大学病院
とある病室
その病室には30代程の女性と男性が椅子に座り、ベッドで横たわっている5歳の子供を見守っていた。
特に女性、母親の目には真新しい涙の跡がある。
父親は悔やんでいるのか、血が滲みでる程強い力で握り拳を作っていた。
龍司「夕姫・・・何か食べよう。昨日から何も食べてないはずだろう?」
夕姫「・・・私は良い。食欲ないもの。それにこの子が目覚めるかもしれない。それまでここを離れるわけには行かない。」
龍司「・・・。」
龍司は何も言えない。
だが、それでお前が倒れてしまえば本末転倒だろ。そう思った。だが・・・
言いたくても言えなかった。
夕姫の気持ちは痛いほど分かるから。
夕姫はあの時、創破に買い物に行かせてしまったことを
とても後悔している。
創破がこんなことになってしまったのは自分のせいだと。
何とか、夕姫の気持ちを落ち着かせたが、時間の問題である。今、創破は2日間眠り続けている。
もし、自分の子供が死んでしまったら・・・・
夕姫の精神は完全に崩壊してしまう。
その為に、自分が何とかしなければならない!
そう思ってはいるが・・・・
ふとした瞬間に現実から目を背けてしまいたくなる・・・
龍司も夕姫も、創破が目覚めることだけを願っていた。
そんな時に、病室の扉が開いた。
麗日「あっ!こ・・こんにちは。」
フルーツが入っているバスケットを持った麗日とその両親が入ってきた。
龍司「あ・・麗日さん。また、来てくれたんですか。」
麗日母「えぇ、もちろん。あの子は私たちの命の恩人なんだから。」
麗日父「それに、お茶子が毎日のように『早く!そうくんの所にいくよ!』って急かすからなぁ。」
麗日「お父ちゃん!!何で!言うんや!」
小さな子が大人にツッコミを入れてる
夕姫も龍司もそれに釣られて笑ってしまった。
病室の空気が少し良くなった、そんな感覚がした。
夕姫「お茶子ちゃん、毎日のように創破のお見舞いに来てくれて、ありがとうね。」
龍司「私も妻も君から元気をもらっているよ。ありがとう。」
麗日「そんな!むしろ、お礼を言わなきゃいけないのは私の方!いつもいつも、そうくんに助けられてばっかで、今回もそうくんが助けてくれなきゃ、私も父ちゃんも母ちゃんも・・・」
夕姫「お茶子ちゃん、これからも創破と仲良くしてくれる?あの子、心も身体も強い自慢の息子なの。きっと直ぐに目を覚ましてくれる。その時に、いっぱいおはなししてあげて。」
この子は強い。お茶子ちゃんは助けられてばっかりと言われていたけど、創破もあの子に助けられて、今の創破があるのだ。
彼女の頭を優しく撫でる。
麗日「!はい!!」
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電車の脱線事故は世間に大きく知れ渡っていった。
事件の犯人は●●鉄道会社の車掌
「毒霧 眠増(どくむ みんぞう)」
個性《催眠ガス》
自分の身体から催眠効果のあるガスを噴出することができ、集中すれば無臭のガスも作り出せる。
ただし、効果は30分で耐性によっては効かない人もいる。
取り調べで明らかになったこととして・・・
彼は車掌の立場上を利用し、電車の速度を上げて大勢の人たちを道連れに自殺を図ろうとした。
数ヶ月前、彼の家は敵の攻撃により破壊され、その時に家の中にいた彼の妻子は亡くなってしまった。
その時の報道が敵を捕縛したヒーローのことを長く書き綴り、妻子のことについてはほとんど触れなかったことを憎み、自分と同じ気持ちを味合わせようと今回の犯行に及んだ。
毒霧 民増(どくむ みんぞう)は護送中、奥歯に埋め込んでいた毒薬を飲み、自殺してしまった。
しかし、電車は脱線したはものの街に突っ込むことはなく電車の中にいた乗客も全員無事だった。
・・・・・・・ただ、1人を除いて、
創破は直ぐに病院に運ばれた。
運ばれた彼の状態は酷いなんてものではなかった。
彼を見た医者はこう語る、
「全身の骨は折れ、内臓の損傷も激しい。出血も多い状態です。5歳の子供がこんな大怪我を負ってしまうなんて考えられません。医者として言ってはならないですが、何故このような状態になっても生きていられるのか不思議としか言えません。」
警察やヒーローが電車を捜査し、●●駅あたりから
規定速度を大幅に超えて電車を運転したことが分かった。
また、何故かは分からないが電波妨害も起こっていたという。これは毒霧自身も知らないの一点張りだったらしい。
また、鉄道会社も何故かその時は、電車の異常に気付かなかったらしい。
だが、そんな都合の良い話しはあり得ないと警察は会社職員の不備・指導不足を喚起した。謝罪会見も開かれ、賠償金が今回の被害者全員に支払われた。
そして、電車内の監視カメラの映像には
ただ1人、意識のある子供、創破の行動が映っていた。
彼が独り言をよく言っている映像と
身を呈して電車を止めようとしている映像だった
その映像を見たヒーローや警察は驚いた。
まだ、5歳である筈の子供が
こんな無茶をするということを。
普通の子供であれば泣き出し、その場に立ち尽くす筈だった。
しかし彼は、泣き声を上げず、携帯を取り出し、助けを呼ぼうとしていた。繋がらないと分かれば、何とかして電車を止めようと行動していた。
これが、5歳の子供に出来ることか?
疑問が浮かぶ中、この男だけは違った
オールマイト「ハァー!ハァッ!ハァッ!ハァッ!何をそんな難しい顔をしている!」
No.1ヒーローオールマイトだ。
塚内「しかし、普通の子供がこんな行動とるかい?この子には何かあるのかもしれない。」
オールマイト「たとえあったとしても、それが何だ。あの子は凄い子だよ!私が保証する!」
オールマイトの言葉に皆が驚く。
塚内「どうして言い切れるのかい?」
オールマイト「あの子に会ったのだよ。あの不思議な光の柱が現れた時、私は真っ先に向かった。到着していた時には消えていたけどね。その近くに、あの子と脱線していた電車があった。」
警察・ヒーロー「「「!!!」」」
オールマイト「血まみれだった彼を見つけ、急いで抱き起こしたが、彼はね?自分の心配より、敵を拘束していることと電車に乗っている友達の心配をしたのだよ。」
警察・ヒーロー「「「・・・・」」」
オールマイト「彼はまだ5歳、にしては大人のように見える、だが、彼は命懸けで電車を止め、自分の身を省みず、必死に他者の心配をした。彼の心はまさしく、
ヒーローであると私は思う!」
???「・・・・・ちょっとだけ、会いに行きますか。」