麗日お茶子side
USJ事件から一晩経った。雄英高校は明日まで臨時休校となったため、私は一人暮らしのアパートで過ごしている。日課としている朝のランニングを終わらせ、朝食を取っている。
お茶子「(・・・そうくん、大丈夫やろか・・・・。)」
そうくんがあの脳ミソ丸出しの敵を倒した後、彼は糸が切れたように倒れてしまった。
その姿があの時の光景と重なってしまった。
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幼少時代
あの………昔の…………忘れたくても忘れられない電車脱線事件のことを思い出してしまった。
あの時、私は電車の中で気絶していたあの事件の全容を知ったのは病院で目覚めた後だった。
目が覚めた後、すぐに視界に入ったのは病院の天井と心配そうな顔を浮かべている、父ちゃんと母ちゃんであった。
私が目を覚ましたのを見ると2人は涙を浮かべ、良かった良かったと言いながら何度も頭を撫でてくれた。それからお医者さんが来て、身体に異常が無いか検査を受けた後、異常なしと診断された。
父ちゃんと母ちゃんも異常は無かったみたいで明日、退院することになった。
異常が無いことに3人で喜んでいると、ふと思い出したのだ。
お茶子「そうくんは?」
乗っていたそうくんはどうなったのか、無事なのか?
父ちゃん母ちゃんに聞いた途端、2人はさっきの喜んだ顔と打って変わり難しい顔を浮かべた。
そして、父ちゃんが何か思い詰めたように口を開き、そうくんの状態を教えてくれた。
それは信じられないものだった。
そうくんがこの事件の敵を1人で撃退したこと、身体を張って電車を止め、町への被害を防いだこと、そして
そうくんは今も意識不明の重体でこの病院に入院しているということ。
その事を聞いて、私は涙を流すことも立つ気力もなくなってしまい、ただ頭の中が真っ白になってしまった
私の初めての友達であり、夢を見つけてくれた彼が、死んじゃう・・・・・・そんな・・・・・・そんなことって・・・・。
お茶子「嘘や………そんな……そうくん………。」
麗日母「お茶子・・・・。」
お茶子「そうくんは………とっても強くて……とっても優しくて………とっても………とっても……」
麗日父「お茶子。」
私の身体に温かいぬくもりが伝わって来た。父ちゃんが私のことを優しく抱き締めてくれていた。
麗日父「大丈夫やお茶子。創破くんが強い子のはお前がよく知っとるやろ。そんな友達のお前が創破くんが目覚めるのを信じないでどうするんや。今、あの子の為に俺らが出来ることをやろう、お茶子。」
お茶子「・・・出来ること?」
麗日父「そうや、皆でお見舞いに行こう。そんで『助けてくれてありがとう』ってお礼を言おう。」
父ちゃんの言葉を聞いてハッとした。まだ彼は死んだ訳ではない。何を彼が死んだことにしているんだ。そうや、私はそうくんの友達なんや、友達を信じないでどうするんや。
私は自分の目を覚まさせる為に、両手でパチン!と自分の頬を叩いた。
お茶子「お父ちゃん、ありがとう。私、そうくんのお見舞いに行きたい!」
麗日父「せやな!それじゃあどこかでお菓子でも買って行くか!」
お茶子「うん!」
麗日母「お茶子は創破くんが好きなお菓子知ってる?」
お茶子「え~~っとね~?たしか────」
そんな会話をしながら私たち家族は退院した後にそうくんが好きなお菓子を買ってそうくんの所へお見舞いに行った。
病室の中には幼稚園の時に見かけたそうくんのお父さんとお母さんが心配そうな表情でベッドに寝ているそうくんを見守っていた。
2人に挨拶し、お見舞いに来たことを告げるととても嬉しそうにありがとうと言ってくれた。
ベッドに寝ているそうくんを見る。
お茶子「!!!!」
まだ、幼稚園児だった私でも重症であると一目で分かる程の痛々しい姿であった。
口には呼吸器が付けられ、目と口と鼻以外には満遍なく包帯が巻かれていた。また、腕や脚に巻かれている包帯の隙間から細長いチューブが何本も刺さっている。
ミイラの死体と言われてもおかしくない状態であったのだ。
お茶子「そ、そうくん………」
こんなにボロボロになってしまう程の大怪我だったのかと私は衝撃を隠せないでいた。
その時、私の誰かの手が乗った。振り返ると、そうくんのお母さんの手であった。
夕姫「ありがとうね、お茶子ちゃん。創破のことを心配してくれて。私、とっても嬉しいわ。」
私に目線を合わせるためにしゃがみながら優しい言葉をかけてきてくれた。すると、そうくんのお父さんも
龍司「私も妻も創破がいつ目覚めるかで頭が一杯だったんだ。だけど、君が来てくれて創破が守り通してくれたものが確かにここにあるんだってことが分かったんだよ。私からもお礼を言わせてくれ、ありがとう。」
お茶子「そ、そんな!・・・わ、わた、」
その言葉を聞いて、ずっと堪えていたものが一気に目から溢れだした。
お茶子「ッッ・・・あ、っ!・・ぅあ!・・・ッッ!!」
人前で泣くのは恥ずかしいとか、そう言うのは一切忘れてただ気持ちが晴れるまで涙を流し、泣いた。
そうくんの両親は突然私が泣いてしまったことで慌てふためいてしまったが私や父ちゃんも母ちゃんも大丈夫であると必死に伝え、何とかその場は落ち着いた。
それから時間が許す限り、私達は幼稚園での出来事やそうくんについてのことを中心に会話を楽しんだ。
それから時間が空いてるときは、父ちゃん母ちゃんと一緒にそうくんのお見舞いに行った。新聞やテレビとかの報道機関が病室の前にいたことで中々入れなかったこともあったが、それでもそうくんの顔を一目見たかった。
数日後、そうくんのお父さんからそうくんが目を覚ましたと連絡を貰った。直ぐに病院へ向かおうとしたが、そうくんの身体検査や警察の事情聴取などもあるため、会うのは退院後となった。
そうくんが退院してようやく直接会えたのは幼稚園であった。
そうくんの退院祝いとして、組の皆で祝おうということで自分だけ直接家に行くのは気が引けてしまい、目覚めたそうくんに会えたのはその日だった。
退院したそうくんは事件前と変わらず、元気な姿で私たちの前に現れてくれた。そうくんと組の皆で遊んだのは本当に楽しかった。
でも、一番印象に残っているのはそうくんの夢の発表だった。
ヒーローになるという夢
私と夢が同じでとっても嬉しかった。
きっとそうくんだったら本当にヒーローになれるんだと私は確信していた。
だったら私も彼に負けないぐらい立派なヒーローになるんだと私は心に決めた。
心に決めた
筈だったのに
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現在
お茶子「(ヒーローになるんやったら・・・いずれこういうことも出てくるんやって思ってたけど・・・。)」
敵との戦闘、それはヒーローになるにあたって避けては通れない道であるということは自分自身も理解していた。だけど、そうくんがあの時倒れてしまったとき、またもや頭の中が真っ白になってしまった。
だけど、魔理沙ちゃんがそうくんの名前を大声で叫んだことでハッとし、直ぐにそうくんの傍に向かった。
あの時の魔理沙ちゃんは誰よりも早くそうくんのために、私や梅雨ちゃんに指示を出して行動していた
私とは大違いだ
お茶子「うち、何でこんなに弱いんやろ。」
これじゃあ、昔と何にも変わっとらん……………
私の大切な幼馴染みが戦っていたのに倒れているのに、私はただ見ていることしか出来なかった。
あの時、彼に負けないぐらいの立派なヒーローになるんやって心に決めた筈なのに
彼と敵との戦いは、凄まじいの一言だった。
遠くからしか様子が見えなかったが、それでも、USJ全体に響いた爆発音や冬のような寒さははっきりと感じていた。
小さい頃から一緒にいて、同年代の子よりも強い部類にそうくんは入っていると思ってはいたけど、あそこまで強くなっているなんて思わなかった。
私じゃあ、そうくんの助けになれへんのか、そうくんに守られっぱなしなのか?
私じゃあ……………そうくんにふさわしくないのか……………
お茶子「………あーー!もう!!何をくよくよしてんねんうち!!しっかりせんと!!こんなことボヤいていても仕方ないやろ!!」
私は立ち上がりスポーツ着に着替え、公園に向かった。
お茶子「(もっと走り込みや!!それから個性も鍛えなアカン!!絶対に!!もっと強くなる!!もう、そうくん1人にあんなことさせないために!!)」
そう、思いながら私は玄関を飛び出した。
次回は緑谷と爆豪の話です。
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