光が射し込んできた
それはいつもカーテンの隙間から射す太陽の光とはまた違った。寝ていた意識を瞬時に叩き起こしてくれる日光よりも弱く、いつもは感じない匂いがしたのだ
表現しづらいが、例えるとするなら色々な花が咲いている花畑のような匂い
フローラルな香り、時折感じる何処か懐かしい香りが混ざっていた
何時も何処かで嗅いだことのあるような……何処だったっけ?
疑問を解消するべく、閉じていた眼を少しずつ開けたら
創破「…………えっ?」
最初に眼に入ったのは天井にぶら下がっているシャンデリア。一目で分かった、絶対高いやつだと
いやそうじゃない、何でシャンデリアが天井にあるんだ?自分の部屋にそんなもの飾った覚えはない
そもそも、自分はベッドでパジャマに着替えて寝ていたのに、何で……何で………
創破「何でタキシード着てるんだよ、それに何でソファーで寝てるんだよ」
と言うか………と言うか………
創破「ここ何処だよ?」
辺りを見渡すが誰もいない。豪華なカーペットや花が飾られている。ここが昨日、自分が眠りについた部屋とは到底思えない。それにさっきから自分の中にいる筈の英雄の皆さんやバイス達を呼び掛けているのだが全然応答がない
参ったなと思っていた時、扉が開いた音が後ろから聞こえ、咄嗟に振り向くと
創破「えっ………お、お茶子?」
扉を開けたのは幼稚園時代からの幼馴染みであり友人の麗日お茶子………だと思う。顔も髪型も本人そのものであるが、彼女が着ている物は………
お茶子「あぁそうくん、ここに居た!もう、あちこち探し回ったんだよ!」
お茶子は自分の姿を確認するとこっちの方へ駆け寄って来た
創破「お、お茶子……?その格好………どうしたんだ?」
お茶子「えっ、何か変?どこか汚れちゃってる?」
創破「いやそうじゃなくて、今着てるのって…………ウエディングドレス……」
ふんわりとした白いスカート、上半身は肌を露出しているタイトとなっておりとても可愛らしく、まるでお姫様をイメージさせるウエディングドレスをお茶子は着ていた
お茶子「もう、何言うてるの?結婚式なんだから、ウエディングドレスを着るのは普通でしょ?」
創破「えっ……お茶子結婚するのか、誰と!?」
お茶子「…………ねぇ、本当に大丈夫?どこかに頭ぶつけた?」
創破「ッ!?お、お、おおお茶子!?」
お茶子「う~~ん……どこも怪我してないように思うんやけど」
お茶子はグイッと顔をこちらに近付け、顔色を確認した。もう目と鼻の先程の距離だ。びっくりする自分を他所にお茶子は少しも動揺していなかった。まるでこれくらいのことは何度も経験しているかのような
流石にこれはおかしい。目の前にいるのはお茶子だが、距離感というか何かが違う。まさか、個性で幻覚か誰かが化けているのではないかと思い始めた時
また誰かが扉を開けて入ってきた
霧雨「おい何やってんだよ!もう直ぐ始まるぞ!」
創破「き、霧雨?」
入ってきたのは、雄英に入学してから知り合い、トレーニングにもよく付き合ってくれる友人であり良きお隣さんでもある霧雨魔理沙
彼女もまたウエディングドレスを着ていた。白いスカートは地面まで伸びておらず膝丈あたりまでの長さ。ドレスには所々に青い薔薇の花びらが散りばめられ頭には青と黄色の星のアクセサリーが付いたヴェールを被っていた。*1お茶子が着ているドレスとは少し違うが、その姿は充分美しいと言える程のものだった
お茶子「あ、魔理沙ちゃん!ごめんね、でもそうくんの様子がおかしくて」
霧雨「おかしい?」
お茶子「何だか
霧雨「はぁ?」
創破「えっ!?霧雨もまさか結婚するのか!?誰と!?」
霧雨「……わっ本当だおかしくなってる。何かあったのか、
創破「ッ!!そうくん!?」
霧雨「お、おいおい……マジで大丈夫か?」
お茶子「どこか具合でも悪い?」
創破「いやそうじゃなくて……その……」
色々と聞きたいことは山程あった。幼馴染みと同級生の2人が今日いきなり結婚するという話を聞いてそれが更に増えてしまい、最初に何を尋ねようか迷っていると
お茶子「ねぇそうくん、本当に分からないの?結婚式のこと?」
創破「えっ……あっ………その……まぁ……うん」
動揺を隠せずに返事をしてしまった。するとお茶子は魔理沙に手招きし、何やらコソコソと耳打ちしていた。魔理沙は少し驚いていたように見えたが、何やら覚悟を決めたような表情となり、2人はまたこちらへとやって来た
お茶子「……じゃあ、こっち見て」
伏せていた顔を上げると、またお茶子の顔が至近距離まで近付いていた。ただ今回は、目と鼻の先ではなく実際に触れていたのだ。唇と唇が………
創破「ーーーーッ!?」
理解するのに時間がかかった。今自分は、お茶子とキスをしているのだと
始めてだ。始めての感覚だった。幼い頃、母親が頬っぺたにしてくれたキスは何度もあったが……脣と唇が触れ合うものは初……つまりファーストキスだった
5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、10秒程経って、お茶子の唇は離れた。だがまた別の唇が来た
霧雨「ッ」
創破「ッ!?(霧雨!?)」
また頭が真っ白になり、さっきよりも理解するのに時間がかかった。今度は霧雨と、キスをしている。さっきお茶子と……いやお茶子からキスをされた。そのお茶子の前で堂々と………いや、そもそも何でお茶子が自分とキスをしたんだ…………いや、そもそも何で結婚するのに新郎じゃない人とキスをしたんだ。そういうのは結婚する相手、新郎とするべきだ…………新郎と…………新郎と……………
まさかと思った時、霧雨が唇を離した
霧雨「プハッ……//////」
創破「ッッ………」
お茶子「その………どう?思い出してくれた?///////」
創破「ッッ………今日の結婚式の新郎って…………俺?」
霧雨「へへッ、そうだぜ。旦那様」
お茶子「今日は私達の結婚式なんよ////だから、皆この日を楽しむにしてた/////」
霧雨「そうだ。だから今日の主役であるお前が、しっかりしてくれないと……一生に一度の思い出が悲しいもんになっちまう///////」
確信した。これは夢なのであると
創破「(そうだ。だって夢じゃなきゃ………2人が俺のことを、結婚する程好きだなんて思ってる筈がないし)」
第一、ヒーローになるのが夢。それは2人も同じ筈だ
ヒーローでも結婚は普通に出来るし、珍しいことでもない。だがそれ故のリスクは多くなってしまう。だから結婚というものにまったく興味がないというわけではないが、自分とは無縁のものだと思っている
だが、これが夢だとしたら自分は結婚したいのか………それもとっても身近な友人の2人と………こういう関係になりたいのか………
霧雨「ほら、もう本当に間に合わねぇから!立て!行くぞ!」
創破「ちょっ!?」
力強く霧雨に手を引っ張られ、扉の向こう側へと連れ出される。白い光がまた目を襲い、あまりの眩しさに瞑ってしまう。光が晴れたと思い、少しずつ眼を開けていくと自分は今、教会の中にいた。それも十字架の印が壁に刻印されている祭壇の前
そして、後ろを振り向くと両手に花束を持ち、ウエディングドレスを着た少女達がいた
創破「ーーーーッッ」
息を呑んだ。お茶子と霧雨は顔を上げ、心から幸せそうな笑顔を浮かべている。小さい頃から一緒だったお茶子は今まで自分が見てきた中で、一二を争う程の輝かしい笑顔
男勝りな性格をしている霧雨。だが今の霧雨は、頬を赤く染め心の底から嬉しそうな笑顔を浮かべていた。それは普段見せたことのない女の子としての霧雨だった
創破「(君たちは……?)」
満面の笑みをこちらに見せている2人の左右には、他に花嫁衣裳を着てる人がいた。顔は下を向いて見えないが………
創破「な、なぁ、君たちは」
誰なんだ?と聞こうとしたとき、ゴォン!ゴォン!という音が鳴り響いた。アニメやドラマとかでよく聞くウエディングベルだと気付くが、その直後
意識が覚醒した
Piーー!!Piーー!!Piーー!!
創破「ッ!!」
次に眼に映ったものは、教会でもお茶子や霧雨達花嫁でもなく、見知った天井とスマホのアラーム音だった。自分の部屋に寝間着姿でベッドの上にいた
創破「………やっぱり、夢……」
なんつー夢を見たんだ。そうツッコまずにはいられなかった
何で、よりにもよって……
創破「今日と明日会う人が……あんな………」
お茶子『今日は私達の結婚式なんよ//////だから、皆この日を楽しむにしてた//////』
霧雨『そうだ。だから今日の主役であるお前が、しっかりしてくれないと……一生に一度の思い出が悲しいもんになっちまう///////』
そのセリフと………2人とキスをした感覚が…………未だに脳裏に残っていた
創破「ーーーッ///////」
どんな顔して会えば良いんだよ………
朝食時
夕姫「………創破?」
創破「な、なに?」
夕姫「さっきからどうしたの?朝起きてから顔がやたら赤いし、ご飯もあんまり食べてないし、ぼっーとしてる時があるし」
龍司「どっか具合でも悪いのか?」
創破「い、いや、ちょっと、疲れが出てきちゃただけだから!//////」