そこは、いつか魔理沙とパンドラが話し合いを行った場所。青空と草原がどこまでも広がっている美しい空間……そこは『Re:ゼロから始まる異世界生活』に登場する『強欲の魔女』と呼ばれる女、エキドナの『城』と称される『夢』の中……即ち精神世界である
だがそこにいるのはエキドナではなかった
パンドラ「お疲れ様です♪菜月昴内閣総理大臣さん♪」
『虚飾の魔女』パンドラ……日本の内閣総理大臣は菜月昴であるが、それは人間ではない。ラムやレムと同じ、パンドラの分身体である
パンドラ「日本での重婚制度。決まったようで何よりです」
菜月昴『いえいえ~、会議は殆ど静かに淡々と進みました。それこれも全てパンドラ様のお力添えがあったからです、ご謙遜を』
パンドラ「私はただ、何も争わさず平和に誰も傷付くことのないようにしただけです」
カップの中に淹れてあるカモミールティを飲みながら何てことのないように答えるパンドラ。その姿は誰がどう見ても女神であると感じるだろう
一旦カップを置き、彼女はテーブルに置いてあるスマホを見る。それは今日起こった日本のニュースを順位化したものであり、1位には『雄英体育祭』に関することが記載されていた
パンドラ「マスコミにもこちらのことはあまり取り上げられていませんね」
菜月昴『ですね……殆どは雄英体育祭かヒーロー殺しの話題となっています』
パンドラ「とても喜ばしいことです。彼の活躍する姿が世界中に映されたのですから。特に最後の魔理沙との闘いは彼の本気の力を見ることが出来たのです」
決勝戦において、パンドラは予めラムとレムに念話で2つの指示を出していた
1つ目は観客席に頑丈な魔法のバリアを張っておくこと。2人がもし本気でやり合えば会場は吹き飛び、観客達が巻き添えをくらってしまうのでそれを防ぐため
2つ目は創破と魔理沙以外の人間全員に認識阻害の魔法をかけること。本気でやり合ったとしてもそれが審判から見て試合を中断させなければならない規模になってしまったら元も子もないため、決着が着くまでは絶対に止めさせないようにしたのだ
その結果、最後の技と技との激突でバリアの一部にヒビが入ってしまった。分身体とはいえ、角ありのラムとレムが本気で作ったバリアを破るほどの威力となると、やはり創破の成長スピードは凄まじい。そう思うしかなかった
菜月昴『世界にも映された………それはつまり彼の力が全世界に周知されたということでもありますよね?ということは……』
パンドラ「そうですね………
オールフォーワンは勿論のこと、日本のみならず外国からも狙われる可能性が高まるということです」
菜月昴『まぁ彼の場合、国単位で襲われたとしても平気で乗り切れると思いますがね』
パンドラ「何事にも万が一というものがあります。それにお忘れですか?今回、体育祭で
パンドラの言葉に菜月昴はハッとする
パンドラ「ラムが見つけて対処しました。その際に『リゼロ』と言っていたそうです」
菜月昴『この世界に『Re:ゼロから始める異世界生活』というものはありません』
パンドラ「ということは、この世界の人間ではなく
神が送ってきた
菜月昴『……………』
パンドラ「転移か転生かは分かりませんが、彼の持っていた力はこの世界で『個性』と呼ばれるものではありません」
菜月昴『………『転生特典』ですか……』
パンドラ「そうです」
チョコチップクッキーを一欠片食べる
菜月昴『どうしますか?』
パンドラ「こちらで対処します。私の分身体はこの国だけでなく、世界中にいます。その子達にも連絡しておきました。貴方は貴方の職務を全うしてください」
菜月昴『………分かりました。あ、あとパンドラ様1つ尋ねておきたいことが』
パンドラ「なんでしょう?」
菜月昴『雄英体育祭が終わって次に彼が行くのは職場体験です。誰のところを選ぶのか少し気になりまして……』
パンドラ「………彼が行く場所は私にも分かりませんが、きっと………素晴らしいものになると私は思っていますよ」
満面の笑みを浮かべ言い放った。まるで何か楽しいことを想像しているかのように、目を瞑り、手を広げながら
パンドラ「もう遅いので、これで報告は終わりとしますね」
菜月昴『は、はい……分かりました、お疲れ様でした』
こうしてパンドラと菜月昴との念話は終わった。菜月昴は自身の体を休めるためにベッドへと向かう。だがパンドラはまだティーカップにカモミールティを注ぎ足していた
パンドラ「体育祭侵入者の男性の転生特典『傀儡化』………他人のDNAを取り込むことで一定時間その人物を操り人形にすることが可能。摂取量によって操る時間が変わるということですか」
視線の先には、白い光を放っている人魂のようなものが浮かんでいた
その正体はラムが殺した男の魂であり『転生特典』と呼ばれるものだった
パンドラはラムをその場に呼ぶと、その魂を持ってある場所へと運んで行った
パンドラ「彼自身、気付いていない。一人称が『僕』から『俺』に変わったこと………少しずつ記憶は戻ってきている」
椅子から立ち上がり、パンドラは空を見上げた。本物の空ではない、自分自身が作ったものである。その時、彼女はふと閃いた
パンドラ「良いことを思いつきました」
テーブルの上に置いてあった写真立て。その写真に写っているのは体育祭で金メダルを首にかけている創破。パンドラはその写真立てを手に持ち、空に掲げながらうっとりとした表情となる
パンドラ「優勝おめでとうございます。これは私からのプレゼントです」
そう言うと、パンドラは創破の写真に向かって
チュッ
キスをした
パンドラ「ふふっ、良い夢を見て下さいね♡」
次回、職場体験・期末テスト編が始まります
1話目はオープニング曲『空に歌えば』です
エンディング曲『だってアタシのヒーロー』は最後に投稿しようと思っています
パンドラの最後に言った『良い夢』の真意は2話目で明らかになるのでお楽しみに~
これにて雄英体育祭は終わりです。終わりに1年近くかかってしまいました。完結に至るまでにはどれくらいかかるか………
それでも、自分の表現下手な小説を読んでお気に入りや感想を書いてくれてる人が少しでもいるととても安心します。どうかこれからも、『仮面の英雄と約束の場所』をよろしくお願いいたします