推しの子 Reboot~三原色の子達~ 作:フロストランタン
アイのマンションが襲撃されたあの事件から1ヵ月が過ぎようとしている。
アイがストーカーと化したファンに刺されたというニュースが流れた直後は、世間では概ね同情的反応が目立った。
「結成からこれまで一緒にやって来ましたけど、アイのあんな姿を見たのは初めてで。メンバーの皆の前でもいつも天真爛漫で……なのに、あのアイが……もう二度とステージに立てないかもって……怖くなって……」
入院直後にアイを見舞った草創期のメンバーは翌日、声を震わせながらその胸の内を語っていた。そのインタビューがニュースで流れ、彼女の悲痛な声にはファンのみならず多くの人々に強く事件を印象付けた。
ファンからは心配と励ましのメッセージが送られ、中にはアイは復帰出来ないのでは、と悲観する声もあった。更にはそれを煽るように『B小町』解散をまことしやかに吹聴する者も現れた。
そうした潜在的な不安の捌け口を探すかのように、世間では様々な論争が起き、各芸能事務所の防犯対策徹底やストーカー規制の早急な法整備が声高に叫ばれる事となった。
ところが、当のアイは僅か3週間で退院、更に今日には生放送番組へ出演し、世間をあっと驚かせたのである。
「大変だったねぇ……もう大丈夫なの?」
「いやー、流石にあれはヤバかった……。でも今は元気そのもの、絶好調だよっ!」
心配げな司会者の質問に、アイはあごに手を当てて少し神妙な顔をした後、とびきりの笑顔でサムズアップして見せる。
アイの復帰を心待ちにしていたファンは、歓喜に沸き上がった。
「────じゃあ、そろそろ曲の方に移っていただきましょうか。……ホントに大丈夫?」
「もっちろん☆」
最後にもう一度確認する司会者に、元気よく立ち上がってアイは応えた。
サインはB チュッ!
アイは自身も言った通り絶好調といった圧巻のパフォーマンスを見せ、会場のボルテージは最高潮。まさに最強アイドルの復活だ。
「ママが歌って踊ってる……」
「うん」
僕とルビーはテレビ画面に向かって並んで座り、アイの生放送を
(本当によかった。こうしてまたアイがステージに立つ姿が見れて)
感慨に耽りながら画面を眺めていると、横からグスグスとすすり泣くのが聴こえる。気持ちは分かる。僕も胸の奥にジーンと来るものがある。
「ほら、ティッシュ」
「ぐすっ……ありがど……」
チーン!
「ルビー、お前がもし危ないときには……俺が助けてやるからな」
「えっ……どうしたの、急に?」
変なものでも食べたのかと言いたげな目で見てくるルビー。僕は視線を画面に向けたまま応える。
「別に。お前は……お前も、僕にとってたった一人の大事な妹って事だよ」
「……っ! うん……ありがと……」
それから僕達は特に言葉を交わすでもなく、アイが帰って来るまで静かに過ごした。
(まだ全部終わったわけじゃない。まだ気を抜いちゃ駄目なんだ。二人は僕がこれからも守っていく……!)
まだ事件の裁判は始まってもいない。カミキが捕まったという話も出ていない。ただ少しの猶予を得ただけだ。僕は一人、決意を新たにした。
アイは活動復帰しました。
感動に涙するルビーと、さりげなくティッシュを渡すアクア。
こういう少しほのぼのした話が続けばいいんですが。
アクア達の記憶から消えてしまったエメ。再会する日は来るでしょうか?
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こない
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くる(一年以内)
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くる(小学生になってから)
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くる(中学生になってから)
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くる(高校生になってから)
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くる(大人になってから)