ビギナーズラック・オンライン   作:ももいっぷ

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報酬と稲妻

1.宿屋【銀猫】

 

 

 目が覚めると柔らかいベッドの上にいた。

 まさかゲームの中で寝る事になるとは……驚きを隠せないでいたが、それよりも此処に見覚えは無い。どこなんだろうか?

 

「……あっ! チキンさん、起きたんですね」

 

 辺りを見回していると古びたドアからミカンさんが入って来た。

 その手には回復アイテムである【ミネラルウォーター】が握られており、私の傍まで来るとそれを手渡してくれる。

 

「ありがとう。ところで、ここは……」

 

「町の宿屋です。びっくりしました。チキンさん、急に倒れたように眠っちゃって」

 

 ダンジョンでの連携、強大なボスとの戦闘……私の身体は想像以上に疲労していたらしい。

 ここまで運んでくれた事に感謝しつつ、この場に見当たらない人物について聞く。

 

「二人はもう『落ち』ちゃいました。でも、また一緒に行こうって言ってくれてましたよ!」

 

「お、落ちた?」私は驚愕する。それはとても穏やかじゃないが……。

 しかし部屋から飛び出そうとする私をミカンさんは慌てて制した。

 

「落ちたって言うのはログアウトしたって意味なんです! 二人は無事です!」

 

 どうやら、この世界には私の知らない単語がまだまだあるようだ。

 

「なんだそうか。それならきちんと挨拶したかったが……」

 

「また会えますよ! それにほら、皆で相談して報酬を分け合ったんです。これがチキンさんの分ですよ!」

 

 そう言っていくつかのアイテムを貰い、中身を確認する。

 どれどれ……。

 

 

 【鋼の剣Lv5】

 装備時STRが上昇する。戦士のヘヴィストライクで与えるダメージが上昇する。

 

 【スライムの小手】

 STR/命中率が上昇し攻撃速度が上がる。

 

 【ゴールデンスライム・ネックレスLv1】

 全てのステータス+5。攻撃時低確率で敵が10ミル(通貨単位)落とす。

 

 

 装備品は以上だ。あといくらかの資金。

 どれも今の私に対応している装備な辺り、しっかりと吟味してくれたのだろう。

 

 これでこれからの戦いが少しは楽になる。不思議な効果の物もあるが、かつて資金が無く路頭に迷っていた私には有難い。

 

「ネックレスはとってもレアなんです。皆さん、チキンさんの【ビギナーズラック】が本物なんじゃないかって少し信じてました」

 

「こんな貴重な物を私が貰っていいのか?」

 

「もちろんです! その代わりといってはなんですが、また一緒にダンジョン行きましょうね!」

 

「ああ。私で良ければ」

 

 その後簡単な世間話を挟んで、ミカンさんも皆と同じように『落ちて』行った……だが私は『落ちる』訳には行かない。

 

 次の戦いで恩を返せるよう、少しでもレベルを上げるつもりだ。私は再びシルバー荒野へ赴く。宿敵だった『スライムモンキー』も今ではいい練習相手。

 レベルも装備も強化されたからか、周りに生息する土猿たちはもはや私の敵ではない。スイングで簡単に薙ぎ払いながらスライムモンキーの出現を待つ。

 

 ……そんな時、突如一人の重騎士が現れた。黒い鎧を纏い銀色の大剣を彼が掲げると、天空から稲妻が降り注ぎ辺りに沸いたモンスターを一掃してしまう。

 

「ふざけんな」

 

「自慢厨かよ、帰れよ!!」

 

 狩場にいた人々からは非難の声が上がっていたが、私はただ見ていることしか出来なかった。

 今まで見た中でも飛びぬけた攻撃力を持つ重騎士と全てを消し去る黒い稲妻……。いつか自分もあんな大剣を持つ『暗黒騎士』になろうと誓う。

 

 いつの間にか彼は姿を消し、私は無我夢中で剣を振るう。いつの日か自分が落雷を降らせることを夢に見ながら……。

 

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