動かしている。それだけでも最終的な軌道はある程度読めてしまうものだった。
(背後からの一撃は、あんまり好きじゃない)
鬼鉄は近距離戦闘向けの装備が充実しているが、中・遠距戦を戦い抜くには少々心許ない武装しかない。
『「晴嵐」「晴天」を同時展開。ぶっぱですね。わかります』
「すこし、黙れっ!」
右手には12.6mm口径の『アサルトカノン:晴天』を、左手には7.62mm口径の『サブマシンガン:晴嵐』を展開する。機体を後退させながら、追いすがってくるビットに対して銃弾を撃ちまくる。
現代火器の中でも、人がぎりぎり持てるレベルの小口径だ。めくるのに戦車砲を引っ張り出すぐらいはしないといけない、ISのシールドバリアにはあまり効果はない。ただ、この二つの弾、特に12.6mmなんかは対物ライフルにも使用されている弾薬だ。ビットを使用不能に、ないしビットにダメージを与えるぐらいなら問題ない。
「このおぉっ!」
金髪のほうからかなりイライラしているようで、淑女がどうたら抜かしていた奴とは思えない声が聞こえてくる。ここから金髪のところまで、目算で200mちょっとはある。センサーの補佐があるとはいっても、空間を把握する必要のあるこのテの武器を操作するのは大変だろう。実際、アタシが銃口を向けたビットの挙動も若干遅くなっていて、さっきから2、3発被弾して、若干変形してから動き始めている。
(そういや、なんで距離をつめてこないんだ?)
金髪だってバカじゃない。ただビットを動かすだけじゃなくて、ちゃんと、偏差まで織り込んだ丁寧な狙撃を打ち込んでくる。と言っても、銃口の向きと射撃のタイミングがバレバレだから、センサーを使わなくても大まかな弾軌道を割り出すことはできる。
そこにISの機動性が加われば、避けることはそう難しくはない。要は遠すぎでどうにもならないのだ。相手もそれは分かっているだろうに、こちらとの距離を埋めようとはしてこない。
(……まさか)
アタシがひとつ思いついた矢先、不意にビットからの追撃が途絶えた。するとビットはこちらに背を向けて、金髪のほうへと一目散に飛んでいく。おそらくは追撃のための隙を見せることで、金髪の有効射程内へと持ち込む算段なのだろう。意図は丸分かりで稚拙な手ともいえなくはないけど、だからこそアタシが誘いに乗らなければ、ただのにらみ合い――いや、バリアに対する攻撃手段がなくなるこちらのジリ貧だ。
それも面白くない。
「ヤタ、いまのお前にできることは何だ?」
『たくさんあります。改造後にできなくなったことを数えたほうが早いくらいです』
「いつだって、できることのほうに目を向けていこうぜ」
『前向きですね。現状、スペック制限のほか、できないからといって不都合が生じるような機能は削除されていません。ある程度なら、いつもどおりに戦闘がこなせるでしょう』
「ならいいか。うし、切り込むぞ!」
『了解。シールドバリア再稼動。バリアアンプ、レディ』
今度はアタシの番だ。ビットを追うように突撃をかける。反転しているビットは打たれ放題だったが、致命的な一撃は避けるように操作されている。爆散も墜落もしないで金髪の元にたどりつきそうだった。
そのうちにビットそのものへの攻撃より、金髪のほうに攻撃を加えたほうが手っ取り早いぐらいの距離に達する。
『篠突を展開。高周波振動スタンバイ。シールドバリア、背面集中』
「イグニッション!」
高周波振動薙刀『篠突(しのづき)』を展開し、瞬時加速によって強烈な加速を行う。
一度放出したエネルギーをもう一度取り込み、圧縮して開放する。それによって得た慣性エネルギーによって爆発的な加速を生み出すのが瞬時加速だ。
放出したエネルギーを一度取り込むところがミソで、その際には機体から放出したもの以外のエネルギーをも巻き込んで圧縮する。つまり、スラスター周辺のエネルギーが多ければ多いほど、加速もより強烈なものとなる。今回の場合は、背面のスラスターの周辺に、バリアアンプでシールドバリアのエネルギーを集中させることで、より速くなっているということだ。
予想よりも突撃が速かったのか、センサーでその速度を感じ取った金髪はぎくりとした様子だった。だが、それを無理に振り払うでもなく、若干こわばってはいたものの、余裕の笑みを浮かべた。
「っ!」
その笑みに得体の知れない気味の悪さを感じ、とっさに減速をかける。いかに慣性をコントロールするPICといえども、爆発的に発生した慣性を完全に抑えきるのは難しいらしく、ちょうど車がブレーキかけてもすべるように、アタシの突撃はとまらなかった。
「ブルーティアーズが、ビームビットばかりだと思いまして?」
そういって金髪は、腰に下げていた装飾をまわして、こちらに向ける。アレは……
「ロケットかよ!?」
静かに点火され、程よい加速でこちらに向かって突っ込んでくる弾頭をみて、初めてその正体をつかむ。
至近距離で爆発物とか、下手したら自分も巻き込まれるってのに、バカじゃないのか?!
「ぬおぁ!舐めんじゃねぇ!」
『機体負荷60%超。背面装甲に亀裂発生』
とっさに身体をひねり、篠突の刃をしたから上に振り回す。運よくロケットを引っ掛けることができたらしく、程よい手ごたえの後、後方で爆発が起きた。
瞬時加速中、特に背面にエネルギーを集中させた今回の場合、前面バリアはほとんど張っていないといっていい。そのせいで機体は空気抵抗をモロに受ける。その負荷に耐え切れず、鬼鉄の全身装甲が割れたようだった。
「ワンモア、ですわ」
「っ!!」
減速を加えていたとはいえ瞬時加速の最中だ。機体への負荷の関係上、第二波をもう一度切り払うことはできないし、この姿勢では避けることもままならない。加速を大分殺せてはいるが、それでもロケットに突っ込んでいく形であることは変わらない。直撃したら、一撃でいろいろと持っていかれるだろう。
経験上、バリア濃度150%というのは、だいたい物質兵器を防ぐときの目安となる値である。相手のロケットが貫通力に優れたものでなければ、バリアに触れた時点で爆散するだろう。ただし、バリア濃度を濃くすると、その分着弾時のエネルギー消耗が増える。ここは温存していたほうがいいだろうから、さらに調整を施す。展開面積を制限し、弾頭の直撃を防ぐことだけに集中する。
『正面方向、濃度150%でロケット軌道上にピンポイント展開』
件のミサイルをバリアあて、機体本体への直撃を免れることはできた。ただ、あまりにも面積を制限しすぎたために爆風が回折し、アタシを包むように覆った。
「ぐうっ……」
『背中にⅠ度の熱傷。数週間痛みますが、後遺症は残りません』
全身装甲の利点として、こういう爆風にさらされたとき、露出がないから肌をやられることがないこと、吸気によって肺を焼かれることがないことがある。
ただ、先ほど背面装甲を破損したせいか、背中にするどい痛みが駆け抜けた。おまけに爆風の熱や赤外線、音、衝撃、電磁波などによって、ハイパーセンサーにノイズが走る。
そのほんの一瞬だって、IS戦では致命的な隙になりえる。アタシはノイズと爆煙の向こうに、金髪の姿を見失った。
『バリア濃度300%。守備範囲、全方面』
その一瞬に重ねるように攻撃してくるのは分かっていたことだ。ただ、どこからどの程度の威力で攻撃してくるのかが全く見当がつかない。仕方がないから通常と同じ球体状に、シールドバリアの濃度を最大まで高め、受けきるしかなかった。その判断を下した直後、アタシの周囲は光に包まれる。金髪からの一斉射撃以外にありえない。
『真上です』
ハイパーセンサーがイカレたのは一瞬だ。それでも、着弾してこちらがひるんでしまえば、後はグミ撃ち的な要領でガンガン撃ち込んでいけばいいだけになる。フリ○ザやセ○なんかはともかくとして、少なくともアタシはそれをされたらただではすまない。
それを逃れる機会があるとすれば、一斉射撃直後のこの空隙だけだ。
センサーの復帰を待つのも惜しい。ヤタからの情報を頼りに、最も威力の高い攻撃をかましてくれた真上へと突撃をかける。
「っ!?なんで……」
ビンゴ。そこには驚愕の二文字が顔に書かれた金髪がいた。最後の最後、篠突の一発が入れば、ほとんど自動的に勝利が決まる。雪片にも負けないほどの火力を、この高周波薙刀は秘めている。アタシは特に考えることもなく、薙刀で金髪の胴を思い切り薙いだ。